西川和久の不定期コラム

キーボードが転生したらRyzen PCだった件。「HP EliteBoard G1a Next Gen AI PC」

製品写真(モバイルモニターは含まれない)

 CES 2026ではいろいろなPCが発表された。その中でもある意味注目を集めたのが、このキーボードタイプのPC「HP EliteBoard G1a Next Gen AI PC」だ。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

キーボードにRyzen AI 7 PRO 350+32GB+512GBを詰め込んだ逸品

 キーボード一体型のPCといえば、最近だと「Raspberry Pi 500」ぐらいだが、大昔(笑)だとNECの「PC-8001」や富士通の「FM-7」、そして「MSX」シリーズなど数は多く、実は身近な存在だった。

 ただ、当時のバックアップメディアといえばカセットテープが主流で、まだFD(フロッピーディスク)が一般的でなかったので、このフォームファクタに収まったが、その後、FDが普及するにつれ、1ドライブでの頻繁なメディア差し替えが実用上の壁となり、2ドライブ以上を積むと収まりにくくなった。またHDDは当初巨大だったため、キーボードのフォームファクタには入り切らず、あえなくキーボードと本体が分離した……的な感じだろう。

 そして技術が進化し、今回、久々にこのフォームファクタにある意味回帰したのがHPの「EliteBoard G1a Next Gen AI PC」ということになる(その間に、テックウインドの「キーボードPC」などがあったが)。

 仕様によると、国内では、CPUにRyzen AI 5 330/Ryzen AI 7 PRO 350、メモリ16GB/32GB、ストレージに256GB/512GB、そしてバッテリの有無の選択肢があり、いろいろSKUが分かれている。

 手元に届いたのは最上位のRyzen AI 7 PRO 350/32GB/512GB/バッテリ内蔵モデル。主な仕様は以下の通り。

HP「EliteBoard G1a Next Gen AI PC」(D73TJPT)の仕様
プロセッサRyzen AI 7 PRO 350(8コア/16スレッド、クロック2GHz〜5GHz、キャッシュ24MB、NPU最大50TOPS)
メモリ32GB(32GB DDR5-5600 1基、最大64GB)、SO-DIMMソケット 2基(1ソケット占有済み)
ストレージM.2 2280 SSD 512GB(M.2 PCIe NVMe SSD)
OSWindows 11 Pro(25H2)
グラフィックスRadeon 860 Graphics/Type-C x2
ネットワークWi-Fi 7、Bluetooth 6
インターフェイスUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD、DisplayPort Alt Mode、最大5V/1.5A給電対応)、指紋センサー、デュアルマイク/スピーカー
バッテリリチウムイオンポリマーバッテリ(2セル、32Wh)、モニター使用時:最大7時間
その他キーボードバックライト、HP 675M ワイヤレスマウス(バッテリ同梱)
サイズ/重量357.95×118.5×12.5~17.5mm、約768g
直販価格37万300円(3月18日時点のキャンペーン価格、48%オフ)

 プロセッサはRyzen AI 7 PRO 350。8コア/16スレッドでクロック2GHz〜5GHz。キャッシュ24MB。最大50TOPSのNPUを内包する。去年一世を風靡したRyzen AIプロセッサのミドルSKUだ。グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 860 Graphics。外部出力用に2つのType-Cが利用できる。

 メモリは32GB DDR5-5600 1基。SO-DIMMソケットは2つあり1つ空き。シングルチャネル動作になるため、ベンチマークテストはやや不利になる。ストレージはM.2 2280 SSD 512GB(M.2 PCIe NVMe SSD)。OSはWindows 11 Pro。25H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用して評価した。

 ネットワークはWi-Fi 7、Bluetooth 6。そのほかのインターフェイスはUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(USB PD、DisplayPort Alt Mode対応、最大5V/1.5A給電対応)、指紋センサー、デュアルマイク/スピーカー、キーボードバックライト。HP 675M ワイヤレスマウス(バッテリ同梱)も付属する。

 バッテリはリチウムイオンポリマーバッテリ(2セル、32Wh)。モニター使用時で最大7時間。サイズ357.95×118.5×12.5~17.5mm。重量約768g。

 価格はこの構成で37万300円(3月18日時点のキャンペーン価格)。高価だが、もともとEliteシリーズは企業向けの中でもハイエンドということもあり、いろいろ事情があるのだろう。なお、下位モデルであれば、23万2,800円から購入可能だ。

どう見ても普通のテンキー付きキーボード。右上のキーが電源+指紋センサー
背面。手前左右(下側)にスピーカー。裏の多くはメッシュで吸気用
上部側面。手前がUSB 3.2 Gen 2 Type-C、奥がUSB4。中央部に排気用のスリット。キーボード面が少し傾くようになっている
付属品。Type-Cケーブル2種類、Bluetooth式マウス(バッテリ同梱)、65WのGaN ACアダプタ(112g)、キーボードケース
BIOS / Startup Menu。起動時[ESC]キーで表示
BIOS / System Information
モバイルモニターとの接続。どちらのType-Cポートでも可能だが今回はUSB4側に接続
重量は実測で760g
キーボードバックライト(オフ+2段階)
キーピッチは実測で約19mm

