山田祥平のRe:config.sys

褒めてあげたいGoogle Pixelシリーズの暖簾

 例年通り、Google Pixelスマートフォンが刷新され、その新シリーズが発売された。期待を裏切らない出来だが、手堅く慎重なアップデートともいえる。Pixel 6から大きくは変わっていないともいえるが、そこはそこ。さて、Google Pixel 7シリーズのインプレッションをお届けしよう。

迷いに迷う7と無印

 Googleの新型スマートフォンPixel 7 ProPixel 7の両機を使い比べる機会を得られた。発売以降、実に贅沢な3週間を過ごしている。

 前者は6.7型212g、後者は6.3型197gの端末だ。実用性ということを考えると画面は大きい方がいいが200g切りとコンパクトさも魅力だ。この0.4型と15gの差には永遠の違いさえ感じる。だが、そのあたりはポケットの中での収まりなどもあって個人的な好みに依存する。

 その見かけとは別に、Proと無印では

  • メモリ容量(12GB/8GB)
  • 5Gネットワークのミリ波対応(有/無)
  • バッテリ容量(5,000mA、4355mA)
  • 望遠カメラ(有/無)
  • カメラのマクロフォーカス(有/無)

といったポイントが主な違いとなる。プロセッサはGoogle Tensor G2で同じものが実装されている。

 個人的には15gの重量とサイズ感の好みで無印7を気に入った。でも、ミリ波や望遠カメラの有無はともかく、カメラのマクロフォーカスの魅力とメモリ容量の底力に負けて常用するならProがいいとは思った。ここは迷いに迷うのを逆に楽しむ。とはいえその1.5倍の価格差につきあたると悩みに悩む。コストパフォーマンスという点では無印7は群を抜いているんじゃないだろうか。

 無印を使うなら裸で、Proを使うならケースを使って肩から斜めがけというのがいいなと思った。

Pixelシリーズの製品サイクル

 スマートフォンとしてのPixelシリーズは、秋にProと無印を提供、ほぼ半年後の春に、それをバリューレンジの価格帯に落とし込んだa版を提供してきた。価格はPro、無印、aの順になるが、一般的なハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドというわけではなく、コンピュータとしての性能的にはほぼ同一で、得られる体験について致命的な違いがない。ここは特筆すべき点だ。春のタイミングでa版を手に入れたとしても、Proや無印に対して敗北感を感じることはまずない。

 たとえばミリ波非対応による機会損失が、スマホのライフサイクルとして今後3年間くらいの間に発生するのはどのくらいかは想像に難くない。個人的にはミリ波に遭遇したのは、この2年の間に10分間未満だ。

 ほぼ同じだけど軽い、ほぼ同じだけどコンパクト、といった個人的な好みを優先して、Googleがいうところの「あなたにぴったりのGoogle Pixel スマートフォン」を見つけて選んでも大きな失敗につながることはなく、どのモデルでも標準的なピュアGoogle体験が得られるというのはとても安心でうれしい。

 個人的にはこの2年間Pixel 5を常用してきた。サイズ感と軽量さが常用のもっとも大きな理由だった。すでに2年が経過しているし、プロセッサもGoogle Tensorではないのだが、Androidは13にアップデートされ、できる限り6シリーズや7シリーズと近い体験が得られるように配慮されている。

 毎年、春と秋に新しいPixelが出ることがわかっていて、そして、なんらかの事情で、今回のタイミングはパスして手持ちのPixelを使い続けることになったとしても、やっぱり敗北感はない。負け惜しみじゃなくてだ。

 もっとも最新の7シリーズと実機をリアルに並べて比較してしまうとおしまいだ。さすがに2世代前の5シリーズはモッサリ感がある。けれどもそこに気がつけるケースがどのくらいあるか。最新ゲームに興じるような場合をのぞき、スマートライフに必要なキラーアプリを実行するためのコンピューターリソースは、幸か不幸か踊り場状態だ。そんな状況下で、ニューラルコンピューティングなどの魔法によってPixelに着実な進化をもたらして提示するGoogleの姿勢はとても頼もしい。

 毎年、魔法のような刷新をシリーズにもたらすのはたいへんだ。Googleは、偶数版のPixelでソフトウェア的な革新を提案し、奇数版のPixelでコンピューターハードウェアとしての革新を提案するイメージで、それを交互に繰り返すことで刷新の実質的なサイクルをうまく順繰りにできているように見える。今回は、その典型的なステップだ。地味ではあってもハードウェアベースの見直しがきちんとできている。

 数世代の新旧モデルで得られる経験は限りなく同等になるように工夫されているが、実際には、消しゴムマジックやぼけ補正のような一部の撮影画像編集機能などで、新しい世代のハードウェア/ソフトウェアでしかできないこともある。そういう意味ではPixelを使い続けるなら2年ごとのリプレースがリーズナブルかもしれない。

 いろんな意味で、今回の7シリーズは、保守派のPixelerが決断するタイミングだ。革新派のPixelerには食指が動かないかもしれない。

Androidのスマホのリファレンスだから困らない

 ずっとiPhone、ずっとGalaxy、ずっとPixel、ずっとXperia、ずっとAquos、ずっとarrows。シリーズを気に入って、多くは毎年、モデルが変わるたびに同じシリーズを買い替えているユーザーは少なくなかった。だが、それも今は、さまざまな状況が重なって難しくなっている。

 PixelはAndroidスマートフォンのリファレンス的な存在でもある。めんどうくさがらずに検索したり、身近な人をつかまえて、ちょっと相談するなどで、困りごとが一気に解消する可能性は高い。そういう意味ではシニア層に勧めても期待を裏切らないだろう。

 3年前の4シリーズと比べても、Androidのバージョンは同じだし、メニュー等の構造も同じだ。4と5の間には5G対応の革新があったが、そこに目をつぶれば新旧のモデルに致命的な違いがない。そこがおもしろくないと判断する人もいれば、そこを高く評価する人もいるだろう。少なくとも個人的にはそこを褒めてあげたい。Pixel 7を勧めているようだが、それはPixelシリーズを勧めるということでもあるのだ。