イベントレポート

Intel、UP3の第11世代Coreに最上位モデル「Core i7-1195G7」を追加

~フルサイズのビデオカードが入る「Intel NUC 11 Extreme Kit」も披露

Intelの第11世代Core H45を搭載した「Intel NUC11 Extreme Kit」(開発コードネーム:Beast Canyon)、フルサイズのビデオカードを内蔵できる小型PCとなる

 例年5月末から6月上旬に開催されるCOMPUTEX TAIPEIは、世界的なパンデミックの影響を受けて、5月31日~6月30日の1カ月に渡ってオンラインで開催されている。その初日となった5月31日午前10(台北時間、日本時間午前11時)には各社の先頭を切って、Intelが基調講演を実施。この中で同社は、昨年の9月に発表した第11世代Coreプロセッサの新モデルとして、Core i7-1195G7、Core i5-1155G7という2つを発表した。

 また、Intelは以前提携を明らかにしたMediaTekとの協業により作り出されたIntelブランドの5Gモジュール「Intel 5G Solution 5000」も同時に発表した。サブ6(6GHz以下の帯域)の5GNRに対応し、4G LTE/3D WCDMAとの下位互換性も備えたM.2スロット向けのモジュールとなる。日本の通信キャリアではソフトバンク、NTTドコモとKDDIでの動作確認が済んでいる。

 そのほかにも、第11世代Core Hシリーズを搭載したハイエンドゲーミングノートや、容積8Lでフルサイズのビデオカードが入る小型マシン「Intel NUC 11 Extreme Kit」などを披露した。

ターボモード時の周波数を引き上げた最上位モデルCore i7-1195G7

第11世代Coreの追加モデル、赤線で囲まれているのが新しいモデル(出典:Advancing PC Mobility、Intel)

 Intelは昨年の9月に開発コードネームTiger Lakeで知られる第11世代Coreを発表している。この第11世代Coreには、UP3/UP4という2つのパッケージが用意されている。その後、2021年の1月にTDP(熱設計消費電力)を35Wに拡張した第11世代Core H35、そして今月に入ってCPUコアを8コアに増やした第11世代Core H45を発表している。

 これらの製品がどのように異なっているかは下記の記事を参照してほしいが、大きく言うとUP4が超薄型ノートPC向け、UP3が薄型ノートPC向け、H35が薄型ゲーミングノートPC向け、H45が高性能ゲーミングノートPC向けという位置づけになる。

 今回Intelは、追加されたのは、UP3となるCore i7-1195G7と、Core i5-1155G7。いずれも従来モデル構成で最上位だったCore i7-1185G7、Core i5-1145G7の上位に位置づけられる。

【表1】第11世代Core(UP3)の一般消費者向け版モデル構成(Intelの資料より筆者作成)
プロセッサー・ナンバーCore i7-1195G7Core i7-1185G7Core i7-1165G7Core i5-1155G7Core i5-1145G7Core i5-1135G7Core i3-1125G4Core i3-1115G4
CPUコア/スレッド4/84/84/84/84/84/84/82/4
L3キャッシュ12MB12MB12MB8MB8MB8MB8MB6MB
内蔵GPUIntel Iris XeIntel Iris XeIntel Iris XeIntel Iris XeIntel Iris XeIntel Iris XeIntel UHD GraphicsIntel UHD Graphics
GPU EU(数)9696968080804848
メモリDDR4-3200/LPDDR4x-4266DDR4-3200/LPDDR4x-4266DDR4-3200/LPDDR4x-4266DDR4-3200/LPDDR4x-4266DDR4-3200/LPDDR4x-4266DDR4-3200/LPDDR4x-4266DDR4-3200/LPDDR4x-3733DDR4-3200/LPDDR4x-3733
オペレーティングレンジ12~28W12~28W12~28W12~28W12~28W12~28W12~28W12~28W
ベースクロック周波数2.932.82.52.62.423
シングルコア時5.0*14.84.74.54.44.23.74.1
すべてのコア時4.64.34.14.343.83.34.1
グラフィックス最大周波数1.41.351.31.351.31.31.251.25
GNA 2.0対応
*1Intel Turbo Boost Max Technology 3.0有効時

 Core i7-1195G7はベースクロックこそ2.9GHzと1185G7の3GHzよりも低いものの、従来モデルでは対応していなかったIntel Turbo Boost Max Technology 3.0に対応しており、シングルクロック時には5GHzに達し、4コア時には4.6GHzとなる。また、GPUのブースト時のクロックは、1.35GHzから1.4GHzに引き上げられている。これは従来のCore i7-1185G7の4.8GHz、4.3GHzを上回るもので、TDPの枠では上位製品となるCore H35のトップモデルとなるCore i7-11375Hと近くなっている。

 Core i7-11375Hとの違いはベースクロックで、Core i7-11375Hのベースクロックが3.3GHzであるのに対して、Core i7-1195G7は2.9GHzになる。ワーストケース時(システムが稼働を保証しないといけないスペック)の性能はCore i7-11375Hの方が高いものの、Turbo Boost時の性能はかなり似通ったものとなる可能性が高い。なお、GPUはCore i7-1195G7の方が高い1.4GHzになっているので、GPU性能はCore i7-1195G7の方が高くなりそうだ。

