【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第29講 業界通情報講座 講師:一ヶ谷兼乃

 一ヶ谷講師の今回のお題はプリンタサーバーです。Win/Mac共有サーバのためにNTサーバを立てるのもちょっと、と文中にありますが、編集担当の自宅はまさにそれです。ただしマシンはi486-66MHzなので、OS以外はまったくお金がかかってないのですが……。MacとWindows機両方を使っている方は、みなさんいろいろと苦労なり工夫なりされていると思います。早く、OSレベルで対応してくれるといいのですが。(編集部)


9,800円でネットワーク・プリントサーバを実現!

プリンタサーバーって?

 今回紹介するのはプリンタサーバー。何をするアイテムかというと、プリンタをネットワークに接続するものだ。プリンタサーバーは、半年以上前から気にはなっていたものの、なかなか自分の要求仕様を満たす製品が見つからず、購入が延び延びになっていた。
 筆者が、プリンタサーバーを必要とする理由は3つある。ひとつは今使用している部屋が物置と化しており、プリンタを置くスペースがないため、できれば隣の部屋に置いておきたいというコト。2番目はWindowsマシンとMacintoshでプリンタを共有したいというコト。最後の1つはパラレルポートを消費したくないという理由からだ。幸い、すでにEthernet接続のネットワークがあり、数台のWindowsマシンとMacintoshが接続されている。どうせならこのLANを利用できないものかと、以前から考えていたのだ。
 Windows NT Workstationを入れたマシンをサーバーに利用するという手段もあるのだが、たまにしか使わない印刷のために常時電源が入っているマシンがあるのは、あまりスマートではないような気がする。それにマシンの費用もバカにならない。
 プリンタサーバーの機種選択が進まなかった理由としては、Macintoshとのプリンタ共有に起因する部分が大きい。TCP/IPやNetBEUIに対応し、さらにAppleTalk(EtherTalk)対応の比較的購入しやすい価格帯のプリンタサーバーでは、Macintoshからのプリンタ利用に関していろいろな制限があるものばかりなのだ。たとえば、現在最もコストパフォーマンスがいいと感じているHewlett PackardJetDirect EX Plusでは、Macintoshから使用できるプリンタはBi-Tronicsに対応してるものに限定されている。Bi-Tronicsは一応標準規格ではあるものの、個人向けプリンタでそれを採用しているのはHewlett Packard社のレーザプリンタくらいではないだろうか。同じHP社でもインクジェット型のプリンタには採用されていない。
 このようにもやもやした状態のまま、半年あまりプリンタサーバが頭の片隅に居座っていた。


9,800円のプリンタサーバ発見!!

Axis NPS530

 2月のある日、いつものように西新宿のショップを目的もなく巡っていたところ、目に止まったのがAXIS CommunicationsNPS530だ。なんと、9,800円で売り出されている。置いていたショップは、これまでにも何度かPC Watchでも名前のあがっているパソQだ。NPS530は、Axis社のマルチプロトコル・イーサネットプリントサーバ製品 で、これまでWindowsNTやNetWareのネットワークで何度も使用したことがある。新潟キヤノテックのNetHawkシリーズにもOEMとして採用されている実績のあるプリンタサーバーだ。その場では詳しい仕様がはっきりわからなかったので、もっと調査したい気持ちはあったが、店頭には1つしかない。購入しようか迷ったが、これまでの経験から、躊躇して買わなかった場合には、ほぼ100%後悔につながっていることが、十分過ぎるほど分かっている。頭の中で悩みつつ、とりあえず内容物を確認する。すると、並行輸入品ではなく、アクシスコミニュケーションズ(株)の国内向け製品であることがわかり、購入することにした。

 NPS530はプリンタのセントロニクス仕様パラレルポートのコネクタに直接接続し、10BaseTケーブルでイーサネットと接続するプリンタサーバだ。今回店頭に並んでいたのは、NPS530のベーシックモデル(標準価格55,000円)で、NetBEUIとIPXの2つの通信プロトコルに対応している。このほかNPS530にはフルモデル(標準価格68,000円)があり、NT、TCP/IPとAppleTalkなどにも対応している。購入したベーシックモデルは、ハードウェアレベルでは対応しているが、Keyと呼ばれる文字列を手にいれないと、TCP/IPやAppleTalkは動作しない。Keyは、販売店を通じてアクシスコミニュケーションズから購入することができるが、今回はとりあえず、この格安プリンタサーバーを自宅のLANに接続し、Windows95パソコンから印刷を行なうことを目的とした。



最新状態は、どうなってるのかな?

