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Windows 11最新版「24H2」にアップデートする価値はある?新機能まとめて紹介!Windows 10は選択の余地なし

最新版の24H2にアップグレードしたPCのシステム情報。ビルドは26100番台に更新

 2024年10月1日、Windows 11の最新バージョン「24H2」が一般公開された。Windows Update経由で、誰でもダウンロードして適用することができる。一部機能は、Copilot+ PC向けとなっているが、一般的なPCでもユーザーインターフェイスの細かな改善やWi-Fi 7対応などのメリットを享受できる。何が新しくなったのかを確認してみよう。

異例の配布形態となった24H2

 「24H2」は、現行のWindows 11の最新のバージョンだ。年次で提供されるWindows 11の機能更新プログラムによって大規模な機能改善、新機能追加などが実施される。

 Windowsは、モダンライフサイクルポリシーと呼ばれる製品ライフサイクルに従ってサポートが提供されるようになっており、年1回の更新を適用し続けることで、継続的にサポートが提供されるようになっている。

 つまり今回の更新は、OSとしての機能改善という位置付けに加え、サポート期間を延長するという意味合いも含まれている。

 具体的には、24H2のサポート開始日は2024年10月1日で、サポート終了日が2026年10月13日となる。従来の23H2のサポート終了日は2025年11月11日なので、あと2年(24カ月)、Windows 11のサポートが継続されることになる。

24H2適用でサポート期限が2026年10月13日へと更新される

 24H2は、今年の6月(発表は5月)にすでにArm版のCopilot+ PC向けに提供が開始されていたバージョンとなっていたため、個人的にはサポート期限をどのタイミングに設定するのかという点に興味があったが、結局、例年通り、10月が正式なリリースで、そこから24カ月というライフサイクルに落ち着いたことになる。

 また、インターネット上では10月8日が24H2のリリース日ではないかという推測があり、それをMicrosoftが訂正するという一幕があった。個人的にも、てっきり10月8日以降に提供されるのかと思っていたところ、まさかの前倒しで10月1日の公開となった。

 市販PCへの先行搭載やリリース日時の混迷など、なにかと振り回されたバージョンという印象だ。

Windows 11 24H2の適用方法

 24H2の適用方法は、通常は、Windows Updateを利用する。

 対象となるPCは、Windows 11 22H2および23H2を実行しているPCで、[Windows Update]の[利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する]をオンにしてから、更新を確認することで、「Windows 11, version 24H2」という更新項目が表示されるので、ダウンロードとインストール後、再起動すれば24H2に更新される。

「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」がオンになっていると自動的に適用される
24H2適用後の更新の履歴。機能更新プログラムに24H2が表示される

 Windows Updateで更新が見当たらない場合は、ダウンロードとアップデートに時間がかかるが「Windows 11インストールアシスタント」で手動更新することも可能だ。すぐに最新機能を使ってみたいひとは手動インストールするのもいいだろう。

 なお、すでに24H2を搭載しているArm版「Copilot+ PC」では、2024年10月1日時点では何もアップデートは提供されていない。適用状態になっていると考えていいだろう。

Windows 11のインストールを進めれば24H2に更新される

細かな改善を多数搭載

 さて、24H2の新機能を見ていこう。新機能は大きく分けて2種類ある。1つは、すべてのPCに適用される共通の機能と、いわゆる「Copilot+ PC」と呼ばれる40TOPS以上のNPU搭載機の専用機能だ。

 派手なのはCopilot+ PC向けの新機能(今後提供予定のプレビューも含む)だが、一般的なPC向けの更新の数もかなり多く、細かな部分の使い勝手が改善されている。実際に使ってみた印象としても、微妙に使いにくかったところが改善されたという印象で、しばらく24H2を使ってから、23H2に戻ると、「ああ、こっちにはボタンないのか…」などと、違和感さえある。

