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ゴミ分別で賞金20万円のeスポーツ大会。遠隔ロボ使った実証実験

 シンガポールを拠点に社会課題解決型のGameFiプラットフォーム事業を展開するDigital Entertainment Asset Pte.Ltd.(DEA)は、廃棄物処理のDXを進めるRita Technologyと共同開発中の遠隔ゴミ分別ゲーム「Eco Catcher Battle(エコキャッチャーバトル)」を活用したeスポーツイベントを11月23日に新潟市で開催。12月16日には東京都内で実証実験イベントの成果報告を行なった。

 Eco Catcher Battleは、2018年に廃物処理向けのITソリューションの会社として創業したRita Technologyと、親会社のウエノテックスが共同開発した廃棄物自動選別ロボット「URANOS(ウラノス)」の遠隔操作機能を活用した遠隔ゴミ分別ゲーム。タブレット画面で操作することで、遠隔地にある実物のゴミ分別ロボットが動く。

遠隔ゴミ分別ゲーム「Eco Catcher Battle(エコキャッチャーバトル)」の概要
実際のプレイの様子。タブレットで実際にロボットを遠隔操作する
Rita Technologyと親会社のウエノテックスが共同開発した廃棄物自動選別ロボット「URANOS(ウラノス)」

 廃棄物処理における労働力不足の解消や、ゴミ分別意識の向上、地域活性化を目的としている。実証実験では小学生から高齢者、障害者を含む5人1組がチームとなり、遠隔ゴミ分別ゲームをeスポーツ化した。新潟、長野、フィリピンの3チームが参加し、ゴミ分別のスキルを競った。

今回はフィリピンからの参加を含む3チームで競われた

 実際のゲームの様子は下記のYoutubeにて公開されている。解説ゲストは、ごみ清掃芸人のマシンガンズ滝沢さん。実際のプレイの様子を見ると、かなり盛り上がっていたことが分かる。

社会貢献型eスポーツ 遠隔ゴミ分別ゲーム「Eco Catcher Battle」

 ジェトロ(日本貿易振興機構)の「対内直接投資促進事業費補助金」製造分野にて採択されており、11月23日のイベントは「廃棄物処理分野における労働力不足解消と一般市民啓蒙、地域創生を目的とした遠隔ゴミ分別ゲームのeスポーツ事業化の実証」の一環として実施された。産業廃棄物処理事業振興財団、新潟市に拠点を置き学校法人などを運営するNSGグループの後援も得て、環境教育と地域産業の発展を結びつける新たな取り組みとされている。

Eco Catcher Battleの3つの狙い

労働力不足を解消し、知識や意識を向上させる新しいイベント

Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.(DEA) Founder & Co-CEO 山田耕三氏

 DEA Founder & Co-CEOの山田耕三氏と、Rita Technology代表取締役の上野光陽氏は、それぞれ両者の概要を紹介したあと、現在の廃棄物処理の現状を実際の動画を交えて紹介した。いわゆる3K(きつい、汚い、危険)の現場であり、なかなか人が集まらない。離職率も高く、危険もある。だが廃棄物処理は必須であり、そこをなんとか技術で解決したいと考えているという。

Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.(DEA)の概要
Rita Technologyの概要
Rita Technology 代表取締役 上野光陽氏
廃棄物処理の現場では今でも多くの作業が手選別で行なわれている

 そこでRita Technologyが開発したロボットが「URANOS」だ。コンベア上を流れてくるゴミをディープラーニングによって認識し、ロボットアームを使って対象物に合わせて分別する。2019年に上市しており、国内4カ所で使われている。ネックはコストだが、いま人手不足となっていることからニーズはますます高まってくると考えているという。

 「手選別」を行なっている現場は国内で3,000程度あり、これらすべてをロボット化することを想定している。また国外にはまだ選別すら行なっていない国もあるが、それらの国でもやがて選別が始まると考えており、海外市場での展開も想定する。

AI搭載自動選別機 URANOS 【ウエノテックス】
AI搭載廃棄物選別ロボット『URANOS』

 当初、どんどん学習させればどんどん成長していくだろうと考えていたが、現場によって廃棄物はさまざまで、それらの多様性にはAIはまだ対応できないと気がついた。また仮に6人から4人へと、ある程度人手を削減できても、人手作業が残ってしまうと、24時間稼働はできない。それではロボットを生かしきれていない。

 そこで遠隔操作技術を使うことで、ロボット技術だけではカバーできない部分を狙う。今回のeスポーツ化は、労働力不足の解消、啓蒙、知識や意識の向上、そして地域活性化を目指す。あわせて、Digital Entertainment Assetと出会ったことで、グローバルへの報酬分配なども実験を行なった。

