実録! 重役飯
赤ん坊のころ誘拐に遭い、世界を転々とし、20年前に日本に留学。所有するゲーム機は数十台~米AMD上席副社長デイビッド・ベネット氏
2017年5月26日 06:00
いつもご愛顧をありがとうございます。PC Watchは2016年をもって20周年を迎えました。20周年を記念し、PC・IT業界を代表する企業のトップの方にインタビューを行ないました。特別企画ということで、通常であれば企業の戦略や製品について伺うところ、今回はインタビューに対応いただく方の行きつけやお勧めの料理店にて会食を行ないながら、その方の趣味や考え方など人となりに焦点を当てた質問を行ないました。この企画を通じて、企業の経営を担う人の個性や考え方などを知っていただければ幸いです。基本的に全ての方に同じ質問をしていますので、みなさんの違いも面白いのではと思います。聞き手はPC Watch編集長の若杉です。
第12回目のインタビューのお相手は、米AMD本社上席副社長兼ジェネラルマネージャー アジアパシフィック・日本地域担当のデイビッド・ベネット氏です。食の場として選んでいただいたのは、東京・丸の内の「大志満 椿壽」です。
--:本日はよろしくお願いいたします。簡単に自己紹介をお願いします。
ベネット: AMDでAPJ(アジアパシフィック・日本地域)におけるすべてのビジネスを担当しています。クライアントからサーバーまで、製品はCPUもGPUも見ています。シンガポール在住です。PC Watchは20周年と言うことですが、私もAMDに入社してちょうど10年になります。
--: 今回こちらのお店を選ばれた理由を教えてください。
ベネット: わたしが天ぷら好きということで、日本のスタッフがこちらのお店を選んでくれました。
--: 今回このインタビューは日本語で行なっていますが、デイビッドさんは本当に日本語が達者ですね。
ベネット: 高校のときに1年間日本に留学し、その後も大学も1年間早稲田大学に通った後、文部科学省の奨学金を得て、学習院女子大の修士課程では日本の古典文学について学びました。
じつは、日本に来る前にも海外で天ぷらや豆腐などを食べていましたが、当時はあまり好きじゃなかったんです。ところが、日本に来て本場の日本食を食べたらじつにおいしくて、大好きになりました(笑)。
高校のとき日本に留学。日本で大学にも進学し、古典文学を学ぶ
--: 20年前は何をしていましたか。
ベネット: 初めて日本に来たのが20年前です。横浜商科大学高等学校で留学生として勉強していました。当時PC自作に興味を持っていて、その頃はAMDのことを知らなかったんですが、そのときたまたま選んだのがAMDのCPUでした。
--: 日本に留学しようと思ったきっかけは何だったんでしょう。
ベネット: 僕は生まれはジャマイカで、育ちはカナダです。ジャマイカには白人は少なくて4~5%くらいしかいません。1980年代に情勢が不安になり海外に亡命する人も多くいました。それで僕の家族も世界を転々としました。そして自分が高校生になったとき、それまで行ったことのない国に行ってみたいと思い、日本を選びました。
日本について興味を持ち始めたのは、じつは日本に来てからなんです。子供の頃、鉄腕アトムはアメリカのアニメだと思って観ていたんですが、それが日本の作品だと知ったのは、日本に来てからでした(笑)。
--: ちょうど20年前ではないのですが、2000年にAMDがAthlonの1GHzを出して(L2キャッシュオンダイのAthlon 1GHzがついに登場!参照)、Intelといい競争をしていました。その後しばらくして、ハイエンドCPUではやや元気がなく、Intelと肩を並べる製品が不在でした。しかし、今回投入したRyzenは、いい競争ができる製品に仕上がっています。ユーザーやお客さんからの評判はどうですか?
