【CES 2012レポート】Lenovo編
~4つのスタイルに変化するWindows 8機を初公開

カンファレンスで公開された「IdeaPad YOGA」

開催日:1月9日(現地時間)
会場:Venetian Hotel



 International CESのPressDayにあたる1月9日(現地時間)、LenovoはCES会場にもなっているVenetian Hotel内でプレス向けカンファレンスを開催した。

 既報のとおり、同社は8日に開催されたUnveiledの会場ですでに「ThinkPad T430u」や「ThinkPad X1 Hybrid」などのPC製品や、55型のSmart TV「Lenovo K91 Smart TV」を披露していたが、この日のカンファレンスでは隠し球として、ノートブックとしてもスレートPCとしても利用できる「IdeaPad YOGA(仮称)」(以下、YOGA)の開発をアナウンスした。

 プロトタイプとして公開されたYOGAはその名前が示すとおりに、キーボード部分とディスプレイパネル部分がその身をくねらすように可動するのが特徴。具体的にはそれぞれが2軸のヒンジで接続されている形状となる。キーボード面とパネル面をそれぞれ正対させればクラムシェルのノートブック、背中合わせにすればスレートPCになるという仕組みだ。

 ディスプレイパネルはタッチ操作に対応。プロトタイプはWindows 8で稼働しており、製品化の時期もWindows 8のローンチと同時期を目指している。スペック詳細は明らかにされていないが、CPUには(その時点で)最新のIntel製低電圧プロセッサを搭載するという。

●世界2位のPCメーカーに躍進

 プレスカンファレンスで最初に登壇したLenovoの会長兼CEOのYang Yuanqing氏は、昨年までの業績を振り返り、ワールドワイドにおける同社のPC出荷数が3年前の約2倍にのぼり、競合メーカーを抜いて世界第2位のPCメーカーになったと、急成長をアピールした。また、成長の鍵となっているのはスタンダードなPCの継続的な販売に加えて、チップテクノロジー、3Gインターネット、パーソナルクラウド、アプリケーション、コンテンツなどを投入して移行を進めることで、オフィスPCから時間と場所を問わないポータブルPCでも同様の作業環境を提供することを挙げている。

 また、やはり古きスタンダードであるキーボード、マウスといったインターフェイスから、タブレット、スマートフォンといったタッチ操作によるインターフェイスの積極的な導入を推進していくとした。これをPC、タブレット、スマートフォン、そしてTVからインターネットを経由して同一のコンテンツ、データにアクセスできる「Four Screen Strategy」と紹介した。中国市場に限定した製品ではあるが、会計年度の第3四半期には中国国内で650万台のスマートフォン出荷を達成、タブレット分野でもパーソナル向けのIdeaPadと、ビジネス向けのThinkPadタブレットで大きなシェアを確保しているとしており、前述の「Four Screen Strategy」の実現に自信をみせている。

Lenovoの会長兼CEOのYang Yuanqing氏が説明する「Four Screen Strategy」Smart TVとしては、世界で初めてAndroid 4.0を搭載する「Lenovo K91 Smart TV」

 そして、その「Four Screen Strategy」の4つめの機器となるのが、Smart TVの「Lenovo K91 Smart TV」だ。同氏によると、Smart TVとしては世界で初めて、Android 4.0(Ice Cream Sandwich)を搭載している。CPUはQualcomm製のデュアルコアプロセッサ「8060」をベースにしていて、TV視聴をはじめ、オンデマンド映像配信、アプリケーション配信などを軽快に実現する。具体例は挙げなかったものの、他社のSmart TVとの競合については、スマートフォンからTVまでスクリーンサイズを問わないキーとなるアプリケーションを投入することで優位に立つのを目標としている。当面は中国市場向けに投入されるという。

●4つのフォームを持つYOGA

 テーマは再びPCへと戻り、より革新的な製品の投入を行なうとして、ここで初めてYOGAを披露してみせた。スレートPCとノートブックのハイブリッド的な製品は以前にも紹介されていたが、それは(結果として)プロトタイプ的なものに過ぎず、今回のYOGAを本命と位置づけた。

 YOGAに自信をみせるのは、それがIntelが提唱するUltrabookの構想に非常に近いスペックを合わせ持つからに他ならない。ディスプレイサイズは13.3型の高解像度液晶(1,600×900ドット)を採用。これは、10点の同時タッチに対応するタッチスクリーンパネルになっている。本体厚は0.66インチ(約16.9mm)、重量は3.1ポンド(約1.5kg)。バッテリによる稼働時間は8時間とされている。

Ultrabookに匹敵する薄さであることを示してみせるYang Yuanqing氏YOGAのコンセプト。スレートPCとしての利用、Ultrabookとしての利用、Windows 8の搭載YOGAの主要スペック。いわゆるヨガのポーズとして、Laptop、Tablet、Stand、Tentの4つがある

