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レノボ・ジャパン新社長デビット・ベネット氏が会見。2020年までにレノボ製品の95%を1日で修理と宣言
2018年7月20日 14:16
2018年5月16日付けで、NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の代表取締役執行役員社長およびLenovo Groupグローバル バイスプレジデント兼レノボ・ジャパンの代表取締役社長に就任したデビット・ベネット(David Bennett)氏が、7月20日に都内で就任記者会見を行なった。
同氏は「日本における機会、世界における機会にわくわくしている。世界のPC業界に貢献していくことができる。私が、これまでのキャリアで実現できなかったことが、これから実現できるだろう。日本のチームと一緒になって、日本のリーダーとしての責任をはたし、顧客第一の製品を作り、意味のあるイノベーションを起こし、日本のPC市場を活性化させたい」と抱負を語った。
その一方で、「NEC PCは秘密兵器であり、NECのノウハウを世界に展開していきたい」などと語った。さらに、2020年には日本で販売しているレノボ製品の95%の修理を1日で完了させる方針を明らかにした。
また、ベネット氏は冒頭で、社長就任後2カ月を経てからの会見となったことについて、「もっと早く会見を行ないたかったが、引っ越しの手続きのほか、米国本社への出張、米沢事業場や群馬事業場を訪問することを優先したため」と説明した。
AMDでの勤務歴もある日本語堪能なデビット・ベネット新社長
デビット・ベネット新社長は、1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。高校時代に1年間、横浜商科大学高等学校に留学。2004年にカナダトロント大学大学院卒後、早稲田大学日本語教育センターで日本語を習得。学習院女子大で日本の古典文学を学ぶというユニークな経歴を持つ。古典では、古今和歌集と土佐日記が好きだという。
東京で、コンサルタントとして社会人キャリアをスタートさせており、日本への留学、在住期間は約7年間。日本語が堪能だ。妻は、鹿児島県種子島出身で、3人の子供のうち、2人は日本で生まれたという。2004年~2007年までは文部科学省国際交流員として香川県に勤務。AMDでは10年間にわたって、グローバルおよび地域のセールスにおける要職を歴任。メガ・リージョン担当バイスプレジデントとしてアジアパシフィックおよび日本の成長を牽引してきた。
直近では、AMD社コーポレートバイスプレジデント兼OEMアカウント担当ゼネラルマネージャーを務め、レノボ製品におけるAMDのシェアを拡大。レノボとの結びつきも強い。
「今回の会見も日本語で行なうことを考えたが、日本に住むのは久しぶりなので、途中から英語になる。次回は日本語で話したい」とし、自己紹介は日本語を使う一方で、事業戦略の説明に関しては英語で行なった。
「教育、家族、経験を活かして、日本と世界の橋渡しができると考えている」と述べるベネット新社長は、「私がNEC PCおよびレノボ・ジャパンの社長に就任した理由は4つのある」とする。
同氏は「PCは成熟市場であり、利益率が高く、多くの機会を持った市場であること、NECレノボグループは、マーケットリーダーとしてデマンドを創出し、市場を活性化するチャンスを持った企業であること、つねにイノベーションのトップランナーであり、新たなイノベーションを行なう企業であること、NEC PCの品質やテクノロジは世界中に展開できると考えたこと」を挙げる。
また、「私のゴールは、業界リーダーとしての責任をはたし、世界と日本の架け橋となり、世界から日本へ、日本から世界へと展開することにある。日本において、テクノロジをドライブしていく役割があり、新たなエクスペリエンスを展開していく責任がある。
NEC PCが持つ日本における品質とテクノロジと、グローバルのレノボグループとの橋渡しをする立場にもある。グローバルから日本に対する一方通行のやり方ではなく、NEC PCやレノボ・ジャパンが持つ野ノウハウを世界にも展開させたい」とした。
2020年には国内レノボ製品の95%の修理を1日で完了させる
一方で、ベネット社長は、「業界リーダーとしての責任」、「世界から日本へ、顧客中心のイノベーション」、「世界の中の日本へ」という3点を重点ポイントに掲げた。
「業界リーダーとしての責任」としては、「日本で行なってきたことは誇りに思っている」とし、ThinkPad X1 CarbonやLAVIE Hybrid ZEROを引き合いに出しながら、「高いテクノロジを活用したグローバルクラスの製品を日本で展開している。これらの製品は、世界のPC市場の貢献できるだろう」とする。
