山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

重量わずか150g、Androidアプリが使える6型E Inkタブレット「BOOX Poke4 Lite」

「BOOX Poke4 Lite」。実売価格は2万2,800円

 Onyx Internationalの「BOOX Poke4 Lite」は、6型のE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。KindleやKoboなど特定の電子書籍ストアに紐づいた端末と異なり、Google Playストア経由でインストールしたさまざまな電子書籍ストアアプリを利用できることが特徴だ。

 前回紹介した同じBOOXシリーズの「BOOX Note Air2 Plus」は、iPadと同等の10.3型の画面を備え、スタイラスによる手書きに対応することが特徴だったが、本製品はこの手書き機能は省かれており、6型というコンパクトさで、外出先で気軽に電子書籍を読むことにフォーカスした設計が特徴だ。

 今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品を用い、電子書籍ユースでの使い勝手をチェックする。

エントリークラスの製品。重量150gと軽量

 まずは「6型のE Ink電子ペーパー端末」として競合に当たる、Amazonの「Kindle」、楽天の「Kobo Clara HD」、「Kobo Nia」と比較してみよう。

BOOX Poke4 LiteKindle(第10世代)Kobo Clara HDKobo Nia
発売月2022年6月2019年4月2018年6月2020年7月
サイズ(幅×奥行き×高さ)153×107×7.1mm160×113×8.7mm157.0×111.0×8.3mm159.3×112.4×9.2mm
重量150g174g166g172g
CPUSnapdragon630 (4コア)不明不明不明
メモリ2GB不明不明不明
内蔵ストレージ16GB(実利用可能領域は7GB)8GB約8GB約8GB
画面サイズ/解像度6型/758×1,024ドット(212ppi)6型/600×800ドット(167ppi)6型/1,072×1,448ドット(300ppi)6型/758×1,024ドット(212ppi)
ディスプレイE Ink Cartaスクリーン16階調グレースケールCarta E Ink HD タッチスクリーンCarta E Ink HD タッチスクリーン
通信方式IEEE 802.11b/g/n/acIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/n
フロントライト暖色及び寒色内蔵内蔵内蔵
防水・防塵機能----
バッテリ持続時間の目安1,500mAh数週間数週間数週間
OSAndroid 11.0独自独自独自
ポートUSB Type-CMicro USBMicro USBMicro USB
価格(本稿執筆時点)2万2,800円8,980円(広告ありモデル)1万5,180円1万978円

 6型のE Ink電子ペーパー端末は、かつては主流にあたるサイズだったものの、現在はその多くがエントリーモデルという位置づけになっている。例えばKindleは、これまで6型だった「Kindle Paperwhite」がモデルチェンジで6.8型へと大型化したため、6型モデルは167ppiの「Kindle」1つで、最後に新製品が出たのは3年前だ。

 一方の楽天Koboは、6型では300ppiのミドルクラス「Kobo Clara HD」と212ppiのエントリーモデル「Kobo Nia」の2種類をラインナップしているが、こちらも新製品は約2年出ていない。8型や7型と違って防水機能もなく、いまとなってはやや古めかしい。

 その点本製品は、解像度こそ212ppiと「並」ではあるものの、フロントライトが寒色と暖色の両方に対応していたり、USB Type-Cを採用するなど、2022年に発売されるE Ink電子ペーパー端末として標準的な仕様を網羅しており、発売時期が古いKindleやKoboの6型モデルとは一線を画している。

 ただし一概に比較できない項目もある。例えばストレージは16GBと、前述の製品の2倍あるが、本製品はAndroidベースということもあってかシステム利用領域が約9GBと大きく、実質使えるのは7GBと、決して潤沢ではない。

 メモリについても同様だ。もともとBOOXシリーズは、AndroidベースでGoogle Playストアが利用できるのが特徴で、2GBというメモリ容量はやや心もとない。前回紹介した「BOOX Note Air2 Plus」が4GBのメモリを搭載していたことからも差は明らかだ。

 一方で本体サイズはほぼ同等であり、ページめくりボタンなどのギミックを備えず、画面をタップで操作することも共通している。重量については公称150g(実測155g)ということで、他の3製品と比べても軽い。こうした持ち歩きやすさはプラス要因だろう。

筐体は縦向きを前提としたデザイン。樹脂素材で高級感はあまりない
背面は凹凸もなくすっきりとしたデザイン。スピーカーは搭載しない
上面には電源ボタンを搭載する
底面にはUSB Type-Cポートを搭載する
ベゼル幅は左右および左とも約8.5mm。画面との間には段差がある
重量は実測155g。十分に軽い
フロントライトは画面上部のメニューで調整する。これは寒色100%の状態
こちらは暖色100%の状態。実際には寒色とブレンドして使うことになる
同じ6型のKindle(右)との比較。本体サイズもほぼ同等だ
Kobo Clara HD(中)Kobo Nia(右)との比較。こちらも本体サイズはほぼ同等。下段のメニューもよく似ている
厚みの比較。左はいずれも本製品、右上がKindle、右中がKobo Clara HD、右下がKobo Nia。筐体はこれら3製品に比べると薄い

