山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

iPadの電子書籍アプリでページめくりがリモートで行なえる「Satechi R2 Bluetooth マルチメディアリモコン」を試す

Satechi「R2 Bluetooth マルチメディアリモコン」。実売価格は5,399円

 スマホやタブレットで電子書籍を読む場合、ページめくりの操作はタップやスワイプを用いるのが一般的だ。またAndroidの一部アプリには、音量ボタンでページをめくれる機能があり、音量調整機能を搭載したリモコンを組み合わせれば、スマホやタブレットをアームなどに固定し、画面に触れずにページをめくることもできる。

 一方のiOSデバイスは、ページめくりは基本的にタップもしくはスワイプのみだ。一部のアプリでは外部キーボードの接続時に矢印キーの「←」「→」でページをめくることができるが、前述のようにベッドサイドでiPadをアームに取り付けた状態で、寝転がってページをめくるためにBluetoothキーボードを操作するのは少々アンバランスだ。

 今回紹介するSatechi「R2 Bluetooth マルチメディアリモコン」は、こうした電子書籍のページめくりの操作を、iOSデバイスで行うためのリモコンだ。技適もきちんと取得しており、日本国内でも問題なく利用できる。どのような使い勝手なのか、実際に購入して使用してみた。

左右キーを使って電子書籍のページめくりが行なえる

 本製品は、iOS/iPadOS専用に設計されたBluetooth接続のリモコンデバイスだ。直線を主体とした筐体はアルミ製でひんやりとしており、重量は61gと軽量。バッテリを内蔵しており、USB Type-Cで充電して使用する。

 本体には、上下左右キーの中心に再生/一時停止キーを備えたメインのボタンが1つ、さらにホームに戻るためのボタン、カーソルのオン/オフボタン、ミュートボタン、仮想キーボードボタンが搭載されている。これらは本体側面のスイッチでマルチメディアモードとプレゼンテーションモードを切り替えることによっても役割が変化する。

 このようにボタンの種類はかなり多いのだが、電子書籍のページめくりに使うのは基本的に上下左右キーの「左」、「右」だけ。ほかのボタンは無視して差し支えない。直下のホームボタンだけ、アプリを終了してホーム画面に戻る時に、稀に使用する程度だ。

製品パッケージ。裏面には日本語の表記もある
本体のほか充電用のUSB Type-Cケーブル、ユーザーマニュアルが同梱される
上下左右キーの中央に再生/一時停止キーを備える。このうち左右キーをページめくりに使用する
底面にはBluetoothペアリングボタン、USB Type-Cポート、電源スイッチを備える
側面にはマルチメディアモードとプレゼンテーションモードを切り替えるスイッチを備えるが、電子書籍のページめくり用途では出番はない

 利用にあたっては、本体底部の電源スイッチをオンにしたのち、隣のボタンでiPhone/iPadとBluetoothでペアリング。あとは対応の電子書籍アプリを開いた状態で「左」「右」キーを押すだけで、ページが前後へとめくられる。電子書籍アプリ側で何らかの設定を行なう必要はまったくない。

 また電子書籍アプリ側だけでなく、iOS/iPadOS側でも何らかの設定、たとえばアクセシビリティ機能でスイッチコントロールを有効にするなどの設定は一切不要。簡単すぎて拍子抜けするほどだ。レスポンスも良好で、文句のつけようがない。

まずはBluetoothペアリングボタンを長押ししてペアリングを実行
iPhone/iPadからは「R2 Remote」という名称で認識される
あとは左右ボタンを押すだけでページが前後にめくられる
【動画】Kindleアプリを起動し、本製品でページめくりを行なっている様子。最後にホームボタンを押してホーム画面に戻っている

対応アプリは実質「Apple Books」「Kindle」のみ

 あまりにも簡単に使えてしまうことから驚かされる本製品だが、ネックとなるのは対応する電子書籍アプリが少ないことだ。筆者が試した範囲では、メインどころの電子書籍ストアアプリの中で対応するのは「Apple Books(ブック)」と「Kindle」のみ。これ以外で動作が確認できたのは、自炊ビューアである「ComicGlass」くらいだ。

