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初心者もベテランも必見!自作PCでハマらないためのパーツ選びと組み立て方

 2023年11月に自作PCをおすすめする記事を書いたところ、ありがたいことに予想以上の反響を得た。20年くらい前に比べると、PCを自作する人は減っていると筆者は思っているが、自作PCに興味がある人は今もかなりいるようだ。

 前回の記事では、入門編として自作PCの特徴やメリット、PCを自作する際の注意点などについて解説したが、今回はその続編としてPCを自作する際のパーツの選び方や、組み立ての際のポイント、そして陥りやすい点について解説したい。

まずは自作PCで何をやりたいのかをイメージすることが重要

 PC自作の第一歩が、CPUやメモリ、ビデオカード、SSDといった、PCを構成するパーツの選択だ。実際にPCを組み立てる作業よりも、どんなパーツでPCを自作するか、パーツ選びに悩む時間が一番楽しいという人も多いことだろう。

 自作PCの構成パーツを決めるには、まず、その自作PCで何をやりたいのかをイメージすることが重要だ。たとえば、「ネットサーフィンと文書作成ができればいい」のか「最新ゲームを高解像度高画質でサクサクプレイしたい」のか「VTuberとしてゲームの実況配信をしたい」のか「画像生成AIをローカルで実行したい」のか、 まず何をやりたいのか、その自作PCの利用目的をしっかり決めることがポイントだ

写真はイメージ(ChatGPTで生成)

 画像生成AIやLLMをローカルで実行したいというのは少し特殊な用途だと思われるため、ここでは触れない。一般的なコンシューマなら、ざっくり「最新ゲームを快適に遊びたい」派と「PCでゲームをする気はない」派に分けられるだろう。

 実はこれが大きな分かれ道であり、「ゲームをする=ビデオカードを搭載する(または後から搭載する予定がある)」、「ゲームをしない=内蔵GPUで十分なため、ビデオカードは搭載しない(後から搭載する予定はない)」となる。さらに、ビデオカードを積むなら、その性能を引き出せる高性能なCPUを選ぶべきだし、そうすると発熱も大きくなるため大型CPUクーラーなどを搭載する必要があり、ケースもそれに見合った大きさの物を選ぶことになる。

 つまり、ビデオカード搭載前提なら、ほかのパーツも連鎖的に決まるのだ。それに対し、ビデオカードを搭載せず、後からでも追加する予定がないなら、パーツの選択肢は比較的広くなり、低予算でも組みやすくなる。

 そこで、自作PCで最新ゲームをプレイしたい場合とゲームはプレイしない場合の2パターンに分けて、パーツ選びの基本的な考え方を解説しよう。

ゲームをガッツリやりたい人向けのパーツの選び方

 まず、最新ゲームを高解像度高画質でサクサク遊べるゲーミングPCを自作したいという人向けのパーツの選び方を解説しよう。

 CPUに統合されているGPUもCPUの世代が更新される度に強化されており、Webブラウザ上で動くゲームなど、軽めのゲームなら内蔵GPUでもプレイできるようにはなってきているが、AAAタイトルなどと呼ばれるゲーム開発会社が多くの資金と人員をかけて開発した最新ゲームタイトルを快適にプレイするには、やはり高性能な単体GPUを搭載したビデオカードが必要になる。

CPUはCore i7またはRyzen 7以上がおすすめ

 ビデオカードの価格は、以前に比べるとかなり高くなっており、ハイエンドビデオカードはハイエンドCPUの価格を上回るようになっている。しかし、ビデオカードが重要だからといって、ビデオカードばかりに予算をかけるのは間違い。高性能GPUの性能を引き出すには、それに見合ったCPUが必要になるからだ。

 ミドルクラスのビデオカードを選択した場合でも、数年後、性能不足を感じるようになったら、ビデオカードを最新のものにアップグレードすることで、再び第一線で戦えるPCになる。将来のビデオカードのアップグレードも考え、CPUもミドルレンジ以上、できればハイエンドモデルをチョイスしたい。

