山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

約440g/厚さ7mmの軽量薄型10.1型Androidタブレット「Lenovo Tab P10」

Lenovo Tab P10。本稿では筆者が購入したLTEモデル(ZA450125JP)をもとに紹介する

 レノボ・ジャパンの「Lenovo Tab P10」は、Android 8.1を搭載した10.1型タブレットだ。約440gと軽量なボディが特徴で、Wi-Fiモデルが実売29,970円(直販ストアでのeクーポン適用時)と、リーズナブルな価格設定が際立つ一品だ。

 電子書籍に適した10型前後のタブレットとしては、現行製品ではiPadシリーズが候補の筆頭に上がるが、iOSの制約上、アプリ内で電子書籍コンテンツの購入ができないストアがほとんどで、毎回ブラウザを立ち上げなくてはいけない不便さがある。

 一方のAndroidはこうした制約もない上、多くのストアでは本体の音量ボタンでページをめくれる利点もある。アスペクト比は4:3ではなくワイド比率になってしまうが、そこさえ許容できれば、快適な読書が楽しめるというわけだ。

 もっとも10型前後のAndroidタブレットは、選択肢自体が少ない上、スペックは2~3年前から停滞している。例えば重量だと、数年前に500gを切って以降ほとんど変わっておらず、ほぼすべての製品がiPadと同じ、450~500gの範囲に収まっている。

 その中で本製品は、440gという軽さを実現しており、長時間手に持つ電子書籍ユースには適している。また7mmという薄さは、つい先日発売されたiPad Airの第3世代モデル(6.1mm)にこそ負けるものの、このクラスの製品としてはスリムだ。

 今回は本製品について、筆者が購入したLTEモデル(実売36,304円)を用いて、レビューをお届けする。

画面上部の前面カメラ、下部のホームボタンなど、横向きを基本としたデザイン
ベゼル幅が上下で等しいことから、縦向きでの利用でも違和感はない
左側面。音量ボタンと電源ボタンを備える
その背面。アウトカメラは突起のないタイプ
右側面。USB Type-Cポートとイヤフォンジャックを備える。見えにくいが親指の位置にはカードスロットもある
画面下部。指紋認証センサーがベゼル内に埋め込まれている
画面上部の前面カメラ。こちらもベゼル内に埋め込まれている

現行の10型前後のタブレットでは最軽量

 まずは競合製品との比較から。前回紹介しているファーウェイの「MediaPad M5 lite」のほか、Fire HD 10、iPad(第6世代)と並べてみよう。

Lenovo Tab P10(ZA440021JP)MediaPad M5 liteFire HD 10()7世代)iPad(第6世代)
発売2018年11月2018年11月2017年10月2018年3月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)約242x167x7mm243.4×162.2×7.7mm262×159×9.8mm240×169.5×7.5mm
重量約440g約480g約500g約469g
OSAndroid 8.1Android 8.0Fire OSiOS 12
CPUQualcomm Snapdragon 450 オクタコア プロセッサー ( 1.80GHz )HUAWEI Kirin 659 オクタコア (4 x 2.36 GHz + 4 x 1.7 GHz)クアッドコア 1.8GHz×2、1.4GHz×264ビットアーキテクチャ搭載A10 Fusionチップ、組み込み型M10コプロセッサ
メモリ4.0GB3GB(32GBモデル)
4GB(64GBモデル)
2GB2GB
画面サイズ/解像度10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi)9.7型/2,048×1,536ドット(264ppi)
通信方式802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac
バッテリー持続時間(メーカー公称値)約10時間(7000mAh)不明(7500mAh)10時間最大10時間
コネクタUSB Type-CUSB Type-CmicroBLightning
メモリカード○(最大256GB)○(最大256GB)-
直販サイト価格(2019/4/15現在)29,970円(64GB)32,270円(32GB)15,980円(32GB)
19,980円(64GB)
37,800円(32GB)
48,800円(128GB)

 こうして競合製品と比べると、非常にツボを突いたスペックであることがわかる。本体のサイズはMediaPad M5 liteとほぼ同等だが、やや厚ぼったいイメージがあった同製品よりも0.7mm薄く、これは第6世代iPadと比べても薄い。iPad Air(6.1mm)、iPad Pro(5.9mm)と比べると分が悪いが、十分に「薄型」を名乗れる範囲だ。

