山田祥平のRe:config.sys

内蔵バッテリは消耗品ですまされない

 モバイル機器の多くは、内蔵バッテリで稼働する。そして、そのバッテリの寿命が、デバイスそのものの寿命に直結してしまうことが少なくない。エンドユーザーが簡単にバッテリを交換できるようになっていないからだ。

 まだ使えるデバイスがバッテリのおかげで廃棄される。SDGs(持続可能な開発目標)的にそれはどうなんだろうと思ってはいるが、認めざるを得ない面もある。

古いノートを新しく使う

 2023年が終わろうとしている。この1年は比較的早く時間が過ぎたように感じている。以前のような暮らしが戻りつつあり、慌ただしい日々が多かったせいなのだろう。

 2020年にコロナ禍が世界を襲った。日本も例外ではなく、本当に大変な歳月だったが、それも段々今は昔の話になりつつある。いわば元の木阿弥でもあるのだが、いろいろな経験を与え、新たなチャレンジを生み出してもくれた。

 コロナ禍まっただ中当時は外出の機会も減り、その代わりに、在宅でのオンラインコミュニケーションのためのソフトウェアやそのためのデバイスが著しい進化を遂げた。

 個人的には、外出機会が減ったコロナ禍期間は、手元のノートPCが陳腐化しないようにすることを考えた。2020年以降に入手したPCは、第11世代Core iプロセッサ搭載のものだ。今となっては3世代前のプロセッサだし、IntelはCore iプロセッサを第14世代で終わりにし、新たなシリーズとしてCore Ultraプロセッサをリリースした。

 だから、第11世代のCore iプロセッサというのは、世代的にも型落ち、それどころかシリーズ的にも型落ち的な存在だ。だが、そのチカラを温存するために、いろいろ工夫をしてきた。

 個人的に、以前は毎日持ち出す、持ち出さないに関わらず、複数のモバイルノートをいつでも満充電状態にキープし、使うときも使わないときも、電源アダプタをつなぎっぱなしで放置していた。

 また、ストレージ内のファイルが常に最新状態に維持されるように、スリープにすることもなく、稼働しっぱなしで待機させていた。内部的には、ほんの少しバッテリが減っては、それがまた満充電になるということが繰り返されていた。これが持ち出す可能性の高い数台のノートPCが置かれた環境だった。

 コロナ禍においては外出の機会が減ったので、これをやめることにした。以前のように毎日ノートPCを携行して外出する日々が戻ってきたときに、内蔵バッテリがヘタっていては目も当てられないからだ。

満腹を回避して寿命を延ばす

 コロナ禍においては、ノートPCの運用方法を変えた。

 まず、外出から戻っても電源にはつながない。スリープや休止状態、場合によってはシャットダウンしてしまう。

 バッテリを充電するのは、次の日に出かける前夜とした。バッテリ充電も高速だから、翌日起きてから充電を始めてもでもなんとかなる。

 フル充電を回避するために80%程度の充電量をキープするようにしたから余計に充電時間は短い。もちろんそれだとバッテリ駆動時間は短くなり、フル充電時の8割に減ってしまうが、コロナ禍における外出時間は、以前よりもずっと短くなってしまったので、そう不便を感じることはなかった。

 ノートPC製品の多くは、バッテリ充電を制御するための仕組みをソフトウェアやファームウェア等で提供している。手元にある第11世代Core iプロセッサ搭載機でのバッテリ充電制御は次のようなイメージだ。

レノボ ThinkPad X1 Nano Gen 1
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プリインストールされているユーティリティ「Lenovo Commercial Vantage」のデバイス設定における「電源」で「バッテリー設定」ができる。充電開始と停止のバッテリ容量を設定しておける。手元の実機では80%で充電ストップ、70%で充電スタートに設定していた
Microsoft Surface Laptop 4
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設定アプリの「回復」からUEFIを起動するか、いったんシャットダウンし、電源の再投入時にVol Upキーを押しながら電源を入れる。Surface UEFIの設定で、Enabel Battery Limitをオンにすることで、50%で充電が停止するようになる
FCCL LIFEBOOK UH-X/E3
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設定アプリのExtrasからバッテリーユーティリティを起動し「バッテリー満充電量」を呼び出すと「フル充電モード」と「80%充電モード」を切り替えられる
HP Elite Dragonfly G2
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プリインストールされているユーティリティHP Power Managerで、バッテリの充電マネージャーを使って「バッテリの状態を最適化」、「HPのバッテリ管理を有効にする」のどちらかを指定できる。前者はフル充電にならないように上限が約80%に制御され、後者は使用状況を学習しながら充電量が制御される。このユーティリティがない場合も、BIOS設定で変更できる

内蔵バッテリの補完手段

 これらのユーティリティを使い、バッテリの充電を80%に抑えてこの数年間を過ごしてきた。Surfaceは50%にしか設定できなかったのでそれでガマンした。たぶん、うちから一度も持ち出していない……。

 ここのところは、モバイルバッテリもUSB PD 30Wをサポートするものが出てきたので、万が一、出先でバッテリが危うくなっても、なんとか応急手当はできるのが救いだった。

 また、USB PD対応のACアダプタも、以前のスマホで使ってきた18W程度のサイズ/重量で30Wをサポートするようになってきている。これらの組み合わせによって、ノートPC内蔵バッテリのフル充電量を抑えてもあまり不便を感じなくなっている。

 こうした設定運用の結果、3年間を経過した今も、本体内蔵のバッテリは、それほど劣化していないと考えられる。

 こうして大晦日を迎えようとしている今、そろそろこれらの設定を元に戻そうかどうか迷っているところだ。昨今のモバイルノートが実力として確保しているバッテリ駆動時間を考えると、それが8割程度になってもあまり不自由しなくなっているのも事実だからだ。

 第11世代Core iシリーズ搭載のWindows 11搭載モバイルPCは、実使用で5~6時間の運用ができる。軽量化のためにバッテリ容量を半分に抑えたLIFEBOOKも4時間程度は平気で使える。この時間が8割になったとしてもなんとか運用できそうだし、困ったときには、モバイルバッテリ等に頼ることもできる。

 今年は、dynabook X83のように、着脱式バッテリを採用し、エンドユーザーがネジ2本でバッテリを交換できるようにした製品も出てきた。

 そうは言っても純正部品としてのバッテリは高価だ。PCとしてのライフサイクルを終えるまで、出荷時に内蔵されたバッテリを、大きな不便を感じないで使い続けられるにこしたことはない。

 暮れということで、大掃除の一環として、日常的な作業に使っているデスクの上を整理し、常用している数台のノートPCも、アルコールで吹き上げるなどしてきれいにした。年明けの活動開始までにはまだ少し時間がある。

 正月は、身の回りのPCをゆっくりとシャットダウンし、休ませてから考えることにしよう。ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤフォンなどでも同じことが言える。捨てるのはもったいないよな。

 ということで、この1年のご愛読に感謝するとともに、来年も引き続き、よろしくどうぞ。どうか、よいお年を。