 個人的には、普及が始まったWi-Fi 7対応が最大のポイントだと思うが、ネットワーク関連の機能は地味なので、多くの人は更新されたことすら気付かないかもしれない。

 なお、本稿では、全ユーザーが利用できる前者の共通機能を主に取り上げる。後者はCopilot+ PCで実装済みの機能となるため、後半でダイジェスト的に紹介する。

 また、利用できる機能は環境によっても異なる上、すべての機能を検証できなかったので、今回は筆者の環境で確認できた機能を中心に紹介する。

ユーザーインターフェイス関連

デスクトップ壁紙の変更

 デスクトップ壁紙の標準設定が[Windowsスポットライト]に変更された。これにより、以前の設定が引き継がれた場合を除いて、定期的に壁紙が変更されるようになった。また、HDR対応環境で、HDR壁紙(jxr形式)を設定できるようになった。

Windowsスポットライトが標準に
HDR壁紙を使用可能

Windows共有の更新

 Windows共有がより使いやすくなった。ファイルを右クリックして[共有]を選択後、自分宛にメールでファイルを送信したり、ファイルをコピーしたり、Edgeで表示しているページのQRコードを生成したりできるようになった。

自分宛の送信が可能
ページURLのQRコード生成にも対応

ロックスクリーンのオーディオコントロール

 メディアの再生中に画面をロックした場合、ロック画面の画面下部でオーディオの停止などの操作が可能になった

タスクバー関連

スタートメニューからタスクバーへのドラッグ

 スタートメニューからアイコンをドラッグしてタスクバーにピン止めできるようになった。より直感的な操作でタスクバーによく使うアプリを登録できる。

ドラッグして登録可能

タスクバーのタスク終了

 [設定]の[システム]にある[開発者向け]で[タスクの終了]をオンにすることで、タスクバーのアイコンを右クリックしてタスクを終了させることができるようになった。わざわざタスクマネージャーを起動しなくて済む。

開発者向けの機能で設定をオン
右クリックからタスクを終了できる

タスクバー

 エクスプローラーで複数タブが開いている場合に、タスクバーのプレビュータイトルにタブの数が表示されるようになった。メリットは何かと問われると答えに窮するが、表示されないよりはいい。

タブの数が表示される

クイック設定がスクロール可能になった

 クイック設定画面がスクロール可能になり複数のアイコンを切り替えて使えるようになった。以前はよく使うアイコンのみを登録する形式だったが、これによりすべての機能を利用可能になった。また、[省エネ機能]などの新しいアイコンが追加された。

スクロール可能になり、新しいアイコンも追加された

エクスプローラー関連

対応するファイルの圧縮形式の増加

 ファイルの圧縮方式として、従来のZIPに加え、[7z][TAR]が追加された。また、[追加オプション]からほかの方式を選択することもできる。7zやTARを日常的に使う人には便利かもしれないが、個人的には、以前の[ZIPファイルに圧縮する]のほうが少ない手順で操作できて便利だった。

ZIP以外の方法での圧縮が可能になった

エクスプローラーのタブの複製

 エクスプローラーでタブの複製が可能になった。ファイルの整理などで元のフォルダをもう1つ複製して並べられるので便利。

タブの複製が可能

PNGファイルのメタデータ編集

 PNGファイルのプロパティ画面の[詳細]で、[タイトル]や[タグ]などのメタデータを登録可能になった。画像の整理などに役立つ。将来的にはAIによる検索も可能になる予定だが、やはり手動のタグ管理などをしたいという人に朗報。

タグなどを設定可能

[設定]関連

カラープロファイル設定の追加

 [設定]の[ディスプレイ]に[色の管理]が追加され、カラープロファイルを設定可能になった。従来はコントロールパネルでの設定が必要だった。コントロールパネルの機能が次々に移行されている。

カラープロファイルの設定が可能

電源設定を追加

 [電源とバッテリー]に[カバー、電源とスリープ ボタンコントロール]が追加され、電源ボタンやカバーを操作した際の動作を簡単に設定できるようになった。こちらもコントロールパネルで設定していた機能が統合された。

ボタンやカバーの設定を統合

[省エネ機能]

