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iPhone 17かPixel 10で迷ってる?どちらが優秀か比べてみた結果……

今回比較するフラグシップ2モデル、左が「iPhone 17 Pro Max」(19万4,800円~)、右が「Pixel 10 Pro XL(19万2,900円~)」。以下では特に断りがない限り「iPhone」「Pixel」と表記する

 現在市販されている代表的なスマホを挙げろと言われた場合、真っ先に名前が挙がるのは国内シェアが数十%にも達すると言われるiPhone、そしてもう1つ、Android陣営では伸長率が昨年時点で前年対比500%を超えたGoogleのPixelシリーズになるだろう。

 単に高性能かつエッジの立ったスマホであればほかにも候補は多数あるが、国内で一定のシェアがあり、かつラインナップが豊富という点では、この2つのシリーズは標準的な選択肢と言っていい。

 今回はこのiPhoneとPixel、両者のフラグシップモデル2製品について、主にハードウェア面での相違点をチェックしてみた。下位を含めたシリーズ全モデルに共通する普遍的な機能というわけではないが、ハードの到達点を知るに当たっては1つの目安となるはず。製品選びの参考にしていただければ幸いだ。

【外観】iPhoneはデザインを変更。完成度はPixelが上か

 まずはサイズや重量といった外観まわりを見ていこう。画面サイズはiPhoneが6.9型、Pixelが6.8型とほぼ同等。ボディの表面積も、iPhoneが78.0x163.4mm、Pixelが77.6x163mmと差はわずかだ。さらに重量についても、iPhoneが233g、Pixelが232gと、誤差レベルの違いしかない。

左がiPhone、右がPixel(以下同じ)。画面サイズ、ボディの表面積ともにほぼ横並びだ
背面。iPhoneは従来から大きく刷新されている

 実際に手に持つと差を感じるのが厚みで、iPhoneが8.75mm、Pixelが8.5mmと、数値上はわずかな差なのだが、iPhoneはPixelよりも厚ぼったく感じられる。背面から側面にかけての丸みを帯びたデザインがそう感じさせるのだろうが、そもそも現行モデルは3世代前のiPhone 14 Pro Maxより0.9mm厚くなっているなど、世代を重ねるごとに厚みが増しているので、機種変更前に使っていたモデルが古いほど、厚みの差を感じやすいだろう。

厚みの差は0.25mmしかないのだが、手に持つと数値以上に差を感じやすい。丸みを帯びたiPhoneのデザインも一因だと考えられる
背面を下にして置くと、iPhoneはカメラレンズの突起ゆえ傾きが生じる。Pixelは完全にフラットでガタつきがない

 また、iPhoneは今回のモデルで背面デザインが大きく刷新されたが、カメラレンズのある左側だけが出っ張っている点は変わっておらず、平らなテーブルに置くとわずかに傾いた状態になる。ぴったり安定して接地するPixelと違ってその状態でタッチ操作を行なうとガタつきが生じやすく、神経質な人は気になるかもしれない。

iPhoneは実測232g
Pixelは実測233g

【解像度や明るさ】機種選びに影響を与えるような差はない

 画面の見やすさについてはどうだろうか。解像度はiPhoneが460ppi、Pixelが486ppiとほぼ横並び。スマホとして両者ともに高い水準にあり、どちらを選んでも不満を感じることはないだろう。

最大輝度での明るさの比較。Pixel(右)のほうが明るく感じられる
上の画面を拡大したところ。解像度はiPhoneが460ppi、Pixelが486ppiとほぼ横並びで目視による差を感じない

 明るさはiPhoneが最大1,000cd/平方m(標準)、ピーク時1,600cd/平方m(HDR)/3,000cd/平方m(屋外)で、Pixelは最大2,200cd/平方m(HDR)、ピーク時3,300cd/平方mとなっており、スペック上はPixelのほうが明るい。スライダを100%まで引き上げて見比べても、Pixelのほうが目を刺すような光の強さを感じる。

こちらはNight ShiftやTrue Tone、アダプティブトーンなどの調整機能をオンにした状態での比較。iPhoneのほうが色合いなどがダイナミックに変化する傾向がある

 一方でコントラスト比はどちらも2,000,000:1と横並びのはずなのだが、直射日光下では、Pixelのほうが黒が引き締まって見える傾向がある。このほかリフレッシュレートは両者ともに120Hzで、ほとんど違いらしい違いはない。

