■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■
いよいよ12月に入り、今年も残すところあと1カ月を切った。
話題の新製品も出揃いはじめたものの、量販店店頭は11月末までのエコポイントの駆け込み需要の反動もあり、例年のような「これからが本番」というよりも、むしろ「やっと一息」といった感じだ。
しかし、量販店店頭には足を運ぶ来店客が後をたたないばかりか、注目される新製品も続々と登場してきている。
では、コンシューママーケットはどうなっているのか。12月第1週の最新市場動向を、BCNのデータから追ってみた。
●薄型TV市場薄型TVの売り場 |
まず気になるのは、11月末までのエコポイントの駆け込み需要で沸いた薄型TV市場の動向だ。12月からはエコポイントが半減。さらに2011年1月からの新制度スタートでは、対象基準の変更や、対象がTVの買い換えに限定されるといったことから、11月の駆け込み需要は驚くべき実績となっている。
BCNの調べによると、11月1~7日までが前年同期比329%増、8~14日が508.1%増、15~21日が397.2%増、22~28日が373.7%増と、毎週のように大幅な伸びをみせていた。
だが、11月最後の土日が終わり、駆け込み需要が一段落した11月29日~12月5日の集計では、24.9%増と伸び率が大幅に減少した。中でも、エコポイントの還元額が大きい40型台では3.7%増、50型以上では0.3%増と成長率が大幅に低下。一方で、エコポイント効果が薄い20型未満では115.3%増という高い伸び率を維持したが、前週の491.4%増から比べると、やはり伸び率は鈍化している。
ある量販店では、「年末から年明けもこの程度の勢いは持続するだろう。だが、懸念材料は、11月に販売したTVの3分の1以上は納品できていない状態であること。まずは11月に販売した分を、遅延することなく納品することが大切だ」とする。
11月の販売分が完納できなければ、12月の販売分もさらに先送りとなり、12月の販売実績がままならない。
「12月に入ってからはエコポイントを意識せずに、地デジへの移行を目的に購入する来店客が増加しており、少しはゆっくりとした対応ができる。ゆっくり選びたい来店客にご迷惑をかけることなく販売する体制を整え、安定出荷によって、売り上げを立てていきたい」と、メーカーの安定出荷が、量販店のにおけるTVの販売増加につながると期待を寄せる。
●電子書籍
一方、12月3日に予約が開始されたシャープの「GALAPAGOS」は、量販店店頭では販売しない直販モデルのため、BCNやGfKが集計するPOSデータには販売実績としてはカウントされない。そのため、実態が掴みにくいというのが現状だ。
量販店のある関係者は、「予約開始初日に当店で申込書を受け取って、シャープに申し込んだとしても郵送であるため、それが当店の販売実績として手続き手数料の入金するまで時間がかかる。またどれだけ販売ができたのかはすぐにわからない」と、売り手として、販売の手応えが薄いことに対するジレンマを指摘する。
今後は主要店舗において、その場でインターネットで申し込みが可能な仕組みを作る計画であり、これにより、メーカー直販でも量販店の役割がさらに重視されることになる。ここにおいて、量販店がさらに乗り気になる販売の仕組みを提案する必要があるだろう。
12月10日にはソニーの「Reader」が発売される予定で、これも電子書籍の需要拡大に追い風となるだろう。
シャープのGALAPAGOS | GALAPAGOSの受付カウンター |
だが、競合が林立しはじめた一方で、iPadが販売台数を増加させているのだ。
10月以降、低迷していた販売台数が、GALAPAGOS予約開始の週となる11月29日~12月5日の集計では、一転して9月水準近くまで上昇しているのだ。
実はこの背景には、GALAPAGOS予約開始日の12月3日から開始したソフトバンクの料金戦略がある。
同社では、iPad Wi-Fi+3G向けの新たな割引キャンペーンを、「iPad for everybody」サービスを、2月28日までの期間限定で開始したのだ。これは、iPad向け月月割の割引額が増加するキャンペーンであり、この影響でiPadの売れ行きは一転しはじめた。
「4日、5日の土日は、iPadの対応窓口を増加させて対応した」という量販店の声もある。
一部では、「この新料金キャンペーンは、GALAPAGOSを牽制した取り組みではないか」との見方も出ているが、それを抜きにしても、低迷傾向にあった店頭におけるiPad販売のテコ入れ効果としては絶大だったといえよう。
iPadの在庫状況 | iPadの売り場 |
●オーディオプレーヤー
ソニーのウォークマン |
今年は例年以上に熾烈な争いを繰り広げているのが、国内におけるアップルのiPodと、ソニーのウォークマンによるトップシェア争いだ。
8月にソニーのウォークマンが47.8%のシェアを獲得し、アップルのiPodの44.0%を抜き、月次ベースで初のトップシェアとなったが、このときは、新製品への入れ替え前という特殊状況での首位逆転だった。
問題は新製品発売後のシェアだが、10月はアップルの49.6%に対して、ソニーは43.6%とやや差が開いたように見えたものの、11月の集計ではアップルの46.8%に対して、ソニーは45.5%とシェアを縮めてきた。
ソニーマーケティングの栗田伸樹社長は、「12月の最終週で、トップシェア奪取を目指す」と鼻息も荒い。
この2社のシェア争いは今年は目が離せないといえよう。
●スマートフォン
そして、もう1つ注目されるのが、11月26日にKDDIが満を持して投入したスマートフォン「IS03」の発売である。
実はこの動きが予想以上にいいのだ。
2008年に発売されたiPhone 3Gの初日の販売実績を1とした場合、iPhone 3GSは同じく1、iPhone 4は1.06となったものの、「IS03」は、これ大きく上回る1.26と高い指数を記録しているのだ。
IS03の売り場 |
スマートフォンの累計販売台数推移 (iPhone 3Gを1とした場合、出典:BCN) |
これは、NTTドコモから発売された「GALAXY S」や「Xperia」の販売指数をも大きく上回る結果にもなっているのだ。さらに発売1週間に渡る指数推移も、これまでのスマートフォンにはない高い販売台数を維持しており、これまでのスマートフォンの中では圧倒的もいえる出足を見せている。27万人の購入宣言の効果は伊達ではないといえよう。
Galaxy S | Galaxy Tab |
このように今年の年末商戦は、エコポイント制度の駆け込み需要は一段落したものの、新製品を巡る争いは例年以上に熾烈だといえよう。
エコポイントが終了したから量販店店頭に足を運ばないというのではなく、一度店頭に出向いてみて、興味深い製品が出揃っていることを、ぜひ確認してほしい。