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国内PC出荷、12月は過去最低の実績に。Windows 11は需要拡大の起爆剤として機能せず

2021年度の国内PC出荷実績(出典:JEITA)

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2021年(2021年1月~12月)の国内PC出荷実績は、出荷台数が前年比15.2%減の886万9,000台、出荷金額は9.6%減の7,517億円となった。

 中でも、2021年12月単月の出荷台数は、前年同月比54.5%減の73万3,000台と、現行体系での調査を開始した2007年度以降、12月としては過去最低となった。2021年10月5日にリリースとなったWindows 11は、需要拡大の起爆剤としての役割が果たせなかったことが浮き彫りになった。

 また、2021年4月以降は前年割れが続いており、出荷台数、出荷金額ともに、9カ月連続で前年同月を下回っている。

 同協会では、前年割れの理由として、「対比する2020年4月~12月のPC需要が増加した反動が影響し、台数、金額ともに前年実績を下回った」としている。

PC出荷台数の四半期推移

9カ月連続での前年割れに

 2021年の国内PC市場は、小中学校への1人1台の端末整備が進められたGIGAスクール構想の追い風の影響を受けた2021年1~3月までと、その反動を受けた2021年4月以降では状況が大きく変化した。

 四半期別の推移を見てみると、それが明確に分かる。

 2021年第1四半期(2021年1~3月)は、GIGAスクール構想の整備に向けて、各自治体による駆け込み需要があったことで出荷台数が拡大。前年同期比83.3%増の358万台と、大きな伸びを見せていた。

 だが、小中学校へのGIGAスクールの導入が終了した2021年第2四半期(2021年4~6月)は9.3%減の182万台、第3四半期(2021年7~9月)は41.3%減の175万8000台、そして、第4四半期(2021年10~12月)は、前年同期比51.8%減の171万台となり、第2四半期以降は、第1四半期のほぼ半分の出荷台数で推移している。

 月別推移でも、4月以降は、9カ月連続での前年割れとなり、特に、前年同期にGIGAスクール構想の導入が本格化していた2021年8月以降は、前年同月比半減で推移するという状況が続いてきた。

PC出荷実績の月別の対前年比推移

 業界関係者にとって衝撃だったのは、2021年12月の出荷実績が、前年同月比54.5%減と半減以下となったこと以上に、2007年からの現行体系での統計開始以来、過去最低の実績になったことだ。

 12月の出荷実績をさかのぼってみると、GIGAスクール構想の影響がなかったものの、Windows 7のサポート終了前の駆け込み需要があった2019年12月との比較では23.8%減と4分の3、それらの影響がなかった2018年12月と比較しても13.1%減と2桁のマイナスになっている。

 12月は、コンシューマ需要が集中する年末商戦を含む大切な時期。需要の強さを推し量ることができるタイミングとも言えるのだが、そこにおいて、出荷台数が過去最低となったのは、PC需要に勢いがないことを示したのと同義だ。

月別の出荷台数推移

 しかも、Windows 11がリリースされた直後の年末商戦でもある。日本マイクロソフトを中心としたPCメーカー各社のマーケティング施策の足並みが揃わず、盛り上がりに欠けた点は反省材料だといえ、年末商戦での起爆剤としての機能は果たせなかったことは大きな課題だ。

 実際、BCNの調査によると、量販店などの店頭販売ルートでは、販売台数の約6割がWindows 10搭載PCが占めており、Windows 11搭載PCは全体の2割弱に留まっている状況だ。

 さらに、懸念されるのが、これから迎える2022年1月から3月にかけての落ち込みだ。

 前年同期には、約1.8倍という高い成長を見せたほか、2020年10~2021年3月の2020年度下期には、過去最高の出荷台数を記録していただけに、その反動の大きさが懸念される。

 そして、この需要低迷の長期化がどこまで続くのかも気になるところだ。

ノートは2桁減の不調

 発表された2021年国内PC出荷実績の内訳を詳しく見てみる。

 ノートPCは、前年比14.8%減の762万台。そのうち、モバイルノートが14.9%減の360万4,000台、ノート型その他が14.8%減の401万5,000台となった。また、デスクトップPCは、17.3%減の124万9,000台。そのうち、オールインワンが28.3%減の29万5,000台、単体が23.2%減の95万4,000台となった。

 この中で注目しておきたいポイントが2点ある。

 1点目は、モバイルノートの動きだ。モバイルノートは、画面サイズが14型以下、重量が1.5kg以下のものであり、GIGAスクール構想で導入されたPCが含まれるカテゴリだ。

 第1四半期には、182万7,000台を出荷していたが、今回発表した第4四半期は49万6,000台と大幅に減少。前年同期比75.0%減と、4分の1にまで縮小している。3カ月間の出荷台数が、1月や2月の単月の出荷数字にも満たないレベルだ。

モバイルノートの平均単価推移

 また、モバイルノートの平均単価の推移も異例だ。

 GIGAスクール構想では、1台あたり4万5,000円の補助金があったため、その範囲内での調達が進められたことが影響。2021年1月のモバイルノートの平均単価は3万9,452円となっていた。

 だが、その後は上昇傾向をみせ、2021年10月には10万円となり、12月も8万7190円となっている。1年間で2倍以上の平均単価の上昇となっているのだ。

 モバイルノートのカテゴリには、軽量モデルなどの付加価値製品が含まれ、もともとは単価が高いカテゴリでもあったが、GIGAスクール構想でそれが大きく変化。1年をかけて通常の水準に戻ってきたとも言える。

デスクトップPCが回復基調に

 もう1つの注目点は、デスクトップPCの需要回復である。

 ノートPCは、GIGAスクール需要の反動もあり、2021年4月以降、出荷台数はマイナス成長に転じ、2021年12月には60.1%減と、4割の出荷台数に留まっている。

 それに対して、デスクトップPCは、GIGAスクール構想の需要増の影響を受けなかったこともあり、2021年前半はマイナスで推移してきたが、後半にかけて需要が回復。2021年10月にはプラスに転じ、前年同月比17.8%増、11月には1.3%増、12月は13.2%増と、3カ月連続で前年実績を上回っているのだ。

形態別の帯前年同月比推移

 その内訳を見ると、第4四半期実績では、オールインワンが36.1%減と約3分の2に減少したのに対して、単体では30.6%増と大幅な伸びとなっているのだ。デスクトップPCを牽引しているのは、オールインワンではなく、単体であることが分かる。

 第4四半期は、新型コロナウイルスの第5波が落ち着いたタイミングとも合致し、オフィスでの業務に回帰する企業が増加したり、在宅勤務を行なう家庭でも、より快適な環境で作業を行なうためにデスクトップPCを選択するといった動きが見られたようだ。

 第6波が急激に広がる中で、デスクトップPCの需要動向にどんな変化が起きるのかにも注視したい。

価格高騰の影響もマイナス要因に

 しばらくは低迷が続くと見られる国内PC市場は、部材不足や部材価格の高騰を背景にした価格上昇などの懸念材料も残るだけに、ユニークな新製品の投入や、マーケティングの強化などの盛り上げによって、落ち込みを最小限に抑えたいところだ。

 PC業界の巻き返しが注目される。