Mobile World Congress 2011(以下、MWC)の開幕前日に「GALAXY S II」と「GALAXY Tab 10.1」を大々的に発表したSamsungのブースは会期初日から賑わいをみせた。これらの新製品に加えて、ブースには携帯電話機能のないGALAXY Sも出展されていた。シリーズの名称は「GALAXY S Wi-Fi」で、画面サイズの違いによって「GALAXY S Wi-Fi 5.0」と「GALAXY S Wi-Fi 4.0」の2モデルがある。電話機能はないが、SkypeなどのVoIPアプリケーションを使って通話をするためのマイクとビデオチャット用のフロントカメラを搭載している。Appleにおける製品ラインナップで例えるとiPhone 4とiPod touchの関係と考えるとわかりやすい。
「GALAXY S Wi-Fi 5.0」は携帯のGALAXY Sよりも一回り大きい5型の液晶パネルを搭載する |
GALAXY S Wi-Fiは、画面もGALAXY S IIに使われている有機ELではなく液晶パネル。「GALAXY S Wi-Fi 5.0」は本体サイズが78.2×141.3×11.9mm(幅×奥行き×高さ)で、実際に手に取ってみても一回り大きいことがすぐにわかる。一方の「GALAXY S Wi-Fi 4.0」はGALAXY S IIとほぼ同じ大きさだ。本体サイズのほかに5.0のリアカメラがLEDフラッシュを搭載していることに対して4.0は未搭載といった細かなスペック上の違いがある。いずれも日本市場向けの発売は未定とされているが、急速にAndroid搭載のスマートフォン需要が伸びているだけに、とりあえずAndoroid OSを試してみたかったり、あるいはすでに3G対応のポータブルルーターやWiMAXルーターを使っているユーザーの興味を引きそうな製品と言えそうだ。
●Xperia PLAYが注目を集めるSony Ericssonブース
Sony Ericssonブース。Ericssonグループが丸ごと1つのホールを使っている第6ホールの入り口付近に位置する |
Samsungと同様に、開催前日にいわゆるPlayStation携帯「Xperia PLAY」、スライド式のQWERTYキーボードが付いた「Xperia pro」、そして標準モデルに位置づけられる「Xperia neo」の3製品を発表したSony Ericsson。これらに加えて、1月のInternational CES 2011で発表された「Xperia arc」を加えた4製品が展示の中心になっている。展示ブースはEricssonグループが丸ごと1つのホールを使っている第6ホールの一角にあって、端末機メーカーが中心の第8ホールとは離れているものの、注目製品とあって初日から賑わいを見せていた。Sony Ericssonとしてタブレット端末の開発意向は表明してはいるものの、今回はサンプル機やコンセプトも含めてタブレット型の一般向け展示は行なっていない。
注目の「Xperia PLAY」はスライド式でPlayStationでお馴染みのコントローラパッドが引き出せるゲーマー仕様のAndroid携帯。初代PlayStationのゲームをエミュレーションする「PlayStation Suite」に対応し、対応ゲームを一般的なAndroid端末のような画面へのタッチではなく、ハードウェアキーで遊ぶことができる。ハードウェアキーは左側に四方向ボタン、右に△○×□ボタン、アナログスティック仕様のスライドパッド、そして背面にLキーとRキーを備えており、PlayStationのコントローラそのもの。
プレイ中の様子。左右の親指で四方向ボタンと△○×□ボタン、人差し指が背面にあるLキーRキーにかかっている様は、まさにPlayStationのコントローラである |
ゲームの配信は前述の「PlayStation Suite」のほかに、通常のAndroid Marketからダウンロードしたゲームであってもゲーム側が対応していれば、ハードウェアキーを使ってプレイすることが可能だ。今回のブース出展時点ではまだ「PlayStation Suite」が機能しておらず、デモ機に入っている「PlayStation Suite」を管理するPlayStation pocketというアプリケーションを起動しても、一覧には何も見えない状態だった。実際にプレイできたのは、いずれもAndroid Marketからダウンロード可能で、かつハードウェアキーに対応したレースゲームや格闘ゲームとなっている。