NPS530の内部基盤
NPS530のセントロニクスのコネクタ

 自宅に持ち帰り、まずやることは購入した製品が最新状態のものであるかどうかの確認である。インターネット上のAXIS Communicationsのページをチェックしてみると、最新版のNPS530のファームはrev.5.22同社のFTPサーバには、ROMイメージのファイルが存在するということで、探してみるとNPS530用のVer.5.30のイメージファイルがあったので、これをダウンロードしてくる。ちなみに、購入した製品はVer.5.02で、添付のユーティリティは最新版であった。
 購入した製品にACアダプタを接続し、電源が入ることを確認した後に、早速分解してみる。基板上のEP-ROMを抜き、ROMライターにセットして、容量を調べると4MbitのEP-ROMが使用されていた。机の中から4MbitのEP-ROMを机の中から探し出し、ver.5.30のROMの作成に入った。ROMの作成はデータとなるファイルとEP-ROM、ROMライターがあれば、数分もあれば完成する。もちろん使用したROMライターはこの連載で以前紹介したユニテク電子「RACO/82」だ。
 完成したROMをNPS530に挿し、ケースに収める前にACアダプタを接続して、ROM換装前と同様にLEDが点滅することを確認してから組み上げた。



いよいよセッティング

NPS530のテストスイッチ、LED
NPS530の10BaseTコネクタ

 NPS530をプリンタに接続し、10BaseTケーブルでHUBと接続し、ACアダプタで電源を入れる。次にプリンタに電源を入れ、印刷可能になった状態で、NPS530本体にあるテストボタンを押して、現在の設定をテスト印刷を行なう。ここで、印刷できなければ、ROMの作成が失敗している可能性を疑うのだが、あっけなく印刷OK。この状態で、プリンタサーバー側の準備は整った。

 NPS530にはAXIS NetPilotAXIS Print Utility for WindowsAXCFGの3つのユーティリティソフトが付属する。AXIS Pilotはネットワーク上のAXIS製プリンタサーバーの状況を管理・監視するモノで、AXIS Print UtilityはWindows 95マシンから、プリンタサーバーに接続されたプリンタに直接印刷するために使い、AXCFGはプリンタサーバーの設定を変更するユーティリティだ。Windows 95マシンからPeer to Peerに印刷するにはNetBEUIプロトコルとAXIS Print Utilityを動かしておく必要がある。
 AXISPrint Utilityは購入した製品に入っていた日本語の設定手順書に従って、インストールおよび設定をすると、ネットワーク上のNPS530を認識し、プリンタドライバの設定も完了。プリンタアイコンを追加したときのテスト印刷も問題なく出力され、当初の目的は果たされた。



気になるApple EtherTalk

 購入した製品では動作しないが、Macintoshからの印字はどうなっているかをマニュアルで調べてみると、動作条件がいろいろと厳しいことが分かってきた。まず、Apple EtherTalkプロトコルをサポートするためのアップグレードを行なう必要があること(Keyの入手)。サポートされているプリンタはLaserWriterドライバを利用して印刷可能なPostScriptプリンタだけで、PostScript レベル2は完全にはサポートされていない。なお、別売のユーティリティを購入すればLIPS IIIプリンタも利用できる。
 その他にもプリンタの日本語PSフォントを印刷可能にすると、日本語TrueTypeフォントはCourierフォントに化けてしまうなどの弊害もある。
 そんなわけで、このNPS530もMacintoshとWindowsマシン間でのプリンタ共有の実現には、期待できそうもない。

 とりあえず、Macintoshからの印刷は今後の課題ということで我慢することにして、今回はなんといっても9,800円でプリンタサーバーが手に入ったということが、最も大きな収穫である。

 読者のみなさんで、PostSctiptやそれ以外のプリンタをサポートして、Windowsマシンでも、Macintoshでも細かな制限がなく利用可能なプリンタサーバーをご存じの方は、ぜひ紹介してほしい。


[Text by 一ヶ谷兼乃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp