米Razerは、ゲーミングタブレットのコンセプトモデル「Project Fiona」を公開した。同社はかねてより、CESでハイエンドゲーマー向けのモバイルPCのコンセプトモデルを展示してきたが、本製品も10.1型のタブレットでありながら、「不幸な鳥や、ゾンビを倒す植物」で遊ぶようなカジュアルゲーム向けでなく、ハイエンドなゲームをプレイするためのデバイスと位置付けられている。
本製品をもっとも特徴付けるのは、左右に取り付けられたゲーミングコントローラ。形状はちょうどWiiのヌンチャクコントローラのようで、アナログスティックと人差し指のボタンに加え、親指部分にも4つのボタンがある。この部分を両手で持って利用するようになっている。
キーボード+マウスに比べて、ボタン数がかなり少ないので、これで満足にゲームできるのか不安があるが、昨今のゲームは、ゲームコンソールとのマルチプラットフォームであることが多く、それらの作品はゲームパッドで十分遊べるようになっているので、うまくボタンを割り当てれば、問題はないのだろう。もちろん、液晶はタッチセンサー内蔵なので、タッチ操作もできる。
現在公開されている主な仕様は、Core i7、1,280×800ドット表示対応10.1型液晶、3軸ジャイロセンサー、磁力センサー、加速度センサー、フォースフィードバック機能、Dolby 7.1chサラウンド、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth 3.0+HS。
コントローラ部 | ACを繋いだところ。ACコネクタにはUSBポートがある |
側面 | 背面 |
このほか同社は、キーボード右手に液晶付きのタッチパッドとマクロキーを備えたゲーミングノート「BLADE」や、同じように液晶付きタッチパッドとマクロキーを備えた「Star Wars: The Old Republic」用キーボードなども展示、デモしていた。
BLADE | 液晶はセカンダリモニタ扱いなのでWebページの表示なども可能 |
同等の機能を持ったStar Wars: The Old Republic用キーボード |
●LG
韓国LGは、液晶ディスプレイ、Ultrabook、NASなどを展示していた。
「IPS235W」は、HDMI、DVI、ミニD-Sub15ピンといった標準的な入力インターフェイスに加え、WiDi(ワイヤレスディスプレイ)とMHLにも対応する23型IPSパネルの液晶。MHLは、主にスマートフォンを接続するための規格で、スマートフォンのmicroUSBからディスプレイのHDMIに専用ケーブルで繋ぐと、スマートフォンの画面出力と充電ができる。
主な仕様は、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、応答速度が5ms(中間色)、コントラスト比が500万:1、輝度が250cd/平方m。台座は、高さ、スイベル、チルト調整のほか、ピボット回転に対応する。
IPS235W。ここでは左のノートPCの画面をWiDiで表示している | MHLによるスマートフォンからの入力にも対応 |
同社の最大の展示内容はTV関連で、中でも3Dには力を入れているが、PC用液晶もそれは変わりない。27型の「D2743P」、23型の「DM2383D」というフルHD/3D対応IPS液晶2製品や、裸眼3Dに対応する25型フルHD液晶「D2500N」、15.6型フルHD液晶搭載ノートPC「A540」を展示していた。
D2743P | DM2383D | D2743Pを使った3画面立体視の体験コーナー |
D2500N | A540 | これはシンクライアントを内蔵した「N2311AZ」という製品だが、「クラウドモニター」というちょっと強引なジャンルがつけられている |
Ultrabookは、14型の「Z430」と13.3型の「Z330」を展示。それぞれ13型級、12型級の筐体を採用したとしており、前者は厚さが19.9mm、後者は14.7mmとなっている。重量はそれぞれ、1.5kg、1.2kg。
NASは、リビングのインテリアと調和する、白く丸みを帯びたデザインの3製品を展示。「N1A5」は1ドライブ、「N2A3」は2ドライブで、「N2T3」は2ドライブに加え、バックアップ用のスーパーマルチDVDドライブを内蔵する。いずれも、iOS/Android端末や、Web経由でのアクセスや、DLNAに対応する。
Z430 | Z330 | 23型液晶一体型のV300。これも3D対応 |
