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ASUS、Core Ultra シリーズ2採用のミニPCやノートなどをIFAで展示

ASUSが発表したCore Ultra シリーズ2を搭載したCopilot+ PCになるミニPC

 ASUSは、ドイツで9月6日(現地時間)より開幕する欧州最大のデジタル展示会IFA 2024に先だって4日に記者会見を開催し、「Lunar Lake」ことCore Ultra シリーズ2(以下Core Ultra シリーズ2)を搭載した製品を展示。ノートPCのほか、同社がIntelより引き継いだミニPCのブランドとなるNUCでは、Core Ultra シリーズ2を搭載した「NUC 14 Pro AI」が発表されるなど注目を集めた。

Core Ultra シリーズ2を搭載した27時間のバッテリ駆動を実現したZenbook S 14

ASUSが開催した発表会では多数のAI PCが発表された

 ASUSは、6月のCopilot+ PCの発売ではいち早くSnapdragon Xシリーズを搭載した製品を投入したほか、7月にもほかのPCメーカーに先駆けてAMD Ryzen AI 300シリーズ(Strix Point)を搭載したCopilot+ PCに将来ソフトウェアでアップグレード可能なAI PCを発表するなどしている。

Intel 上級副社長 兼 クライアントビジネス事業部 事業部長 ジム・ジョンソン氏

 IFAでも同様で、Core Ultra シリーズ2を発表したIntelと共同マーケティングの形で、発表会を開催。発表会の会場にもIntelロゴが入っており、Intel 上級副社長 兼 クライアントビジネス事業部 事業部長 ジム・ジョンソン氏がゲストとして呼ばれて、Core Ultra シリーズ2の特徴を説明したほか、Zenbook S 14の開発などでIntelとASUSが協力していることなどが説明された。

Zenbook S 14のスペック
性能が従来世代と比較して大幅に引き上げられている

 今回もっとも注目を集めたのは、Core Ultra シリーズ2を搭載したZenbook S 14。Core Ultra シリーズ2を採用したことで、従来モデルに比べて性能もバッテリ駆動時間も強化されているとASUSは強調した。

Core Ultra シリーズ2の採用で基板はより小さくコンパクトに
より薄型のベイパーチャンバーを採用

 熱設計も強化されており、薄さを確保し、かつCore Ultra シリーズ2の上位版のPBP(TDP)となる28W(Core Ultra シリーズ2のPBPは30Wだが、オンパッケージのDRAM分が2Wになるので、それを省いた分という表記と思われる)の熱設計枠を確保するため、新しい放熱素材として超薄型ベイパーチャンバーが採用されている。

 ベイパーチャンバーは内部に液体を循環させることで、熱伝導率を向上させるものだが、その構造上普通のヒートパイプに比較してやや厚みが出てしまうという課題がある。今回ASUSは、部材メーカーと協力して薄くするなどの工夫をして、従来モデル(Zenbook S 14 OLED)よりも薄い筐体(14mmから11mm)を実現している。

セラルミウムと呼ばれるアルミとセラミックを組み合わせた素材を採用
セラルミウムの素材を採用したZenbook S 16の天板

 ディスプレイはOLEDパネルを採用している。3K/120Hzのスペックになっており、画面占有率が90%を超えるなどの狭額縁になっている。筐体にはASUSが4年をかけて開発した「セラルミウム」が利用されている。基本的にはセラミックの素材だが、セラミックとアルミニウムのいいところを取り込んだような素材になっているとASUSは説明している。

 バッテリは72Whとこのクラスにしてはサイズが大きなバッテリを搭載しており、重量は1.2kgと大容量バッテリを搭載している割には軽量になっている。Core Ultra シリーズ1を搭載したZenbook S 13 OLEDと比較すると、ビデオ再生で71%、50のタブを開いたWebブラウザ利用で38%ほどバッテリ駆動時間が増えている。

ASUS Zenbook S14
左右のポート
底面カバー
デュアルファンによる冷却機構
キーボードとタッチパッド、タッチパッドはサイズが大きくなっている

 CPUはCore Ultra 9 288V、258V、256V、226Vが選択肢として用意されており、プロセッサーナンバーの数字末尾が8である場合には32GB、6の場合には16GBのメモリとなる。ストレージは1TB、Wi-Fi 7/Bluetooth 5.4に対応している。ASUSによれば価格は欧州での1499ユーロ、出荷時期は10月が予定されている。