 Core i5-1155G7も同様で、ベースクロックは従来の最上位だったCore i5-1145G7とよりやや低めの2.5GHzに設定されているが、Turbo Boost時はシングルコアで4.5GHz、すべてのコアが有効な場合は4.3GHzとなる。なお、GPUの性能もやや引き上げられており、従来のCore i7のモデルと同じ1.35GHzに引き上げられている。

 CPUとGPUのターボモード時のクロックが引き上げられたことにより、性能は強化されているという。特に競合となるAMDの最上位モデルとなる「Ryzen 5800U」との比較では、AAAタイトルのゲームで大きな性能差が見られ、同じようにGPU性能が大きくモノを言うビデオエンコーディングやAIアプリケーションで大きく上回っているとIntelはアピールしている。

Ryzen 7 5800UとのAAAタイトルでのゲーム性能比較(出典:Advancing PC Mobility、Intel)
Ryzen 7 5800Uとのビデオ編集、AIアプリケーションでの性能差(出典:Advancing PC Mobility、Intel)

 なお、今回追加されたモデルは一般消費者向けのモデルだけで、ビジネス向けのvPro版は用意されない。また、UP4に関して新モデルは追加されず、モデル構成に変更はない。

日本のキャリアもカバーしたサブ6に対応5G通信モジュールIntel 5G Solution 5000

5G通信モジュール「Intel 5G Solution 5000」のスペック詳細(出典:Advancing PC Mobility、Intel)

 今回の基調講演でIntelはもう1つの発表を行なっている。それが同社初の5G通信モジュールとなる「Intel 5G Solution 5000」だ。Intelは既にモデムチップ事業と特許の多くをAppleに売却しており、自社製のモデムチップビジネスはLTEまでとなっており、5Gに関しては自社製のモデムチップは用意されていない。

 そこで、5Gのモデムチップは、MediaTekと協業して調達することを既に明らかにしており、今回、その具体的な製品が登場したことになる。モデムチップはMediaTekが提供し、ソフトウエアはIntelが開発して提供、そしてモジュールは長年Intelのパートナーとなっている中国のFibocomが「FM350-GL」という製品名で製造してOEMメーカーなどに提供する。

 Intel 5G Solution 5000は5G NR/LTE/WCDMAに対応しており、フォームファクターはM.2(39x52x2.3mm)のシングルサイドのモジュールとなる。サブ6(6GHz)以下の5Gの帯域に対応しており、ミリ波には対応していない。PCとの接続インターフェイスはPCIe Gen 3で5G NRでの下りは最大で4.7Gbps、上りは1.25Gbpsとなっている。LTEはCat.19に対応しており、下り最大1.6Gbps、上りは150Mbpsとなっている。

 eSIMの機能が標準搭載され、北米、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アジア太平洋地域、日本、オーストラリアで動作確認が行なわれており、日本ではソフトバンク、NTTドコモ、KDDIの3キャリアでの動作確認が取れているとIntelでは説明している。

 Intel 5G Solution 5000は第11世代Coreのほか、Alder Lake(今年後半に投入が予定されているIntelの次世代プロセッサ)もターゲットにしており、今年にはAcer、ASUS、HPなどから第11世代Core(UP3/UP4/H35/H45)を搭載したシステムに内蔵されて出荷され、2022年には30を越える製品に採用される見通しだ。

フルサイズのビデオカードが内蔵できる第11世代Core H45搭載のIntel NUC11 Extreme Kit

ALIENWARE Xシリーズ。6月1日にDellから詳細が明らかにされる見通し(出典:Real World Performance、Intel)

 このほかIntelは、第11世代Core H45シリーズを搭載した新しい製品を披露した。1つはDellのゲーミングPCブランド「ALIENWARE」の最新製品となるALIENWARE Xシリーズで、ALIENWARE独自のクアッドファン技術が特徴。なお、詳細は6月1日にDellから発表される予定だ。

ALIENWARE Xシリーズ

 もう1つはIntelの小型PCのブランド「NUC」シリーズの最新製品で、「Intel NUC11 Extreme Kit」(開発コードネーム:Beast Canyon)と呼ばれる小型PCの自作キットだ。CPUは第11世代Core H45が採用されており、フルサイズのビデオカードを内蔵させることができるのが大きな特徴となっている。

「Intel NUC11 Extreme Kit」(開発コードネーム:Beast Canyon)の概要(出典:Real World Performance、Intel)

 これまでIntelがNUCとして販売してきた中で、ビデオカードを内蔵できるものというと「Intel NUC 9 Pro」が既に発売されている。容積は5Lで、CPUはCoffee Lake世代の第9世代Coreが採用されていた。Intel NUC11 Extreme Kitは、CPUが第11世代Core H45に変更されており、CPUなどはマザーボードに直付けとなっている(H45はBGAパッケージのみの対応のため)。容積は8Lに拡張されており、それによりフルサイズのビデオカードが利用できるようになっている。

 CPUはできるだけ省電力なものがよく、ビデオカードはフルサイズの高性能なものを使いたいと考えるユーザーにとっては魅力的な存在になるだろう。販売開始時期や価格などに関しては公開されていない。

Intel NUC11 Extreme Kit。フルサイズのビデオカードを内蔵することができる