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Microsoft、国内/海外でも常時接続を実現するeSIMをWindowsに実装

~Snapdragon 835搭載ARM版Windows 10はLenovo、HP、ASUSから提供

Microsoft コンシューマ・デバイスセールス担当執行役員 ニック・パーカー氏

 Microsoftは、COMPUTEX TAIPEI 2017で講演を行ない、今後の戦略などについて説明した。このなかで「Always Connected PC」と呼ばれる構想を明らかにし、LTEモデムとeSIM(組み込み型のSIMカード)を組み合わせることで、いつでもどこでも簡単にデータ通信を契約し、すぐにインターネット接続できる環境が実現するとした。また、そのパートナー企業としては、通信キャリアのKDDI、PCメーカーのVAIOなどが紹介された。

 そして、昨年(2016年)のWinHECで発表したARM版Windows 10についてもふれ、今年(2017年)の年末商戦までにSnapdragon 835を搭載したPCを販売するOEMメーカーが、HP、Lenovo、ASUSの3社であることを公開した。Microsoftによれば、その3社のSnapdragon 835を搭載した製品は、Always Connected PCに準拠した製品になるという。

クラウドファースト、モバイルファーストというMicrosoftの戦略

 Microsoft コンシューマ・デバイスセールス担当執行役員 ニック・パーカー氏は「昨年1年でWindows 10に対応したデバイスは2億4,500万台が販売された。また、10億人がWindowsを使っているなど、Windows 10で非常に多くのことを達成している」と述べ、Windows 10デバイスやユーザーをアピール。

 また、Microsoftの戦略として「クラウドファースト」、「モバイルファースト」について説明し、5月にシアトルで開催されたBuildで紹介された「インテリジェントクライド」と「インテリジェントエッジ」から構成されるクラウドとエッジの世界、さらには新しい形のパーソナルコンピューティング、生産性の再定義などといったことを改めて説明した。

パーカー氏のプレゼンテーション

Intel、QualcommのLTEモデムとeSIMを内蔵するAlways Connected PC

Microsoft Windowsマーケティング担当 執行役員 マット・バルロー氏

 パーカー氏についで登壇したのはMicrosoft Windowsマーケティング担当 執行役員 マット・バルロー氏。同氏は、Windows 10では大幅アップデートなどにより機能強化が行なわれるため、いつ買っても最新の機能を使えることが特徴であり、いつでも買いどきであるとアピール。続いて、Buildで発表された時期大規模アップデートとなる「Windows 10 Fall Creators Update(開発コードネーム: RS3)」の機能などを、デモを交えて説明した。

Windows 10はいつでも過去最高のWindows

 その後、バルロー氏はMicrosoftが「Always Connected PC」と呼ぶ、セルラー回線を利用したモバイルPCの常時接続構想について説明した。

Always Connected PC

 Always Connected PCは、MicrosoftがIntelと協力して行なう取り組みで、両社が提供するSoCとLTEモデム、GSMAで規定されているeSIM(組み込み型のSIMカード、AppleのiPad Pro 9.7インチモデルなどに搭載されているApple SIMなどもこのeSIM)をPCにも搭載することで、モバイルPCの常時接続を実現する。

 eSIMによってユーザーは自国の通信キャリアとだけでなく、出張先の通信キャリアとオンラインで契約してすぐにデータ通信を始めることができる。

Always Connected PCのパートナーとなる通信系の企業
PCメーカーはHP、Dell、Lenovo、ASUS、Huaweiに加えてVAIOとXiaomi

 このAlways Connected PC構想で、パートナーとして紹介された通信キャリアはAT&T、T-Mobile US、ドイツ・テレコム、BT、Vodafone、Orange、Threeといった欧米の通信キャリア、GemaltoなどのeSIMのインフラを提供する企業、GigSkyなどのグローバルなMVNOなどとならび、日本のKDDIも紹介された。

 また、PCメーカーとしては、Lenovo、HP、Dell、ASUS、Huaweiなどのグローバルメーカーだけでなく、日本のVAIOと中国のXiaomiも紹介された。

Snapdragon 835搭載ARM版Windows 10の最初のOEMメーカーはHP、Lenovo、ASUS

 バルロー氏は、昨年の12月にWinHECで発表されたARM版Windows 10(PC向けWindows 10のARM版)について説明した。

 このARM版Windows 10は、Qualcommが今年正式に発表した「Snapdragon 835」を利用した製品が、今年の年末商戦までに投入されることが明らかにされていた。その最初の製品を発売するメーカーが、Lenovo、HP、ASUSになるという。

 バルロー氏は「Snapdragonを搭載したPCは、すべてが“Always Connected PC”になる」と述べており、これらの製品のすべてにeSIMが搭載され、常時接続が行なえるようになる。

ARM版Windows 10の特徴は長時間バッテリ駆動とLTE通信
Snapdragon 835を搭載した最初のPCはHP、Lenovo、ASUSから

 その後、Microsoft パートナー・デバイス担当副社長 ピーター・ハン氏が壇上に立ち、OEMメーカーの製品などを紹介した。

 このステージで初めて公開された製品としては、Samsung Electronicsの360度回転型2in1デバイスとなる「Notebook 9 Pro」がある。最大の特徴はSペンを搭載していることで、Core i7を搭載し、13.3および15.6型フルHD液晶の2つのモデルが用意されている。米国などでは発表済みであり、注文受付も開始している。

Samsung Notebook 9 Pro

 また、5月に行なわれたBuildで発表されたCortanaを利用した、AIスピーカーとなるCortana speakerも紹介された。Buildで発表されたHarman Kardonの製品、PCにCortana speakerの機能を統合したHPの小型デスクトップPCなどが公開されたほか、PCレスで動作するHPのCortana speakerの写真も公開された。

Cortana speaker
右端に表示されているのがHPのCortana speaker
Harman KardonのCortana speaker
HPの省スペースデスクトップPCに

 このほかにも、昨年のCOMPUTEXで発表されたWindows Mixed Reality(当時はWindows Holographic)に対応したHMDで、発売予定とされていたが詳細は不明だったASUSとDellの製品がそれぞれ展示された。ASUSのHMDはブラック、Dellはホワイトベースになっていた。Windows Mixed RealityのHMDは、米国とカナダではAcerとHPが、日本ではAcerが開発キットの予約販売を開始しているが、現在販売されているのはあくまで開発版という扱いになる。

ASUSのWindows Mixed Reality HMD
DellのWindows Mixed Reality HMD

 Windows Mixed Realityの製品が一般消費者向けとして正式に提供されるのは、Windows 10 Fall Creators Update(RS3)以降になる予定だ。