山田祥平のRe:config.sys

スマートフォンとPCの共闘でコロナに立ち向かう

 スマートフォンにはスマートフォンの、PCにはPCの得意なことがある。双方を上手に使い分けてスマートな暮らしをすればいい。両者の棲み分けは、すでにサイズやモビリティだけになりつつもある。そうは言っても勉強や仕事には余裕のあるコンピューティングパワーが必要だ。コロナ騒動はそのことをあぶり出した。その応急処置について考えてみた。

PCを買うカネがない

 まさか、2020年になって、PCがなくて困るシーンが生じるなんてことが起こるとは思わなかった。今は、PCをすぐに買いたくても在庫がなかったりするそうだ。ダイレクトサイトなどでポチッとしても短納期で入手できる製品が少なく、あっても比較的高額なモデルが多かったりする。

 ただ、これは、コロナだけのせいではないとも言う。つまり、在宅勤務や学生の需要が高まったからPCが売れたということもあるが、各社ともに、Window 7のEOS特需で在庫を吐き出してしまったことや、Intelプロセッサの入手難が重なっていることなどによる面も強いそうだ。

 それ以前の問題として、今の状況ではアルバイトもままならず、買うカネが捻出できない学生も少なくないとも聞こえてくる。こうした状況を救うために、通信事業者各社は「新型コロナウイルス感染症の流行に伴うU25向け支援措置」の実施 - 25歳以下の「1GB追加オプション」および「スピードモード」を50GBまで無償化」といった施策を提供している。

 ただ、若年層はスマートフォンは持っていても、手元に自由に使えるPCがないというケースが少なくない。ちなみに総務省による情報通信白書令和元年版 関係情報 : 情報通信関連 : 情報通信白書の「通信利用動向調査」における「情報通信機器の世帯保有率の推移」を見ると、日本では2018年の情報通信機器の世帯保有率は74%で79.2%のスマートフォンを下回っている。PCの世帯普及率は2009年の87.2%をピークに、スマートフォン等の普及にともなって頭打ちとなっているのだ。1人1台というような環境とはほど遠い。スマートフォンだけで十分という世の中の流れが、ここにきて、ちょっとしたネックになっている。

リアルPCがないなら仮想PC

 昔、ソフトウェアは箱に入ったパッケージとして量販店頭に並ぶ商品だった。CDやBDなどのコンテンツがそうであったように、かつてはソフトウェアパッケージ売り場は商品に満ちあふれていたし、その入門書や活用指南の紙書籍も充実していた。

 ただ、モノとしての商品は、品切れ、売り切れと無縁ではいられない。ベンダーがどんなにしっかりした生産計画をたてても、予想外の売れ行きで在庫がなくなり、消費者が欲しいのに手に入らないという状況を引き起こす。かつてはソフトウェアも例外ではなかったのだ。

 でも今は違う。ソフトウェアは利用する権利を売買するものとなり、オンラインで入手ができるようになった。ここでは売り切れという概念は壊滅した。

 もし、PCの安定供給が難しい状況がしばらく続くのであれば、欲しいPCを欲しいときに買えるようになるまで、理想的には、このコロナの騒ぎが落ち着きを見せるまで、ここはひとつ、MicrosoftのAzureやAmazonのAWSなどで、クラウドサービスを使った仮想マシンの提供を、U25向けにお願いしたいところだ。

 リモートデスクトップなどのクライアントアプリを使って接続するだけで、最新のWindowsが数分後から使えるようになれば、それで救われる層は少なくないのではないだろうか。

 あるいはGalaxyのDeXや、ファーウェイのPCモードなど、同社のスマートフォンでしか使えないソリューションを他社製のスマートフォンでも使えるように解放してもらうことはできないものだろうか。どちらもスマートフォンを外付けディスプレイを使ってPCのように使うための機能だ。

 ちなみに冒頭の写真はファーウェイのP30 ProをHDMIやUSB Hub経由でディスプレイに接続してPCモードで使っているところだ。スマートフォン本体をタッチパッドとして使うこともできる。ブラウザだけで多くのことができるので、これで十分役にたつシーンも少なくないはずだ。

 もっとも、相手が仮想マシンであっても、その利用には最小限の機能でいいもののスマートデバイスが必要となる。これについてはとりあえず手持ちのスマートフォンを使えばいい。ただ、PC的な作業をするには画面が小さすぎる。モバイルノートPCでさえ画面の狭さで作業効率が低くなるのだから、たかだか6型前後の画面しかもたないスマートフォンではちょっとまずい。DeXやPCモードにしても、表示については大画面が前提だ。

 そこで表示についてはTVを使ってもらう。スマートフォンとTVを接続し、スマートフォンの画面を大画面で表示するための方法にはいくつかある。TVを使う場合はHDMIケーブルでの接続が現実的だ。ただし、そのためには、これまた接続用にアダプタハードウェアが必要だ。

 たとえばiPhoneであれば「Lightning - Digital AVアダプタ」のような製品を使う。Androidスマートフォンについては、GoogleのPixelシリーズやソニーのXperiaなどの一部の機種で外部映像出力非対応といったこともあるが、今こそ、ファームウェアのアップデートなどで可能にしてほしいところだ。ただ、Chromecastを使うといった手を含めて逃げ道はある。TVとの接続に使うHDMIケーブルは今や百均でも入手できる。

 さらには外付けのキーボードやマウスも欲しいところだ。これらについてはBluetooth接続のものを使えばいいし選択肢はたくさんある。

スマートフォンをPC代わりに使うためのオールインワンパッケージ

 つまり、ハードウェアとしては、iPhone用とAndroidスマートフォン用に、

・HDMIアダプタ
・HDMIケーブル
・マウス
・キーボード

の4点をオールインワンでパッケージしたものが欲しい。検証はたいへんだが動作確認済みのスマートフォン一覧もあればいい。時間に猶予はないのだから使えた使えないはSNSによる集合知を使ってもいいだろう。

 もちろん、接続のための懇切丁寧なマニュアルも必要になるだろう。マルチベンダーで各社が製品を持ち寄ってパッケージを作り、出版社などが協力して接続方法を公開するようなことができないものか。あるいは、どこかのベンダーからこれらをまとめたものを出してもらえないものだろうか。各キャリアがやってくれてもうれしい。学生諸君のみならず、あいかわらず手書き書類やファクシミリの扱いでたいへんな状況の最前線の現場でも使ってもらえるようになるかもしれない。

 ちょっとしたIT知識のある方なら、AmazonなどのECサイトで最適な製品を物色して調達できるかもしれないが、普段からPCを使うことも少ない層にはそれは難しい。

 この連載を読んでくださっている方々は、おそらくスマートデバイスについての知識は世のなかの平均をはるかに上回るに違いない。もし、周りに困っている学生や中高生がいるのなら、こういう方法があるということを教えてあげてほしい。

 当面、コロナとの戦いは続きそうだ。とにかく今すぐできることを今すぐやろう。材料はそろっているのだ。本当にコンピューティング教育が必要なのは、子どもじゃなくて、今の社会を牽引している大人たちなのかもしれない。