 カンファレンス後に展示された実機を確認したところ、インターフェイスとしては、USB 3.0、USB 2.0、HDMI、メディアカードリーダーなどを備えている。本体自体は剛性を維持するためかマグネシウム合金製のボディということで、それがアルミニウム製で先行する他のUltrabook製品に比べてやや重い理由の1つと想像される。同社や他社のUltrabookと同様にバッテリは本体内に内蔵され、ユーザーによる交換は想定されていない。

 底面は足を除いて基本的にフラット。エッジの部分にはややテーパーがかかっているが、これはクラムシェル状態の持ち歩きを考慮してのことだろう。スレートPCとして使う場合も重ねあわせはキレイに納まっており、背面にキーボードさえなければ、ほぼタブレット感覚だ。展示のプロトタイプではスレートPCとしての利用時もキーボードに反応してしまっていたが、製品化の際には自動的に無効になるのが仕様であるとのこと。前述のとおり10点マルチタッチのパネルのほか、メニュー表示のためのWindowsロゴのホームボタンが1つ、パネル面に存在する。

 プロトタイプはWindows 8のDeveroper Previewと思われるバージョンで動作。出荷時期はMicrosoftによるWindows 8のローンチとほぼ同時期を目指すと説明され、具体的な日時は明らかにされなかった。製品価格に関しても未定。ただし、Ultrabook等の競合製品に対しても競争力のある価格を維持するのが目標とされている。

Ultrabookに匹敵するラップトップとしてのYOGA。13.3型の高解像度パネルとキーボードを搭載TabletとしてのYOGA。10点同時認識が可能なマルチタッチパネルStandとしてのYOGA。こちらはKIOSK的な用途を想定してのものだろうか
TentとしてのYOGA。ビデオ配信など、主に視聴を目的としたスタイルと思われるクラムシェル状態にしたYOGAの天面。こうして見ると縁がハードカバーの書籍のような同社のUltrabook「IdeaPad U300s」とよく似たデザインが採用されているYOGAの底面。バッテリはUltrabookと同様に内蔵されており、ユーザーによる交換は想定されていない。足のほかには、熱排気用と思われるスリットが見える
YOGAの向かって左側にあるインターフェイス。フルサイズのHDMIポートとUSB 3.0YOGAの向かって右側にあるインターフェイス。電源ポート、USB 2.0、メディアカードリーダ、そして特に説明されない「OS」と書かれた謎のスイッチと、電源スイッチがある電源アダプタはあまり見る機会のない特殊な形状をしている。なお、掲載した写真はいずれもプロトタイプであり、製品化の際は変更される可能性がある

●27型の大画面液晶一体型PC

 続いてプレスカンファレンスでは、プロダクトグループの上級副社長Peter Hortensius氏が登壇。オールインワンデスクトップの最新製品として発表された「IdeaCentre A720」の紹介を行なった。同氏によれば、本体機能は足となるスタンド部分に収納されているが、同製品は27型液晶搭載のオールインワン製品としてパネル部分が世界でもっとも薄い0.96インチ(24.5mm)を実現したという。YOGA同様に10点同時タッチが可能なマルチタッチパネルを搭載する。スクリーンは机に対して垂直となる90度から、机と水平な0度、そしてやや奥に向かって傾いた形となるマイナス5度までチルトが可能。

 27型で水平にした場合の活用方法はピンと来なかったが、ステージではデモとして、世界初めてのテレビゲームであるPONGに近いゲームが披露された。画面に表示されたラケット同士で玉を相手側のコートへと打ち合う単純なものだが、マルチタッチパネルを活かして、ラケットはそれぞれ2本の指ではさむ形で形成する。またエアホッケーのように、ラケット自体も前後に移動できていた。使用するアプリケーションにもよるだろうが、こうしたタッチパネルを活かした対面での操作というのは可能性がありそうだ。

「IdeaCentre A720」の紹介をする上級副社長Peter Hortensius氏「IdeaCentre A720」のスペック概要。最大の特徴はやはりパネル面のチルト可能なアングルと、10点同時のマルチタッチパネル採用にある

 最後の登壇者はMIDH担当の上級副社長Liu Jun氏。冒頭のYang Yuanqing氏の説明を引き継ぐ形で、PC、(従来型)携帯電話、TVのそれぞれが、タブレットとUltrabook、スマートフォン、Smart TVへと移行することによって、情報のクラウド化とコンバージョンが進むとあらためて説明した。

 披露されたデモは、スマートフォンやAndroid 4.0搭載のタブレット「IdeaTab S2-10」を使って前述のSmart TVをコントロールしたり、写真などのデータを共有したりする内容。あわせて「IdeaTab S2-10」の紹介も行われたが、スペック等は前日のレポートと同様なのでそちらを参照していただきたい。

「IdeaTab S2-10」を手にデモを行なう上級副社長Liu Jun氏クラウドの進化は、基本となる製品自体の移行とコンバージョンが進むと説明
「IdeaTab S2-10」。は10型液晶(1,280×800ピクセル)のタブレット端末本体のみでも10時間の駆動ができるほか、キーボード付きのドッキングステーションにもバッテリが搭載されており、組み合わせてノートブック的に利用した場合、約20時間の動作が可能。

(2012年 1月 11日)

[Reported by 矢作 晃]