直射日光下での見え方の比較。明るさは両者ともに同等だが白黒のコントラストはPixelのほうがはっきりしており見やすい

 以上のように両者とも高いレベルで拮抗しており、ポテンシャルの高さではPixel、自動調整周りのチューニングではiPhoneに軍配が上がる印象だ。いずれの場合も、機種選びに影響を与えるような差はないと考えてよいだろう。

【カメラ】光学ではほぼ同等、Pixelのデジタルズームは癖あり

 続いてカメラについて見ていこう。超広角と広角、望遠という3つのレンズを搭載しているのは両者共通だが、大きく異なるポイントが2つある。1つは標準のズーム倍率で、iPhoneは0.5/1/2/4/8倍、Pixelは0.5/1/2/5/10倍で、両者ともに0.5~2倍までは共通ながら、それ以上の倍率になると違いがある。

ズーム倍率の比較。iPhoneは0.5/1/2/4/8倍、Pixelは0.5/1/2/5/10倍

 もっとも多くの人にとって、日常利用するズーム倍率は0.5~2倍がほとんどのはずで、両者ともにこの範囲をきちんと押さえているのは安心感がある。かつてのiPhone 13 Pro Maxのように、望遠2倍がない代わりに3倍が搭載されていたり、Pixelが0.7倍を超広角と言い張っていた頃に比べると、ずいぶんこなれて使いやすくなった印象だ。

0.5倍で撮影。画角はほぼそっくり。この写真では明るさに若干の相違があるが、実際にはそこまでの開きはない

 一方で気になるのはデジタルズームの最高倍率で、iPhoneは40倍、Pixelは100倍となっている。このうちPixelについては「超解像ズーム Pro」という名前が付けられており、AI処理を組み合わせることで、遠くからも驚くほど鮮明な撮影が可能なことが特徴だ。

左がiPhoneの40倍、右がPixelの100倍で撮影したもの。超解像ズーム Proの効果か、Pixelの100倍のほうが明らかに高精細に見える

 もっともこの「超解像ズーム Pro」はかなり癖があり、光学ズームと見紛うほどの高いクオリティで仕上がることもあれば、存在しないディティールを盛り込んでくることもある。中でも遠景に文字が映り込んでいる時はこの症状が発生しやすい。ディスプレイに表示した小さな文字を数m離れて撮れば、比較的簡単に症状を再現できる。

電子書籍の本文の一部。数m離れたところから赤枠の部分をデジタルズームの最大値で撮影すると……
iPhone(40倍)で撮影。デジタルズームによくありがちなボケ加減だ
Pixel(100倍)で撮影。ディティールはデジタルズームと思えないほどくっきりしているが、存在しない漢字が生成されてしまっている

 これについては「このような特性がある」と知っておけば実害はあまりないのだが、遠くの文字が見えない時に、スマホのズーム機能で写真を撮ってそれを読み取るという双眼鏡的なワザが使えないのは、一部の人にはマイナスになるだろう。生成AIが知ったかぶりで回答をでっち上げるのに近いこの現象、ユーザーの側もそのつもりで利用すべきだろう。

【充電】ともに高速化。PixelはQi2 25Wのワイヤレス充電にも対応

 続いて充電周りのスペックについて見ていこう。まず有線(USB Type-C)での充電については、従来はピーク時で30W未満だったが、今回の2製品を計測したところ、iPhoneはピーク時最大38W前後、Pixelは最大32W前後と、従来より高速な充電が可能になっている。

両製品ともバッテリ残量を10%台まで減らした状態で有線、ワイヤレスそれぞれにおける充電速度をチェックした

 以前のレビューで、USB PD対応の充電器を購入する場合、30Wではなく、余裕を持って最大45Wの充電器を調達するのがベターと述べたが、その通りになった格好だ。今後も新モデルのたびにこうした高速化にまつわる話題が繰り返されることになるだろう。

100W対応のUSB PD充電器を用いた場合の充電速度。iPhone(上)が38W前後、Pixel(下)が32W前後と、いずれもピーク時には30Wの大台を超えた。45W以上の充電器であればこの速度が実現可能と考えてよいだろう