ベネット: われわれ自身もRyzenには期待をかけていました。発売後は、われわれが想像した以上の評判を得ることができました。Ryzen自身もいい製品ですが、これでふたたび競争ができることで、お互いにより良い製品につながっていくので、PC業界全体にとってもプラスになると思っています。
--: 20年前の趣味を教えてください。
ベネット: 当時はプログラミングにはまってて、ATARIのマシンでゲームプログラミングをマシン語でやっていました。あとは、サッカーやチェスが好きだったんですが、日本に来て、初めて将棋に触れました。将棋はチェスに似ていますが、取った相手のコマを使える点が違いますよね。そこが斬新で興味を持ちました。
--: スポーツ、プログラミング、そして古典文学などジャンルを超えていろいろなことをやってこられたんですね。
ベネット: 大学では紫式部や古今和歌集などを学んでいたんですが、じつは年内にも「気になる日本語」というテーマで本を出版したいと考えています。日本語を勉強している外国人などに向けて、気になる日本語について解説するものです。たとえば、信号は緑色なのになぜ日本では「青信号」と呼ぶのかとか、そういった疑問に答えたいと思っています。
--: そうなんですね。ぜひ、インプレスで出版しましょう(笑)。
ベネット: すでに書き始めていて、年内に完成する見込みです。一時は大学教師も目指していたので、学術的なものにしようかとも思ったけど、トリビアなので楽しく学べるような内容にしています。
--: これまでの職歴を教えてください。
ベネット: 大学の修士課程を終え、JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme)に参加し、国際交流員として香川県で2年間働いていました。そのときは、息子が生まれた年でもあります。その後、東京のカナダ大使館でインターンとして半年間働きました。
その頃、2人目の子供ができたので、お金が必要となり、2006年頃から東京の人材紹介会社で勤務するようになりました。当時の一番のお客さんがAMDだったんです。そのとき、5人を日本AMDに紹介し、その5人は同時入社だったんですが、その入社式の場に僕もいたんですね。その5人は僕を見て、「ここまで同行されるとは、熱心な方ですね」と言われたんですが、じつはAMDと仕事をしている間にAMDのことが好きになり、僕自身がAMDに転職し、その5人と同時に入社することになったんです(笑)。その5人はいまでも日本AMDで働いていますよ(笑)。
--: ベネットさんも最初は本国でなく、日本AMDに入られたんですか。
ベネット: そうです。最初は外資系アカウントマネージャーでDellさんを担当していました。その後、APACアカウントマネージャーを経て、カナダAMDに移り、そこのジェネラルマネージャのポジションに就きました。担当者コンシューマビジネスです。当時からCPUシェアではIntelさんの方が強かったんですが、カナダでは30%のシェアがありました。そして、僕がいた2年間でそのシェアを60%にまで伸ばすことができました。世界中でIntelよりシェアが高い国はカナダだけでした。
なぜそのように成功できたかというと、AMDが買収したATIはもともとカナダのトロントの企業です。僕は日本に来る前カナダにいたとき、ATI本社のすぐそばに住んでいたんです。 ですので、ATIにもとても親近感がありましたし、誇りもありました。そこで「Designed in Canada」というプロモーションを打ち出したんです。それが効果を奏したようです。
その後米国のオースティンに移り、HP担当のワールドワイドディレクターになりました。当時HPは当社最大のクライアントでした。そういった成果や日本での経験などが認められ、2013年に現職に就きました。確か、当社の上席副社長で最年少を記録しました。
--: これまでの人生で絶体絶命だと思った出来事はありますか
ベネット: 難しい質問ですね。というのも、皆さん、それぞれ強みも弱みもありますよね。僕は「何ができるのか?」と聞かれたときに、特別な能力のようなものはないので、なかなか答えられないんですね。ただ、最近気付いたのが、問題に遭遇してもストレスやプレッシャーを感じないんですね。”easy going”というのも正確ではないかもしれませんが、辛いことがあっても、それをポジティブに受け止められる自信があるんですね。なので、絶体絶命の窮地に陥ったと感じたこともないんです。
--: ”Optimistic”(楽観的)なんですね。