IntelならCore i9やi7といった上位モデルを選ぼう
RyzenならRyzen 7以上を選択しよう

 具体的に言えば、インテルならCore i5以上、 できればCore i7かCore i9 、AMDならRyzen 5以上、 できればRyzen 7かRyzen 9が望ましい 。Ryzenを選ぶ場合、Socket AM4対応マザーボードにするかSocket AM5対応マザーボードにするのかという問題もあるが、これから作るのならやはり将来性の高いSocket AM5対応マザーボードとSocket AM5対応のRyzen 7/9を選ぶことをおすすめしたい。

マザーボードは電源設計、メモリは最低16GB

 CPUが決まったらマザーボードを選択することになるが、ゲーム用途では基本的にハイエンドCPUを選んでいるので、マザーボードもできれば3万円以上のハイエンドモデルがおすすめ。ハイエンドCPUは消費電力が高く、その電力供給を行なうマザーボードの電源設計が要となり、電源設計が良ければ必然的に価格も高くなるからだ。また、ローエンドモデルではCPUへの電力供給を行なう回路にヒートシンクが付いていないことも多く、長時間の高負荷に耐える作りになっていないことも多い。

マザーボードはCPUの仕様に合わせて選択する。ゲーム用途ならできれば「ゲーミング」と謳われたモデルが無難。電源回路にヒートシンクがついており、安定動作が見込める

 加えて、ローエンドモデルではPCI Expressのバージョンが古かったり、M.2のスロットが少なかったりと、ビデオカードの性能を100%生かしきれなかったり、後からストレージを増設しようとしたりすると困ったりするので、 予算が許す限りできるだけハイエンドなモデルを選ぼう

ハイエンドマザーボードは自作を楽にするギミックが多く盛り込まれており、案外初心者に優しい。写真はASUSの「PCIE SLOT Q-RELEASE」と呼ばれる機構で、PCI Expressの固定ラッチをワンプッシュで外せる(普通は隙間に手をいれる必要がある)

 もう1つ重要なコンポーネントであるメモリだが、基本的に容量を優先させよう。メモリが多ければ多いほど、CPUに近いところにプログラムのデータを置くことが可能で高速に実行できるからだ。特に最新のゲームはメモリ消費量が多いので注意したい。16GBは最低限、できれば32GBを搭載しておきたい。

 なおメモリは2枚1セットで売られていることが多いが、これは2枚を並列で動作させることで速度向上を図っているためである。1枚だと性能が低下するのでこれも注意したい。また、メモリの速度も性能に影響する部分の1つだが、 一般的なアプリケーションやゲームでは、容量と比較するとその重要性は比較的低めである (最近は影響を受けるゲームも増えつつある)。

メモリは基本的に容量最優先。速度やデザインにこだわったモデルもあるが高価なので、これは予算と好み次第

冷却は大型空冷か簡易水冷の2択

 ハイエンドCPUは、コア数が多く動作クロックも高いため、発熱が大きくなる。発熱の目安となるのがTDPと呼ばれる数値である。たとえば、10コアで基本動作クロックが2.5GHzのCore i5-14400FのTDPは65Wだが、24コアで基本動作クロックが3.2GHzのCore i9-14900KFのTDPは125Wとおよそ2倍になっている。

 TDP 125W以上のCPUを安定して動作させるためには、高い冷却性能が持つCPUクーラーが必要になる。空冷クーラーなら大型ファンと大型ヒートシンクを使ったもの、 簡易水冷ならラジエータが360mm以上のものが望ましい

 なお、簡易水冷とは、水冷ヘッドとラジエータの配管が完了しており、冷却液も最初から封入されているタイプの水冷システムであり、ユーザーが配管や冷却液の注入作業を行なう必要がないため、トラブルが少なく初心者でも楽に扱える。ちなみに自分で配管を行ない、冷却液を入れるタイプの本格水冷は、初めてPCを自作する人にはおすすめしない。

ハイエンドCPUなら360mmラジエータを備えた簡易水冷がお手軽でおすすめ。数年前と比較すると選択肢もかなり増え、価格もこなれてきた

 簡易水冷クーラーを利用する場合は、CPUに装着する水冷ヘッド自体は大型ヒートシンクに比べるとコンパクトなので着脱が容易であり、メモリスロットやCPU補助電源コネクタとの干渉も少ない。対応する簡易水冷が明記されているケースも多いので、簡易水冷を選ぶ場合は、 対応が保証されているケースを選ぶと安心だ

 空冷クーラーは水漏れなどの心配はないが、大型空冷クーラーはCPUソケット周辺の場所を占有するため、マザーボードのレイアウトによってはメモリスロットやCPU補助電源コネクタへのアクセスがしにくくなり、メンテナンス性が低下することがある。また、クーラーの背も高くなるので、ケースのサイズ(幅)に気を付ける必要がある。

 一方で、簡易水冷のように水漏れの心配や蒸発といった経年劣化が少なく 信頼性が高いのが特徴 。また、ファンがケース開口部に取り付ける必要もないため、静音化しやすいのもメリットである。

ハイエンド空冷CPUクーラーで有名なメーカーNoctuaの最新作、NH-D15 G2。簡易水冷顔負けの性能を発揮する。ただし巨大であるため取り扱いには細心の注意を払いたい

ケース選びは空冷か水冷かで変わる

 先述の通り、空冷と水冷のどちらを選ぶかで、ケースを選ぶ際にチェックすべきポイントが変わってくる。

最近のケースは見た目重視でバリエーションも増えてきた。使い勝手も向上している

 簡易水冷の場合、ラジエータのサイズは120mm、240mm、360mmの3種類が主流だが、ゲーミングPCで使われる高性能CPUを冷却するには360mmがおすすめ。そのため、 360mmのラジエータが入るケースを前提に選ぶ ことになる。

 一方空冷の場合はケースの幅が重要になる。具体的には、 ハイエンドCPUに対応できる空冷クーラーは170mm程度であることが多い ためチェックしておきたい。最近は製品情報でも公開されていることが多くなったので、購入前にあらかじめ調べておこう。

 また、ゲーミングPCのケース選びでは、 長さがあるハイエンドビデオカードがちゃんと入るかということも忘れずにチェックしたい

写真は「HYTE Y70」という大型ケースを取り扱う代理店、リンクスインターナショナルの製品ページ例。スペックで対応マザーボードのフォームファクタのみならず、CPUクーラーの高さや、対応ラジエータのサイズ、ビデオカード(拡張カードスペースの欄)の長さが記載されている。「このデザインがグッとキタッ! 」となる前に冷静に調べておこう

 あとは選んだマザーボードのフォームファクタと筐体の大きさとの相談だ。初心者が初めて組むなら、クリアランスが確保しやすいATXの大型ケースを選ぶことをおすすめしたい。ケースは小さいほうが場所を占有しなくても済むのだが、作業性が著しく低下したり、最悪マザーボードと干渉したりすることもあるので注意しよう。

 このように、ケースはデザインで選びがちだが、 パーツ選びの中でもっとも時間をかけて選択するべきものだ 。組み込みたいパーツが入るかどうか、作業性がどうか、しっかり下調べをしてから購入してほしい。

ビデオカードは液晶解像度ややりたいゲームに応じて選ぶ

 ビデオカードの描画性能によって、ゲームの快適さは大きく左右される。予算に余裕があるなら、ハイエンドGPUを搭載したビデオカードを選べばよいが、昨今ビデオカードの価格は大きく上昇しており、NVIDIAのフラッグシップGPUであるGeForce RTX 4090を搭載したビデオカードは、安いものでも30万円程度する。

 使おうとしているゲーミングモニターがフルHD/144Hzでは、GeForce RTX 4090は完全にオーバースペックだ。4K対応ゲーミングディスプレイで、最新ゲームを最高画質でプレイしたいのなら、GeForce RTX 4080以上がおすすめだが、フルHDやWQHD解像度でプレイするなら、 10万円以下で買えるGeForce RTX 4070やRadeon RX 7800 XT/7700 XT、5万円前後のGeForce RTX 4060やRadeon 7600 XTでも十分だ

GeForce RTX 4070搭載ビデオカード(Palit製)
Radeon RX 7800 XT搭載ビデオカード(ASUS製)

 また、やりたいゲームのジャンルによっても、適切なビデオカードは変わってくる。フレームレートが重要なFPS/TPSや、壮麗なグラフィックスが売りのオープンワールド系アクションゲームを中心にプレイするのなら、比較的高性能なビデオカードが欲しくなるが、対戦格闘ゲームやMMORPGなど、フレームレート上限が60fpsになっているゲームを中心にプレイするのなら、ミドルレンジクラスのビデオカードでも不満はないだろう。

ストレージはM.2のPCI Express 4.0対応SSDで決まり、容量は1TB以上がおすすめ

 快適なゲームプレイのためには、ストレージも重要だ。ストレージは、プログラムやデータを保存するためのデバイスであり、よく冷蔵庫と同じだと言われる。その心は、「大きいと思っていても、すぐその大きさに慣れてしまい、一杯までものを入れてしまう」ということだ。

 ストレージは、その仕組みによってHDDとSSDに大別できる。以前は、HDDが主流だったが、現在ではアクセスが格段に高速で、衝撃などにも強いSSDが主流である。SSDの形状(フォームファクタ)も何種類かあるが、今の主流はM.2と呼ばれるメモリモジュールのような基板がむき出しの規格である。M.2フォームファクターのSSDはケーブルが不要で、取り付けも簡単。マザーボードに用意されているM.2スロットに差し込むだけでOKだ。

 M.2フォームファクタのインターフェイスは、SATAとPCI Expressに大別できるが、今はより高速なPCI Expressが主流。そのPCI Expressも、世代が新しくなるたびに高速化されており、最新世代はPCI Express 5.0であるが、PCI Express 5.0対応SSDはまだ数が少なく高価である。

 そのため、 コストパフォーマンスが高く、製品の選択肢も多いPCI Express 4.0対応SSDをおすすめする 。シーケンシャルリードが7,000MB/sを超えており、ファイルサイズの大きなゲームの起動やシーンの読み込みも高速に行なえる。

 容量については、 最低1TB、できれば2TB をおすすめする。最近のAAAゲームタイトルは、100GBを超えるディスクスペースを必要とするものも増えているからだ。

M.2 SSDは高速でケーブルいらず。組み込みが楽だ

ゲーミングPCの電源ユニットは800W以上のATX 3.0対応がおすすめ

 ゲーミングPCを組む場合、電源ユニットの容量や端子仕様も重要になる。電源ユニットの変換効率は、80PLUSのグレードによって表され、上から「80PLUS TITANIUM」、「80PLUS PLATINUM」、「80PLUS GOLD」、「80PLUS SILVER」、「80PLUS BRONZE」、「80PLUS STANDARD」という6つのグレードがある。グレードが高いほど変換効率が高く、発熱も小さくなる。

 ただし、 最大効率が発揮できるのは定格の50%の負荷をかけた時である 。従って、効率を重視するなら、システム全体のピーク電力の2倍程度の容量の電源ユニットが望ましい。GPU、CPUともにハイエンドモデルは消費電力が大きくなる傾向にあるので、ゲーミングPCなら将来的なアップグレードも考えて最低800W、できれば1,000Wクラスを選ぶことをおすすめする。80PLUSのグレードは高くなるほど無駄な電力消費を防げるが、価格も高くなるので、80PLUS GOLDくらいで問題はない。

