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理研、毛髪再生につながる毛包幹細胞の培養手法を確立

マウス培養毛包上皮性幹細胞による周期的な毛幹の再生

 理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター器官誘導研究チームは10日、毛包(毛髪を作る器官)の再生能力を維持したまま毛包幹細胞を培養する手法を確立した。長期的・周期的な毛包再生に必要な幹細胞についても明らかにしている。

 動物のもつ器官は、胎児期に器官誘導能をもつ上皮性幹細胞と間葉性幹細胞によって形成され、出生後は体性幹細胞によって維持される。後者は器官誘導能を持たないため、ほとんどの器官は機能不全などに陥ると再生や修復ができない。

 一方で毛包には複数の上皮性幹細胞が存在し、哺乳類において生涯にわたって再生を繰り返す唯一の器官で、ヒトの場合では5~7年周期で退縮と再生を繰り返して毛髪が生え変わる。しかし、周期的な毛包再生を実現するメカニズムはわかっていなかった。

毛包の再生と退縮
未分化状態を維持する毛包上皮性幹細胞培養法の確立
器官原基法による培養細胞の機能解析

 研究グループではまず、周期的な毛包再生に必要な幹細胞集団を明らかにするため、生体外でさまざまな培養方法を試みた。その結果、Noggin、FGF(線維芽細胞増殖因子)、SAG、EGFを含む培地(NFFSE培地)でアテロコラーゲンゲルを用いて立体培養を行なった場合がもっとも増殖率が高くなった。

 また、NFFSE培養細胞を用いた再生毛包をヌードマウスへ移植したところ、81%で3回以上の再生が確認できた。これを応用することで、1毛包から約100毛包相当まで増幅も可能だという。さらに再生毛包ではCD34/Itg 6/Itg 5三重陽性細胞が持続的な再生に必要であることなども明らかとなった。

 今回の研究結果は、幹細胞生物学や発生生物学の研究に貢献できるとするほか、少量の毛包から大量の再生毛包を人為的に製造できるため、毛髪再生技術への応用も期待できるとしている。