山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Googleの6.7型ハイエンドスマホ「Pixel 7 Pro」、従来モデルからどう進化した?

「Pixel 7 Pro」。実売価格は124,300円

 「Pixel 7 Pro」は、Android 13を搭載した6.7型のスマートフォンだ。同時発売のPixel 7(6.3型)よりも一回り大きい画面を備え、カメラ機能を中心に強化が図られた、フラグシップモデルにあたる製品だ。

 Pixelシリーズの中で最上位モデルの本製品は、従来のPixel 6 Proの改良版にあたる製品であり、6.7型という大画面を備えることから、コミックなどをなるべく大画面で表示したいというニーズに適した製品だ。

 今回は、筆者が購入した個体をもとに、従来モデルにあたるPixel 6 Pro、さらに画面サイズが近い「iPhone 14 Pro Max」と比べながら、電子書籍ユースを中心とした本製品の特徴をチェックする。

Pixel 6 Proになかった顔認証を搭載。指紋認証も改良

 まずは従来のPixel 6 Proと違いを比較してみよう。

Pixel 7 ProPixel 6 Pro
発売年月2022年10月2021年10月
サイズ(幅×奥行き×高さ)76.6×162.9×8.9mm75.9×163.9×8.9mm
重量212g210g
CPUGoogle Tensor G2
Titan M2 セキュリティ コプロセッサ
Google Tensor
Titan M2 セキュリティ コプロセッサ
RAM12GB12GB
ストレージ128/256/512GB128/256/512GB
画面サイズ/解像度6.7型/3,120×1,440ドット(512ppi)6.7型/3,120×1,440ドット(512ppi)
Wi-Fi802.11ax802.11ax
コネクタUSB Type-CUSB Type-C
防水防塵IP68IP68
生体認証指紋認証(画面内)、顔認証指紋認証(画面内)
駆動時間/バッテリ容量標準 5,000mAh最小 4,905mAh
標準 5,003mAh

 こうして電子書籍ユースに関係する項目だけを抜き出してみると、それほど大きな違いはないことが分かる。筐体サイズはミリ単位で変わっているが、デザイン自体はほぼ同じ、画面サイズと解像度に至ってはまったく変更がない。Wi-Fiの規格、防水防塵の仕様も同じ。急速充電に対応するUSB Type-Cを搭載するほか、バッテリシェアに対応するのも同様だ。

 メモリ容量は同じ12GB、ストレージは最大512GBだが、日本では128/256GBの2ラインナップのみ。カメラ機能に注力したモデルということで本来ならば最大1TBくらいまでラインナップがあっておかしくないが、まあ仕方ないだろう。メモリカードは従来のPixelシリーズと同様に非対応だ。

 Google独自のSoCであるTensorはTensor G2へと進化している。本製品は従来モデルに比べてバッテリ容量が(微妙に)減っているが、Tensor G2は電力効率が向上していることから、そう心配はしなくてよさそうだ。ちなみに重量はわずかに増えているが、こちらも誤差レベル(2g)で、保護ケースの選び方次第で吸収できてしまう差だ。

 使い勝手に大きく関係してくるのが、指紋認証に加えて顔認証を搭載したことだ。従来モデルの画面内指紋認証は精度がお世辞にも高いとはいえず、発売直後からかなりの批判があったが、今回のモデルではそれらが改善されるとともに、新たに追加された顔認証も利用可能になった。電子書籍ユースでのこれらの使い勝手は後述する。

 なお本稿では扱わないが、本製品の目玉機能はカメラだ。なかでも30倍ズームは要注目の機能だが、個人的には超広角が「0.5倍」になったのがありがたい。従来モデルでは0.7倍という、標準とそれほど違いのない画角で超広角を名乗らざるを得なかったのを、なんとか改良して発売に間に合わせた、といったところだろうか。

従来と同じく、画面が左右側面まで回り込んだデザインを採用する
背面カメラ部はデザインこそ変更になったものの、横一列が突出しているのは従来と同じ
Pixel 6 Pro(右)との比較。見た目に区別はつかない。なおデフォルトではアイコンは横に4つ並ぶ設定だが、ここでは5つに変更している
背面。背面カメラ部のカバーはメタリックになり、どこがどのレンズかわかりやすくなった
右側面。ボタンの配置がずれたことから、Pixel 6 Proの保護ケースの流用は不可能だ
左側面。こちらはSIMカードスロットの位置は変わっていない
底面。左右スピーカーの位置がPixel 6 Pro(下)よりも若干離れている
厚みは従来とまったく同様。背面から側面にかけてのカーブも同じだ

