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AMDの最上位モバイルCPU「Ryzen 9 4900HS」の性能をASUSのゲーミングノートでチェック

ROG Zephyrus G14

 先日、AMDより正式に発表された新世代APU「Ryzen Mobile 4000 Series」。その最上位に位置するのが、ゲーミングノートPC向けの「AMD Ryzen 9 Mobile Processors with Radeon Graphics」だ。

 今回、AMD Ryzen 9 Mobile Processors with Radeon Graphicsに属するAPU「Ryzen 9 4900HS」を搭載したASUSのゲーミングノート「ROG Zephyrus G14」を借用する機会が得られた。早速Zen 2ベースのAPUを搭載したゲーミングノートPCの性能をベンチマークテストでチェックしたい。

Zen 2とVegaを組み合わせたAPU「Renoir」のハイエンドモデル

 AMDの新世代APU「Renoir」がベースのRyzen 9 4900HSは、Zen 2アーキテクチャを採用した8基のCPUコアと、8基のCU(Compute Unit)を備えるVegaアーキテクチャ採用GPUコアを備えたAPU。Renoirの製造プロセスは7nmで、プロセッサとI/O機能を1つのダイに統合したシングルダイ構成となっている。

 CPUのベースクロックは3GHzで、ブーストクロックが4.3GHz。GPUコアは最大1,750MHzで動作する。I/O機能として、DDR4-3200とLPDDR4-4266の2ch動作に対応するメモリコントローラやPCI Express 3.0などを備えており、TDPは35W。

【表1】AMD Ryzen 9 Mobile Processors with Radeon Graphics シリーズ
モデルナンバーRyzen 9 4900HSRyzen 9 4900H
CPUアーキテクチャZen 2Zen 2
製造プロセス7nm7nm
コア数88
スレッド数1616
L2キャッシュ4MB4MB
L3キャッシュ8MB8MB
ベースクロック3GHz3.3GHz
ブーストクロック4.3GHz4.4GHz
GPUコアRadeon GraphicsRadeon Graphics
GPUアーキテクチャVegaVega
Compute Unit8基8基
GPUクロック1,750MHz1,750MHz
対応メモリDDR4-3200/LPDDR4-4266DDR4-3200/LPDDR4-4266
PCI ExpressPCIe 3.0PCIe 3.0
TDP35W45W (35~54W)

 今回借用したASUSのゲーミングノート「ROG Zephyrus G14」は、APUであるRyzen 9 4900HSに、単体GPU(dGPU)であるGeForce RTX 2060 with Max-Q Designを組み合わせた14型ノートPCだ。記事執筆時点で未発売の製品であり、製品版とは仕様が異なる可能性がある点に注意してもらいたい。

 本体サイズは実測で約324×222×22.4mm(幅×奥行き×高さ、突起部を含む)、重量は実測で約1.67kg。ディスプレイは120Hz駆動に対応したフルHD(1,920×1,080ドット)液晶で、16GBのDDR4-3200メモリと、1TBのNVMe SSDを備える。ネットワーク機能はIEEE 802.11ax対応の「Intel Wi-Fi 6 AX200」に集約しており、有線LANは非搭載となっている。

 今回テストで確認した範囲では、Ryzen 9 4900HSの内蔵GPUであるRadeon Graphicsは有効化されており、動画閲覧時のデコードなどを内蔵GPUで行なう一方で、ゲームなどの高負荷処理はGeForce RTX 2060 with Max-Q Designで実行されていた。