6型ならではのUIを搭載。手書きノート機能は非対応

 BOOXシリーズは、今春のアップデートで特別な設定なしでGoogle Playストアが使えるようになったが(前回の「BOOX Note Air2 Plus」のレビュー参照)、今回試用した段階では本製品には適用されていなかった。いずれアップデートで対応する可能性が高いが、現時点では従来と同じく「アプリ」の設定画面から有効化する必要がある。

セットアップ開始。まずは言語を選択する
タイムゾーンのみ手動で選択しておけば、Wi-Fiが接続された段階で時刻は同期される
スリープおよび電源オフまでの時間を設定する。電源オフからの起動はかなり時間がかかるので「なし」が望ましい
画面上から下にスワイプした時の挙動を選択する
設定が完了したらいったん再起動。他のBOOX製品にあるペン関連の設定はない
ホーム画面。タブは画面左ではなく下に並ぶ。また「ノート」タブは存在しない
続いて設定画面へと移動し、「ネットワーク」からWi-Fiを設定する
アプリの設定からGoogle Playを有効化し、GSF IDの設定などを行うことで、Google Playストアが利用可能になる

 ホーム画面のデザインはほかのBOOXシリーズに準じているが、複数のカテゴリ(タブ)は、本製品では画面左ではなく画面下段に配置されている。6型という画面サイズの小ささを考慮したものだろう。さらに画面を広く使いたければ、オプションでテキストラベルを非表示にする手もある。

 しばらく使っていると利用頻度が高くなってくるのが、タップすることでメニューが展開するUI「ナビボール」だ。というのも本製品は画面とベゼルの間に段差があるため、画面端ギリギリをタップするのが難しく、ナビボールであればそうした問題もないからだ。特にナビボールのダブルタップでホーム画面に戻る操作は、ほかのBOOXシリーズの製品よりも利用頻度が高くなる。

 動作については必ずしもきびきびとはしておらず、待たされることが多い。タップしたはずが反応がなく、もう一度タップしたところ前の操作が実行されるという、低スペックの製品によくある挙動だ。筆者は本製品試用前にメモリ4GBの「BOOX Note Air2 Plus」を試用していたせいもあってか、余計にもっさりと感じる。

 なおBOOXシリーズの特徴の1つである手書きノートは、本製品には搭載されておらず、スタイラスも付属しない。これらの機能が必要であれば、7.8型の「BOOX Nova Air」など、ノート機能を搭載する製品をチョイスするとよいだろう。

多くの製品では画面左に並ぶ複数のカテゴリ(タブ)は、本製品では画面下段に配置されている(ここ以降、スクリーンショットはカラーが含まれる場合があるが、画面上ではモノクロで表示される)
画面を上から下にスワイプすると表示されるクイック設定パネルではフロントライトの調整や回転の制御などが行なえる。「E-Ink中央」の誤訳は最新ソフトウェア(2022年7月7日付)でも直っていない
クイック設定パネルの「E-Ink中央」をタップするとE Inkにまつわる設定画面が表示される。アプリ単位でないE Ink全体のリフレッシュモードの設定はここから行う
画面回転のオプション。ジャイロセンサーは非搭載のため、手動で向きを指定する
本製品は画面が小さい上、画面とベゼルの間に段差があって端のタップ操作がしづらいため、画面右下のナビボールで操作する機会はほかのBOOXシリーズより多い

テキスト表示に最適。コミック表示は「できなくはない」レベル

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。電子書籍ストアは特にことわりがなければKindleストアを利用している。

 解像度は212ppiと、表示性能はそれほど高くはない。この解像度は2012年に日本上陸にあたって発売された「Kindle Paperwhite」の初代モデルと同じで、その後Kindle Paperwhiteは300ppiへと進化し、さらに現在では画面サイズが6.8型へと大型化していることを考えても、コミックの表示にはやや力不足であることが分かる。

Kindleアプリでコミックを表示したところ。フロントライトはオフにした状態だが、デフォルトではやや色合いが濃く出るようだ
同じ6型のKindle(右)との比較。フロントライトオフだと、本製品のほうがコントラストの強弱がはっきりと出る
楽天Koboアプリでコミックを表示し、Kobo Clara HD(中)Kobo Nia(右)と比較した状態。こちらもコントラストがかなり強めに出ていることが分かる
上段左が本製品(212ppi)、右がKindle(167ppi)、下段左がKobo Clara HD(300ppi)、右がKobo Nia(212ppi)。解像度は「並」ということで、髪の毛などの細い線はつぶれがちだが、167ppiのKindleのようにかすれるレベルではない

 そうした意味で6型である本製品は、テキストを中心に電子書籍を楽しむユーザー向けの製品と言っていいだろう。コミックは「表示できなくはないが、長らく使っていると不満も出てくる」という評価になるだろう。テキストであればこうした問題が出ることは考えにくい。