 これらの共通点はずばり、キーボードの「←」、「→」を使ってのページめくりに対応することだ。本製品の左右キーはキーボードの「←」、「→」キーをエミュレートしており、それゆえこのショートカットに対応している「Apple Books」「Kindle」で動作するというわけだ。「ComicGlass」についても、やはりこのショートカットをサポートしている。

 逆にこのショートカットでの操作をサポートしない電子書籍アプリは、左右キーでのページめくりはどうやっても不可能だ。電子書籍アプリによって使える場合と使えない場合があることは、知っておく必要があるだろう。

「Apple Books」のショートカット。「←」「→」を使ってのページめくりに対応する
「Kindle」のショートカット。こちらも「←」「→」を使ってのページめくりに対応する
「ComicGlass」も同様のショートカットをサポートしている

 もっとも「Apple Books」、「Kindle」の2つに対応していれば、iPhone/iPadで電子書籍を楽しむユーザーのかなり多くをカバーできるはずで、実用性という意味では十分に高い。

 また筆者が検証した以外にも、キーボードの「←」、「→」によるページめくりをサポートするアプリ、またページめくりに任意のキー操作を割り当てられるアプリがあれば、問題なく動作する可能性が高い。自炊ビューア系はキーカスタマイズの自由度が高いアプリが多いので、探せば見つかるかもしれない。

非対応アプリでページをめくる裏技(ただし非推奨)

 なお非対応アプリであっても、本製品を使ってページをめくることは不可能ではないので、最後に裏技とも言えるこの方法を紹介しておく。それは画面上にポインタを出現させ、マウスをクリックしてページを順送りする要領で、ページをめくっていく方法だ。

 手順はこうだ。まずホームボタンの右にあるマウスボタンを押して、ポインタを出現させる。続いて電子書籍アプリで電子書籍を開いた状態で、タップすればページがめくられるエリア(右綴じの書籍であればおそらく画面の左端4分の1程度のエリアがそうだろう)にポインタを移動させ、そこで最下段のLボタンを押す。

 これによって、マウスの左ボタン(Lボタン)をクリックしてページをめくるのと同じ操作をしたことになり、ページがめくられるというわけだ。マウスクリックでのページめくりをエミュレートしているだけなので、どんな電子書籍アプリでも利用可能と考えられる。

最下段の2つのボタンはそれぞれマウスの左クリック(L)、右クリック(R)に対応する
画面に表示したマウスポインタ(赤丸印)を、クリックでページがめくられるエリアに移動させて左クリック(L)ボタンを押すことでページがめくられる

 「なんだ、それなら実質すべての電子書籍アプリでページめくりができるんじゃないか」と思うかもしれないが、「できる」と書きにくい理由はきちんと存在している。それは、本製品でのマウスポインタの制御は光学ボールやタッチパッドではなく、ジャイロセンサーで行なわれることだ。

 本体を空中に浮かせた状態で、右にスイングすればマウスポインタが右へ、左にスイングすればマウスポインタが左へと移動するという操作方法は、センサーが鋭敏なこともあって思い通りにポインタを動かすのは至難の業だ。

 つまりできるできないでいえば確かに「できる」なのだが、アピールすべき機能かと言われるとちょっと違う。知っておけばいつか役に立つかも、という程度であり、したがって電子書籍のページをめくるためだけに、この機能をアテにして本製品に手を出すのはおすすめしない。購入後に試してみる程度であればありだろう。

iPadでの電子書籍ライフを豊かにするアイテム

 以上のように本製品は、あくまでも「Apple Books」、「Kindle」など、キーボードの「←」、「→」によるページめくりをサポートするアプリを使っているユーザー向けの製品だ。これ以外にもメディアプレーヤーのコントロールや、音量調整、さらにはドキュメントアプリのページ切替などに対応しているが、何でもできるリモコンではないことは、知っておく必要がある。

 そんな本製品の実売価格は5,499円と、リモコンデバイスとしては十分にリーズナブルだ。ベッドサイドにiPadを固定して自堕落な生活を送りたい人にはもってこいだし、体調不良で床に伏せっていて、画面をタップするために手を伸ばすことすらおっくうな場合にも活躍するだろう。iPadでの電子書籍ライフを、これまで以上に豊かにしてくれるはずだ。