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国内未発表の高性能14型ノート「Prestige 14 Evo A11MO」をレビュー。最新CPUのCore i7-1195G7を搭載

Prestige 14 Evo A11MO。5月に発表された第11世代Coreプロセッサの新SKU「Core i7-1195G7」を搭載するノートPCだが、国内リリース時期や価格は現在のところ未定だ

 去る2021年5月31日、IntelはノートPC向け第11世代Coreプロセッサの新SKU「Core i7-1195G7」と「Core i5-1155G7」を発表した。従来の同世代製品よりも動作クロックを高めたモデルで、新たに最上位SKUとなった前者の動作クロックは最大5GHzに達するのが特徴。消費電力を抑えたCPUということもあって、薄型ビジネスノートPCなどで採用が見込まれており、搭載ノートPCは今夏のうちに市場に並び始める見込みだ。

 MSIの「Prestige 14 Evo A11MO」は、そんな最新SKU「Core i7-1195G7」または「Core i5-1155G7」を採用するクリエイター向けの薄型ノートPC。既にシリーズ展開されている14型ノート「Prestige 14 EVO」の最新モデルという位置付けで、新CPUの搭載に合わせてスペックを調整した製品となっている。

 国内での発売時期は現時点で未定だが、今回Intelから「Core i7-1195G7」搭載版のサンプル機材をお借りし、レビューできる運びとなった。

 この記事では同サンプルをもとに、特徴や使い勝手などのインプレッション、およびベンチマークによる性能チェックを実施していく。

Iris Xeグラフィックス搭載、ストレージはPCIe 4.0に対応するSSD

現時点で国内発表がないため日本のMSI公式Webサイトには記載がないものの、米国の公式サイトでは最新モデルのスペックが確認できる。型番が「A11M-〇〇〇」となっているのが従来モデル、「A11MO-〇〇〇」となっているものが最新CPU搭載の追加モデルだ

 「Prestige 14 Evo A11MO」は、MSIのクリエイター向けノートPCシリーズ「Prestige」の最新モデル。冒頭で述べた通り、Prestige 14 EVO自体は既に市場で販売されているシリーズだが、従来のラインナップはCPUに既存SKU「Core i7-1185G7」または「Core i5-1135G7」を採用し、型番も「Prestige 14 EVO A11M」と微妙に異なる。

 また、米国のMSI公式サイトからは最新モデルのスペック表が閲覧できるものの、国内発売時のラインナップがどうなるかは不明だ。

【表1】MSI Prestige 14 Evo A11MO-052の主なスペック
CPUCore i7-1195G7(4コア/8スレッド、2.9~5GHz、12MBスマートキャッシュ)
GPUIntel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
メモリ16GB (LPDDR4X、16GB×1/シングルチャネル)
ストレージ512GB(M.2NVMe SSD)
ディスプレイ14型フルHD(1,920×1,080ドット)非光沢IPS液晶
OSWindows 10 Home
ネットワークWi-Fi 6、Bluetooth 5.2
本体サイズ319×219×15.9mm(幅×奥行き×高さ)
重量約 1.29kg

 今回貸与されたサンプル機材は、CPUに最上位の「Core i7-1195G7」を搭載し、メモリ容量が16GB、ストレージ容量が512GBの「Prestige 14 Evo A11MO-052」。Intelが策定したモダンなノートPCの指標となる「Evoプラットフォーム」に準拠するなど、薄型ノートPCとしては高スペックな部類に入るが、やはり大きな特徴と言えるのはCPU性能、およびCPU内蔵GPUの「Iris Xe Graphics」だろう。

「Core i7-1195G7」。Turbo Boost Max Technology 3.0への対応もあり、従来よりブースト時の動作クロックが向上している

 「Core i7-1195G7」は4コア/8スレッド構成のCPUで、定格クロックこそ2.9GHzに留まるものの、特定条件下でブーストクロックを引き上げるTurbo Boost Max Technology 3.0に対応しており、シングルスレッド動作時のクロックは最大5GHzに到達する。

 動作クロックが引き上げられることで総合性能が向上しており、薄型ノートPCでも高いパフォーマンスを求めるユーザーにとっては大いに恩恵があると言っていい。

 同様にCPU内蔵GPU「Iris Xe Graphics」も、クリエイターPCとして求められる性能の担保に一役買っている。Iris Xe Graphicsは、従来のCPU内蔵GPUに比べ電力あたりの性能が向上しており、合わせてEU(実行ユニット)数や帯域幅も増加しているため、概ねローエンドのディスクリートGPUに近いパフォーマンスを見込める。

 「Core i7-1195G7」ではGPUの最大動作クロックが1.4GHzにアップしているため(Core i7-1185G7のGPU最大動作クロックは1.35GHz)、画像編集や動画編集はもちろん、負荷が軽めのPCゲームなども問題なくこなせるポテンシャルがある。

