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インテルがIoTにおけるAIの重要性を説く。プロセッサに加えAI投資を加速
2018年6月28日 15:26
インテルは年6月28日、東京・後楽のベルサール飯田橋ファーストにおいて、製造業のユーザー企業などを対象にした「インテル インダストリアル IoT ソリューション DAY」を開催した。
インテルの米国本社や日本法人の担当者に加えて、ゲストやパートナー企業が講演。エッジコンピューティングを中心に、AIやディープラーニング(深層学習)、マシンビジョン、データ分析などの技術や最新動向を通じて、製造業向けの最新IoTソリューションを紹介するものになった。さらに、展示コーナーでは、15社の国内外のパートナー企業が、IoTを軸にした最新ソリューションを展示した。
午前10時から開始したセッションでは、米インテル・コーポレーション IoT営業本部のTrish Blomfieldディレクターが挨拶。「製造業界の現場の人たちは、今後5年で、インテリジェントファクトリーの時代がやってくると考えている。日本は技術や製造業の先進国であり、世界第3の経済圏である。
そして、人口構成の変化、労働力不足といった課題に直面している。先進国のなかでも新たな課題を最初に体験する国であり、インダストリアル4.0のリーダーになる立場にあるとも言える」と前置き。
「インテルは、IoTが主流になり、AIは有望であり、エッジが重要になると考えており、これが3つのメガトレンドになる。2年後には、1人1人が、毎日1.5GBものデータを生成すると考えられている。
病院からは1日3TBのデータが生成され、スマートファクトリーでは1日1PBのデータが生まれる。IoTによって、膨大なデータが生まれ、それによって生活が変わることになる。だが、これだけの膨大なデータを処理するためには、エッジコンピューティングが必要になる。
近い将来には、ネットワークの5割がなんらの制約を受け、10%がオーバーロードで処理に対応できなくなるという予測があり、これを解決するためには、エッジコンピュータという概念を用いなくてはならない。調査会社よると、来年(2019年)には、4割以上のデータが、エッジコンピュータで処理されると予測している。
そして、これらのデータを活かすためには、AIを活用しなくてはならない。インテルは、IoT、エッジコンピューティング、AIが主流になると確信しており、そこに向けて投資をしていく。インテルが、最高のプロセッサを作り続けることは変わらない。その上で、IoTのためのコンピューティングの実現、負荷の集約、ビデオとAIに対して投資を行ない、価値を提供していくことになる」とした。
また、「これまで10年間で行なったことが、3年で起こるようになる。変化が激しいなかで、インテルは、パートナーが新たな製品を作ることを支援したり、顧客が新たな製品を簡単に見つけられることに投資していく。いますぐに使えるソリューションを提供するために、インテルIoTマーケットレディソリューション(MRS)およびインテルIoT RFPレディキットを提供している。製造業の方々には、ぜひ、それを活用してほしい」と述べた。
最初のセッションに登壇したインテル 執行役員 インダストリー事業本部長の張磊(チョウ ライ)氏は、「IoT時代の技術」をテーマに講演。「日本の製造業は、世界的な消費の増加、セキュリティリスクの増大、離職率の増加や人材不足などの人的課題、破壊的な技術の登場といった環境のなかにある。
一方で、電力会社も、電力だけでなく付加価値となるサービスを一緒に提供することになるユーティリティ3.0に取り組んでいるように、製造業でも、単に製品を提供するだけでなく、サービスを組み合わせて提供するといった動きが出ている。製造が大きな転換期を迎えている」などと指摘した。
また、インテルのウェハの生産を行なっているファブの最新動向についても紹介。「工場のなかには、ほとんど人がいない。いたとしてもメンテナンスのための人だけである。Core i5を搭載したPCをマシンコントローラとして活用。各種AIモデルを組み合わせて、すべてを制御している。従来は、UNIXやLinuxを活用していたが、いまはWindowsを使用している。ウェハは、振動を与えたり、指紋がついたりすると使えなくなる。そのため、自動マテリアルハンドリングシステムを導入している」などと説明。
「ファブのなかでは、現在、ビデオを活用しており、IoTの目が重要になっている。業界唯一のエンド・トゥ・エンドのビデオ/イメージングソリューションを実現しており、ビデオこそがIoTの支柱になる。ただ、これを活かすためには、AIを活用しなくてはならない。今後は、エッジコンピューティング、人工知能、マシンビジョン、ユビキタス通信、セキュリティが重要になってくるが、これらは、すべてがムーアの法則とシリコンおよびCMOS技術の進化に依存している」などと述べた。
続いて、インテル IoT テクニカルセールスチーム コンピュータービジョン スペシャリストの志村泰規氏は、「インテル エッジサイドディープラーニングソリューション」をテーマに講演した。
「ディープラーニングやAI向けに、シリコンからライブラリ、フレームワーク、ツールに至るまで、すべてを用意し、提供しているのがインテルの強みである」としながら、「インテルは、コンピュータビジョンおよびディープラーニングにおいて、アルテラ、イティーズ、ナーバナ、モービルアイなどの技術を取得したり、連携したりしている。
