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iPS細胞から毛が生えた。理研が皮膚器官系の再生に成功

再生皮膚器官系から分離した再生毛包の皮下移植

 理化学研究所(理研)と株式会社オーガンテクノロジーズ、北里大学、東北大学らの共同研究グループは2日、マウスiPS細胞を用いて、毛包や皮脂腺などの皮膚付属器を持つ「皮膚器官系」を再生する技術を開発したと発表した。将来、外傷ややけどによる皮膚の完全な再生や、深刻な脱毛症などに関する疾患の治癒に繋がると期待される。

 皮膚は、上皮層と真皮層、皮下脂肪層の3層からなり、個体の体表面全体を覆っている。皮膚には、皮膚付属器として、毛包や、皮脂腺、汗腺などの複数の器官が一定の規則性を持って配置されており、体の中で最も大きく、複雑な器官系となる。その複雑さのため、皮膚器官系の完全な再生はいまだ実現していない。

 今回、共同研究グループは、iPS細胞から胚葉体を誘導し、その胚葉体から外胚葉性上皮組織を形成する技術を開発。これによって移植したものの上皮組織を解析すると、その一部に天然の皮膚と同等の組織構造が形成され、毛包や皮脂腺などの皮膚付属器を持つ皮膚器官系が再生。毛穴を介して毛幹が萌出している様子も観察された。

 この再生皮膚器官系を外科的に分離し、ヌードマウスの皮下に移植したところ、ヌードマウスに正着し、移植14日後には再生毛がヌードマウスの皮膚表面より萌出し、その後、天然毛と同様に成長。また、少なくとも3カ月にわたりガン化することはなかった。

 また、再生皮膚器官系を移植した部位では立毛筋と神経組織が接続していることや、天然の皮膚と同様の割合、距離で3種類の体毛が配置されていること、同周期(約20日間)で生え替わることも確認できた。

(若杉 紀彦)