山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
Google Playストアに標準対応した10.3型E Ink搭載Androidタブレット「BOOX Note Air2 Plus」
2022年8月12日 06:33
Onyx Internationalの「BOOX Note Air2 Plus」は、10.3型のE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。Google Playストアにも対応しており、電子書籍に限らず、好みのAndroidアプリを自由にインストールして利用できる。
BOOXシリーズの「Note」は、10型クラスの画面を持つシリーズであり、その中で「Note Air」は、金属製のスタイリッシュな薄型ボディを採用することが特徴だ。2021年初頭に「Note Air」が登場、次いで「Note Air2」がリリースされており、今回の「Note Air2 Plus」は言うなれば3代目ということになる。
今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品について、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。
従来モデルと外見は同一、性能が向上
まずは従来モデルとの比較から。
BOOX Note Air2 Plus | BOOX Note Air2 | BOOX Note Air | |
---|---|---|---|
OS | Android 11 | Android 11 | Android 10 |
CPU | Snapdragon 665(8コア) | Snapdragon 665(8コア) | Qualcomm 8コア(Cortex-A72+Cortex-A55) |
メモリ | 4GB LPDDR4X | 4GB LPDDR4X | 3GB LPDDR3 |
ストレージ | 64GB UFS2.1 | 64GB UFS2.1 | 32GB eMMC |
ディスプレイ | 10.3型HD Carta E Inkスクリーン | 10.3型HD Carta E Inkスクリーン | フラット10.3型E Inkフレキシブルスクリーン |
解像度 | 1,404×1,872ドットCarta(227dpi) | 1,404×1,872ドットCarta(227dpi) | 1,404×1,872ドットCarta(227dpi) |
ネットワーク | Wi-Fi 5 | Wi-Fi 5 | Wi-Fi(2.4GHz+5GHz) |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 |
バッテリ | 3,700mAh | 3,000mAh | 3,000mAh |
端子 | USB Type-C(OTGサポート) | USB Type-C(OTGサポート) | USB Type-C(OTGサポート) |
ライト | フロントライト(暖色および寒色) | フロントライト(暖色および寒色) | フロントライト(寒色および暖色) |
スタイラス | BOOX Pen Plus | BOOX Pen Plus | BOOX Pen |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 195.4×229.4×5.8mm | 195.4×229.4×5.8mm | 195.4×229.4×5.8mm |
重量 | 440g | 420g | 420g |
実売価格(発売時) | 7万2,800円 | 7万2,800円 | 5万9,800円 |
BOOX Note Air系列の製品は、初代から現在までボディデザインが大きく変更されておらず、画面サイズはもちろん解像度やWi-Fiなど通信回りの仕様、さらには寒色と暖色の両方に対応したフロントライトなど、基本仕様はほぼ同一だ。見た目で見分けるとすれば、ボディカラーがダークグリーンに変更されていることくらいだ。
では初代からの変更点はどこかというと、SoCがSnapdragon 636→Snapdragon 665、メモリは3GB→4GB、ストレージは32GB→64GBへと、それぞれスペックアップしていること。またバッテリについては、BOOX Note Air2までは3,000mAhだったのが、3,700mAhへと増量されている。その影響か、重量は420gから440gへとわずかに増えている。
つまり、BOOX Note Airのスペックを向上させたのがBOOX Note Air2であり、そのバッテリ容量を強化したのが今回のBOOX Note Air2 Plusということになる。内情は不明だが、ロットが変わるたびにスペックを強化し、それを識別するために型番を付け替えているのかもしれない。初代でも完成度は高かったので、それらがブラッシュアップされていっているのは、ユーザーにとっては望ましい変化だ。
ただしその一方で価格については、従来の5万9,800円から7万2,800円と2割近く値上げされている。円安という事情はあるにせよ、画面サイズが近いiPad Airなどと比べた場合の価格メリットが、本製品では目立たなくなってしまっている。
なお本製品の目玉機能のひとつである手書き入力に使うスタイラスは、ひとつ前の世代からキャップ付きのタイプへと変更されている。その分精度は上がっているとはいえ、外出先でキャップの脱落を気にしなくてはいけなくなったのはマイナスだ。
