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TSMC、3nm以降の次世代プロセスも順調。熊本工場は2024年末までの生産開始を目指す
2023年7月3日 06:33
TSMCは6月30日、同社の技術などに関する記者向け説明会を開催した。国内での開催は約4年ぶりで、TSMC ビジネス・ディベロプメント担当シニア・バイス・プレジデントのDr. Kevin Zhang氏と、TSMCジャパン株式会社 代表取締役社長 小野寺誠氏から説明が行なわれた。
次世代3nm/2nmは現状計画通り。車載向けにも先端プロセスを提供
まず、Kevin Zhang氏が登壇し、同社の最新技術などに関して説明した。TSMCでは、最高の技術を世界に提供すべく、積極的に技術投資を継続。2022年には投資額が54億7,200万ドル、研究開発に関わる人員は8,558名まで拡大したという。
直近では2017年から2018年にかけて7nmプロセスを業界で最も早く導入。それに続く5nmファミリーでは2020年にN5を導入後、性能改善を進めた派生製品としてN5P、N4、N4P、N4Xを展開してきた。最新のN4XではN5と比べ、性能面で17%、チップ密度で6%の向上を実現した。
次世代の3nmプロセスとなるN3については、計画通り2022年第4四半期にすでに量産を開始。その改良版となるN3Eについても、すでに技術認定をクリアし、目標としている性能と歩留まりは達成できていて、2023年後半にも量産を開始する予定だと説明した。N3EはN5に対し、18%の性能向上、32%の省電力化を実現し、ロジック密度は1.6倍、チップ密度は1.3倍に達するという。
これに続くN3Pは2024年に生産を開始予定で、N3Eと比べて、5%の性能向上、5~10%の省電力化、1.04倍のチップ密度向上を実現。その先、2025年の量産を予定しているHPCアプリケーション向けのN3Xでは、Fmaxゲインを追加し、さらなる性能向上を図るとしている。
一方、自動運転などの技術革新により、最先端ロジック技術や演算性能の需要が高まる自動車産業に向けては、N3EをベースとしたN3AE(Auto Early)を投入。正式な車載用製品となるN3Aに先行してProcess Design Kits(PDK)として提供し、車載用製品の早期開発および市場投入の迅速化を後押しする。
その先については、まず2nmプロセスのN2は、2025年の量産開始に向けて順調に技術開発が進んでいると説明。FinFETに代わるナノシート技術では、N3Eと比べて10~15%の性能向上、25~30%の省電力化、1.15倍のチップ密度が実証できたという。
今後の展望としては、ナノシートやCFETといった技術のほか、カーボンナノチューブをはじめとした低次元材料などの研究も進めており、今後も継続して最良のトランジスタ技術を提供していくと述べた。
また同社は、ロジック技術以外の製造技術としてスペシャリティ・テクノロジーも提供しており、たとえば5Gなどの無線通信、AI、ディスプレイ技術などが要求されるスマートフォンや、多数のセンサーとその情報処理、電源回路技術などが求められる自動車の分野においても活用されていると説明した。
無線通信技術に関しては、2023年後半に投入予定のN4PRFについても触れ、2021年投入のN6RFと比べ、1.77倍のロジック密度と45%のロジック電力削減を実現するという。
加えて、こちらも長年技術投資を続けてきた分野だという3DFabricについても紹介。性能面でモノリシックな接続性を実現する3D Si積層技術のほか、高い柔軟性を顧客に提供するCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)やInFO(Integrated Fan-Out WLP)といった先進パッケージング技術を提供していると説明した。
国内は2022年に売上が急成長。熊本の工場も計画通り建設中
続いて、小野寺誠氏が登壇し、日本国内におけるTSMCの取り組みについて説明した。日本国内の拠点としては、「TSMC Japan Design Center」を2020年に横浜、2022年には大阪に開設。ワールドクラスのデザインチームが先端半導体技術の開発を行なっている。
加えて、パッケージング材料などの研究開発を行なう「TSMC Japan 3DIC R&D Center」を筑波に構える。こちらは2021年設立で、2022年には研究開発用のクリーンルームも完成した。基板や材料などの分野は国内のサプライヤーが強いことから、台湾との架け橋して協業を高めていく立ち位置にもなっている。
さらに、TSMCに加えソニーセミコンダクタソリューションズらも出資している子会社JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)の半導体工場が熊本で建設中。こちらはスペシャリティ・テクノロジー向けの半導体製造(28/22nmなど)を担う予定で、2024年末までの生産開始を目指して、計画通り建設が進んでいると説明した。
国内での売上については、日本オフィスが設立された1997年で1億5,000万ドル、2010年には6億ドル、そして2022年には38億ドルに達した。2022年は地域別で日本が最も伸びたという。国内のウェハの出荷枚数で見ても、1997年以降の累計出荷枚数が912万2,000枚なのに対し、2022年だけで130万枚を出荷しており、大きく成長している市場だと説明した。
また、顧客に向けたカスタムチップ製品で2,464件、加えてシャトルサービス(試作サービス)で1,851件が累計でテープアウト。特に後者についてはうち1,251件が大学向けで、これまで45の大学に対して採用実績があるという。そのほかグローバルでの取り組みとなるが、次世代の人材を育てていく大学向けのプログラム「University FinFET Program」も展開しているとのことだ。