ベネット: そうですね。ただ、単純な”Optimist”だと、問題を軽視しかねませんが、”Realistic”(現実的)あるいは”Pragmatic”(実際的)なOptimistだと思っています。この世に不可能なことはなく、チャレンジこそが大事なんだという考えです。
僕の学歴は変わっていますが、人生自体も波乱に富んでいて、じつは赤ちゃんのときに誘拐されたことがあるんです(笑)。幸い、1週間後に無事保護されたんですが、双子の兄は大けがを負ったり大変でした。また、母親も僕が子供の頃蒸発し、父親もお酒で問題を起こしていたので、祖父母に養子として引き取られ、育てられました。
--: それこそ絶体絶命の危機だと思います(笑)。
ベネット: これだけ聞くと悲惨かもしれませんが、そのおかげでいい人生を歩むことができました。祖父母にはとても感謝しています。
--: ベネットさんの人生でも本が書けそうですね(笑)。
ベネット: 確かにすごいエピソードではありますね(笑)。
起きてから海外の出張先を確認し荷造り
--: 2013年に上席副社長になり、仕事上一番変わった点はどんなところでしょう。
ベネット: それまでは1つの国や、一部のエコシステムだけを見ていました。一方、現在担当しているAPJメガリージョンには、日本のような先進国もあれば、インドネシアやベトナムなどの新興国もあります。そのぜんぜん違う市場をいかにしてバランス良く統括できるかということに腐心しています。
先ほど、ようやく最近になり自分の特技のようなものを見つけたと話しましたが、もう1つあり、それは”Bandwidth”(幅)です。同時にいろんなことを幅広くできるのが強みだと思えるようになりました。たとえば日本とインドネシアだと、売上も違うわけですが、それらに対して同じだけの努力はしなくてはならないんです。その采配はうまくできていると自負しています。
--: 仕事上のモットーや座右の銘を教えてください。
ベネット: 企業に入ると、将来どのようなことをやりたいかとか、どういう地位に就きたいかとか聞かれますよね。そういうことはあまり考えたことがなく、いまやっていることをうまくやり遂げることに全力を注いでいます。それによって将来、結果は必然的についてくるものだと考えています。もちろん、将来的には自分で起業したいといったような夢はありますが、まずは目前の目標に集中しますし、部下にもそのように指示しています。
--: 尊敬する人物を教えてください。
ベネット: 2人います。僕は政治についてはあまり詳しくないんですが、オバマ前大統領について、彼のスピーチには感銘を受けました。言葉によって、政治に興味ない人間にも、心を打つことができるというのは素晴らしい能力だと思います。
もう1人は、いまのAMD CEOのリサ・スーです。これは僕がAMD社員だからというだけではなく、客観的に見てもそう言えます。彼女がCEOになったときは、AMDが低迷していた時期です。でも彼女は、AMDの文化を変え、製品に集中するという戦略を採り、困難を乗り越えました。また、彼女はエンジニア出身なんですが、振り返るとジェリー・サンダースやダーク・マイヤーなど、エンジニアが社長のとき、AMDは伸びますね。マーケティングより開発に力を入れた方がいい製品につながるということの表われだと思います。
--: ご自身のセールスポイントを教えてください。
ベネット: 先ほども言いましたとおり、ネガティブなことをポジティブに捉える点。競争相手のIntelさんやNVIDIAさんは手強いですが、であるからこそ挑戦しがいがあると思います。
また、これは他の外資系にも通じると思いますが、各国のニーズをアメリカの本社にうまく伝えるというのは結構難しいんです。AMDはIntelやNVIDIAと戦っていますが、じつは社内でもある種の戦いはあります。自分が担当するアジアや日本のために本社を説得できる能力はあると思います。
--: 出社から退社まで1日の大体の仕事内容を教えてください。
ベネット: APJ担当ですが、さまざまなメーカーのアカウントも担当しているので、世界中から要求やレポートが四六時中上がってきます。朝起きると、アメリカからメールが来ていて、夕方まではアジアの対応をして、夜になるとヨーロッパからもメールが来る。つまり、仕事がない時間がないんですね(笑)。だから、だらだら仕事をしているとキリがありません。ので、集中して仕事を行ない、その分、週末は家族のためだけに時間を費やせるようにしています。