だが、これらのソリューションを活用するさいに、ソフトウェアがバラバラだったり、開発ツールがバラバラであっては使いにくい。今年(2018年)5月に新たに公開したOpenVINOツールキットは、インテルが持つ深層学習アクセラレータを、同じソフトで、同じように扱えるようになるのが特徴である」とした。
OpenVINOツールキットは、先週末にはリリース2の提供が開始されており、無料でダンウロードできるという。
また、CPUを深層学習に活用するさいに、最適なコードを生成するコンパイラや、高機能、高速化を実現するライブラリなどの活用によるソフトウェアの最適化によって16.5倍も早く処理できること、内蔵GPUは、CPUと同一の広帯域、低レイテンシバスに接続されており、GT4e搭載のCore i7ー6770HQの場合、72個のEUを搭載し、1.152TFLOPSの演算性能を実現できることなどにふれ、「内蔵GPUが遊んでいるならば、こき使ってほしい。ちょっとした外付けGPU程度の性能を持っているので、ぜひ活用してほしい」などとした。
さらに、Intel Movidius Myriadについても説明。「年末には新たなMyriad Xを投入できる。現行のMyriad 2の10倍の性能を発揮でき、1TFLOPSの性能を2~3Wの低消費電力で活用できるようになる」とした。
そのほか、FPGAについても説明。「11bitといったような8の倍数ではないところでの演算器の構成が可能になるといったFPGA特有のメリットを活かすことができ、用途に最適化したかたちで、より多くの演算器を搭載できるようになる。こうした特徴をより積極的に訴求したい」などとした。
PCIアクセラレータカードであるHDDL(High Denstiy Learning)-RおよびHDDL-Fをまもなく提供する予定も明らかにした。
ゲスト講演として最初に登壇したのがロボット革命イニシアティブ協議会 インダストリアルIoT推進統括の水上潔氏。「インダストリアルIoT、今求められるもの」と題して講演した。
同氏は、「大きな産業転換の時期を迎えている。将来に向かって、変化することを真剣に考えなくてはいけない」とし、第4次産業革命を迎えるなかで、日本の製造業が置かれている立場について説明。
「一般的な自動車は3万点の部品で構成されているが、電気自動車は700点の部品単数で済むようになる。この動きに象徴されるように、日本はより高度なモノづくりの方向に向かわなくてはならない。日本では、サイバーフィジカルシステムについても議論されているが、フィジカルに近いところの議論が中心になっている。また、オープンイノベーションやエコシステムの理解や推進が進んでいないこと、もともと高度成長に特化した社会システムであり、縦割り社会が限界に達している。まずは、気がついた人同士がつながり、動きはじめることが大切である。今後は、戦略的システム思考が求められる」と提言した。
さらに、ロボット革命イニシアティブの活動については、「IoTによる製造ビジネス変革を目的に設立した団体であり、現在、150人が参加しており、20の委員会がある。2016年には、ドイツのイニシアティブとの連携を発表し、日独専門家会議の開催や共同声明の発表などを行なっている」などと紹介した。
また、2人目のゲスト講演として、一般社団法人Edgecrossコンソーシアムの金井正一代表理事が、「開かれたオープンプラットフォームとその展望~Edgecrossについて~」と題した講演を行なった。
金井代表理事は、「ものづくりを取り巻く環境は、価値の高いバリューチェーンを創出するために、IoTの活用が加速しており、IoT活用のキーワードは、エッジコンピューティングとなる。だが、製造業の現場には、さまざまなメーカーの機器が混在していること、データそれぞれ意味づけを明確にしなくてはならないという問題があり、なかなか進展していない。そこで、エッジ領域にプラットフォームを用意し、異なる技術要素を吸収すること、さらには、抽象化したデータを階層化して、意味付けを行なうことで運用化できると考えている」とした。
2017年11月に発足し、2018年2月に一般社団法人化したEdgecrossコンソーシアムは、企業や産業の枠を超えて、エッジコンピューティング領域を軸とした新たな付加価値創出を目指して、製造業のIoT化に貢献することを目的に設立したもので、「現在、ソフトウェアメーカー、工作機械メーカー、産業PCメーカー、エンドユーザー、商社、金融機関など、160社以上が参加している。入会に関する問い合わせが多く、年内には200社を超えることになるだろう」とした。
また、「Edgecrossは、エッジコンピューティングを実現するためのソフトウェアの固まりだと考えてほしい。FAとITを協調させるオープンな日本発のエッジコンピューティングのためのソフトウェアプラットフォームであり、すべてがWindows 10の上で動作している。2018年5月から、エッジコンピューティングの基本機能を提供するソフトウェアを発売している。また、各種ツールキットも用意している。会員各社の参加により、ソフトウェアの仕様を策定しており、対応商品の認証活動も行なっている。今後、ほかの関係団体とも連携を強化していきたい」と説明した。
一方、インテル インダストリアル IoT ソリューション DAYでは、このほかにも、日本マイクロソフトや日立製作所、オムロン、三菱電機などが、製造業におけるIoTやAIの活用、エッジコンピューティングなどに関する講演を行なった。