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ソニーCSLとJAXA、成層圏や低軌道でもTCP/IP通信を可能にする技術

 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は27日、エラーが発生しやすい低品質な通信環境を模擬した地上実験において、将来、成層圏/低軌道における光通信事業に不可欠な、エラー環境下での完全なデータファイル転送技術の実証に成功した。

 成層圏や宇宙といった高高度における自由空間光通信の実用化において、通信機器の軽量化や省電力化、通信の高速化が求められる。その一方で、通信機器間で機体の姿勢変動により送信側機器の射出レーザー光を受信機器側で安定して受信できないこと、また、受信機機内や環境に起因するノイズによりデジタル信号の符号誤りが多く生じることから、安定的な通信品質下での利用を前提としているTCP/IPプロトコルが適用できなかった。

 そのため、ソニーCSLとJAXAは共同で、低軌道衛星同士や成層圏無人機との間で利用される光インターネットサービス事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」活動を進め、技術を開発してきた。

 このたびの実証実験では、Gigabit Ethernet回線上に実験的に構築した、自由空間光通信の符号誤り率を模擬した低品質、かつ一般的なインターネット通信による通信が不可能な通信環境において、446Mbpsの通信速度で、無欠損の完全なデータのファイル転送に成功したという。

 通信は、ソニーグループがBlu-ray Discといった光デバイスで長年培ったレーザー光読み取り技術をベースに、ソニーCSLが開発した誤り訂正(FEC)技術、そしてJAXAが保有する遅延途絶耐性ネットワーク(DTN)技術を組み合わせた信号処理技術を用いることで実現した。

 今回の実証の成功により、低軌道や成層圏における2地点間の光インターネットサービスに必要な高速/大容量/低消費電力の通信の実現に向け、主要課題の解決が見込まれる。今後、低軌道衛星コンステレーションや成層圏無人機に搭載された小型光端末同士の通信サービスに事業展開できることが期待される。