Ryzen 9 4900HSを搭載するゲーミングノート「ASUS ROG Zephyrus G14」
【表2】ASUS ROG Zephyrus G14のおもな仕様
CPURyzen 9 4900HS
メモリDDR4-3200 16GB (8GB×2)
iGPURadeon Graphics
dGPUGeForce RTX 2060 with Max-Q Design (6GB/GDDR6)
システム用ストレージ1TB NVMe SSD
ディスプレイ14型フルHD液晶 (1,920×1,080ドット/非光沢/120Hz)
OSWindows 10 Home 64bit (Ver 1909/Build 18363.752)
CPU-Z実行画面。Ryzen 9 4900HSは8コア16スレッドCPUを備えている
メモリにはデュアルチャネル動作DDR4-3200メモリを16GB(8GB×2)搭載
Ryzen 9 4900HSの内蔵GPU「Radeon Graphics」。Vegaアーキテクチャを採用しており8基のCUを備えている
GeForce RTX 2060 with Max-Q Design。専用のVRAMとして、11Gbps動作のGDDR6メモリを6GBを備えている
システムSSDには1TBのNVMe SSDを搭載。CrystalDiskInfoの情報によれば、搭載SSDは「Intel SSD 660p」の1TBモデルで、PCIe 3.0 x4で接続されている
システムSSDのCrystalDiskMark実行結果。Intel SSD 660pの1TBモデルは、リード・ライトとも最大1.8GB/sなので、おおむね期待どおりの速度が出ている
14型のフルHD液晶ディスプレイを搭載。非光沢仕様でリフレッシュレートは最大120Hz
キーボード面。バックライト搭載のキーボードは英字配列で、タッチパッドはボタン一体型
天板。マットホワイトをベースにドットをあしらったモダンなデザインで、ビジネスシーンでも使いやすいルックスに仕上げられている
底面。手前側の両端にスピーカー、中央より奥よりに通気口が設けられている
本体左側面。電源入力、HDMI、USB 3.1(Type-C)、ヘッドセット端子を搭載
本体右側面。セキュリティスロット、USB 3.0×2、USB 3.1(Type-C)を搭載
ROG Zephyrus G14のACアダプタ。出力容量は180W(20V/9A)で、本体サイズは実測で約150×71×23mm
ACアダプタの重量は、ケーブル込みで約513g。本体と合わせて2.2kg弱で持ち運ぶことができる

テスト機材

 今回のテストでは、ROG Zephyrus G14のバッテリが満充電かつACアダプタを接続した「AC接続時」と、バッテリで動作させた「バッテリ駆動時」の2パターンでベンチマークテストを実行した。

 ROG Zephyrus G14は、ユーティリティツール「Armory Crate」で動作設定プリセットの選択やチューニングが可能であり、今回はAC接続時とバッテリ駆動時ともに「パフォーマンス」を選択している。テスト時の室温は約25℃。

AC接続時のArmory Crate画面。今回使用するパフォーマンスの他に、サイレントやTurbo、手動設定を選択できる
バッテリ駆動時のArmory Crate画面。サイレントとパフォーマンスは選択可能だが、Turboと手動設定はグレーアウトしている

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマーク結果を紹介する。

 今回実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R20(グラフ01)」、「CINEBENCH R15(グラフ02)」、「V-Ray Benchmark(グラフ03~04)」、「やねうら王(グラフ05)」、「HandBrake(グラフ06)」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ07~08)」、「PCMark 10(グラフ09)」、「SiSoftware Sandra(グラフ10~16)」、「3DMark(グラフ17~21)」、「VRMark(グラフ22~23)」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(グラフ24)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ25)」、「Forza Horizon 4(グラフ26)」、「フォートナイト(グラフ27)」、「レインボーシックス シージ(グラフ28)」、「モンスターハンターワールド : アイスボーン (グラフ29)」。

 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するベンチマークテスト「CINEBENCH」では、最新版のCINEBENCH R20と、その1つ前のバージョンであるCINEBENCH R15で、マルチスレッド性能(All Core)とシングルスレッド性能(Single Core)を測定した。

 どちらのCINEBENCHでも、シングルスレッド性能についてはAC接続時とバッテリ駆動時が同等の結果を記録している一方、CPUの消費電力が大きくなるマルチスレッドテストでは、AC接続時が約30~35%高いスコアを記録しており、バッテリ駆動時は電力制限がより厳しくなっていることがうかがえる。

 なお、AC接続時のRyzen 9 4900HSがCINEBENCH R20で記録した「4,346」というスコアは、第3世代Ryzen発売時に測定したRyzen 7 3700Xのスコア「4,910」の9割近い数値だ。Ryzen 9 4900HSのCPUコアが備えるマルチスレッド性能は、ノートPC向けのCPUとしては非常に優れたものと言えよう。

【グラフ01】CINEBENCH R20
【グラフ02】CINEBENCH R15

 レンダリングエンジン「V-Ray」のオフィシャルベンチマークテスト「V-Ray Benchmark」では、CPUを使用する「V-RAY」と、GPUを使用する「V-RAY GPU」を実行した。

 V-RAYでは、AC接続時のスコアが「11,188」であったのに対し、バッテリ駆動時のスコアは約81%となる「9,051」を記録。CINEBENCHに続いて、バッテリ駆動時でもなかなかのCPU性能を発揮していることがわかる結果だ。