 以前の[バッテリー節約機能]が新たに[省エネ機能]に変更された。一部のバックグラウンドタスクの動作を制限し、バッテリ寿命を延ばすことができる。ポイントは、ノートPCだけでなく、デスクトップPCや仮想マシンでも利用できる点。地味に画期的。

省エネ機能。デスクトップPCでもバックグラウンドタスクの制限を利用可能(バッテリ関連は非対応)

[グラフィック]の変更

 対応するシステムを利用している場合、[システム]の[ディスプレイ]の[グラフィック]で、[自動HDR]や[可変リフレッシュレート]を設定できるようになった。ゲームや動画再生などに利用できる。

[グラフィック]設定から自動HDRなどを設定可能

アプリ関連

いくつかのアプリが削除された

 [コルタナ][ワードパッド][ピープル]などの一部のアプリが削除された。確かに使用頻度が低かったが、いざなくなるとさみしい。

一部のアプリが削除された

Copilotの変更

 従来は画面の右端に表示されていたCopilotが独立したアプリになった(削除も可能)。

独立したアプリになった

 プラグインやNotebookも利用可能となっているが、従来は可能だった自然言語によるWindowsの操作(アプリの起動など)が非対応となった。

特徴だったWindowsの操作をしてくれなくなった

モバイルデバイスをカメラとして使用

 PCにリンクしたスマートフォンをモバイルデバイス管理からカメラとして利用可能。ワイヤレスカメラとして利用し、映像をPC上で表示できる。Web会議などで、製品を撮影しながら会話するときなどに便利そう。

スマートフォンをワイヤレスカメラとして利用できる

リモートデスクトップアプリの更新

 リモートデスクトップアプリが更新され、[アクセシビリティ]の[テキストサイズ]の設定がメニューなどに反映されるようになった。また、アプリ側の設定でズームも可能になった。

文字などの見やすさが向上した

Windowsバックアップでのサウンドのバックアップ

 Windowsバックアップで、サウンド設定をバックアップ可能になった。

Windowsバックアップの[その他の設定]にサウンドが追加

 [その他の設定]がバックアップ対象となっている場合に自動的に含まれる。PC買い替えの復元時に設定する項目が少しでも減るのは歓迎したい。

Windowsバックアップ

デバイス関連

Bluetooth LEオーディオ

 新たに補聴器などのBluetooth LE オーディオデバイスに対応した。また、接続済みのデバイスのオーディオ設定などに、[設定]から簡単にアクセスしたりできるようになった。

接続済みのデバイスのサウンドの詳細プロパティを表示して、各種設定を簡単にできるようになった

マイクテストユーティリティの強化

 マイクのテストモードで[規定]に加えて、[通信]を追加。Web会議などを想定したテストが可能になった。時代を反映した変更と言える。

ネットワーク関連

Wi-Fi 7対応

 普及が始まったWi-Fi 7に対応し、320MHz幅接続時のリンク速度表示やMLO(複数帯域を同時に利用する通信)に対応した。

Wi-Fi 7に対応。画面は2.4GHz+6GHzの3,226Mbpsで接続されている様子

Wi-Fi接続画面の改善

 Wi-Fiに接続するための画面で、アクセスポイントの一覧を更新するためのボタンが新たに搭載された。タイミングによって接続先のSSIDが表示されなかった場合などに便利。また、接続時に通知領域のWi-Fiアイコンがアニメーション表示するようになった。

ネットワーク一覧の更新に対応。これも地味に便利

 さらに、接続を共有するたのQRコード表示に対応した。

接続情報のQRコード表示に対応

セキュリティ関連

BitLockerの適用範囲拡大

 従来、デバイスの暗号化に必要だったDMAとHSTI/モダンスタンバイに関する条件が廃止された。これにより、従来、デバイス暗号化の条件を満たせなかったPC(自作PCなどのデスクトップPC)でもデバイスの暗号化が可能になった。