 また、最新ビデオカードでは、追加電源コネクタとして従来使われていたPCI Express 8ピンコネクタやPCI Express 6ピンコネクタではなく、より大きな電力を供給できる12VHPWRと呼ばれる新しい仕様のコネクタが採用されるようになっている。

電源の老舗Seasonicの「FOCUS GX-850 ATX3.0 850W」。10年保証で長く利用できる

 PCI Express 8ピンコネクタから12VHPWRに変換するアダプタも用意されているが、これからゲーミングPCを組むなら、12VHPWRコネクタを標準で備えた電源ユニットを選ぶことをおすすめする。12VHPWRコネクタに対応した新しい電源仕様がATX 3.0であり、ATX 3.0対応電源ユニットを選べば大丈夫だ。

 なお、電源は接続するケーブルを選べる「プラグイン式」と、あらかじめ接続された通常タイプがあるのだが、余剰なケーブルはエアフローの妨げとなる上に見栄えも悪くなるほか、現在は3.5インチHDDや2.5インチSSDを接続する機会が減っているので、予算に限りがあるなどの理由がない限りプラグイン式をおすすめする。

PCでゲームをするつもりがない人向けのパーツの選び方

 PCでゲームをするつもりがない=単体GPUは不要ということになるので(動画編集などでGPGPUを利用したいという用途もあるにあるが)、CPUもそこまで高性能なものを選ぶ必要はない。ミドルレンジ以下のCPUは発熱も小さく、CPUクーラーの性能もそこそこでかまわないため、ケースなどの選択肢もゲーミングPCを組む場合に比べてグッと広くなる。

ゲームをしないならCPUはCore i5やRyzen 5でも十分

Core i5

 ゲームをしないならCPUはCore i5やRyzen 5でも十分だ。一昔前に比べて、エントリークラスのCPUの性能も向上しているため、価格重視ならCore i3を選ぶ手もある。ただし、Ryzen 3はSocket AM4対応製品しか出ていないため、これから組むなら将来性を考えてSocket AM5対応マザーボードとSocket AM5対応のRyzen 5を選ぶのがよいだろう。

 マザーボードへの電源品質への要求もぐっと減るため、 1万円台から選んでも良い 。メモリも、 ほとんどの作業では16GBあれば十分だろう

ミドルレンジ以下のCPUならCPUクーラーは空冷でいい

 CPUとしてCore i5やRyzen 5とったミドルレンジCPUを選ぶなら、一般的な空冷クーラーで十分冷却できる。CPUに付属するのであれば、それででも構わない。ファンやヒートシンクのサイズもそこまで大きいものを使う必要はないので、CPUソケット周りのクリアランスも十分確保でき、メモリスロットや補助電源コネクタへのアクセスが邪魔されることもない。ヒートシンクの高さもそれほど高くないため、幅の狭いケースでも利用でき、 ケースの選択肢も広がる

基本的にCPUに付属するCPUクーラーで十分だが、見た目にこだわりたいのならサードパーティのものも「アリ」

SSDは1TBクラスがおすすめ

 ゲームをしない場合でも、ストレージは高速なSSD一択。日常的にOSやアプリケーションを起動するだけでも、HDDとの速度差は明らかで体感に直結する。

 とはいえ、今やSSDの価格もこなれてきているので、PCI Express 4.0対応の1TB SSDがおすすめだ。ハイエンドモデルでなくても、ミドルレンジクラスのSSDで十分である。

ミドルレンジのSSDはハイエンドモデルと比較すると性能面で見劣るが、一般用ならまったく問題ない

電源ユニットは500~600WクラスでOK

 ビデオカードを搭載しないのなら、電源ユニットへの要求も緩くなる。容量は500~600Wクラスで十分であり、ATX 3.0対応製品でなくても問題はない。そのため、価格的にもかなり安くすむ。

