西川和久の不定期コラム
キーボードが転生したらRyzen PCだった件。「HP EliteBoard G1a Next Gen AI PC」
2026年3月19日 06:08
CES 2026ではいろいろなPCが発表された。その中でもある意味注目を集めたのが、このキーボードタイプのPC「HP EliteBoard G1a Next Gen AI PC」だ。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
キーボードにRyzen AI 7 PRO 350+32GB+512GBを詰め込んだ逸品
キーボード一体型のPCといえば、最近だと「Raspberry Pi 500」ぐらいだが、大昔(笑)だとNECの「PC-8001」や富士通の「FM-7」、そして「MSX」シリーズなど数は多く、実は身近な存在だった。
ただ、当時のバックアップメディアといえばカセットテープが主流で、まだFD(フロッピーディスク)が一般的でなかったので、このフォームファクタに収まったが、その後、FDが普及するにつれ、1ドライブでの頻繁なメディア差し替えが実用上の壁となり、2ドライブ以上を積むと収まりにくくなった。またHDDは当初巨大だったため、キーボードのフォームファクタには入り切らず、あえなくキーボードと本体が分離した……的な感じだろう。
そして技術が進化し、今回、久々にこのフォームファクタにある意味回帰したのがHPの「EliteBoard G1a Next Gen AI PC」ということになる(その間に、テックウインドの「キーボードPC」などがあったが)。
仕様によると、国内では、CPUにRyzen AI 5 330/Ryzen AI 7 PRO 350、メモリ16GB/32GB、ストレージに256GB/512GB、そしてバッテリの有無の選択肢があり、いろいろSKUが分かれている。
手元に届いたのは最上位のRyzen AI 7 PRO 350/32GB/512GB/バッテリ内蔵モデル。主な仕様は以下の通り。
| HP「EliteBoard G1a Next Gen AI PC」(D73TJPT)の仕様 | |
|---|---|
| プロセッサ | Ryzen AI 7 PRO 350(8コア/16スレッド、クロック2GHz〜5GHz、キャッシュ24MB、NPU最大50TOPS) |
| メモリ | 32GB(32GB DDR5-5600 1基、最大64GB)、SO-DIMMソケット 2基(1ソケット占有済み) |
| ストレージ | M.2 2280 SSD 512GB(M.2 PCIe NVMe SSD) |
| OS | Windows 11 Pro(25H2) |
| グラフィックス | Radeon 860 Graphics/Type-C x2 |
| ネットワーク | Wi-Fi 7、Bluetooth 6 |
| インターフェイス | USB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD、DisplayPort Alt Mode、最大5V/1.5A給電対応)、指紋センサー、デュアルマイク/スピーカー |
| バッテリ | リチウムイオンポリマーバッテリ(2セル、32Wh)、モニター使用時:最大7時間 |
| その他 | キーボードバックライト、HP 675M ワイヤレスマウス(バッテリ同梱) |
| サイズ/重量 | 357.95×118.5×12.5~17.5mm、約768g |
| 直販価格 | 37万300円(3月18日時点のキャンペーン価格、48%オフ) |
プロセッサはRyzen AI 7 PRO 350。8コア/16スレッドでクロック2GHz〜5GHz。キャッシュ24MB。最大50TOPSのNPUを内包する。去年一世を風靡したRyzen AIプロセッサのミドルSKUだ。グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 860 Graphics。外部出力用に2つのType-Cが利用できる。
メモリは32GB DDR5-5600 1基。SO-DIMMソケットは2つあり1つ空き。シングルチャネル動作になるため、ベンチマークテストはやや不利になる。ストレージはM.2 2280 SSD 512GB(M.2 PCIe NVMe SSD)。OSはWindows 11 Pro。25H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用して評価した。
ネットワークはWi-Fi 7、Bluetooth 6。そのほかのインターフェイスはUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD、DisplayPort Alt Mode対応、最大5V/1.5A給電対応)、指紋センサー、デュアルマイク/スピーカー、キーボードバックライト。HP 675M ワイヤレスマウス(バッテリ同梱)も付属する。
バッテリはリチウムイオンポリマーバッテリ(2セル、32Wh)。モニター使用時で最大7時間。サイズ357.95×118.5×12.5~17.5mm。重量約768g。
価格はこの構成で37万300円(3月18日時点のキャンペーン価格)。高価だが、もともとEliteシリーズは企業向けの中でもハイエンドということもあり、いろいろ事情があるのだろう。なお、下位モデルであれば、23万2,800円から購入可能だ。
筐体は写真からも分かるように、テンキー付きのキーボードそのままの格好だ。後ろのType-Cも、(別の)PCへの接続用?っと思ってしまうほど(笑)。重量760gなので、ちょっとした重めのキーボードと変わらない(筆者所有のKeychron K1で643gだ)。
右上のキーが電源+指紋センサー。裏は手前左右にスピーカー。上部側面、手前がUSB 3.2 Gen 2 Type-C、奥がUSB4。中央部に排気用のスリット。キーボード面が少し傾くようになっている。
肝心の打鍵感は割とソフトでストロークも普通。カチャカチャ的な音がしないのは、オフィス用途を考えてのことか。割といい感じのキーボードだ。キーボードバックライトはオフ+2段階。オンの状態でも一定時間触らないと自動的に消灯する。
BIOSへのアクセスは起動時[ESC]キーだ。付属品はType-Cケーブル2種類、Bluetooth式マウス(バッテリ同梱)、65WのGaN ACアダプタ(112g)、キーボードケース。仕様には「HP HDMI マルチポートハブ」とあったが、これは試用機には含まれておらず、手持ちのUSB Type-Cマルチポートハブを使用した。