 一方、V-RAY GPUでは、内蔵GPUのRadeon Graphicsを用いた場合はバッテリ駆動時でも8割弱の性能を発揮している一方、GeForce RTX 2060 with Max-Q Designでは、AC接続時の「156」に対して、バッテリ駆動時は約16%となる「25」まで大幅に性能が低下、Radeon Graphicsのスコアすら下回る結果となっている。

【グラフ03】V-Ray Benchmark v4.10.07 「V-RAY (CPU)」
【グラフ04】V-Ray Benchmark v4.10.07 「V-RAY GPU」

 バッテリ駆動時におけるGeForce RTX 2060 with Max-Q Designの大幅な性能低下の原因は、AC接続時は1,375MHz(11Gbps)で動作するVRAMの動作クロックが、約202MHz(1.6Gbps)に制限されるためのようだ。

 VRAMクロックの大幅な引き下げで生じるメモリアクセスのボトルネックにより、GPUの性能と消費電力は大きく抑制されることになる。ROG Zephyrus G14では、バッテリ駆動時でも8割前後のCPU性能が維持される一方、GPU性能に関しては大きく制限されることがうかがえる結果というわけだ。

 将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でそれぞれベンチマークコマンドを実行した。ソフトのバージョンは4.89で、シングルスレッドテストが「bench 128 1 19」、マルチスレッドテストが「bench 128 16 19」。

 シングルスレッドテストでは、AC接続時とバッテリ駆動時の差が約6~7%である一方、マルチスレッドテストではAC接続時がバッテリ駆動時より約22~24%高い数値を記録している。

【グラフ05】やねうら王 v4.89

 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。

 ここでもAC接続時がバッテリ駆動時を上回る性能を発揮しているのだが、1080p動画の変換では約29%だった差が、2160p→1080pで約20%、2160p→2160p変換では約6%に縮まっている。

 AC接続時とバッテリ駆動時の性能差が縮まっているのは、長時間の高負荷動作による熱の影響でブーストクロックが変化した結果であると考えらえれるが、ひとまずここではこのような傾向がみられたということにとどめておこう。

【グラフ06】HandBrake v1.3.1

 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHDと4Kのソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。

 x264を用いるH.264形式への変換では、AC接続時がバッテリ駆動時より約17~26%高速で、x265形式を用いたH.265形式への変換でも同じく約17~24%、AC接続時が高速な結果を記録した。どちらでも、エンコード時間が長くなるほど速度差が縮まるという、HandBrakeと同様の傾向が確認できる。

【グラフ07】TMPGEnc Video Mastering Works 7 v7.0.14.16「H.264形式へのエンコード」
【グラフ08】TMPGEnc Video Mastering Works 7 v7.0.14.16「H.265形式へのエンコード」

 PCMark 10では、もっともテスト項目が多い「PCMark 10 Extended」を実行した。

 総合スコアで6,814を記録したAC接続時に対し、バッテリ駆動時のスコアはほぼ半分の3,696にまで低下している。とくに性能低下が大きいのが、GPU性能がカギとなるGamingのスコアで、AC接続時比で約31%のスコアとなっている。

【グラフ09】PCMark 10 Extended (v2.1.2177)

 SiSoftware Sandra 20/20のCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の結果を紹介する。

 CPUテストにおいて、AC接続時に対するバッテリ駆動時のスコアは約78~95%の範囲でばらついているが、おおむね85%前後となっている項目が多い。ここまでのベンチマークテストでも確認されてきたように、ROG Zephyrus G14ではバッテリ駆動でもCPU性能を高いレベルで維持できるようだ。

【グラフ10】SiSoftware Sandra v30.35 「Processor Arithmetic (プロセッサの性能)」
【グラフ11】SiSoftware Sandra v30.35 「Processor Multi-Media (マルチメディア処理)」
【グラフ12】SiSoftware Sandra v30.35 「Processor Image Processing (画像処理)」

 SiSoftware Sandra 20/20のメモリベンチマークテストから、メモリ帯域幅を測定する「Memory Bandwidth」、キャッシュ帯域幅を測定する「Cache Bandwidth」、キャッシュとメモリのレイテンシを測定する「Cache & Memory Latency」の結果を紹介する。

 Memory Bandwidthで測定したメモリ帯域幅の結果は、AC接続時が約35.3GB/sを記録したのに対し、バッテリ駆動時は約31.2~33.2GB/s前後となっており、メモリアクセス性能はやや低下しているようだ。