PC組み立ての際に注意すべきポイント

 次に、実際にPCを組み立てる際に注意すべきポイントや、上手な組み立てのコツについて解説する。

静電気対策をして手袋をすること

 組み立ての前にまずはケースやドアノブ、水道の蛇口といった金属に触れ、体に蓄積された静電気を放出しよう。PCパーツは落下といった衝撃に弱いのはもちろんだが、 静電気にも弱いので注意すること

 また、PCケースのフチやヒートシンクなど、PCパーツは何かと鋭利なところが多く、気をつけないと指を切って怪我してしまうので、手袋をはめることをおすすめする。なお、軍手は厚みがあって安心感はあるが、小さいネジなどでは作業性が低下するので、 薄手のものをおすすめしたい

作業前に金属に触れて体の静電気を逃がしておこう(ChatGPTで生成)
作業用手袋を用意しておくことをおすすめしたい

 用意する道具は基本的にプラスドライバのみだが、磁石でネジを吸い付けられるタイプがおすすめ。万が一手が届きにくいところにネジが落ちても吸って拾えるためだ。

 また、PC本体が小さくても、いろんなパーツを広げるとそこそこスペースを専有するため、広めの机または床の上で作業することをおすすめしたい。

I/Oバックパネルは先にケースに取り付けるべし!

 I/Oバックパネルは、ケースの背面のI/Oバックパネル取り付け場所に最初に取り付けるようにするのがポイントだ。I/Oバックパネルはケースの内側からはめ込むため、先にマザーボードを固定してしまうと、外すまで付けることができない。

 最近の高級マザーボードでは、マザーボードにI/Oバックパネルが一体化したタイプも増えている。I/Oバックパネル一体型マザーボードなら、もちろん取り付ける順番を気にする必要はない。

ハイエンドマザーボードでは、I/Oバックパネルがあらかじめ取り付けられていることが多いのだが、ローエンドでは別になっているのがほとんど。これを忘れると大幅に作業を巻き戻す羽目になるので注意!

CPUの取り付けはソケットの向きやピン折れに注意

 PCを組み立てる際に、一番気を使うのがCPUの取り付けであろう。インテルのCore iシリーズではLGA1700、AMDのRyzenシリーズではSocket AM5と呼ばれるCPUソケットが採用されている。

 どちらも、マザーボードに装着されているソケット側に細かなピンが用意されているが、 このソケットのピンはデリケートなので絶対に手などで触れないように注意すること 。CPUの向きが間違ってないかしっかり確認してから、ソケットの上にそっと乗せ、テンションアームを動かして固定しよう。

メモリはスロット両端のラッチが閉まっているかどうかを確認

 メモリの装着時には、まず、向きを確認する。メモリの端子部分の切り欠きと、メモリソケットの出っ張り部分が一致することを確認したら、マザーボードに対して垂直にメモリを押し込む。

 しっかり最後まで押し込んだら、メモリソケットの両端のラッチが「カチッ」と閉まる。ここで 必ずラッチが閉まっているか確認すること 。しっかり差し込んでいないとシステムが安定しなかったり、そもそも起動しなかったりするので注意しよう。

メモリはスロットに挿す際に「カチッ」と音がするまで入れること。なお、ラッチに関して近年は片方しかないマザーボードが多くなっているので、並行に挿しているか目視で再確認しよう

SSDはPCI Express 4.0対応M.2スロットに装着すること

 前述したようにSSDは、M.2フォームファクターと呼ばれる基板がむき出しのスリムな製品がおすすめだ。マザーボードには通常2つ以上のM.2スロットが用意されているが、PCI Express 4.0対応SSDの性能をフルに発揮するためには、PCI Express 4.0またはPCI Express 4.0に対応したM.2スロットに装着する必要がある。

  マザーボードによっては、PCI Express 4.0以上に対応したM.2スロットとPCI Express 3.0以下に対応したM.2スロットがともに用意されていることがあるので注意が必要だ