「エコキャッチャー」ゲームのルール

第1回大会の公式ルール。公式ゴミは4種類

 エコキャッチャーゲームでは、子ども・高齢者・障害者を含む5人1組でチームを組む。公式ゴミは、プラスチック、ペットボトル、カン、そしてリチウムイオン電池を含む製品の4種類。リチウムイオン電池に関しては、毎日どこかしらで電池が原因の火災が発生していることから、上野氏が入れたという。

 そしてボーナスアイテムとして協賛企業であるロッテのキシリトールガム ファミリーボトルが入れられている。得点もほかが1,000点や2,000点程度なのに対して1万点と大幅に高い。間違ったものを分別すると減点となる。1チームのプレイ時間は12分で、1人ずつ順番にプレイする。

DEA & Rita Technology「Eco Catcher Battle」オフラインモードでのデモプレイ

 白熱したゲームの結果、優勝したのは長野の廃棄物処理業者である直富商事の家族を中心とした「Team NAOTOMI」。正確なピッキングにより減点が少なかったことが効果を発揮した。優勝チームへの賞金は20万円、副賞はロッテキシリトールガム1年分だった。

優勝は「Team NAOTOMI」

「eスポーツで社会貢献」の今後は壮大

左からRita Technology 上野光陽氏、IKUSA 赤坂大樹氏、OGIX 小木曾祐介氏、DEA 山田耕三氏

 会見では、会場で大会を観覧した、ゲーミフィケーションを手がけるOGIX 代表取締役社長の小木曾祐介氏、企業や自治体向けにビジネス向けの遊びや体験型イベントを提案する事業を手がけるIKUSA 代表取締役の赤坂大樹氏も参加。4人のトークも行なわれた。

IKUSA 代表取締役 赤坂大樹氏

 赤坂氏は「eスポーツでの社会貢献は、価値の位置付けが難しい。今回は社会的価値とゲームの面白さがうまく融合していた。良いイベントだった」と語った。

OGIX 代表取締役社長 小木曾祐介氏

 小木曾氏は「回線の状態もあり、前日まで挙動が怪しい面もあった。無事、しっかり動いた。溜まっていく不要なデータを捨てつつ、重要なデータを活用する、ゲームでよく使われる技術を使った」と紹介した。実際にはロボットアームの手前部分に設置されたカメラから、AWS上に0.5秒ごとに画像を上げて見にいっているとのことだった。UIにはUnityが使われている。

 新潟・上越市にあるロボットのほうも「正確に動くのか、止まらないか、ヒヤヒヤしていた」という。またゴミをスムーズに流すための苦労もあったが、今後はそれらも自動化していきたいと上野氏は語った。構想から実施までは1年半くらいで、アイデアはシンプルなものの、ここまで持ってくるのは大変だったと振り返った。

今後の4つの狙い

 今後の展開としては、実際の工場での就労ツールとしての活用、全国の自治体や商業施設などで実施されるイベント展開、社会貢献型eスポーツカテゴリの立ち上げ、AI自動分別を実施するアノテーションのプラットフォームとしての活用を目指す。

障害者も遠隔就労可能になる

 障害者就労支援としてはすでに注目されており、上野氏は「切なる思いを託されているので早く実現していきたい」と語った。

 全国でのイベントとしてはIKUSAと提携して、誰でも楽しめる体験型イベントの1つとして実施していく。SDGs型イベントは多く行なわれているが、楽しい体験型イベントとすることで、興味がなかった人にも興味を持ってもらいやすくなるという。「素晴らしいコンテンツと質の高い人材が継続的に流入することで、経済的にも回りやすくなる」と赤坂氏は語った。

IKUSAと提携して誰でも楽しめる体験型イベントの1つとして実施

 「エコキャッチャーバトル」以外にも、油圧ショベルの遠隔操作を競う運輸デジタルビジネス協議会による「e建機チャレンジ」などが立ち上がっている。これらを1つのカテゴリとしてとらえることで、社会貢献型eスポーツ「Social Impact eスポーツ」を立ち上げていきたいと山田氏は語った。

ほかのeスポーツ系イベントと合わせて社会貢献型「Social Impact eスポーツ」立ち上げを目指す

 また、このシステムは、マシンラーニング用教師データのためのアノテーションをつけることにも使えると考えている。学習に必要となる教師データをゲームのインターフェイスを使って収集するためのプラットフォームを想定する。山田氏は「大きなうねりとしていきたい」と語った。

アノテーション用のプラットフォームとしても活用