特別な設定なしにGoogle Playストアが利用可能に。動きもサクサク
BOOXは2022年春のアップデートで、これまでGoogle Playストアを利用するために必要だった登録作業が不要となり、すぐにGoogle Playストアからアプリのインストールが可能になった。BOOXを利用するにあたって初心者には最もハードルが高かったフローがなくなったのはなによりも朗報だ。
その点を除けば、セットアップの手順は従来と違いはない。まず先にホーム画面を表示させたのち、Wi-Fiの設定を行なう。この時点ですでにGoogle Playストアが利用可能になっているので、Googleアカウントでログインし、電子書籍をはじめ好みのアプリをダウンロードすればよい。
実機を使ってまず感じるのは、従来のBOOXシリーズと比べても、動きがサクサクだということだ。中でも顕著なのがスクロールで、E Ink電子ペーパー採用とは思えないスピードで軽快に動く。外見自体は従来モデルと同じこともあり、これらの差は余計に目立つ。
またジャイロセンサーを内蔵し、画面の自動回転に対応しているのも、BOOXの他製品と比べた場合の利点だ。自動回転の切り替わりはスムーズなので使っていてストレスもない。本製品を寝転がって使う場合など、姿勢を変えるたびに画面が回転するのを避けたければ、手動に設定することもできる。
表示性能は十分、見開き表示にも問題なく対応
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。電子書籍アプリはKindleを使用している。
解像度は227ppiということで、表示性能は十分。E Inkならではのザラつきはもちろんあるが、画面が非光沢で外光が映り込まないこともあり、画面サイズがほぼ同じiPad Airと比べても落ち着いて見られる。そうした意味では紛れもなく電子書籍向けのデバイスだ。
また10.3型と大きいことから、コミックの見開き表示にも問題なく耐えうる。モノクロゆえ、色分けされた技術書や実用書、さらにグラビアの多い雑誌などは向かないが、大判の雑誌やムック類の小さなフォントを除けば、文字そのものが読み取れないことはまずない。
このほか、画面を横向きにした上で、画面左に電子書籍やPDFコンテンツを、画面右にノートを表示して、読みながらメモを取ることもできる。こうした幅広い使い勝手に対応するのは、10.3型と画面サイズが大きい本製品ならではの強みだ。7型クラス以下のBOOXデバイスではこうはいかない。
アプリ上でコンテンツが買えない問題をどう解決するか
ところで、Google Playストアは2022年春のポリシー変更によって、アプリ上でのコンテンツ購入が不可能になり、Webブラウザを開いて改めてストアへとアクセスしなくてはいけないという、iOS系列と同じ仕組みに変わった。本製品においてもこの変更はもれなく適用されており、アプリ上からコンテンツを買うことは不可能だ。
一般的なAndroidデバイスであれば、この抜け道はいくつかある。たとえばKindleアプリの場合、Google PlayストアからではなくAmazonアプリストアからKindleアプリをインストールするという裏技が存在するのだが、本製品で試した限り、Amazonアプリストアのアプリ自体のインストールまでは行なえても、Kindleアプリは検索しても表示されなかった。どうやらブロックされているようだ。
唯一、公式にこうしたストア機能付きのアプリを配布しているのがBookLive!で、Google Playストア版とは異なる独自ストアアプリをホームページ上からダウンロード、インストールすることで、ストア機能がアプリ内で利用できる。
そのためだけにほかのストアからBookLive!に乗り替えるものではないだろうが、現時点でBookLive!を利用しているユーザーは要チェックだろう。また本製品を利用し始めるにあたって新しくどこかの電子書籍ストアを利用するのであれば、以上のような理由でBookLive!がおすすめだ。
死角のない製品。唯一のネックは価格か
以上のように、BOOX Note Air2 Plusは初代モデルの性能面を改善し、かつ従来モデルの弱点だったバッテリ寿命の短さにもメスが入っている。一般的に、後継機でありながら外観が同じということは、従来モデルの目に見えない内部にも改善が施されていることが多いが、本製品はまさにその典型で、死角のない製品に仕上がっている。
ネックがあるとすれば価格だろうか。ここのところの円安基調を反映してか、従来の5万9,800円から、今回は7万2,800円へと価格が上昇している。現時点で競合にあたるのはファーウェイの「MatePad Paper」になるが、同じ64GBで6万4,800円ということで、価格だけ見ると本製品はやや不利だ。
とはいえ本製品の場合、アプリストアのラインナップが貧弱な「MatePad Paper」と違って、Google Playストアがそのまま使える強みがある。これは電子書籍ユースでも同様で、ストア、コンテンツともにかなりの制限がある「MatePad Paper」と比べると、本製品は大きなアドバンテージがある。
さらに性能が大きく向上したことによって、競合デバイスに比べて一歩も二歩も先んじたというのが、トータルでの評価ということになりそうだ。日本では利用できないホーム画面の「ストア」の非表示化など、よりカスタマイズが可能になれば、より使いやすくなるだろう。