Pixel 6 Proと違いを見つけるのが難しいが……

 実際に手に持った時の印象は、Pixel 6 Proとほぼ同様。左右の側面がカーブを描いて側面に回り込んでいるデザインも同じだし、背面に突出するカメラ部も、デザインこそ若干異なるが、厚みなどはそっくりだ。ボディサイズや重量もほぼ同じとあって、持ち比べてもどちらがどちらか分からない。ポケットの中に入れてしまうと区別がつかない。

 また設定画面も、項目の差異を見つけるのが難しいほどで、ほぼそのままPixel 6 Proといっていい。唯一気をつけたいのは、解像度がデフォルトで1440pではなく1080pになっていることで、これは最大解像度の1440pに変更しておくべきだろう。注釈には「最大解像度ではバッテリ消費量が多くなります」とあるが、それは自分で使ってみてから判断すればよいだけの話だ。

画面の側面への回り込みはPixel 6 Pro(右)と比べてもそっくりだ
背面カメラ部は実測で約2.5mm突出している
設定画面の「ディスプレイ」には、従来なかった「画面の解像度」という項目がある(左)/デフォルトでは1080pになっているので、1440pに変えてやるとよいだろう(右)
初期設定のセピア寄りのカラーが気になる場合は「壁紙とスタイル」で変更できる(左)/ホーム画面のアイコンの配置数は、横4個がやや冗長に感じるならば横5個に変更するとよい(右)

 重量は212gということで、iPhone 14 Pro Max(240g)に比べるとはるかに軽いのだが、手に持った限りではかなりずっしりしており、iPhone 14 Pro Maxとの30g近くあるはずの差をあまり感じない。完全な錯覚なのだが、従来のPixel 6 Proでも見られた現象で、どうにも気になる。

 いろいろと理由を考えてみたのだが、これはカメラ部のせいで重心がやや上に寄っているためではないかと思う。筆者はPixel 6 Proを1年間使ってきて、この重さの錯覚にはいまいち馴染めなかったのだが、本製品でもそれは変わらないようだ。せめてもの改善策として、ベルトやリングなどのアクセサリ類を用いて保持しやすくするとよいだろう。

重量は実測212g(SIMカードなし)。重心が上に寄っているせいか、体感ではもう少し重く感じる
iPhone 14 Pro Max(右)との比較。こちらは240gと本製品よりはるかに重いのだが、体感的にはそこまで差は感じない

 ベンチマークはどうだろうか。複数のアプリでチェックしたが、Pixel 6 Proと比べてスコアが上の場合もあれば下の場合もあるといった状態で、これらだけを見ると、どちらの性能が上なのか判別がしにくい。ただし負荷がかかる操作、例えば写真の連写などは従来よりも次にシャッターを切れるまでのタイムラグが短くなっており、処理性能に余裕ができていることは体感できる。

Google Octaneでのスコアは「43598」。従来のPixel 6 Proは「43200」なので、微増といったところ
3DMark Wild Life Extremeでのスコアは「1828」。従来のPixel 6 Proは「1938」なので、こちらは逆に微減だ
Geekbench 5でのスコアはシングルコアが「1038」、マルチコアが「3233」。従来のPixel 6 Proはシングルコア「1040」マルチコア「2758」なので、マルチコアのみ値が大きく伸びている
Geekbench 5(Metal)でのスコアは「4498」。従来のPixel 6 Proは「7166」なので、大差がつけられている

新しく搭載された顔認証のある欠点とは?