 Cache Bandwidthでは、L3キャッシュ領域でAC接続時の方が約15%前後大きな帯域を記録している。一方、Cache & Memory Latencyでは2~4MBキャッシュ領域でバッテリ駆動時の方が2ナノ秒ほど低い数値を記録している。おそらく、CPU内部の動作クロックが変化しているためだろう。

【グラフ13】SiSoftware Sandra v30.35 「Memory Bandwidth」
【グラフ14】SiSoftware Sandra v30.35 「Cache Bandwidth」
【グラフ15】SiSoftware Sandra v30.35「Cache & Memory Latency (nsec)」
【グラフ16】SiSoftware Sandra v30.35「Cache & Memory Latency (Clock)」

 3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Night Raid」、「Sky Diver」、「Port Royal」の5テストを実行した。

 先に紹介した「V-Ray Benchmark(V-RAY GPU)」の時と同様、バッテリ駆動時はGeForce RTX 2060 with Max-Q Designのメモリクロックが202MHzに制限されるため、GPU性能を大きく反映するテストではAC接続時から大きくスコアを落としている。

 DXR(DirectX Raytracing)を用いるPort Royalでは、AC接続時の3,141に対して、バッテリ駆動時は約28%となる894までスコアが低下しているものの、RTコアを備えるGeForce RTX 2060 with Max-Q Designで処理を実行しているためベンチマーク自体は完走した。

【グラフ17】3DMark v2.11.6866「Time Spy」
【グラフ18】3DMark v2.11.6866「Fire Strike」
【グラフ19】3DMark v2.11.6866「Night Raid」
【グラフ20】3DMark v2.11.6866「Sky Diver」
【グラフ21】3DMark v2.11.6866「Port Royal」

 VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」の3テストを実行した。

 AC接続時はOrange RoomとCyan Roomで100fpsを超える性能を発揮しており、VR用途でも一定の性能が期待できる性能を示している。一方、バッテリ駆動時のスコアはAC接続時比で約29~31%にとどまる。

【グラフ22】VRMark v1.3.2020「スコア」
【グラフ23】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、画面解像度をフルHDに固定して、3通りの描画設定でテストを実行した。

 AC接続時はすべての描画設定で1万を超えるスコアを記録する一方、バッテリ駆動時はもっとも軽量な「標準品質(ノートPC)」でも最高評価「非常に快適」の基準である7,000には届いていない。もっとも、画質や60fpsにこだわらなければ、バッテリ駆動でもプレイ可能なレベルの性能は発揮できている。

【グラフ24】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでも画面解像度をフルHDに固定、3通りの描画設定でテストを実行した。

 AC接続時は、軽量品質で「9,819」を記録し「とても快適」の評価を獲得。もっとも高負荷な高品質でも5,970で「やや快適」の評価を得ており、画質を調整すれば60fps動作が十分狙えるレベルの性能を発揮している。

 一方、バッテリ駆動時はAC接続時の約28~31%のスコアで、軽量品質であってもスコア評価は「やや重い」にとどまっており、滑らかな描画でゲームを楽しむのは難しい。

【グラフ25】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2

 DirectX 12専用のオープンワールドレーシング「Forza Horizon 4」ではベンチマークモードを利用して、フルHD解像度で4通りの描画設定をテストした。

 AC接続時は、描画設定を絞ると120fpsを超えるフレームレートを記録しており、120Hz駆動のディスプレイをフル活用して滑らかな描画でゲームを楽しむことができる。描画設定を最高の「ウルトラ」にした場合でも90fpsを記録し、ROG Zephyrus G14はForza Horizon 4をフルHD解像度で存分に楽しめる実力を示してみせた。

 バッテリ駆動時のフレームレートは36~59fpsで、AC接続時の40~47%となっている。60fpsにこだわらなければプレイできなくはないという程度の性能だ。

【グラフ26】Forza Horizon 4 (v1.404.531.2)

 バトルロイヤルTPSのフォートナイトでは、画面解像度をフルHD解像度、4通りの描画設定で平均フレームレートを測定した。グラフィックスAPIにはDirectX 11を使用している。

 AC接続時のフレームレートは平均で約87.0~197.5fpsで、描画設定「高」以下では100fpsを超える高フレームレートを実現している。120Hzディスプレイを搭載しているROG Zephyrus G14なら、高フレームレートが勝敗を分けることもあるフォートナイトに本格的に取り組むことができるだろう。