N1A5 | N2A3 | N2T3 |
●Huawei
厚さ6.68mmの世界最薄スマートフォン「Ascend P1 S」。960×540ドット表示対応の4.3型有機EL、1.5GHzのデュアルコアCPU、OMAP 4460搭載など、フラッグシップモデルらしい高性能が特徴 |
Huaweiは、最新スマートフォン2機種「Ascend P1」および「Ascend P1 S」を発表した。双方の違いは本体の厚さで、Ascend P1は7.69mmであるのに対し、Ascend P1 Sは6.68mmと約1mm薄くなっており、Ascend P1 Sは“世界最薄のスマートフォン”であるとしている。実際に展示されていた製品を見ると、本体が非常に薄い上に、デザイン的にも完成度が高く、かなり魅力的な機種という印象を受ける。
また、プロセッサはTI製の1.5GHz動作のデュアルコアCPUである「OMAP 4460」を採用し、速度も“世界最速”と謳っている。このことから、Huawei製のスマートフォンの中でも、フラッグシップとして位置付けられる製品と考えていい。
本体の厚さ以外の仕様は、2機種ともほぼ同等。画面は4.3型の有機ELディスプレイSuper AMOLEDを採用し、表示解像度は960×540ドット。有機ELの表面にはキズに強いゴリラガラスを採用。カメラは、800万画素の裏面照射CMOS採用のメインカメラと、130万画素のフロントカメラを搭載し、メインカメラでは1080pのフルHD動画が撮影可能。通信機能は、5バンドのUMTS(850/900/1,700/1,900/2,100MHz)と4バンドのGSMに対応。また、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 3.0+HSも搭載。ストレージは、標準仕様ではRAMが1GB、ROMが4GBとされている。OSは、Android 4.0を採用している。
本体が薄いため、搭載されるバッテリ容量が気になるが、標準仕様では容量1,670mAhのバッテリが搭載される。ただ、バッテリ駆動時間は公表されていない。搭載CPUなど製品のスペックを考えると、長時間駆動をウリにする製品ではないものと思われる。ちなみに、このバッテリは本体内蔵タイプで、交換は不可能。また、容量1,800mAhのバッテリ搭載も検討しているようで、将来のモデルでは搭載される可能性があるという。
今回発表された2製品はどちらもグローバルモデルで、日本を含めた世界各国での発売が予定されている。現時点で、日本市場においてどの携帯電話キャリアから発売されるのかは不明だが、対応する3G通信帯域から考えて、イー・モバイルまたはNTTドコモのどちらかになるものと思われる。
また、Huaweiブースでは、未発表のLTE対応スマートフォン「Ascend P1 LTE」や、LTE対応モバイルルーターなども展示されていた。Ascend P1 LTEは、製品名からもわかるようにLTE対応のスマートフォンで、本体デザインはAscend P1/P1 Sと異なっている。また、960×540ドット表示対応の有機EL搭載は同じだが、CPUに1.5GHz動作のSnapdragon MSM8960を採用するなど、仕様面にも違いがある。ただし、発売時期などは全く決まっておらず、仕様もまだ固まっていないそうだ。
LTE対応モバイルルーターは、「E5776」と「E589」の2モデルを展示。このうち、E5776は、下り最大150Mbps、上り最大50Mbpsと高速なデータ通信速度に対応する上位モデル。最大10台の無線LAN対応機器の接続に対応し、20秒の高速起動も特徴とする。内蔵バッテリは3,000mAh。
E589は、下り最大100Mbps、上り最大50Mbpsに対応するとともに、本体デザインも異なっているが、最大10台の無線LAN対応機器が接続でき、3,000mAhのバッテリを搭載する点などは同様。日本での発売予定は現時点では未定だが、可能性はかなり高いと考えられる。
LTE対応モバイルルーター「E5776」。データ通信速度は下り最大150Mbps、上り最大50Mbpsと非常に高速。また、最大10台のWi-Fi機器が接続可能。20秒の高速起動も実現されている | こちらは下位モデルの「E589」。それでもデータ通信速度は下り最大100Mbps、上り最大50Mbpsと十分に高速だ |
●Casio
Casioブースでは、人間が視認できる光を使った通信技術である「可視光通信」のデモが行なわれていた。一般的な通信では、人が視認できない電波を利用することが中心だが、可視光通信では、文字通り人が視認できる光を使ってデータ通信を行なう。今回Casioブースで行なわれていたデモでは、赤、緑、青、黒の4色を利用し、それらを点滅させることでデータ通信を行なう。
もともとCasioは、特殊な光と専用のカメラを利用した可視光通信技術を長期間研究していたそうだが、今回はスマートフォンに搭載される一般的なカメラを利用して実現しているという点が大きな特徴。今回のデモでは、iPhoneとiPad、Androidスマートフォンを利用し、カメラでデータ送信用の光源を捉えると、メッセージや画像がAR表示するシステムが実現されていた。
今回のデモのシステムでは、8bitのデータを約2秒かけて転送できるシステムが実現されていた。ただ、8bitのデータでは256個の情報しか扱えないため、メッセージや映像を直接転送するのは不可能。そこで、実際に画面に表示するデータはクラウドに格納し、転送データにはクラウド上のデータのIDのみを含める。そして、そのID情報に、スマートフォンのGPSやWi-Fiで捉えた位置情報を組み合わせ、世界中のどの地点でもほぼ問題なく特定のデータのみの表示を可能としている。また、複数の光源を利用することも可能で、例えば4点の光源を利用すれば、3D ARも実現可能だそうだ。
この可視光通信のメリットは、目に見える光源であれば何でもデータを送信できるという点にある。しかも、カメラでその光を捉えられれば、距離が離れていてもよく、大人数が同時にデータを受けることも可能。例えば、街角に設置されている野外ビジョンなどを利用すれば、100m以上離れた場所でもデータが受けられるし、その周辺にいる全ての人が同時にデータを受けられる。そのため、特にデジタルサイネージ用途をかなり有望視しているそうだ。
今回のデモシステムの実現では、利用する機種によってカメラが捉える光の色の認識度に違いがあり、その調整にかなり苦労したそうだ。特にiPhone/iPadのカメラは、映像に強く補正をかけるため、難しかったそう。そのため、今回は三原色と黒を利用しているが、中間色も利用可能になれば、より効率良くデータ転送が行なえるため、その技術開発が今後の課題のようだ。現時点では、商用化やアプリの配布など具体的なスケジュールは決まっていないが、近い将来の商用化に向けて開発を進めるそうだ。
●Bluetooth対応G-SHOCKの応用例も展示
同じくCasioブースでは、Bluetooth 4.0対応G-SHOCKのデモも行なわれていた。このG-SHOCKは、日本で発表済みの「GB-6900」で、日本ではNECカシオ製のBluetooth 4.0対応スマートフォン「MEDIAS」シリーズへの対応が発表されている。GB-6900とMEDIASシリーズとの組み合わせでは、メールや着信の告知機能、時刻修正機能、スマートフォンのベルを鳴らす探索機能、スマートフォンとの距離が離れリンクが切れると警告を発する置き忘れ防止機能などが実現されており、ブースでもそれらが紹介されていた。
ただ今回のデモでは、他社製スマートフォンやノートPCなどを利用した新たな応用例も実現されていた。例えば、オムロン製の血圧計を利用し、計測した血圧や脈拍などのデータをGB-6900に転送して表示したり、スマートフォンで再生している音楽の曲名を表示するといったものだ。また、東芝のUltrabook「dynabook R631」を利用し、GB-6900が近付くと自動的にログオン、離れると自動的にロックがかかるという機能も実現されていた。
これらは、全てもともと発表されている機能と同じプロファイルを利用して実現されている。例えば、血圧計のデータ表示や再生中の楽曲名表示は、メールや音声着信の告知機能と同じプロファイルを、またPCのロックは置き忘れ防止機能と同じプロファイルを利用して実現している。逆に言えば、プロファイルにさえ対応すれば、機種依存はない。
事実、dynabook R631のロック機能は、東芝が実際に製品に搭載する方向で作業が進められているそうだ。さらに、現時点でGB-6900に対応するスマートフォンはNECカシオ製のMEDIASシリーズのみとなっているが、すでに他のメーカーはもちろん、海外のメーカーとも対応に向けた協議が始まっているそうで、Bluetooth 4.0対応のスマートフォンやPCなど、多くが将来的に対応する可能性が高い。そういった意味でも、今後の展開が楽しみと言える。
(2012年 1月 16日)
[Reported by 若杉 紀彦/若杉 紀彦]