その一方で、「私がもっとも感銘を受けたのは、米沢や群馬で行なっている取り組みである。使い方相談が無料であることに加え、米沢事業場での納期は最短3日間であり、群馬事業場では24時間以内の修理率が98%以上になっている。これは世界全体を見ても例がないものであり、NECレノボグループが持つユニークな強みである。米沢、群馬、大和のチームの力を活用して、イノベーションを継続したい」とした。
また、「2020年には日本で販売しているレノボ製品の95%の修理を1日で完了させたい」とし、「他社であればこれは不可能であるが、われわれは、すでにNEC PCの製品でこれを達成した実績がある。2020年に95%という数字は達成可能である」と自信を見せた。
ここで目指している24時間以内の修理完了とは、保証期間中の製品が対象で、群馬サービスセンターに入庫し、修理を完了し、出荷するまでの時間を指している。
NECのノウハウを世界に展開させる
「世界から日本へ、顧客中心のイノベーション」という点では、「意味のあるイノベーションを行なっていくことが大切である」と切り出し、「グローバルで展開している3-Wave Strategyは継続し、タブレット、PC、サーバー、データセンターにも力を注ぎ、新たなスマートデバイスにも取り組んでいく。
重要なのは、顧客中心のイノベーションが重要であるという点だ。PCをどういうかたちで使っていくのかという点を念頭においた製品展開が必要である。日本では、働き方改革を推進しており、それに向けて、ThinkPad X1 Carbonは、LTEを搭載し、スマートハブを活用し、最薄で、軽量なデバイスとして提供している。
これは人々がどのようなかたちでPCを使うのかを念頭において開発したものであり、この考え方はこれからも継続していくことになる」と語った。
ここでは、日本での利用シーンを想定したソリューションとして、日本交通との協業や、コンビニエンスストアでのトレーニングにおけるVR活用、積木製作所との協業による住宅設計や購入におけるVR活用の取り組みなどを紹介した。
「世界のなかの日本へ」という点では、「私のゴールの1つが、日本で展開していることを、どうやって世界に展開するかということである。
NECのノウハウを世界に展開することができる。その成果はすでに出ている。米沢事業場のノウハウを活用することで、日本市場向けのレノボ製品の初期品質は30%も改善し、群馬事業場のノウハウを活用したことで、レノボアジア地区全体での修理パーツ品質が60%改善している。
日本におけるイノベーションをレノボのアジア、そしてグローバルにどう展開していけるかを考えている。日本でのイノベーションの取り組みや、品質や開発、ハードウェアなどは、レノボにとって秘密兵器になる」とした。
日本のエンドユーザーが高品質を求めていることを示しながら、「グローバルでは、以前は、低コストで、大量に販売することが中心だったが、ここ数年で、高品質が求められている。品質にフォーカスすることは、世界中にアピールできる要素であり、ほかのOEMにはない強みである」と位置づけた。
NEC PCでは、2017年から、次のイノベーションに向けたテクノロジを見つけ、日本で展開するためのR&D組織として「NT&Iチーム」を発足し、本格稼働を開始している。
ベネット氏は、「米沢事業場には、ワールドクラスの技術者がいる。これを世界で展開していくことがゴールになる。NT&Iチームは、大和研究所のSTICや、レノボのグローバルチームとも協業していく」と語った。
傘下の富士通(FCCL)とは独立したかたちで健全に競争
質疑応答では、レノボ入社前と、入社してからの印象の違いについて質問があり、「レノボはマーケットリーダーであり、イノベーションに取り組み、俊敏性があり、柔軟性のある会社だと感じていた。驚いたのは、レノボのイノベーションやテクノロジを開発する努力や、市場を成長させる積極性は、なかに入ってみたほうが大きかった。これはよい驚きであった」と答えた。
一方で、富士通クライアントコンピューティングがレノボグループの傘下に入ったことについては、「レノボグループとして、広い選択肢が提供できるという点ではメリットがある。少なくとも今後数年は、独立したかたちで経営することになり、健全なかたちで競争できる」とした。
このほか、「NECブランドの製品は、日本のユーザーのニーズを満たすものとして、大きな期待がある。また、レノボのグローバルブランドを使って多くの選択肢を提供できる。これはユニークなポジションを作ることにつながる」と述べた。
NECパーソナルコンピュータ 執行役員兼レノボ・ジャパン 執行役員常務の河島良輔氏は、経営体制について説明。「NEC PCとレノボ・ジャパンは、一体運営をしており、NEC PCの良さを維持しつつ、レノボが持つグローバルのスケールを活用していくことになる。
ブランディングについては、革新的なイメージを持つレノボと、30年間にわたって、日本で愛されているNECブランドをそれぞれ継続していくことになる。日本の良さと、海外の良さをおたがいにブリッジしていくことになる」と語った。