 筐体は写真からも分かるように、テンキー付きのキーボードそのままの格好だ。後ろのType-Cも、(別の)PCへの接続用?っと思ってしまうほど(笑)。重量760gなので、ちょっとした重めのキーボードと変わらない(筆者所有のKeychron K1で643gだ)。

 右上のキーが電源+指紋センサー。裏は手前左右にスピーカー。上部側面、手前がUSB 3.2 Gen 2 Type-C、奥がUSB4。中央部に排気用のスリット。キーボード面が少し傾くようになっている。

 肝心の打鍵感は割とソフトでストロークも普通。カチャカチャ的な音がしないのは、オフィス用途を考えてのことか。割といい感じのキーボードだ。キーボードバックライトはオフ+2段階。オンの状態でも一定時間触らないと自動的に消灯する。

 BIOSへのアクセスは起動時[ESC]キーだ。付属品はType-Cケーブル2種類、Bluetooth式マウス(バッテリ同梱)、65WのGaN ACアダプタ(112g)、キーボードケース。仕様には「HP HDMI マルチポートハブ」とあったが、これは試用機には含まれておらず、手持ちのUSB Type-Cマルチポートハブを使用した。

 モバイルモニターへの接続はType-Cケーブル1本でOK。ただし、バッテリ駆動時は、モニター側の給電もバッテリを使うので、その分、消費電力は増える。サウンドは割としっかり出るもののパワー不足気味。ただ用途を考えると十分だろう。

 キーボードということで設置位置が近い割にはノイズは思ったほどなく、気にならない範囲だ。発熱は、キーボード面に影響は出ず、後ろ側面のスリットから少し暖かい風がある程度となる。

業務用なら快適なパフォーマンス

 初期起動時、壁紙の変更といくつか同社のアプリがインストールされている。構成が構成なので、一般的なアプリであればストレスなく動作する。

 M.2 2280 512GB SSDは「KBG60ZNV512G KIOXIA」。仕様によると、シーケンシャルリードは4,800MB/s、シーケンシャルライト4,000MB/s。CrystalDiskMarkは公称値より少し高めの値が出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約443.5GBが割り当てられ空き358GB。BitLockerで暗号化されている。

 Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 7 MT7925、BluetoothもMediaTek製だ。デバイスマネージャーにはNPUの項目が見えている。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro(25H2)標準に壁紙の変更及び若干同社のアプリ
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 512GB SSDは「KBG60ZNV512G KIOXIA」。Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 7 MT7925、BluetoothもMediaTek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約443.5GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
AMD Software: Adrenalin Edition

 主要なプリインストールアプリは、「My Computer」と「HP Support Assistant」。どちらもメンテ系になるだろうか。

My Computer
HP Support Assistant

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench 2026。なお、Windowsストア版のCinebenchに関してはR23がなくなり、新バージョンとなったため、過去のデータとの比較はできない。

 メモリがシングルチャネルなので全体的にスコアは低め、特に3D系は弱いのだが、それでもさすがRyzen AI 7 PRO 350…といったところだろうか。

 バッテリ搭載モデルなので、PCMark 10/BATTERY/Modern Office(電源モード/バランス、明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)も実行してみたが、結果は4時間43分だった。

 ただし、上に記したように、今回のテストはモバイルモニターへの給電も同時に行なわれている状態のため、モニター側の性能によって結構左右される。この結果はあくまでも参考程度に。本機の用途的に、外でバッテリ駆動の利用は考えにくく、社内移動程度なので特に問題ないと思われる。

PCMark 10 v2.3.2912
PCMark 10 Score6,422
Essentials8,658
App Start-up Score7,775
Video Conferencing Score8,565
Web Browsing Score9,747
Productivity10,793
Spreadsheets Score14,189
Writing Score8,211
Digital Content Creation7,692
Photo Editing Score11,954
Rendering and Visualization Score6,549
Video Editting Score5,814
3DMark v2.32.8853
Time Spy1,833
Fire Strike Ultra1,167
Fire Strike Extreme2,069
Fire Strike3,760
Sky Diver13,756
Cloud Gate21,152
Ice Storm Extreme120,521
Ice Storm161,262
Cinebench 2026
Multi Threads2,964
Single Core528
Single Threads377
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  5056.827 MB/s [   4822.6 IOPS] <  1657.41 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2521.049 MB/s [   2404.3 IOPS] <   415.76 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   366.114 MB/s [  89383.3 IOPS] <   346.63 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    52.701 MB/s [  12866.5 IOPS] <    77.56 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  4395.243 MB/s [   4191.6 IOPS] <  1903.80 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2829.281 MB/s [   2698.2 IOPS] <   370.20 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   390.612 MB/s [  95364.3 IOPS] <   335.13 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   117.353 MB/s [  28650.6 IOPS] <    34.79 us>

 以上のようにHP「EliteBoard G1a Next Gen AI PC」は、パッと見、キーボードでありながら、Ryzen AI 300シリーズを搭載した高性能PCだ。メモリは最大32GB、ストレージは最大512GBで、ビジネス用途に最適な仕様となっている。

 法人向けのEliteシリーズなので基本的に企業向けの製品だが、昨今のミニPCの盛り上がりを見ると、個人向けにも十分需要があるはず。今後いろいろなバリエーションモデルが出ることを期待したい。