レビュー

コスパ激ヤバな6万円台!Ryzen 9 7945HX搭載microATXマザー「BD795M」

BD795M

 昨年(2024年)の11月に、Ryzen 9 7940HXを搭載したMINISFORUM製Mini-ITXマザーボード「BD790i SE」という製品を紹介した。16コアRyzenを搭載しながら6万円台という驚異的なそのコストパフォーマンスの高さから、発売してから間もなく売り切れとなり、そしてなんと生産も終了してしまった。

 ただ、(少し)安心してほしい。その後継となるモデル「BD795i SE」がすぐさま投入されたのだ。直販価格は6万7,990円とBD790i SEより7,000円ほど高いのだが、それでもデスクトップ向けのRyzen 9 7950Xとマザーボードを買うよりかなり安価だ。

 そしてもう1つの“別の選択肢”として用意されたのが、今回ご紹介する「BD795M」というmicroATXフォームファクタの製品だ。こちらは6万3,980円でBD795i SEよりも4,000円安い。今回サンプル提供があったため、どういうものなのか簡単に紹介したい。

 BD795Mに搭載されているのは、Ryzen 9 7945HXというモバイル向けのCPUで、FL1というパッケージでマザーボードにはんだ付けされる。デスクトップ向けのRyzen 9 7950Xと比較すると、ベースクロックは4.5GHz→2.5GHzと大幅に低く、最大ブーストクロックも5.7GHz→5.4GHzに低下されている。しかし標準のTDPは、7950Xが170Wであるのに対し55Wと大幅に低い。また、Configurable TDPにより、45~75Wで可変となっている。

 こうしたモバイルのCPUをデスクトップに転用したフォームファクタのことを「MoDT(Mobile on DeskTop)」と呼び、遡ること20年前は、モバイル向けのPentium Mをデスクトップ向けのマザーボードで使うための変換アダプタ(通称ゲタ)や、これまたモバイル向けのCore Duoやそれに似たCPUをデスクトップPCに搭載することが一時流行していた。

 その後はいったんブームが去ったが、近年はモバイルCPUの驚異的な性能の向上により、ミニPCで再びその形態を取り戻している(ソケット形状ではなくなっているが)。BD790i/BD790i SE/BD795i SE、そして今回のBD795Mはそれをさらに一歩推し進め、自作PC向けで汎用性の高いマザーボード形態にした、といったところだ。

 モバイル向けCPUパッケージが特殊ということもあって、Mini-ITXのBD790i/BD790i SE/BD795i SEでは専用設計のヒートシンクがあらかじめ取り付けられ、好みの120mm角ファンを取り付ける形とした。一方、BD795Mは特殊なヒートスプレッダが取り付けられており、IntelのLGA1700クーラーと互換性を持つ形で穴やパッケージの高さが揃えられていて、CPUクーラーの選択や装着を完全にユーザーに委ねているのが、大きな違いの1つとなる。

製品パッケージ
特製のヒートスプレッダでLGA1700のCPUクーラーと互換とした。コアに接触する部分は銅、それ以外の部分はアルミのようだ

 BD790iやBD795i SEでは、AMD公式で謳われているcTDPを大きく上回る100Wが設定されていることがトピックの1つであったが、BD795Mもそれとは共通だ(BIOSでは短時間で最大105Wになるよう設定されていた)。

 また、BD795Mでは2基のM.2に加え、2基のSATA 6Gbpsポートを搭載した。Mini-ITXモデルでは非対応だった大容量を安価に実現できるHDDや、光学ドライブの搭載も可能となったわけだ。

 一方で、DDR5 SO-DIMMを使う点、PCIeスロットが金属で強化されている点、PCIeのバージョンが4.0留まり(BD790iは5.0だった)である点、無線LANカードが別売りである点などは、以前レビューしたBD790i SEと共通。ただ、無線カードからバックパネルインターフェイスにアンテナを引き出すためのケーブル、および留め具は付属している。とはいえ、このアンテナのコネクタはやや珍しい形状なので注意されたい。

SATA 6Gbpsポートが2基搭載されている
PCIeスロットは金属で補強されているが、Ryzen 9 7945HXの上限のPCIe 5.0ではなく4.0対応留まりとなる。最新のGeForce RTX 50シリーズや、PCIe 5.0対応のSSD以外はあまり関係ないが……
付属品など
背面のバックパネル
オーディオコーデックはRealtekのALC269
ネットワークコントローラはRealtekのRTL8125BGで、2.5Gigabit Ethernetに対応する
PWM電源コントローラはMonolithic Power Systems(MPS)の「MP2845」をベースとした6フェーズ対応のもの。電源フェーズもMPSのいわゆるDriver MOSFETにあたる「MP86956」(70A対応)だ。また、USB 3.2 Gen 1対応のGenesys Logic製ハブチップ「GL3510」の実装も見える
電源回路のヒートシンクはシンプルな構造

 さてそんなBD795Mの性能だが、CPUクーラーに240mm水冷であるCRYORIGの「A40 Ultimate」(注:このCPUクーラーはLGA1700非対応だが、AsetekのOEMであるためリテンションに互換性があり取り付けは可能)、DDR5-4800メモリ32GB、1TBのSSD、OSにWindows 11 Homeといった環境を用意してテストしてみたところ、BD790i SEよりややいい性能を示した。Ryzen 9 7940HXより若干高いクロックの設定や、水冷クーラーで冷却できるためより高クロックを達成しやすいことなどが功を奏したようだ。

Cinebench R23の結果
PCMark 10の結果
3DMarkの結果

 Ryzen 7000番台なので最新世代ではないし、PCIe 5.0も非対応であるなど、決して至高のスペックではないのだが、16コア/32スレッドの環境がこの価格で手に入るのはやはり魅力的。同価格帯のRyzen 7と比較すると特にマルチコア性能での優位性が目立ち、ほとんどのユーザーのニーズを満たせるだろう。オーバークロックなどはしない、派手な装備はいらない質実剛健なPCビルドに好適な製品と言える。