 なお、アップグレードした場合は無効のままだが、24H2を新規インストールした場合は、自動的にデバイス暗号化が有効化される。

制限廃止でデバイス暗号化をより多くのシステムで利用可能

sudoコマンドの実装

 Windowsターミナルで「sudo」コマンドが実装された。管理者権限でターミナルを起動しなくても、管理権限が必要なコマンドを実行可能になった。

開発者向けの設定は地味に便利な機能がある
sudoで管理者権限での実行が簡単になった

位置情報の通知

 アプリがWi-Fi接続情報から位置情報を読み取ることを許可するかどうかをポップアップ表示するようになった。スマートフォンのようにアプリごとに許可を確認できる。

位置情報の許可を都度選択する方式となった

その他の更新内容」

emoji 15.1のサポート

 新しい絵文字としてemoji 15.1がサポートされた。

新しい絵文字が増えた

Copilot+ PCにはさらに新機能を追加

 このほか、40TOPS以上のNPUを搭載するCopilot+ PCには、専用機能として以下の機能が提供される。ただし、Copilot+ PCは、そもそも24H2搭載済みで出荷される上、すでに6月時点で公開済みの機能なので目新しさはない。

ライブキャプション

 動画や音声の再生時に自動的に字幕を表示するAI機能。現状は英語のみ。

ペイントのコクリエイター

 ペイントアプリで手書きのイラストと文字のプロンプトを組み合わせて画像を生成できるAI機能。

Windows Studio Effects

 カメラやマイクの各種エフェクトをAIを使って処理する機能。Web会議アプリを問わず効果を適用できる。

自動スーパー解像度

 AIを利用した超解像度ソリューション。ゲームなどで、フレームレートを優先するために解像度を落とした設定にしても、AIによって画質を補完できる。

フォトアプリのImage CreatorとRestyle Image

 プロンプトから画像を生成したり、AIを利用して写真を加工したりする機能。

 このほか、今後のアップデート予定として、Copilot+ PC向けの新機能がいくつか追加で発表された。

 いずれもWindows Insiderから提供を開始する予定で、Recallプレビューに関してはArm版Copilot+ PCで10月から、Intel、AMD版Copilot+ PCで11月から、そのほかの機能については今後数カ月以内に配信される予定となっている。

Recallプレビュー

 デスクトップのスクリーンショットを定期的に撮影し、そこから過去の操作などを検索できる機能。5月の発表当初から話題になっていた機能で、セキュリティ上の問題から6月出荷のArm版Copilot+ PCへの搭載が見送られたが、セキュリティ対策を見直して再登場することになった。

Click to Doプレビュー

 Windowsキーを押しながらマウスをクリックすることで、画面上のコンテンツに対して生成AIの分析機能を提供する機能。画像検索、背景除去、要約、文章生成など、クリックした対象やアプリに応じて柔軟な操作ができる。

Windows Searchの強化

 エクスプローラーや設定アプリなどの検索時に自然言語によるファイルなどの検索が可能になる。

フォトアプリの超解像

 解像度の低い写真をAIの超解像技術によって補正する技術。4K画質へのアップスケーリングにも対応する。

ペイントの塗りつぶしと除去

 ペイントアプリで、生成AIを利用した不要な部分の除去(いわゆる消しゴムマジック的な機能)、および別のオブジェクトへの書き換え(AIレタッチ)が可能になる。

アップデートは慎重に。Windows 10からのアップグレードも24H2に

 冒頭でも触れたように24H2は、すでに10月1日から配信されているため、すぐに適用することが可能だ。ただし、大規模なアップデートとなるため慎重な対応が必要になる。

 以下の窓の杜の記事のようにトラブル事例もあるようなので、環境によってはしばらく様子を見てから適用しても遅くはないだろう。

 なお、来年に迫ったWindows 10のEoS対応で、Windows 11へのアップグレードを検討している人もいるかもしれないが、以下のWindows 11インストールアシスタントを利用してWindows 10をWindows 11にアップグレードした場合、すでに24H2がインストールされる仕様になっている。

 Windows 10環境であっても、アップグレードを検討している場合は、24H2関連の情報もチェックしておくといいだろう。