 そしてやはり目立つのが軽さで、10型前後で約440gという軽さは、本製品の兄弟機と見られるNECのLAVIE Tab E(TE510/JAW)と並び、現行モデルの中では最軽量だ。ここ2~3年のモデルでこれを下回るのは、iPad Air 2(437g)くらいしか見当たらない。

 CPUは、Snapdragon 450 オクタコア(1.80GHz)ということで、ゲームなど高い処理能力を必要とする用途には少々つらいが、こと電子書籍ユースに限っては問題なく、また本稿で比較しているMediaPad M5 liteやFire HD 10とはほぼ同等だ。詳しくは後述のベンチマークの結果も参照いただきたい。

 メモリは4GBと、このクラスとしては十分で、解像度はフルHD、さらにコネクタはUSB Type-Cを採用するなど、押さえるべきところはしっかりと押さえている。ストレージも他製品が軒並み32GBが基本なのに対し、64GBと倍の容量がある。もちろんメモリカードも利用可能だ。

 さらにこの表にはないが、スピーカーを上下左右に合計4基搭載しているのも、動画や音楽の鑑賞には有利だ。それでいて価格については、Wi-Fiモデルで29,970円ということで、リーズナブルさは際立っている。

本製品と同じく10.1型のFire HD 10(下)との比較。ベゼル幅がせまいため本製品(上)のほうがコンパクトに見える
10.5型のiPad Air(第3世代、下)との比較。アスペクト比が異なるため、幅は本製品のほうが広いが、高さはiPad Airのほうが余裕がある
11インチiPad Pro(下)との比較。価格帯はかなり違うため直接は競合しないが、上下ベゼル幅が同じで縦向きでも違和感がない設計などは共通している
厚みの比較。左がいずれも本製品、右が上からFire HD 10、iPad Air(第3世代)、11インチiPad Pro。Fire HD 10との差は圧倒的だが、薄型を売りにするiPad Air(6.1mm)、iPad Pro(5.9mm)との比較ではさすがに分が悪い
本体を横向きにした状態での、Fire HD 10(下)とのベゼルの厚みの比較。画面サイズはほぼ同じ両製品だが、本製品は横のベゼルがスリムゆえ、本体がコンパクトだ
本体上下にそれぞれ2基ずつのスピーカーを備える。Dolby Atmosに対応しており、動画や音楽の鑑賞には重宝する

ネックなのは滑りやすさと画面の反射?

 筐体はホワイト一色で、全体的に透明感を感じさせるデザイン。側面はアルミ、表裏はガラスコーティングが施されており、高級感がある。

 一方、非常に滑りやすく、わずかでも傾いた場所におくと落下しそうになるのはネックだ。保護ケースなどで滑りを防止しようにも、最大の特徴である軽さが損なわれるので悩ましい。アウトカメラの突起がなく、背面が完全にフラットなのは良いのだが、こと滑りやすさに関してはマイナスに作用している印象だ。

背面は完全にフラット。下部の印字はシールなので、これをはがすとほぼ白一色となる。美しく高級感がある反面、滑りやすいのはネック

 また画面はガラスコーティングされていることもあり、天井の蛍光灯などの映り込みが非常に激しい。電子書籍は背景が黒ではなく白であることが多いため、映像ほどクリティカルな問題ではないが、本製品はややマイナーな製品ゆえサードパーティー製の反射防止シートはほぼ選択肢がなく、少々困りものだ。

 実際に使ってみて感心したのが、本体左側面にある電源ボタンと音量ボタンだ。この両者は隣り合っており、一見すると間違えやすいのだが、電源ボタンのほうにだけ縦に細かいスリットが入っており、慣れれば指先で違いを判別できるようになる。こうした細かい配慮はプラスだ。

左側面のボタン。電源ボタン(右)は縦に細かいスリットが入っており、指先で音量ボタン(左)との違いを判別できるのは秀逸だ

 ホーム画面は、Androidとしては一般的な構成で、デフォルトではアプリはドロワーに分かれているが、iOSのように全アプリをホーム画面に配置するタイル表示に切り替えることもできる。アプリはGoogle純正が中心で、レノボオリジナルの一部アプリを除けば、一般的な顔ぶれだ。

セットアップ完了直後のホーム画面。左下にはGoogleのアプリがまとめられている
アプリ画面。ここに表示されているアプリに加えて、Skype、YouTube、SYNCit HDがプリインストールされている。電子書籍アプリはない
アプリはドロワー表示から、iOSに似たタイル表示に切り替えることも可能
ベンチマークアプリ3DMark「Ice Storm Extreme」によるスコアの比較。左が本製品(7680)、右がFire HD 10(9004)。ゲーム用途にも耐えうるFire HD 10に比べるとやや低い

クオリティは及第点。縦向きでも違和感のない表示が可能

 続いて電子書籍ユースでの使い勝手を見ていこう。電子書籍ストアはKindleストアを、表示サンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を用いている。

 解像度は224ppiということで、前回のMediaPad M5 liteやFire HD 10とは同等だ。300ppiクラスの端末と並べて細部を比較すると、さすがにディティールの違いはあるが、単体で使っていれば気になるレベルではない。詳しくは画像で確認してほしい。

テキストの画質比較(画面横向きの状態)。上段左が本製品(224ppi)、上段右がFire HD 10(224ppi)、下段左がiPad Air(第3世代、264ppi)、下段右がiPad mini 4(第5世代、326ppi)。文庫本と同等のフォントサイズで比較しているが、極端な差は感じない
コミックの画質比較(見開きの状態)。上段左が本製品(224ppi)、上段右がFire HD 10(224ppi)、下段左がiPad Air(第3世代、264ppi)、下段右がiPad mini 4(第5世代、326ppi)。単体では気にならないが、こうして比較すると髪の毛の部分のギザギザ感などに違いが感じられる

 また本製品のメリットとして、横向きにした状態での上下のベゼル幅が等しいことが挙げられる。これにより、本体を90度回転させて縦向きにしても、左右のベゼル幅が同じことから、読書時も違和感がない。雑誌などを縦向きで読む機会が多い人に最適だ。

本体を横向き(見開き)で表示した状態。コミックではこの使い方になるだろう
縦向き時も左右のベゼル幅が等しいので違和感は少ない。ただしワイドサイズゆえ上下の余白はやや冗長だ

 電子書籍ストアアプリについては一通り使ってみたが、読書周りではとくに問題は見られない。前回のMediaPad M5 liteでは、Kindleストアで画面上のサムネイルがやたらと大きく表示され、1画面あたりのサムネイルの表示数が少ない問題があったが、本製品では同じ症状は見られなかった。

Kindleストアにおけるサムネイル表示。以前レビューしたMediaPad M5 liteではサムネイルが横に8個しか並ばなかったが、本製品は11個も並ぶので、画面サイズとのバランスも良好だ
Android側の設定で表示サイズを「デフォルト」から「小」へと変更することで、サムネイルをさらに小さくできる。10.1型の画面サイズを活かした閲覧性の高さだ

 唯一気になったのは、Kindleアプリにおいて、ライブラリ上のサムネイルの画質が極端に粗く表示される不具合があることだ。本製品を低解像度のデバイスと誤認してスマートフォン向けの小さいサムネイルを寄越し、それを無理矢理引き伸ばして表示しているかのような品質だ。

 読書時はなんら影響はなく、ただサムネイルを一覧表示した時のドットが粗いというだけなのだが、きちんと高解像度画像が読み込まれるタイトルもあるので、ややストレスが溜まる。ちなみにダウンロード済なのか否かとも関係がないようだ。

 これについては、Kindleアプリの再インストールを行なっても解決しなかったので、おそらくKindleとの相性の問題だと思われる。ほかに国内数社のアプリを試した限りでは(もとサムネイルのサイズがKindleに比べ小さいという事情もあるが)同種の問題は見られなかった。実害はないとは言え、やや気になるところだ。

本製品における、Kindleアプリのライブラリ画面(のズームアップ)。サムネイルの画質がひと目見てわかるレベルで粗い
こちらはiPad Air(第3世代)で同じ画面を表示したところ。サムネイルの解像度は高く、本製品との差は一目瞭然だ

具体的なライバル製品との見え方の違いをチェック

 では具体的に、ライバルとなる製品と比較した場合はどうだろうか。電子書籍ユースにおいて本製品の競合となりうる10型クラスのタブレットは、まずAmazonのFire HD 10。もう1つは先日発売された、iPadのミドルクラスにあたるiPad Air(第3世代)が挙げられる。

 まずFire HD 10は、本製品と同じ64GBモデルが19,980円と、本製品より約1万円安価だが、基本的にAmazonのコンテンツ専用であり、汎用性まで考慮するのであれば、本製品のほうが有利だ。また重量は本製品が60gも軽く、それだけ違えば汎用性の面と合わせて、この価格差は許容できるという人もいそうだ。

