【CES 2011レポート】Motorola編
~ノートPCスタイルに変身するスマートフォン「ATRIX」

ATRIX

会期:1月6日~9日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian



 Motorolaは、CESにおいて、ドッキングステーションを利用することで、ノートPCの形態に変身するスマートフォン「ATRIX」を発表した。

 ATRIXは、CPUにTegra 2、OSにAndroid 2.2を採用したスマートフォンだが、専用のドッキングステーションを使うことで、利用形態が大きく広がるのが特徴。ノートPCと言ってもWindowsベースではないが、利用形態は一般のAndroid端末を超えるものだ。

 ドッキングステーションには2種類あり、1つはHD Multimedia Dockと呼ばれるもの。ATRIXを横向きにして差し込む本ドックの見た目やサイズは、一般的な携帯電話の充電器のように見えるが、背後には、USBポートが3基とHDMIポートが1基ある。ここには、液晶ディスプレイのほか、USBキーボードやマウスが接続可能で、PCのように操作/入力することができる。

 キーボードはまだしも、スマートフォンにマウスをつないで何を操作するのかと疑問になるだろう。ATRIXは、ドックに接続するとWebtopと呼ばれる、独自のデスクトップが起動する。このデスクトップは、1,280×720ドットの高解像度表示のほか、アプリケーションのウィンドウ表示や、PC版とほぼ同機能を備えたFirefox 3.6を起動することができるのだ。

 このFirefoxを初めとした一部のWebtopアプリケーションは、右クリックに対応し、PCのようにコピー&ペースト操作などができる。また、FirefoxはFlash 10.1はもとより、HTML 5にも対応し、Google Docsや最新の各種クラウドWebアプリケーションを利用可能で、ビジネス用途にも無理なく対応できる。また、具体的な対応製品は不明だがUSBプリンタを接続して印刷できる。さらに、CtirixのXen Desktopを利用すると、仮想デスクトップでWindowsも利用できる。

ATRIX用HD Multimedia Dock背面にHDMIとUSB×3を装備このように、液晶ディスプレイ、キーボード、マウスなどをつないでPCのように操作できる。ちょっと分かりづらいがこのときスマートフォンは時計モードなど、一種のサブディスプレイになる
ドックに接続するとWebtopが呼びだされるこれがWebtopの画面。フル機能のFirefoxを搭載するほか、ウインドウ表示にも対応。ブラウザの画面はPC版と見分けがつかないほどマウスの右クリックや、プリンタにも対応

 ATRIXはビジネス向けだけでなく、マルチメディアに向けた機能も備える。ドックに接続した状態で、Entertainment Centerを起動すると、ATRIXに保存された写真、音楽、動画を液晶ディスプレイやTV上で再生できる。このとき、HD Multimedia Dockには、専用のリモコンも付属し、これを使って操作できるが、ATRIXの画面をリモコンモードやタッチパッドモードに変更して、操作することもできる。

 動画は720pまでのH.264、WMV、Xvid/DivXに対応するが、今後のアップデートで1080pにも対応する。

 Webtopのもう1つの特徴は、通常のスマートフォンとしてのデスクトップを画面上にウインドウあるいはフルスクリーン表示できることだ。当然各種AndroidアプリケーションもTVなどに投影して実行できる。さらに、電話の着信があったときは、やはりその旨が画面上に表示されるので、通話ボタンを押すと、ドックに接続したまま会話ができる。

Entertainment Centerを起動したところ付属のリモコンで操作できるが、ATRIX自身を有線リモコンにすることもできる
左側にウインドウ表示されているのが、通常のATRIXのデスクトップ画面。これもマウスで操作できるし、通話も可能フルスクリーン表示もできる

 そして、ATRIXの最大の特徴と言えるのが、ノートPC型のLaptop Dockと呼ばれるドッキングステーションが用意される点。Laptop Dockは、クラムシェル型になっており、開けると、キーボードとタッチパッド、および1,280×720ドット表示11.6型の液晶ディスプレイが現われる。ATRIXは液晶の背後に差し込むようになっており、正面からはノートPCにしか見えない。

 このドックにはストレージなどは搭載されず、機能面ではHD Multimedia Dockに液晶とキーボード、タッチパッドをつないだのと同じだが、追加バッテリだけは搭載されており、これにより全8時間の駆動が可能となる。USBポートも2基あるので、プリンタなど外部機器も接続できる。もちろん、この状態でもスマートフォンのマイクと、ドック側のスピーカーを使って通話ができる。

 正確なサイズは不明だが、重量は約1kgで、たたんだ時にはスリムになるので、普段はカバンの中に入れて持ち運び、スマートフォンは単体で使い、外出先や会社ではノートPC然として使うといった使い方が想定される。

Laptop Dockヒンジの左側を起こすと、コネクタが現われる液晶を開いたところ。画面を凝視しない限り、x86ノートPCにしか見えない
タッチパッドもマルチタッチ対応USBポートを2基装備タッチパッド手前のボタンを押すとバッテリ残量が分かる

 さらにATRIXは、スマートフォン単体でもいくつかの目立った特徴を持つ。1つはディスプレイで、同社がqHD(Quarter High Definition)と呼ぶ世界初の960×540ドット4型液晶を搭載した点。

 米国ではAT&Tが取り扱い(米国での製品名はATRIX 4G)、通信方式は下り最大14.4MbpsのHSPA+に対応。また、LTEにも対応し、ネットワークの準備が整う2011年後半にはLTEでも通信が可能となる。

 このほか主な仕様として、Tegra 2 1GHz、メモリ1GB、ストレージ16GB、LEDフラッシュつき500万画素カメラ(外側)、30万画素カメラ(内側)を搭載。インターフェイスは、WCDMA 850/1900/2100、GSM 850/900/1800/1900、IEEE 802.11b/g/n無線LAN(5GHz対応)、Bluetooth 2.1、micro USB 2.0、microSDカードスロット、指紋センサー、加速度センサー、環境光センサー、近接センサーを装備。

 本体サイズは、63.5×117.75×10.95mm(幅×奥行き×高さ)、重量は135g。バッテリ容量は1,930mAh。

 米国での発売は第1四半期で、OSは今後Android 2.3へのアップデートが予定されている。

液晶は960×540ドットの4型上部に指紋センサーを搭載

(2011年 1月 10日)

[Reported by 若杉 紀彦]