AMDで働いていて面白いのは、あらゆる社員がAMDを変えられる点にあります。と言うのも、AMDが1日にしてIntelを抜くということは非常に難しいですね。でも、だからこそ、小さなことでもすべてが前進につながり、AMDの将来を変えられるんです。競合は強いですから、それ以上に頑張らないと、われわれの会社は成長できない。それがやりがいになります。
言い方を変えると、AMDが大好きでないとこの会社では働けないかもしれませんね(笑)。
--: そういうことが伝わっているのか、AMDにはシェア以上のファンが着いていると感じますね。Ryzenは前評判が高かったこともあり、秋葉原では発売日に行列ができました(AMD復活の狼煙か?Ryzenの深夜販売は大盛況、300名以上の人が集まる参照)。
ベネット: しばらくハイエンド向けCPUが出せずに、ファンの方には申し訳ないと思っていましたが、並んでまで購入いただけたことには本当に感謝しています。そして、われわれはもちろんRyzenで終わるわけではなく、その後の製品も続きますので、期待していただきたいです。
われわれの競合はたとえばドローンや自動運転車などにも参入していますが、われわれは今後もPCやPCゲーミングだけに注力していくので、PCユーザー全員に期待していただきたいです。
--: ”PC” Watchとしても心強いメッセージです(笑)。
ベネット: 実際、われわれのロードマップを見ていただければ、PCの製品しかありませんから(笑)。
--: どのようにスケジュール管理はしていますか。
ベネット: 正直に言うと、うまくできていないです(笑)。普通、海外出張だと事前に準備をしますよね? でも僕の場合、ここ数年は、朝起きてから「今日は中国か」とか「今日はパキスタンか」とか、どこに行くのかをチェックして、荷造りします(笑)。その日、その日で、対応している感じです。
今年は第1四半期にコンシューマ向けのRyzenが出て、このあとも、サーバー向けNaplesやモバイル向けのRaven Ridge、それからMicrosoftのXbox Scorpio向けのセミカスタムチップなども控えているなど、AMDにとって重要な年です。1つ1つが会社を大きく変えられるようなもので、それが1年で出るので、非常に忙しくはありますが、楽しみでもあります。
--: 携帯電話は何を使っていますか。
ベネット: メインは「iPhone 7」ですが、携帯電話は5台持っています(笑)。あとはSamsung「Galaxy S7 Edge」、Google「Pixel XL」、Motorola「MotoG5」、OnePlus「One」です。じつは結構ガジェットオタクなので、そういう機械が大好きなんです。エコシステムが強いのでiPhoneを使っていますが、個人的に好きなのはAndroidです。お気に入りはPixel XLですが、Galaxy S8が出たので、これも買いたいと思っています。いまは使っていないですが、ソニーにも頑張って欲しいですね。
--: Galaxy S8は人工知能機能の「Bixby」がまだ完成していないらしいので、それを待ってからでもいいのかなとも思います。
ベネット: 去年買った製品の中でベスト3を挙げるとすると、まず1つがAmazonのEcho。自宅でも使っています。音声で音楽を再生させたり、ホッケーの試合結果を聞いたりできるわけですが、これだと子供たちも躊躇なく使えるんですよね。その点に感動しました。
もう1つはAppleのAirPodsです。これ、見た目は正直ダサいと思います(笑)。でも、使い勝手には感動します。装着して、iPhoneで音楽を聴いているときに、誰かから話しかけられて、耳から外すと、それを検知して音楽は自動的に止まり、再装着すると再生がまた始まるとか、ケースで充電できるとか、よく考えられていますよね。
最後の1つはVR。アプリの名前はちょっと失念したのですが、仮想空間でミーティングができる仮想デスクトップアプリがあるんです。これは、先ほど話した気になる日本語の本について、編集を手伝ってくれているカナダ在住の友人とのミーティング用に自宅で使っているんですが、その仮想空間には自分のPCが再現されていて、デスクトップには実際の自分のPCの画面が表示されています。そして、ミーティングに参加している友人のデスクトップを見ることもできます。そして音声での会話もできますし、Leap Motionを使ってジェスチャーでいろんな操作もできます。
自分がシンガポールの自宅の部屋にいるということを忘れて、その共同仮想空間のなかでミーティングすることができました。ゲームも面白いですが、これぞVRの可能性だと思いました。
プライベートではPCを使って子供とゲームや動画編集