液晶ディスプレイは非光沢のフルHD 14型IPSパネルを採用
狭額縁デザインにより、画面占有率の向上とフットプリントの削減を実現している

 ディスプレイは14型フルHD液晶を採用。ベゼルを狭めることで画面の没入感を高める狭額縁デザインを採用しており、画面占有率はおおよそ90%に達する。sRGBカバー率は100%で、クリエイターPCらしく色再現性にも配慮している。

 メインメモリの容量は16GB(LPDDR4X)で、ストレージは512GB NVMe SSD。現行の薄型ノートPCとしては一般的な構成だが、SSDはPCIe 4.0接続に対応しているので、読み込み・書き込みともに極めて高速だ。このあたりは、後半のベンチマークで性能を紐解いていこう。

 薄型ノートPCのため有線LANコネクタは搭載しないが、ネットワークはIntel「Killer Wi-Fi 6E AX1675」モジュールによるWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)無線通信に対応する。

本体重量1.29kg、14型でも可搬性は良好

天板にはMSIのロゴがプリントされているが、それ以外は目立った装飾がないシンプルなデザイン
天板のエッジ部分にはダイヤモンドカット加工が施されている
右側面にはUSB 2.0ポート、microSDカードリーダ、オーディオジャックを配置
左側面にはUSB PD対応のThunderbolt 4(Type-C)ポート×2を配置。電源アダプタはこのポートに接続するため、充電中はどちらかが埋まってしまうのに注意
底面にはスピーカー用のスリットと通気口を配置。クリエイター向けを意識してか、まるでオーディオビジュアライザーのような通気口がユニークだ

 続いて、本体の外観やインターフェイス類などをチェックしよう。本体カラーはカーボングレーで、こちらは最新モデルで追加されたカラーバリエーションとなっている(従来のシリーズ製品はピュアホワイトのみ)。

 天面にはMSIのロゴがプリントされている一方、それ以外に過度な装飾はないので、高性能ビジネスノートPCとしての適性も高いだろう。天面のエッジ部分にはダイヤモンドカット処理が施されているなど、シンプルながら高級感を意識したデザインという印象だ。

本体重量は公称1.29kgだが、実測ではやや軽めの1.232kgを記録
電源アダプタと合わせても重量は約1.5kg。持ち運びに不便はしないだろう

 本体サイズは319×219×15.9mm(幅×奥行き×高さ)。13型クラスのノートPCよりは横幅と奥行が若干長くなるものの、狭額縁設計のため、14型ディスプレイ採用製品としては控えめな大きさだ。

 本体重量も公称1.29kgと一般的なモバイルノート並みであり、電源アダプタと一緒に持ち運んでも総重量は1.5kg程度。日頃の持ち運びも全く問題のない水準だろう。

ディスプレイ上のカメラはWindows Hello認証に対応
タッチパッドには指紋認証センサーも用意されている

 インターフェイスは、USB PD対応のThunderbolt 4(Type-C)ポート×2、USB 2.0ポート、microSDカードリーダ、オーディオジャックとシンプルな構成。USBポートも少なめで充電時はType-Cポートが1つ埋まってしまうため、拡張性はそれほど高くないが、Thunderbolt 4ポートによる映像出力など最低限の機能は備わっている。

 どうしても多くの周辺機器を接続する場合はドックを使う、Bluetooth接続のデバイスを利用するなど、多少の工夫は必要になるかもしれない。また、Windows Helloによる生体認証はカメラによる顔認証とタッチパッド部分のセンサーによる指紋認証に対応する。

キーボードは英字配列、84キーを採用。
ディスプレイを開いた状態ではヒンジによってキーボードに若干の傾斜が付く
タッチパッドは横長で、幅は140mmと広め
キーボード左下には、Intelが策定した「Intel Evo プラットフォーム」準拠の製品であることを示すシールが貼られている

 キーボードはテンキーレスの英字配列で、キー総数は84。キーピッチは実測19mm前後、キーストロークは公称1.5mmと十分で、メンブレン特有のややペタッとした打鍵感があるものの、取り立てて特徴的な部分はない。

 液晶パネルを開いた状態ではキーボードにやや傾斜が付くドロップダウン式のヒンジを採用することで、快適な打鍵に配慮している。

 ただし電源ボタンはキーボードの右端に吸収される形で配置されているため、慣れないうちはタイプミスに気を付けるか、Windowsの設定からボタンの動作を変更するといいだろう。

 なお、タッチパッドは実測140×65mm(幅×奥行き)と横長で大きめに取られており、左上部分には指紋認証リーダを搭載する。クリック時にカチカチと音が鳴るタイプだが、耳障りな印象はなかった。

 ちなみに、従来の国内モデルはキーボードが日本語ローカライズされているため、本製品も国内発売の際は日本語のキー配列が採用される可能性がある。

 バッテリ駆動時間は公証約12時間(JEITA 2.0)で、実際に画像・動画編集やYouTubeの動画視聴といった用途で活用してみたところ、おおよそ7時間程度は問題なく使用できた。