モバイルモニターへの接続はType-Cケーブル1本でOK。ただし、バッテリ駆動時は、モニター側の給電もバッテリを使うので、その分、消費電力は増える。サウンドは割としっかり出るもののパワー不足気味。ただ用途を考えると十分だろう。
キーボードということで設置位置が近い割にはノイズは思ったほどなく、気にならない範囲だ。発熱は、キーボード面に影響は出ず、後ろ側面のスリットから少し暖かい風がある程度となる。
業務用なら快適なパフォーマンス
初期起動時、壁紙の変更といくつか同社のアプリがインストールされている。構成が構成なので、一般的なアプリであればストレスなく動作する。
M.2 2280 512GB SSDは「KBG60ZNV512G KIOXIA」。仕様によると、シーケンシャルリードは4,800MB/s、シーケンシャルライト4,000MB/s。CrystalDiskMarkは公称値より少し高めの値が出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約443.5GBが割り当てられ空き358GB。BitLockerで暗号化されている。
Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 7 MT7925、BluetoothもMediaTek製だ。デバイスマネージャーにはNPUの項目が見えている。
主要なプリインストールアプリは、「My Computer」と「HP Support Assistant」。どちらもメンテ系になるだろうか。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench 2026。なお、Windowsストア版のCinebenchに関してはR23がなくなり、新バージョンとなったため、過去のデータとの比較はできない。
メモリがシングルチャネルなので全体的にスコアは低め、特に3D系は弱いのだが、それでもさすがRyzen AI 7 PRO 350…といったところだろうか。
バッテリ搭載モデルなので、PCMark 10/BATTERY/Modern Office(電源モード/バランス、明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)も実行してみたが、結果は4時間43分だった。
ただし、上に記したように、今回のテストはモバイルモニターへの給電も同時に行なわれている状態のため、モニター側の性能によって結構左右される。この結果はあくまでも参考程度に。本機の用途的に、外でバッテリ駆動の利用は考えにくく、社内移動程度なので特に問題ないと思われる。
| PCMark 10 v2.3.2912 | |
|---|---|
| PCMark 10 Score | 6,422 |
| Essentials | 8,658 |
| App Start-up Score | 7,775 |
| Video Conferencing Score | 8,565 |
| Web Browsing Score | 9,747 |
| Productivity | 10,793 |
| Spreadsheets Score | 14,189 |
| Writing Score | 8,211 |
| Digital Content Creation | 7,692 |
| Photo Editing Score | 11,954 |
| Rendering and Visualization Score | 6,549 |
| Video Editting Score | 5,814 |
| 3DMark v2.32.8853 | |
|---|---|
| Time Spy | 1,833 |
| Fire Strike Ultra | 1,167 |
| Fire Strike Extreme | 2,069 |
| Fire Strike | 3,760 |
| Sky Diver | 13,756 |
| Cloud Gate | 21,152 |
| Ice Storm Extreme | 120,521 |
| Ice Storm | 161,262 |
| Cinebench 2026 | |
|---|---|
| Multi Threads | 2,964 |
| Single Core | 528 |
| Single Threads | 377 |
[Read]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 5056.827 MB/s [ 4822.6 IOPS] < 1657.41 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2521.049 MB/s [ 2404.3 IOPS] < 415.76 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 366.114 MB/s [ 89383.3 IOPS] < 346.63 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 52.701 MB/s [ 12866.5 IOPS] < 77.56 us>
[Write]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 4395.243 MB/s [ 4191.6 IOPS] < 1903.80 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2829.281 MB/s [ 2698.2 IOPS] < 370.20 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 390.612 MB/s [ 95364.3 IOPS] < 335.13 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 117.353 MB/s [ 28650.6 IOPS] < 34.79 us>
以上のようにHP「EliteBoard G1a Next Gen AI PC」は、パッと見、キーボードでありながら、Ryzen AI 300シリーズを搭載した高性能PCだ。メモリは最大32GB、ストレージは最大512GBで、ビジネス用途に最適な仕様となっている。
法人向けのEliteシリーズなので基本的に企業向けの製品だが、昨今のミニPCの盛り上がりを見ると、個人向けにも十分需要があるはず。今後いろいろなバリエーションモデルが出ることを期待したい。



