--: プライベートではどのようにPCを使っていますか。
ベネット: 3つあります。まず、時間があるときは11歳の息子とゲームをやります。いま息子がはまっているのはOverwatchです。ちなみに、PCではないですが、昔のゲームも好きなので、この前「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」を買って、「スーパーマリオブラザーズ」なんかも一緒にやっています。
それから息子の動画編集を手伝っています。彼は最近Ryzenを買って、PCを初めて自作しました。その様子を動画に撮影して、編集し、YouTubeに上げたんです。すごいなと思ったのは、教えていないのに、カメラで撮影した動画とUSBマイクの音声のトラックを重ねて、タイミングを合わせて、動画の方の音声を消すという作業をやっていたんです。子供の学習能力はすごいですね。
そして先ほども言ったVRのアプリをいろいろ試しています。
--: いまの趣味はなんですか。
ベネット: ゲーム以外だと、映画が好きで、「グーニーズ」とか僕が子供の頃観た古い映画を子供と一緒に観ています。でも、子供は映画に興味ないみたいで、10~15分とかの短いYouTube動画や、Twitchのゲーム配信なんかを観たがるんですよね(笑)。
それからいまでもサッカーをプレイしています。
--: 何か特技はお持ちですか。
ベネット: 特技と呼べるようなものはないですねぇ。ゲームもサッカーも平均的な腕前しかありません。
--: 語学は特技と言えますよね。英語と日本語をしゃべれますから。
ベネット: ああ、あとフランス語も話せます。
--: それは十分特技ですね。フランス語はどこで学ばれたのでしょう。
ベネット: 小学校から中学校までカナダにいたとき、フランス語だけの学校に通っていました。
--: ちょっと脱線しますが、カナダでフランス語というと、僕が好きなSimple Planというカナダ出身のバンドは、メンバーがフランス系の名前なんですよね。
ベネット: ああ、Simple Plan。音楽も僕が昔聴いていたものを子供に聴かせてて、Simple PlanとかBlink-182を聴かせていました。
--: 休日は家族と過ごされているんですよね。
ベネット: 平日は忙しくて、出張ばかりなので、休日は家族のためだけに使うようにしています。ので、自分のためだけの時間はほぼないですね。仕事をしているか、家族といるかです。
ただ、AMDでの仕事が面白いのが幸いですね。と言うのも、PCメーカーにいたら、そのメーカーの製品にしか触れられないけど、AMDにいると、数多くのパートナーのいろんな製品に触れられるじゃないですか。
--: 個人的なもの(家などは除く)で一番高い買い物はなんですか。
ベネット: 1つの買い物ではないんですが、通算で言うと、ゲーム機です。僕はゲーマーではないのですが、ゲームが大好きなんです。ファミコンの少し前くらいからの据え置きゲーム機の本体は、たぶんすべて持っています。PC-FX、MSX、ネオジオCD、3DO、ピピンアットマーク、ドリームキャスト、日本でしか売られていないATARI 2800とか。正確に数えたことはないですが、4~50台はあると思います。
僕の夢は、いつか新しい家を建てて、博物館のように陳列して、それらすべてを自由に遊べるようにすることなんです(笑)。
--: いま一番欲しいものはなんですか。
ベネット: テスラモデルSです。シンガポールでは買えないんですが、アメリカに住んでいたら絶対買っています。なぜかというと、この車はすべての部品がカスタムメイドで作られているんですね。そのぶん価格も高いですが、品質も低いはずがないですよね。そういう技術的な視点から憧れます。
--: 好きなブランドを教えてください。
ベネット: ブランドとは少し違うんですが、僕は2歳からカナダで育ったので、国籍はカナダではないけど、カナダのことが恋しくて、カナダのメイプルリーフをモチーフにしたものをよく身につけ、子供にも着させてます。
ちなみに、Ryzenというブランドについて、僕はその決定委員会のメンバーなのですが、じつは最初はその名称に反対していました。でも、いまはこれにして大成功だったと思っています。呼びやすいですし、われわれのエンジニアがさまざまな想いを込めて開発した「ZEN」というコードネームも含まれています。
--: 日本人としても呼びやすい名前ですよね。
ベネット: そうですか。よかったです。中国でも好評のようです。
--: そういえば、Ryzenの漢字もあるんですか?