 一方のiPad Air(第3世代)は、64GBで54,800円ということで、価格面では比較にならないが、CPUを含めた性能については本製品よりも明らかに上のグレードの製品であり、かつiPadということで汎用性は非常に高い。

 これら製品について、実際に電子書籍について、コミックの見開きを行なった場合はどの程度の差があるだろうか。まずFire HD 10と比較した場合は、同じ画面サイズと解像度、同じアスペクト比ということで、コミックの表示サイズおよび品質はほぼ同等だ。

 ただし本製品のほうがベゼル幅がスリムなため、見た目は本製品のほうが圧倒的にコンパクトなほか、体感的な重量差は60gよりもさらに大きく感じられる。本製品に慣れてしまうと、Fire HD 10は手に取らなくなってしまうというのが正直なところだ。

本製品(上)とFire HD 10(下)の比較。画質は同等、ページのサイズも同等だが、ベゼルのスリムさと薄さ、軽さのせいで本製品のほうが圧倒的にハンドリングしやすい

 一方、iPad Air(第3世代)については、画面の横幅はほぼ同等ながら、本製品はアスペクト比が16:10と横長なのに対し、iPad Airは4:3と縦方向にも余裕があるため、画面サイズは一回りどころか、二回りは大きく表示される。限られたボディ幅でなるべく大画面で表示したい場合は、iPad Air(第3世代)のほうが有利だ。

本製品(上)とiPad Air(第3世代、下)の比較。アスペクト比の関係で本製品のほうがページのサイズは一回りか二回りは小さく表示される

 そうした意味では、むしろiPad Air(第3世代)よりも、画面がもう一回り小さい9.7型のエントリーモデルのiPad(第6世代)のほうが、競合としては適切なのかもしれない。性能はiPad Airよりやや下がるが、こちらは税別37,800円(32GB)ということで、価格差も縮まる。

 それならいっそiPad mini(第5世代)はどうかというと、これはさすがに表示サイズが違いすぎる。いくら本製品がiPad Air(第3世代)よりも画面が二回りほど小さくても、iPad mini(第5世代)と肩を並べるレベルではない。画面サイズで比較するのであれば、やはり9.7型のiPad(第6世代)のほうが適切なライバルと言えそうだ。

本製品(上)とiPad mini(第5世代、下)の比較。さすがに表示サイズの差は一目瞭然だ。ハンドリングのしやすさ、および軽さを重視する場合には競合となるかもしれない

Alexa搭載モデルも要チェック

 以上のように、性能と価格のバランスに優れた製品であり、電子書籍ユースにはお求めやすく、また最低限の汎用性は欲しいという人に向いた製品だ。筆者はたまたま別製品のスペックをチェックしていて気付くまで、本製品の存在を知らなかったのだが、現行の10型クラスのモデルで最軽量である点など、もっと目立ってよい製品という印象だ。

 敢えてネックを挙げるならば、あまりメジャーな製品でないためか、サードパーティー製のアクセサリが極端に少なく、ケースはともかく反射防止シートがほぼ皆無ということだろうか。私物で購入した筆者としては、日々切実な問題である。あとは前述のKindleアプリのサムネイルの問題さえ解決されれば言うことはない。

 ところで、本製品の購入を検討するのであれば、合わせて候補に入れたいのが、バリエーションの1つとしてラインナップされている「Lenovo Smart Tab P10 with Amazon Alexa」なる製品だ。

 これは、タブレットとドックを合体させ、Alexa搭載のスマートディスプレイとして使える製品なのだが、実はこのタブレット部分が、Alexaの有無と筐体が違うだけで、本製品と瓜二つのハードウェアなのである。

 何よりこちらはドック(Smart Dock)が付属しながら実売32,270円ということで、本製品のWi-Fiモデルを単品で買うのと比べ、2千円ちょっとしか差がない。これならば、Alexaを使わなかったとしても、動画や音楽の鑑賞時に立てて使用でき、かつ充電も行なえるドックがついているぶん、こちらのほうがお得感は高い。

本製品下部にある謎の端子は、実はこのドック(Smart Dock)との接続のために用意されたものだ

 本稿執筆時点では品切れ中のようだが、実機を試用した限りではスマートスピーカーとしてもすぐれた製品だと感じられた。本誌にもレビューが掲載されているので、併せて検討することをおすすめしたい。