 バッテリ駆動時のフレームレートは約24.7~86.2fpsで、AC接続時比では約28~44%。画質設定を抑えれば60fps前後のフレームレートでプレイすることもできる。

【グラフ27】フォートナイト (v12.21)

 オンラインFPSのレインボーシックス シージでは、画面解像度をフルHDに設定して、4通りの描画設定でベンチマークモードを実行した。

 AC接続時の平均フレームレートは約117.1~167.3fps、バッテリ駆動時は約37.6~67.5fps。AC接続時は100fpsを超える高フレームレートでプレイできる一方、バッテリ駆動では描画設定を調整して60fps前後での動作を狙うというレベルの性能だ。

【グラフ28】レインボーシックス シージ (Build 4814233)

 モンスターハンターワールド : アイスボーンでは、画面解像度をフルHDに設定して、4通りの描画設定でフレームレートを測定した。なお、グラフィックスAPIはDirectX 12を使用している。

 AC接続時の平均フレームレートは51.1~101.9fpsで、バッテリ駆動時は約14.3~28.2fps。AC接続時であれば、フルHD解像度で60fpsでの動作が狙える性能が得られる一方、バッテリ駆動では30fpsの維持も困難だ。

【グラフ29】モンスターハンターワールド : アイスボーン (v12.11.01)

高負荷動作時のCPUの温度と動作クロック

 Ryzen 9 4900HSのCPUが高負荷動作になったとき、CPU温度や動作クロックがどのように推移しているのかをモニタリングデータで確認してみた。

 負荷テストに用いたのはTMPGEnc Video Mastering Works 7のx264エンコードで、2160p→2160p変換を約10分間連続で実行する。CPUのモニタリングデータは「HWiNFO v6.24」で取得した。テスト時の室温は約25℃。

 AC接続時のモニタリングデータをみてみると、エンコード開始直後から2分程度の時間はCPUの消費電力である「CPU Package Power」が54W前後で推移しており、この期間はCPUクロックが3.5GHz以上で動作している。その後、CPUの消費電力は35Wに低下し、CPUクロックも3.1GHz前後に低下した。

 CPU温度については、序盤の54W動作中はCPU温度が90℃近くまで上昇しているが、消費電力が35Wに低下すると72℃前後で安定した。エンコード実行中の平均CPU温度は約74.8℃で、ピーク温度は91.3℃。

【グラフ30】AC接続時のモニタリングデータ

 バッテリ駆動時のモニタリングデータでは、AC接続時にみられた54W動作は見られず、CPU Package Powerはエンコード開始から3分半ほどの間25W前後で推移し、以降は20Wに低下している。

 25W動作中のCPUクロックは2.8GHz前後で、CPU温度は53℃程度まで上昇している。その後の20W動作では、CPUクロックは2.5~2.6GHz、CPU温度は50℃前後で推移した。エンコード実行中の平均CPU温度は50.1℃で、ピーク温度は64.6℃。

【グラフ31】バッテリ駆動時のモニタリングデータ

 これらのモニタリングデータから、動画エンコードで処理時間が長くなるほどAC接続とバッテリ駆動の性能差が縮んでいた理由が、ブースト動作の挙動によるものであったことがうかがえる。短時間であれば54W動作で高速に処理できるが、長時間の処理では35W動作となるため、バッテリ駆動との動作クロック差が小さくなった結果、性能も接近するというわけだ。

強力なCPU性能が光るRenoirベースのRyzen 9 Mobile

 Ryzen 9 4900HSを搭載したROG Zephyrus G14は、AC接続時はもちろんバッテリ駆動であっても強力なCPU性能を発揮するノートPCだ。バッテリ駆動では単体GPUのGeForce RTX 2060 with Max-Q Designが本来の性能を発揮できないが、AC接続時はフルHD解像度で多くのゲームを快適にプレイできるゲーミング性能を見せている。

 今回はノートPCの仕様により、CPUとGPUを統合したAPUとしてのRyzen 9 4900HSの実力のすべてを確認できたわけではないが、ノートPC向けCPUとしてのRenoirが、優れたシングルスレッド性能とマルチスレッド性能を備えたCPUであることは確認できた。

 ROG Zephyrus G14のようにRenoirベースのAPUを搭載したゲーミングノートは、ゲーマーはもちろんのこと、CPUパワーを必要とするクリエイターからも注目を集めることになりそうだ。