 ちなみに今回比較している他の3端末に比べると、本製品はE Inkのコントラストがはっきりとしており、全体的により濃く出る傾向がある。とはいえ本製品の場合、最適化設定でアプリごとに調整が可能なので、必要に応じて設定をいじってやればよい。またフロントライトの光量によっても大きく変わってくるので、実質的にハンデはない。

こちらはテキストを表示したところ。コントラストが強めの傾向はこのテキスト表示ではむしろプラスに働く
同じ6型のKindle(右)との比較。フロントライトオフで比較する限りでは、こちらのほうが読みやすい印象だ
Kobo Clara HD(中)Kobo Nia(右)と比較した状態。こちらも十分に読みやすい
上段左が本製品(212ppi)、右がKindle(167ppi)、下段左がKobo Clara HD(300ppi)、右がKobo Nia(212ppi)。300ppiのKobo Clara HDと比べても読みやすさは遜色ない
コミックの見開き表示はさすがに厳しいが、テキストを横向き表示するのはありかもしれない

 ところで本製品は、BookLive!の「BookLive!Reader Lideo」やソニーの「Reader」など、この10年余りで消えていった6型E Ink端末の後継としては、もってこいの存在だ。特にBookLive!は、前回の「BOOX Note Air2 Plus」でも紹介したように、独自アプリを利用することでアプリ上でのコンテンツ購入に対応するため、本製品との相性はよい。

 ただしソニー「Reader」は、推奨ブラウザであるChromeかFirefoxのインストールを要求されるほか、ログイン時に画像認証を要求されたり、代替に認証コードが必要になるなど煩雑で、今回は途中でギブアップしてしまった。根気強くやれば利用できるかもしれないが、ほかのストアに比べて心を折る要素が満載なので、個人的にはおすすめしない。

 また販売元のSKTのホームページにも記されているが、本製品はebookjapanには非対応だ。理由は不明だが、Google Playストアで検索してもアプリ自体が表示されないので、ダウンロードからして不可能だ。ebookjapanの利用を考えているユーザーはほかの製品をあたるべきだろう。

ソニーReader Store対応の最後のE Ink端末「PRS-T3S」(右)との比較。物理ボタンこそないものの筐体の質感は酷似している
ただし本製品でReader Storeを使うにはFirefoxのインストールが必須だったりとハードルが高い(筆者は途中でギブアップした)

 なおこれら電子書籍アプリを自前でインストールして利用する場合に注意したいのが、アプリ最適化のリフレッシュ設定がデフォルトで「スピードモード」になること。スピードモードはその名の通り速度を優先するモードで、そのぶん画質が低く、特にコミックの表示には向いていない。

 これはほかのBOOXでも同様なのだが、本製品はもともと解像度が低いせいで、このモードのまま使おうとすると画質の低さにギョッとさせられる。テキスト中心であればそのままの利用でも構わないが、コミックについては「ノーマルモード」など、高画質で表示できるモードに切り替えることをおすすめする。

アプリごとの最適化設定は、アプリ画面でアイコンを長押しして「最適化」をタップ
アプリの新規インストール直後は、リフレッシュモードが「スピードモード」になっているので「ノーマルモード」などに切り替えてやるとよい
左がスピードモード、右がノーマルモード(アプリはブックライブPlusを利用)。さすがにコミックでは見るに堪えない

コミックよりテキスト向き。複数ストア掛け持ちのユーザーなどに

 以上をまとめると、本製品は複数の電子書籍ストアを掛け持ち利用しているユーザーはもちろんのこと、自前で専用端末を用意していない電子書籍ストアのユーザーにも向いた製品ということになる。

 ただしコミックが中心になるのであれば、画面サイズが一回り大きい7型の「BOOX Leaf」や、7.8型の「BOOX Nova Air」を選んだほうが満足度は高いだろう。本製品の決して高速ではない動作や、ストレージ容量の少なさを考慮しても、テキスト中心に使ったほうがストレスはより少なく、実用性も高いだろう。

 一方、KindleやKoboなど専用端末と比べた場合はどうだろうか。これらはモノクロ表示に最適化されている上、アプリ上でのコンテンツの購入にも対応するので、本製品上でAndroidアプリを使うのよりも快適さでは上だ。やはり「複数ストア掛け持ちでの利用」「専用端末のないストアでの利用」こそが、本製品の強みということになるだろう。

電子書籍アプリを数点、コンテンツを各数点ダウンロードした状態でのストレージ容量。すでに3分の2近くを消費してしまっている

 もっとも方向性としては、こうしたデバイスのニーズはあるだろう。BOOXの中でもやや異端児ということで、本製品だけで「なるほどBOOXとはこういう製品か」と理解するのは難しいが(特に手書きに対応しない点はあまりBOOXらしくない)、実売価格も2万2,800円と比較的安価なので、初めてBOOXに触れるユーザーにも適した製品だと言えるだろう。

スリープ画面や起動画面のイラストは、ほかのBOOXにはないファンシーさが特徴だ