 がっつりとクリエイティブな作業に取り組む場合はもう少し稼働時間が短くなる可能性もあるが、電源の取れない場所で利用するにしても十分な余裕があるため、基本的には大きな問題はないと言ってよさそうだ。

「Prestige 14 Evo A11MO」の性能をベンチマークでチェック

 では、「Prestige 14 Evo A11MO」の性能をいくつかのベンチマークで計測してみよう。今回は「Cinebench R23」「PCMark 10」「3DMark」「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」「CrystalDiskMark」といったベンチマークアプリでパフォーマンスを計測した。なお、計測は全て初期設定の「バランス」で実施している。

【表2】Prestige 14 Evo A11MOのベンチマーク結果
Cinebench R23
CPU(Multi Core)5,583
CPU(Single Core)1,273
PCMark 10 v2.1.2519
PCMark 10 Score4,772
Essentials9,956
App Start-up Score12,941
Video Conferencing Score8,171
Web Browsing Score9,333
Productivity5,480
Spreadsheets Score6,312
Writing Score4,758
Digital Content Creation5,405
Photo Editing Score8,003
Rendering and Visualization Score3,740
Video Editting Score5,277
3DMark v2.17.7137
Time Spy score1,978
Time Spy Graphics score1,801
Time Spy CPU score4,476
Fire Strike score5,351
Fire Strike Graphics score5,846
Fire Strike Physics score13,811
Fire Strike Combined score2,079
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク
1,920×1,080ドット 最高品質4,468
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)7,843
CrystalDiskMark 8.0.4
1M Q8T1 シーケンシャルリード6,752.36MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト4,260.64MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード4,557.26MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト4,133.56MB/s
4K Q32T1 ランダムリード623.59MB/s
4K Q32T1 ランダムライト510.82MB/s
4K Q1T1 ランダムリード90.67MB/s
4K Q1T1 ランダムライト209.33MB/s

 各ベンチマークのスコアは、いずれもモバイルノートとして高水準だ。傾向として、総合ベンチマークでは高めのスコアを記録できている反面、「Cinebench R23」のようにCPUを100%使って計測するようなベンチマークではやや伸び悩んでいる印象もある。

 モニタリングツールで確認してみたところ、テスト開始直後にCPU温度が90℃を超えてしまい、比較的早い段階で全コアの動作クロックが3.2~3.3GHz前後まで落ち込んでいたため、このあたりが原因かもしれない。

 一方、特に映像処理やゲーム系のベンチマークではIris Xeグラフィックス搭載の強みが分かりやすい。「PCMark 10」のスコアは、動画・画像編集やレンダリングといったクリエイティブ用途のパフォーマンスを図るテストグループ「Digital Content Creation」が特に高水準だ。

 「3DMark」の総合スコアは高負荷な「Time Spy」のものこそ控えめだが、「Fire Strike」では総合スコアが5,000を上回っており、描画自体もカクつき感が少ない。ディスクリートGPUを搭載せずにこれだけのスコアを出せるのは、この世代のIntel CPU搭載ノートPCの大きな魅力と言っていい。

 比較的軽量な実ゲームベースの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果は、フルHD解像度で画質を最高まで引き上げた場合が4,468(評価:普通)、標準品質(ノ-トPC)に落とした場合が7,843(評価:やや快適)。どちらもゲーミングPCほど快適とはいかないが、十分にゲームをプレイできるスコアだ。同様に、競技性が高めのFPSタイトルやMOBA、対戦格闘ゲームなどは本製品でもプレイ可能だろう。

 「CrystalDiskMark」は、データサイズ1GiB、テスト5回の条件で計測を実施。PCIe 4.0対応ということで、シーケンシャルリードでは6,752MB/s、ライトでは4,260MB/s前後と、現行のSSDとしては最高レベルの極めて良好な速度が出ている。クリエイティブPCにおいてはデータコピーや読み込み速度も無視し難いが、その点においても「Prestige 14 Evo A11MO」はユーザーの期待に応えてくれるだけのスペックを備えていると言ってよさそうだ。

薄型ノートPCとして高水準の出来栄え。国内販売に期待

 「Prestige 14 Evo A11MO」は、クリエイター向けモバイルノートとして高いパフォーマンスを発揮するとともに、14型液晶ディスプレイを搭載しつつ重量1.29kgを実現した可搬性の良好さも魅力の製品だ。本来の用途であるクリエイティブに向くのはもちろんのこと、高性能ビジネスノートPCとしての適性もあり、幅広い活用シーンが想定できる。

 現時点で国内における販売に関する情報がないため価格についてはなんとも言えないが、米Amazonで「Prestige 14 Evo A11MO-043」(Core i7-1195G7、メモリ16GB、1TB SSD搭載モデル)は1,299ドル(約14万3,000円)で販売されており、CPUやストレージの素性の良さを考えれば、コストパフォーマンスも良好に見える。今後の国内発売に期待したい。