 また、両製品ともワイヤレス充電にも対応しているが、Pixelは新たにQi2規格に対応し、MagSafeと同じく、磁力で吸着しての充電をサポートするようになった。中でもPixel 10 Pro XLは上位規格であるQi2 25Wに対応するなど、下位モデルに比べるとより高速だ。

Pixelは新たにQi2に対応、マグネット吸着による充電が可能になった。AppleのMagSafeとも互換性がある

 実際にQi2 25Wに対応したAppleの新しいMagSafe充電器を用意して試したところ、iPhoneは28W前後、Pixelは18W前後という結果になった。ワイヤレス充電は一般的に有線と比べて速度が安定しないため、これらの値があくまでもピーク値である点は差し引く必要があるが、一昔前の有線に匹敵する速度が出ているのは注目に値する。

Qi2 25Wに対応したApple純正MagSafe充電器での充電速度。iPhone(上)が28W前後、Pixel(下)が18W前後。ちょっとした有線並みだ
Apple純正のMagSafe充電器(旧型)での充電速度。iPhone(上)が11W前後、Pixel(下)が7W前後とかなり控えめ。Qi2 25W対応充電器を選んだほうがよいだろう

 ちなみに従来のQi互換のApple製MagSafe充電器だと、iPhoneは11W前後、Pixelは7W前後と、速度は2分の1~3分の1程度まで落ちてしまう。今回の実験では発生しなかったが、Pixel×Qi充電器の組み合わせは充電自体の停止など不具合と思しき現象も報告されているので、最新のQi2 25Wに対応した充電器を新たに調達することをおすすめする。

【USBポート】両者ともにディスプレイ出力に対応

 充電以外のUSBポートの仕様について見ていこう。データの転送速度は、iPhoneは最大10Gbps、PixelはUSB 3.2となっており、具体的な速度は非公開。今回は検証を行なっていないが、海外では(5Gbpsではなく)10Gbps相当だったとの報告がいくつか上がっており、これが事実ならばiPhoneとPixelの差はないことになる。

iPhoneはケーブルを接続するだけで外部ディスプレイへと出力できる

 また、外部ディスプレイの出力については、iPhoneは「Apple TV 4K」、Pixelは「Chromecast with Google TV」などのデバイスを用意することでワイヤレスでの出力が行なえるほか、USBケーブルを用いることでDisplayPort Alt Mode対応のディスプレイへの接続が行なえる。かつてはPixelは有線出力には非対応だったが、Pixel 8の追加アップデートで対応を果たし、本製品にもその仕様が受け継がれている。

Pixelについてもケーブルを接続するだけで外部ディスプレイへと出力できる

 この有線での外部出力、できるのはあくまでもミラーリングだけで、Androidの一部製品に実装されているデスクトップモードに相当する機能は用意されておらず、また画面の向きと連動するかどうかはアプリ次第だが、別途デバイスを必要とするワイヤレスでの出力だけでなく、ケーブル1本あれば表示可能な有線出力と使い分けられるのは便利だ。

【ベンチマーク】iPhoneが圧勝。ゲームではPixel非対応も

 ベンチマークについても見ていこう。複数のベンチマークアプリで比較をすると、スコアはiPhoneのほうが明らかに高い。iOSとAndroidの違いもあるので一概には言えない、とはよく言われるが、従来モデルと比べてiPhoneがスコアを伸ばしている一方で、Pixelは従来モデルよりGPUまわりのスコアが低下しているのが気になるところだ。

Google Octaneでの比較。左がiPhone(Safari)、右がPixel(Chrome)。iPhoneはPixelの57.2%増し
3DMark「Wild Life Extreme」での比較。iPhoneはPixelの99.8%増し
GeekBench 6でのCPU比較。シングルコアではiPhoneはPixelの72.9%増し、マルチコアではiPhoneはPixelの62.4%増し
GeekBench 6でのGPU比較。iPhoneはPixelの1348.7%増し

 ちなみにゲームでは「原神」のように、動作にPowerVR系以外のGPUが必須であることから、Pixel 10シリーズはサポート対象外となっている場合もある。今回試した限りでは特に問題なくインストールも行なえ、基本プレイでもカクつきなどの不具合は出なかったが、起動に失敗したり、画面がフリーズするなどの不具合も、海外ではいくつか報告されている。

HoYoverseの人気ゲーム「原神」。今回試した限りでは特に不具合はなく普通にプレイできたが、Pixel 10シリーズは対応可能デバイスの条件から外れている(「Luna Ⅰ」バージョンアップのお知らせ)。

