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新型コロナを40分で検出する「CONAN法」。東大が開発

~2019年に開発された国産ゲノム編集技術採用

ラテラルフロー試験紙による新型コロナウイルスRNAの検出(赤矢印:陽性)

 東京大学医科学研究所は3日、国産のゲノム編集技術「CRISPR-Cas3」を用いることで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出を最短40分で高精度に検出する手法を発表した。

 現在、新型コロナウイルスの診断方法としては、おもにPCR検査法と抗原検査法の2種類がある。PCR検査法は少ないウイルスでも高感度に検出できるが、専門技術や解析機器が必要なため、臨床現場での実施が難しく、特定の検査機関でしか行なえない。一方、抗原検査は30分程度で検出できるが、検出感度は低く特異度も高くないため、偽陽性や偽陰性がPCR検査と比較して多い。

 今回、同研究所先進動物ゲノム研究分野吉見一人講師、真下知士教授ら、およびウイルス感染分野、感染症分野、および理化学研究所放射光科学研究センターとの共同研究により、国産ゲノム編集技術「CRISPR-Cas3」を用いることで、サンプル中の微量なウイルスRNAを正確に検出する手法「CONAN(Cas3 Operated Nucleic Acid detectioN)法」を開発し、新しい迅速診断法として確立した。

新手法の特徴

 ゲノム編集に用いられる「CRISPR-Cas3」とは、細菌および古細菌に存在する獲得性免疫システムとして考えられており、ウイルスが細菌に感染したさいに、ウイルスのゲノムを切断することで細菌自らを守る仕組み。そのなかでも、複数タンパク質の複合体でDNAを切断するClass1と、1つのタンパク質で切断するClass2があるが、CRISPR-Cas3はClass1に属し、ゲノムを大きく削ることが特徴となっている。

 CONAN法では、狙った配列を認識するこのCRISPR-Cas3タンパク質と、検出用DNAプローブの混合液をバイオセンサーとして利用し、サンプル中に標的の配列があるかないかを検出する。

 検出の流れとしては、まず臨床検体からウイルスRNAを抽出し、等温PCR法(RT-LAMP、62℃、20分)でDNAを増幅。その後CONAN(37℃、10分)でゲノム編集を行ない、試験紙で検出を行なう。

新しい検出手法

 SARS-CoV-2のウイルスRNAを用いて検査した結果、数十個程度のサンプルでも、最短40分以内に試験紙で検出することに成功。実際に陽性患者10例、陰性由来サンプル21例の鼻腔ぬぐい液サンプルを用いて診断を実施した結果、陽性一致率は90%、陰性一致率は95.3%を示した。

 今回の検査法は新型コロナウイルスのさらなる感染拡大や重症化防止に大きく貢献できると期待され、今後は国内バイオベンチャー企業である株式会社C4Uを通してキット化し、医療現場で簡易的に使用できる新型コロナウイルス感染症の迅速診断薬として、早急に実用化することを目指す。

 また、毎年流行するインフルエンザの95%以上を占めるA型(H1N1pdm09、H3N2)についても同手法で検出に成功しており、新しいインフルエンザ診断法としての開発も同時に進めるとしている。