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 解像度は512ppiと、電子書籍を表示可能なデバイスの中ではもちろん、あらゆるスマホやタブレットをひっくるめてもトップクラスの域。これ以上を望むのは酷というレベルだ。

 表示サイズはどうだろうか。画面幅は実測71.5mmと、iPhone 14 Pro Max(実測71mm)とは誤差レベルの違いしかなく、これはページ内のコマの横幅で比較しても同様だ。「ほぼ同サイズ」とみなしていいだろう。タブレットや専用端末ではなく、スマホでコミックを読みたいのであれば、最良の選択肢の1つと言える。

テキストを表示したところ。今回試用したKindleアプリの場合、前面カメラの左右は空白になる
従来モデルとの比較。行数、行あたりの文字数もまったく同じだ
コミックを表示したところ。アスペクト比の関係で上下に余白ができる
従来モデルとの比較。こちらもサイズは変わらない
Androidということで、音量ボタンによるページめくりにも対応している
画面の幅は約71mmで、従来モデルと同様。コマの横幅で比較しても違いはない
iPhone 14 Pro Max(右)との比較。iOSは画面下にやや多めに余白ができるが、それを除けば見え方はほぼ変わらない
コミックについても同等サイズだ

 さて本製品の利点の1つに、従来の指紋認証に加えて、顔認証をサポートしたことが挙げられる。Pixel 6 Proの指紋認証は、お世辞にも精度が高いとは言い難かったので、それらが改善され、なおかつ顔認証も利用できるようになったのは朗報だ。

 挙動としては、画面に顔を正対させると、上部インカメラの周囲がリング状に点灯。認証されればそのリングが消灯し、指紋認証エリアが開錠マークに変わるので、画面を上にスワイプするとホーム画面が表示されるという流れになる。

 実際には、指紋認証でロックを解除しようと指を置いた瞬間に顔認証でロックが解除されることも多く、指紋と顔のどちらで解除したのかはっきりしないまま使うことになるが、特にそれをストレスに感じることはない。ちなみに顔認証でロックを解除したあと、スワイプなしで開く設定も可能だ。

顔認証の実行時は、インカメラの周囲がリング状に点灯する
指紋認証はおなじみ画面内。指紋マークの位置に指を押し当てる。Pixel 6 Proと比べて明らかに高速化している
顔認証でロックが解除されると、この指紋マークも解錠マークへと変化する

 ただし気をつけたいのは、本製品の顔認証は、あくまでも本体のロック解除にしか使えないことだ。iPhoneのFace IDの場合、本体のロック解除のほか、個別のアプリのロック解除にも使えるので、例えば「DMMブックス」アプリのようにアプリそのものや本棚にロックをかけられるアプリも、Face IDでロックを解除できる。

 しかし本製品の顔認証はこうした個別アプリのロック解除には対応しておらず、指紋認証もしくはパスコードが必要になる。顔認証と指紋認証に両対応しているのは本製品の利点だが、こうした制限があることで、逆に欠点であるかのように見えるという、実にもったいないパターンである。アップデートで対応可能なのであれば、早期の改良を望みたいところだ。

設定画面で顔認証、指紋認証をともに有効にしていても、アプリ側で使える生体認証は指紋認証だけだ(右はDMMブックスの画面)
DMMブックスのように起動時にロックが掛けられるアプリでは、顔認証は使えず、指紋認証一択となる
DMMブックスの設定を本製品(左)とiPhone 14 Pro Max(右)で見比べると、前者は「指紋認証を使用」、後者は「Face IDを使用」になっていることが分かる

Pixel 6 Proユーザーも買い替えるべき製品?

 以上ざっと見てきたが、本製品はソフトウェアアップデートでは対応が不可能なPixel 6 Proのハードウェア面に改良を施したモデルであり、言うなれば「Pixel 6 Pro+」とでも呼ぶべき製品だ。それゆえ個々の項目をPixel 6 Proと1つずつ比較していくと、何ら変わっていない点も多く、全体的に地味な変更ばかりに見える。「カメラと顔認証だけ」と言われるのもやむを得ない部分はある。

 しかしその地味な変更こそ、Pixel 6 Proを日々使っているユーザーからすると、カユいところに手が届く機能にほかならず、買い替えれば確実に満足度が高まる。前述のように顔認証が個別のアプリに対応しないのはマイナスだが、生体認証が顔認証にしか対応していないわけではないので、全体を通して致命的ではない。重量にしても、iPhone 14 Pro Maxよりも軽いことを考えると、むしろ優秀であるようにも見えてくる。

 本製品は最低5年間のアップデートが保証されており、また近日中に無料VPNが提供されることが予告されていたりと、ハード面以外にも目玉は多い。新規のユーザーには文句なくオススメできる製品だし、また現時点では円安の影響がそれほど大きくないことから、従来のPixel 6 Proユーザーも、買い替えを検討したい製品と言えるだろう。