ベネット: ありますよ。この前中国でイベントをやったときの写真があります。「鋭龍」と書きます。
ベネット: Ryzenとは、ぜんぜん関係ないですが、2年くらい前からハーフマラソンを始めたんです。そして、2週間前、北朝鮮でもハーフマラソン大会に参加してきました。
--: 普通に入国できるんですか?
ベネット: 普通は入れないですが、このマラソンは特別で、世界中から600人くらいが参加していました。
--: 個人的にこのヒト・モノには絶対勝てない……というのはありますか。
ベネット: 娘ですね。全部で息子が2人と娘が1人います。9歳ですが、娘はもう父親をうまく手のひらで転がす術を覚えてると感じます(笑)。
そういえば、彼女が4歳の時、英語で汚い言葉をノートに書いてたんですね。それを見つけて、娘に自分が書いたのかと問いただしたところ、友達が書いたと言うんです。そのまなざしの真剣さから僕は100%娘を信じ、これを書いたのは娘じゃないと妻に言ったんですね。そうしたら、妻は「その友達は日本人で英語を書けないから、その子のハズがない」と(笑)。それで、再度娘に確認したら、泣きながら自白しました(笑)。本当に100%信じていたので、怒るよりショックでした(笑)。
20年後は外国人視点で日本の若い人に何か教える職に就きたい
--: 20年後どのようなことをしていたいですか。
ベネット: 2つあって、1つは20年後もAMDに残っていたいです。この会社で働いて実感したのが、市場には競争が必要だと言うことです。競争がないと技術革新は遅くなってしまいます。たとえば、AMDがサーバーCPUでIntelと競争が難しくなって以降、サーバーCPUは価格は上がっても性能は同じだけ上がっていません。
もう1つの夢として、教えることが好きなので、教師のような仕事をしたいと思います。妻は日本人で、子供もバイリンガルなので、日本で教師になるというのもいいと思います。古典文学を学んでいたので、外国人視点で日本人に日本文学を教えるというのも面白そうです。僕がいろいろな国で学んだことを、日本人や日本にいる外国の若い人たちに教えることで恩返ししたいと思います。
--: PCは20年後どうなっていると思いますか。
ベネット: スター・トレックのような世界になっていると思います。たとえば、PCの使い方のメインのインターフェイスは自然言語になるでしょう。すでに一部実現していますしね。
VRの利用場面もさらに増えていて、VRはより現実的な世界を実現していると思います。5~10年前に書かれた小説を元にした「Ready Player One」という映画がまもなく公開されます。これはVRの世界を描いた作品です。この作品の中では、学校に行ったりするのも、仕事をするのもVRの中なんですね。そういう世界になっていると思います。
本当にその場に行くというのは、観光とかに限られてくるんじゃないでしょうか。
--: これから社会人になる20歳の人に、どのように人生を歩むべきかメッセージをお願いします。
ベネット: 僕はいつも自分のチームに2つのことを言っています。英語では「Think Big」です。大きな夢を描いておかないと、何のために働いているかわからなくなることもありますから。と言っても、「空を飛ぶ」とか荒唐無稽なことではなく、実現可能な中でなるべく大きな夢を描くということです。
もう1つは、単純なことですが、「Win Together, Lose Together」ということです。「Win Together」はわかりやすいと思いますが、「Lose Together」はあまり聞かないかもしれませんね。言い換えると、何事もひとりではできないのだから、一緒になって取り組んでいこうということです。失敗することもあるかもしれませんが、成功するには一丸となって取り組むことが重要です。
読者プレゼント
この企画では、登場いただく方に記念品を読者プレゼントとしてご提供いただいています。ベネットさんには「PlayStation 4 Pro」と「Xbox One S」を1台ずつご提供いただきました。当選賞品は編集部にて決めさせていただきます。ふるってご応募ください。
応募方法
応募方法:下記リンクの応募フォームに必要事項を入力して送信してください
応募締切:2017年6月1日(木) 0:00まで
※ 応募フォームの送信はSSL対応ブラウザをご利用ください。SSL非対応のブラウザではご応募できません。