 また、実際のプレイ時も、iPhoneであればリフレッシュレート120Hzまで選択可能なところ、Pixelは60Hzまでしか選択できないなど、GPU性能が影響していると見られる箇所も少なからずある。Pixelに搭載されているTensor G5は同社独自のSoCであり、今後サポートするかはサードパーティに委ねられているだけに、購入目的の1つにゲームがあるのならば、見送るのが賢明かもしれない。

ただしリフレッシュレートはiPhone(上)だと120Hzまで選択可能なところ、Pixel(下)は60Hzまでしか選択できず、また発熱も相当なものだ

【バッテリの持続時間】さらに長寿命化したiPhoneが優勢

 バッテリの持続時間はどうだろうか。今回は、ローカルに保存した約1分のフルHD動画をリピート再生し、12時間後にバッテリ残量が100%からどこまで減っているかをチェックした。画面の明るさは最大、音量は0、明るさなどの自動調整機能や画面ロックはオフにして計測している。

 結論から言うと、iPhoneは12時間後もバッテリが41%も残っていたのに対して、Pixelは残り4%と、かなり極端な消耗が見られた。実験をあと数十分続けていれば、バッテリが底をついてシャットダウンしていただろう。

 元々の公称時間はiPhoneは「39時間」、Pixelが「30時間」であることを考えると、今回の実験ではやや極端な差がついた格好だが、今回のiPhone自体、歴代モデルの中でもバッテリ駆動時間は最長とあって、ロングライフなのは納得だ。途中充電なしで長時間使えるスマホを探しているユーザーにとっては、絶好の選択肢と言ってよいだろう。

約1分のローカル動画を12時間に渡ってリピート再生するテストを行なったところ、iPhoneが残り41%、Pixelは残り4%(バッテリセーバーオフ)とかなり極端な差がついた

【番外編】AirDropとQuickShareの相互運用が可能に

 ハードウェアの比較は以上の通りなのだが、最後にもう1つ、先日Pixel 10シリーズに新たに追加された、iOSなどのファイル共有ツール「AirDrop」との送受信機能について触れておこう。

 この機能、発端はAirDropが今春のアップデートで相互通信を見据えたプロトコルを導入したことで(EUの規制が関連していると言われる)、Googleがそれを用いてAndroidのファイル共有ツール「QuickShare」に相互通信機能を実装。それが今回いち早くPixel 10シリーズに搭載されたという流れのようだ。いずれにせよこれまで不可能と思われていたAirDropとQuickShareの相互運用が可能になったのは画期的だ。

 今回の両製品で試したところ、実際に双方向での送信が行なえることを確認した。ただしiPhoneが受信側の場合、共有範囲を一時的に「全員」にしなければ、Pixel側で検出が行なえない。またPixelが受信側の場合は、Pixel側であらかじめ「受信」を選択して待機画面にしておかなくては、iPhone側で検出できないようだ。

 このあたり、悪戯対策も含めて、何もせずにいきなり相手にファイルを送りつけることはできない仕組みへと変化してきており、それを解除するのに一手間かかるのはやむを得ない。ともあれ現時点でAirDropとの互換性があるのはAndroidスマホの中ではPixel 10シリーズのみであり、iPhoneとやり取りする機会が多く、かつAndroidでなくてはならないという条件でスマホを選ぶのであれば、Pixel 10は有力な候補となるはずだ。

iPhoneが受信側になる場合は、AirDropの設定で「すべての人(10分間のみ)」を指定しておく。「連絡先のみ」のままではPixelから検出できないので要注意
今回は写真を共有してみる。Pixelで写真を開いて共有メニューから「QuickShare」を選択
iPhoneは「〇〇さんのスマートフォン」という名前で検出される。タップすると接続が実行される
iPhoneでは確認画面がポップアップするので「受け入れる」をタップすることで受信が行なわれ、カメラロールに保存される
続いてPixel 10が受信側になる場合。QuickShareを開いて「受信」をタップする
「受信する準備ができました」と表示された。続いてiPhone側で送信を行なう
iPhone側で写真を開き、共有メニューから「AirDrop」を選択
Pixelは「〇〇さんの(機種名)」という名前で検出される。タップすると接続が実行される
Pixel側では確認画面が表示されるので「承認する」をタップすることで受信が実行される