M.2スロットが複数用意されている場合、どのスロットがどのスペックなのか、説明書であらかじめ確認しておこう

簡易水冷ならケース上部にラジエータを装着すべき

 空冷の場合はあまり影響はないのだが、簡易水冷を取り付ける場合、重力により冷却液が循環しやすいケース上部に取り付けることをおすすめする。 仮に経年劣化による蒸発で水位が下がった場合でも、CPUヘッドに冷却液が行き渡るからだ

 ただケース上部に取り付けるということは、それだけファンの騒音が外に漏れやすいということでもある。このあたりは簡易水冷の弱点となるだろう。

簡易水冷はケース上部に取り付けるのが基本(写真はNZXTのケース製品情報より)

ケースに入れる前に最小構成で一度起動する

 できれば、マザーボードをケースに取り付ける前に、 マザーボードにCPUとCPUクーラー、メモリだけを装着した最小構成(Core iシリーズのF付きのように内蔵GPUがないCPUを利用している場合は、ビデオカードも装着する)に電源を接続し、1回起動してみるとよい

 ここでちゃんと起動すればOKだが、パーツの初期不良や差し込みが甘いなどの理由で、起動しない場合もある。ほかのパーツがあれば、ほかのパーツと交換して起動してみることを繰り返すことで、どのパーツに問題があるのか分かるようになる。

できればケースに組み込む前に一度検証しておこう

ケースへの組み込みの順番

 次にケースへのマザーボードやパーツの組み込みだが、次のような順番でやると、作業がスムーズに行く。

  1. 電源ユニットをケースに入れて固定する
  2. I/Oバックパネルをケース背面に取り付ける(必要なら)
  3. マザーボードにCPUクーラー用のリテンションを装着する(必要なら)
  4. マザーボードをケースに入れてネジで固定する
  5. さまざまなケーブルをマザーボードに差し込む
  6. CPUをCPUソケットに取り付ける(検証済みなら装着したまま)
  7. メモリを装着する(検証済みなら装着したまま)
  8. マザーボードにM.2のSSDを装着する
  9. CPUクーラーを取り付ける
  10. (必要なら)ビデオカードをマザーボードのPCI Expressスロットに挿入する
  11. 電源ケーブルやモニターケーブル、キーボード/マウスを接続する
  12. OSをインストール
  13. 起動してポートや拡張スロット類をチェックする

無事起動しても安心するのはまだ早い

 OSインストール後、起動を確認したからといって、安心するのはまだ早い。 ポートや拡張スロット類が正常に動作しているか、その場ですぐに調べることが重要だ

 たとえば、HDMIポートやDisplayPort端子を複数搭載しているビデオカードの場合を考えてみよう。チェックすべきポイントはそうした映像出力端子である。すべての端子が使えているのか、順番にケーブルを挿して確認することが大切だ。

たとえ使う予定がないポートでも、できればちゃんと使えるか確認しておきたい。初期不良交換期間が過ぎて壊れていることが発覚しても後の祭りだ。そういう意味では、できればスロット類もだが……

 というのも、一般的にPCパーツの初期不良交換期間は1週間程度だからだ。1週間が過ぎて「あのポートが使えなかった」となっては、基本的に修理対象となり、対応に時間がかかるようになってしまうので注意したい。

 ちなみに編集部員の中には、初回のチェックを怠ったがゆえに中古パーツを売却する際にポートの初期不良が発覚し、ジャンク価格でしか引き取れないを告げられ、保証期間ギリギリに慌てて修理に出して事なきを得た(?)話も残っている。

あなたも自作PCの世界へ

 いくつかのポイントに注意しながら、あわてず丁寧に組み立てることが重要だ。ゲームをしないのなら、ビデオカードや高性能CPUは不要である。パーツをしっかり吟味すれば、合計6万円や7万円程度の予算で、十分実用的に使えるPCを組み立てることができる。

 これまでPCを組み立てたことがないという人は、まずは、ゲーム向けではない、一般的なPCの組み立てに挑戦してみてはいかがだろうか。