山田祥平のRe:config.sys

何がなんでもType-C

 PCにUSBポートが1つしかなかったら、それはやっぱり不便だろう。だが、多くの機能をクラウドに頼れるようになったいま、そんなに無茶な話でもない。とくに、プラグの形状が同じまま、さまざまな規格の信号を流せるUSB Type-Cは、今後のPCのあり方を予言しているような存在だ。

デバイスに変革をうながす新USBコントローラ登場

 CypressがモバイルPCドッキングステーション向けに、USB Power Deliveryに対応した業界初の7ポートUSB-C Hub コントローラを発表した。5つのチップの機能を1つに統合したプログラマブル コントローラだ。

 これによって、ボードサイズを半分に縮小することができ、ドックシステムのデザインを簡素化するという。

 これまでのUSB Type-Cドックは、

・動作状態や接続障害を報告するUSB Billboard
・USB Type-Cブリッジコントローラ
・内部接続と外部接続に対応するための2つのUSB Hub
・USB Type-CポートごとにUSB PD充電に対応した専用コントローラ

が必要だった。今回、Cypressが発表した「EZ-USB HX3PDハブ コントローラ」は、これらの機能をワンチップに統合したものだ。

1. 7ポート10 Gbps USB 3.1 Gen 2 Hub
2. USB PD 3.0充電に対応した2つのUSB-Cポート
3. USB Billboard機能とセキュア ファームウェア ダウンロードに対応したドック管理コントローラ

を搭載する。そして、USB Type-Cや、USB PD規格の変更があった場合でも、プログラムの変更に対応しているため、アップデートによって相互接続性の問題を解消することができるのだそうだ。

 このチップがあれば、ノートPCやタブレット用のドッキングステーション、ディスプレイ用のドックなどのシステムデザインを大幅に簡素化できる。すでにサンプル出荷が始まっていて、量産開始は2018年第3四半期とされている。おそらくはエンドユーザーのもとにこのチップを使った製品が届けられるのは来年の今頃だとは思うが夢が広がる。PC製品のフォームファクタにもさまざまな影響を与えることになるだろう。

USBデバイス選択の要件

 個人的には、USB周辺機器を選択する場合、できる限り、USB Type-Cに対応したものを選ぶようにしている。たとえばUSBメモリやポータブルSSDドライブ、光学ドライブなどだ。

 もっとも最近はあまりノートPCの拡張を必要とする場面が少なく、USBデバイスそのものをあまり使わなくなってしまっている。例外は自宅のデスクトップPCだけで、光学ドライブはあいかわらず物理CDで音楽を購入しているぼくにとっての必需品として数年前に購入したUSB 3.0のポータブルBDドライブを自宅のデスクトップPCにつなぎっぱなしだ。

 また、そのほかにとりあえず、4ポートのUSB 3.0 Hubを接続してあるがあまり使う機会はない。さらに、キーボードやマウスもUSBで、こちらは2.1ポートに接続している。あとはScanSnapスキャナがあるくらいだろうか。なんだかんだで旧世代のUSBに頼っている。それがデスクトップPCの現状だ。

 一方、ノートPCは、多くのデバイス接続をBluetoothに頼っているため、じつは、内蔵ポートを使う機会があまりない。小さなファイルはクラウドを経由したほうが手っ取り早いので、USBメモリを使うこともほとんどない。だから、古いPCで不便を感じることがあるかというと、仮に世の中のデバイスがすべてType-Cになってしまっても、それほど困ることはないんじゃないかとも思う。

 仮に、一部のPC製品のように、ノートPCからUSB Type-Aメス端子がなくなってしまっても、Type-C端子が1~2個あればそれで十分のような気もする。だからといって1つで十分かというとそこが難しい。1つをPD充電用の端子として使った場合に空き端子がなければ、何かを接続したいときに困ってしまう。

 そんなときに便利なのがドックシステムで、各社からさまざまな製品が発売されているが、それを小型化したり、高機能化することができるのが今回Cypressから発表されたようなチップということになる。ただ、ドックシステムはコネクタのサイズに依存する部分が多く小型化がたいへんかもしれない。

 最近のお気に入りは、Kingstonの新製品、「Nucleum」だ。ポートとしては、

・電源入力のためのUSB Type-C
・データ交換のためのUSB Type-C
・HDMI
・USB Type-A×2

が用意されているほか、SDとmicroSDのメモリカードを読み書きするスロットも装備されている。個人的にはオールインワンだ。これだけあれば、PC側にUSB Type-Cポートが1つしかなくても困ることはまずない。

 問題は、PCといっしょにこのケーブル直付けの92gのデバイスを持ち歩くかどうかだが、出張のときにはカバンに忍ばせるようにしている。また、PD対応については推奨されていない最大60WのPDパススルーだが、今のところとくに問題には遭遇していない。

まずはMicro USBの撲滅から

 いわゆる標準化は一気にやらないとなかなか浸透しない。現在のUSBは、Windows 98SEとともに一気に普及したが、それを後押ししたのは、なんといっても1998年に発売されたAppleの初代iMacだろう。ブラウン管ディスプレイ一体型で、そのトランスルーセントデザインはちょっとしたトレンドにもなった。そして、シリアルポート、フロッピーディスク、ADB、SCSIなど、それまでのMacでは当たり前だったポート類が全廃され、USBのみを装備することで、USBは加速度的に普及した。iMacは、USB普及の立役者であるといってもいい。Windows PCは、そのご相伴にあずかっただけだ。

 今のMacBook Proは、当時のiMacと同様に、USB Type-C端子だけを装備しているが、普及のための起爆剤にはなっていない。そこはやはり時代が違うのだろう。一気に変えたくても、膨大な数の従来型USB機器がたちはだかる。それはもう、世界中のスマートフォンがType-Cになったとしてもだめなのだ。

 まずは、何よりも、Micro USB端子を絶滅に追い込みたいと思う。先日、部屋の整理をしたら、100本近いケーブルが見つかった。購入したもの、デバイスに同梱されてきたものなどいろいろだが、どう処分しようか迷うところだ。おそらく、これらのケーブルに信号や電流を流すことはもうないだろう。比較的、安心できそうなケーブルを数本抜き出し、残っているMicro USB端子装備のデバイス充電用に使うのみだ。

 といっても、日常的に充電が必要なのMicro USB端子のデバイスはBluetoothヘッドフォンくらいだ。その世代交代とともに手元のMicro USBはお役御免となる。モバイルバッテリの多くもMicro USBだが、こちらも手元のものはType-Cへの移行が進行中だ。ただ、市場での移行はiPhoneのシェアが当面は邪魔をすることになるだろう。このあたりの状況が変わるにはまだ少し時間がかかりそうだ。