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超低電圧でもデータを保持できるSRAM技術、東京科学大学が開発

 東京科学大学の研究チームは10月31日、0.2V程度の超低電圧でデータを保持できる新たなCMOSメモリ技術を開発したと発表した。この技術を活用すれば、SRAMの待機電力を不揮発性メモリ並みに削減できるとしている。

 SRAMは、マイクロプロセッサやAIアクセラレータなどに用いられているメモリ。通常6つのトランジスタからなる記憶セルを用いているが、リーク電力の削減が難しく、ロジックシステムの待機時電力やAIアクセラレータのエネルギー効率改善に向けて課題となっている。

 研究グループでは、伝達特性を示すヒステリシスを低電圧でも最大限に拡大できる新型インバータを提案。これを用いて、0.2Vの超低電圧でデータを保持できる新型のULVR-SRAMセル(超低電圧リテンションSRAMセル)を開発した。従来のSRAMセルと比べ、ロードトランジスタとパストランジスタを1つに統合できるため、少ないトランジスタ数でセルを構成できるという。

インバータの回路構成。(a)従来型シュミットトリガ型ST0、(b)新構成のシュミットトリガ型ST1、(c)今回の研究で提案したインバータnST1

 開発したセルを解析したところ、動作電圧0.2V/動作温度25℃および85℃の環境において、従来の低電圧セルよりもはるかに強いノイズ耐性があり、0.16Vでも安定してデータを保持できることが確認できたという。また、開発したセルを使った8kBマクロのシミュレーションでは、ULVRモードを用いた場合、従来セルのSRAMマクロと比べて93%待機時電力を削減できることが分かったとしている。

 グループでは、今回開発した技術により、SRAM上のデータを保持しつつ待機時電力を不揮発性メモリ並みに削減できるため、IoTデバイスやエッジデバイスへの応用が期待できるほか、低電圧でのSRAM動作を生かしてPIM(Processing-in-Memory)型アクセラレータの高性能化も図れるとしている。

0.2Vの動作電圧におけるインバータの電圧伝達特性
(左)開発セルを使った8kBレイアウトのM[8TU]、(右)待機時電力の比較