山田祥平のRe:config.sys

USB Type-C充電統一への道遙か

 USB Type-C端子を持つデバイスが増えてきた。このあたりですべての充電環境をType-Cに統一しようともくろんでいるのだが、なかなかそうは問屋が卸してくれなさそうだ。

使う前に一気に充電

 クルマの場合、その動力源となるガソリンはなくなったら補充する。常に満タンを維持するわけではない。こういうことができるのは、近くにあるガソリンスタンドに立ち寄れば、数分で空のタンクを満タンにできるからだ。

 実際問題として、リチウムイオンバッテリで動くEVは、急速充電で30分、普通充電で8時間を要する。このくらい長時間を要すると、なくなりそうだから補充しておくという感じにはならない。きっと万が一に備えて時間に余裕があるときに継ぎ足し充電するだろう。バッテリ切れのスマートフォンとちがって、走行中にバッテリ切れを起こしたら目も当てられない。

 電子機器のバッテリも、同様で、急速充電でも数十分から1時間、通常充電だと数時間は必要だ。だからまだまだ「なくなりそうだから充電する」という感覚では使えない。いつも満充電近くを維持しておきたいという気持ちになる。

 そういう意味で、でかける直前に充電すれば、外出中の電力をまかなえるくらいの量を充電できる急速充電には大きな期待を寄せてしまう。

 Type-C端子を持つデバイスは、今のところ次の3種類の充電方式を持つ。

1. USB Battery Charge 1.2
3. Qualcomm Quick Charge などの独自方式
3. USB Power Delivery

 もっとも大きな電力を供給できるのは3で、最高20V/5A、つまり、100Wの電力が規格として用意されている。

 その次が2のQuick Chargeで、そのバージョンは1~4まである。最新のQuiick Charge 4は、Snapdragon 835依存の機能だ。ただ、835チップセットを搭載する新世代スマートフォン「Galaxy S8」は、Quick Charge 2.0への対応で、3.0や4への対応は見送られている。

リファレンスとしてのMacBook用電源アダプタ

 Type-Cへの傾倒が極端なのはやはりAppleの「MacBook」だろう。しかも、その充電規格はPowerDeliveryだとされている。もっとも、AppleのMacBook Proのページを見ても、そこにあるのはUSB Type-C充電に対応しているということのみの説明だ。

 たとえば、最新のMacBook Proには87Wの電源アダプタが付属し、それをUSB Type-Cで供給する。規格としてはPowerDeliveryであると考えてよさそうだ。

 そこで、MacBookの電源アダプタと、Type-Cケーブルをリファレンスとして、それらをサードパーティ製品に置き換えることはできないかどうかを試してみた。さらに、そのサードパーティ製の製品を使ってUSB Type-C対応の各社Windows PCでも挙動を確認してみた。

 たとえば、各デバイスが要求する電力を電源アダプタの電力が下回る場合もある。その場合は充電に要する時間が長くなるとか、使いながらの充電ではバッテリ容量が減っていくといったこともある。それでも電源アダプタが接続されていることを認識できているかどうかだけで様子を見てみた。

 試してみたのはMacBook Pro以外には、Acer、Lenovo、HP、Dell、LG、富士通製のノートPCだ。これらはすべてUSB Type-Cによる充電が可能で、製品にはUSB Type-Cケーブルが直付けの電源アダプタが付属する。ただし、富士通機だけは、通常の電源アダプタが付属し、PD対応は仕様的な記述に留められている。また、MacBook Proだけが電源アダプタとケーブルを分離可能だ。

 用意したサードパーティ製品は、

充電器が
・Anker PowerPort+ 5 USB-C Power Delivery

ケーブルが、
・Anker PowerLine+ USB-C & USB 3.0 ケーブル (0.9m)
・USB Type-C ケーブル PD対応 OLAUDEM C-C

の2種類だ。これらとMacBook Pro付属のアダプタ、ケーブルをとっかえひっかえしながら挙動を確認してみた。

意外にうまく行った総当たりテスト

 結論からいうと、今回試してみたすべての組み合わせで正常な充電が可能だ。Ankerの電源アダプタは60WだがUSB Type-C PDについては最高20V/1.5Aの30Wだ。このアダプタを87W必要なはずのMacBookに接続した場合も、アダプタが接続されていることをMacBookは認識した。

 今回のテストで唯一の例外だったのは富士通の「LIFEBOOK UH90/B1」だ。この製品には通常の電源アダプタが付属し、その仕様は19V/2.1A約40Wだ。ところが、製品の仕様を見ると「最大20V/3Aを供給可能な機器であれば、本体に充電が可能です」とあり、60Wを供給できなければ充電ができないとある。MacBookの電源アダプタでは充電が可能だったが、Ankerの電源アダプタでは電源アダプタが装着されていることを認識しなかった。

電源アダプタは1個ですませたい

 個人的なもくろみとしては、多少、大きくなってもいいから、Type-Cの口を複数個持つPD対応電源アダプタを1個だけ用意して、そこからすべてのデバイスを一気に充電することだった。そのアダプタだけを出張時に持ち出せば、すべてがそれでまかなえる環境がほしいと思っていた。

 一般的なUSB充電は、ちょっとだけその夢を見せてくれたが、Micro USBはType-Cへの過渡期にあり、振り出しに戻った。いろんな意味で、PDの普及にはまだ時間がかかりそうだ。

 先日、中国・深センへの取材時に、電脳街で、かなりの数の店に、複数のUSB Type-Cポートを持つPD対応電源アダプタがないかどうかを尋ねてみたが、そんなアダプタは、あの街、深センでもまだ見つからないようだ。