現実的には、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)によってその品質が管理されたゲームアプリケーションが「PlayStation Suite」側、一般的なAndroid端末にも対応して、かつハードウェアキーも利用できるというゲームがAndroid Market側という形で棲み分けることが想定される。そのコントロールをいかに上手に行ない、ブランド力のあるPlayStationタイトルをいかに多く、早期に移植して提供できるかが「PlayStation Suite」構想のカギを握るものと思われる。
●続々と登場するAndroidタブレット。3.0(Honeycomb)搭載はメーカー間に差
ブースの説明員が行なうデモンストレーションの様子。画面右下にパレットが表示されるHTC独自の拡張UIで、スタイラスペンを使った入力も可能になっていた |
HTCはメディア向けの新製品発表会を、MWCの会期2日目にあたる15日午前に開催。そのためホール内のブース展示は、その発表会を境にしてガラリと変わるという大がかりな仕掛けを行った。発表されたのは、7型タブレットの「HTC Flayer」や、本体にハードウェアキーとしてのFacebookボタンを備える「HTC ChaCha」、「HTC Salsa」など計5機種。
ただ展示ブース内で手にできるのは現行製品の後継機にあたる「HTC Desire S」と「HTC Wildfire S」(いずれもSが製品名に付加される形)で、注目の「HTC ChaCha」、「HTC Salsa」はガラスケース内の展示にとどまっている。7型タブレットの「HTC Flayer」も同様にガラスケース内に納められているものの、数台をブース説明員が手にしており、随時デモンストレーションを行なっていた。
搭載されるAndroidはスマートフォン、タブレットのいずれもAndroid 2.3(Gingerbread)で、タブレットである「HTC Flyer」もHoneycombではない。GingerbreadをHTCが独自にユーザーインターフェイスを拡張したスタイルになっている。特徴的なのは液晶パネル面が静電容量と感圧のハイブリッドになっていることで、(特殊な素材が先端についていない)一般的なスタイラスでペン入力が可能な点だ。
指先を使って操作するときには静電容量式。馴染みのあるユーザーインターフェイスではあるが最新モデルにもかかわらずAndroid 3.0(Honeycomb)搭載ではない | ガラスケース内に納められた状態で展示されている「HTC ChaCha」 | ガラスケース内に納められた状態で展示されている「HTC Salsa」 |
Motorolaは、International CES 2011で発表されたタブレット「Motorola XOOM」とスマートフォン「Atrix 4G」を中心に展示を行っている。Atrix 4GとXOOMに関しては弊誌既報のレポート等(その1、その2)で紹介されている。
MotorolaによるAtrix 4Gのデモンストレーション。USBポートが3基とHDMIポートが1基あるHD Multimedia Dockと呼ばれるドッキングステーションに接続することで、液晶ディスプレイのほか、USBキーボードやマウスが接続可能。いっぽう、Laptop Dockと呼ばれるドッキングステーションは、ヒンジの部分にAtrix 4Gのコネクタがある |
台湾のメーカーAltekによる沈胴式レンズを搭載するスマートフォン「HD14MP」。搭載するOSはAndroid 2.1で800×480ピクセル表示。カメラ機能は14メガピクセル、光学三倍ズーム。720Pによる動画撮影も可能とのこと |
展示会場内には、そのほかにも数多くのタブレットを紹介する大なり小なりのメーカーが出展を行っている。Androidタブレットに関しては金太郎飴とでも言うべき状態で数えるのが困難なほど。しかし、こちらのレポートにもあるように、製品仕様としてはAndroid 3.0(Honeycomb)搭載を案内しているタブレットのデモンストレーションでも、現状はほとんどがAndroid 2.2(Froyo)ベースで行なわれているのがMWC 2011における実情である。展示ホールをひととおり見てまわっても、実際にHoneycombが搭載されて、実機によるデモンストレーションを行なっているのはMotorola、Samsung、LG Electronicsの3社に限られている。うちMotorolaのXOOMに関しては、今回の展示でざっと触ってみた限りにおいてはlocaleに日本語がなかったことや、現状のMotorolaが日本市場に関しては積極的とは決して言い難い状況にあることから日本市場に投入される見込みは薄いと考えられる。
そのほか、Android以外のタブレット端末やユニークなスマートフォンに関しては写真を中心に紹介する。
(2011年 2月 21日)
[Reported by 矢作 晃]