Zenbook S 16
Vivobook S 16 Flip
Vivobook S 14

 このほかにも、16型版となるZenbook S 16、さらにはVivobook S 14、Vivobook 16 FlipなどのCore Ultra シリーズ2を搭載したノートPCを発表している。

Expertbookの新シリーズ「Pシリーズ」が発表、独自のNPUを利用して生産性を引き上げるツールをバンドル

新しいPシリーズを追加したExpertbook

 同社は、企業向けのノートPCとして「Expertbook」を展開している。これまで一般消費者向けの製品を中心にビジネスを拡大してきたが、近年はこのExpertbookで、3年保証(製品によるがバッテリの保証を含む)、国際保証、オンサイト修理など、企業向けで必要とされる保守面でのサービスも拡張してきている。

 従来Expertbookのシリーズは、「B9」や「B5」などの、Bシリーズの製品が投入されてきたが、今回新しいシリーズとしてPシリーズが投入されることが明らかにされた。Pシリーズは企業向けのAI PCという意味で、今回は最上位のP5(14型)と最廉価モデルのP1(15型、14型)の3つの製品の投入が明らかにされた。

Expertbook P5のスペックや特徴
裏ぶたをあけるとバッテリがツールレスで取り外せる

 最上位モデルのP5はCPUがCore Ultra 288V/226V/258Vで、メモリは数字の末尾が8の製品が32GB、6の製品が16GBになる。ストレージは最大2TB(M.2 2280と2230と2つのスロットが用意されている)、ディスプレイは14.0型WQXGA(2,560×1,600ドット)で、63Whのバッテリを搭載している1.29kgの重量となっている。

 また、ユニークなところではバッテリが裏ぶたを外すだけで、ツールフリーで交換可能になっており、バッテリの置き換えが容易な構造になっている。

AI Meeting Minutes

 Pシリーズには、ASUSが開発したAIツールが用意されている。たとえばAI Meeting Minutesは、会議の文字起こしやその要約ができるほか、同時にそれを英語から日本語、ないしはその逆のように翻訳も行なってくれる機能になっている(現時点では中国語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、日本語に対応)。ASUSによれば、こうした機能はすべてローカルにあるNPUで実現しており、データがインターネットに出ていかないので、セキュリティに敏感な企業ユースでも使えると説明している。

Expertbook P5
開発意向表明が行なわれたExpertbook P3も参考展示

Core Ultra シリーズ2搭載NUC 14 Pro AI

ASUSのNUC 14 Pro AI

 ASUSはIntelのミニPC「NUC」事業を引き継ぎ、現在、販売などが行なわれている。今回その最新製品となる「NUC 14 Pro AI」を発表した。NUC 14 Pro AIは、開発コードネーム「Lunar Canyon」で知られる製品で、CanyonというIntelのミニPCのコードネームがついていることからも分かるように、IntelのNUCシリーズを継承する製品になる。

内部の冷却機構
ポート
スペック、Copilot+ PCの要件にミートしている

 SoCとしてCore Ultra シリーズ2(現時点ではどのSKUになるかは発表されていない)が採用されている。メモリは最大32GB、ストレージにはM.2 2280を本体に装着することが可能になっている。Wi-Fi 7とBluetooth 5.4に対応しており、2つのThunderbolt 4や2.5Gigabit Ethernetなど充実したポート類が特徴だ。

本体

 なお、このNUC 14 Pro AIはCopilot+ PCにアップグレード可能だという。確かにCopilot+ PCの要件である40TOPSのNPU、16GBメモリ、256GB以上のストレージという要件を満たしており、もう1つの要件であるWindows 11 Secured Core PCへの対応も、Core Ultra シリーズ2自体がPlutonに対応していることやNUC 14 Pro AIがハードウェアTPMを搭載していることでクリアできる。

 現状としてはCopilot+ PCはOEMメーカーが販売している製品ばかりのため、NUC 14 Pro AIのようなユーザーがストレージの導入やOSをインストールする一種の自作機も対象になるのかは不明だが、その答えはNUC 14 Pro AIの発売や、11月に予定されているCopilot+ PCのx86対応を待つ必要があるだろう。それが実現すれば、低価格でCopilot+ PCを組み立てるという選択肢ができることになるため、その動向は今後も要注目だ。