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ロボットそば屋が海浜幕張に登場。従業員約1人分の作業量を代替

 JR東日本スタートアップ株式会社と、調理ロボットサービスを開発しているスタートアップのコネクテッドロボティクス株式会社は、2021年3月10日、株式会社JR東日本フーズと協力し、「駅そばロボット」を、「そばいちペリエ海浜幕張店」に本格導入すると発表し、記者会見を行なった。

 「駅そばロボット」は、生そばを投入し、茹でる、洗う、締める一連の調理行程を完全自動化したロボット。2020年に「そばいち nonowa 東小金井店」に実証実験として導入したロボットと比較すると、券売機との連動やロボットアームを2本とするなど全体を改良。3倍以上の生産能力向上を実現した。

 ロボット導入により、店舗全体の約12時間分程度、従業員約1人分以上の作業量を代替することができるという。また、ロボットを使うことで美味しさが安定するし、コロナ禍で高まった非接触のニーズに応えることもできるとしている。導入価格は設置費用20万円+月額25万円(税別)。コネクテッドロボティクスからはRaaS(Robotics as a Service)モデルで提供される。

 JR東日本スタートアップとコネクテッドロボティクスは、駅構内を中心とした飲食店・食物販店舗等の営業を行うJR東日本フーズが運営する駅そば店舗へ、2026年までに30店の導入を目指す。

券売機とも連動、非接触と生産性向上を両立

システム全体

 ロボットは券売機からの注文を受けるか、タブレットを使った直接指示を受けると、まずは1本目のロボットアームが、生そばを番重から取出し、テボ(茹でザル)へ投入。その後、2本目のロボットアームが、茹でる、洗う、締めるという一連の調理工程を行なう。最後の水切りと盛り付けは人が行なう。2本のアームを使うことで、1時間あたりのそば生産量は150食。

左のアームがそばを番重から取出し、右のアームが茹で、締めを行なう
2本腕で生産能力が従来比3倍に

 ロボットアームだけでなく、来客数に応じて電気量と水量の調整を調整する「ゆで麺機省エネシステム」も導入されている。コネクテッドロボティクスが独自開発したもので、年間でおよそ30万円の光熱費削減が見込めるという。

「ゆで麺機省エネシステム」も導入。IoTにも力を入れる
そばの上にかけられているフィルムをはがす操作もロボットが自動で実施

 東小金井の店舗での実証実験時の生産量は1時間40食程度で、生産量よりもそばの品質を保つことを重視していた。今回、他店舗への本格導入においてピーク時間帯の生産量を上げるために、全体のスループットのボトルネックとなっていた「券売機で購入した券を店員に渡したあとに作りはじめる」点を改良。券売機でそばが注文されると、厨房でロボットがすぐに茹ではじめるようになった。これによって生産量を上げると同時に、コロナ禍で必要になった「非接触」を保つことができるようになった。

券売機と連動する
ロボットの動作状況モニター画面。3人分を茹でていることを示している

駅そばの新しいかたち

人とロボットが協働するそば屋

 ロボットを使うことで、パートへの教育の必要がなくなり、味の均一化にも役立つ。新型コロナ禍によって来店者数が大きく変動しているため一概には言えなくなっているそうだが、幕張店では一般的な時間帯は2人の店員で対応しているが、ピーク以外のアイドルタイムは1人でよくなるという。

 なぜ海浜幕張店での実施になったかという点については、「幕張メッセのゲート駅でもある。ロボットで駅そばをつくることはペリエ全体の魅力にもつながる」(株式会社千葉ステーションビル代表取締役社長 弭間俊則氏)とのことだった。JR東日本フーズ代表取締役社長の日野正夫氏は、「品質均一化は顧客にもメリットが大きい。海浜幕張駅にいらっしゃることがあれば是非ご利用いただきたい。今後の駅そばの新しいかたちを示すものだと考えている」と語った。

株式会社千葉ステーションビル代表取締役社長 弭間俊則氏
JR東日本フーズ代表取締役社長 日野正夫氏

フライヤーの自動化も視野に

コネクテッドロボティクス 代表取締役CEO 沢登哲也氏

 なおコネクテッドロボティクスは、2月16日~19日に開催された「国際ホテル・レストランショー」では、今回導入されたそばを茹でるロボットのほかに、かき揚げやコロッケをトッピングするロボットや、下げられた食器から自動で残飯を捨てて食洗機に投入するためのロボット、トレー重量検知を使った食材の残量ウィッチャー、AIを活用した自動会計機「フードスキャンレジ」なども出品していた。今回の店舗ではこれらは導入されていないが、今後の検討課題だという。

 コネクテッドロボティクスの沢登哲也氏は「ロボットだけではなく一体で価値を生み出すことが重要。我々の社名は『コネクテッド』でつなぐことを重視している。お店全体の価値アップに連動させるところを売りにしていく」と語った。

一番人気は「かき揚げそば」。現在はかき揚げは人が揚げてトッピングしている