やじうまミニレビュー

iPadをWindowsのサブディスプレイとして使える「Luna Display」を試す

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
「Luna Display」を利用することでiPad(左)をWindows PCのサブディスプレイとして利用できる

 iPadをPCのサブディスプレイとして使いたいというニーズは以前からあり、そのためのアプリも複数存在している。Macについては純正機能の「Sidecar」の登場によって事実上決着がついたが、Windowsについては複数の選択肢が存在し、アピールを繰り広げている。

 今回紹介する「Luna Display」もその1つだ。かつてはMacとiPadを組み合わせてマルチディスプレイ環境を構築できる製品として知られていたが、Sidecarの登場により一時期は存在感をなくしていた。しかし2021年に新たにWindowsに対応したことで、再び脚光を浴びるようになったというのが現在までの状況だ。

 今回はWindowsのUSB Type-Cポート用のモデルを用い、本製品の実用性をチェックしていく。なお今回用いたのは2022年12月に国内販売が開始されたモデルではなく、2022年2月に筆者が海外から直接購入した個体である。スペックなどからして同一と考えられるが、何らかの違いがある可能性があることをご了承いただきたい。

起動および利用にはドングルが必要

 「Luna Display」はソフトウェアの名称だが、パッケージに同梱されているのはUSB Type-C用のドングルのみ。このドングルはディスプレイが物理的に接続されているとPCに認識させるためのハードウェアであり、通信モジュールが内蔵されているわけではない(通信自体はPC内蔵のWi-Fiを用いて行なわれる)ので、本製品自体は技適を必要としない。

パッケージ。2022年2月時点での購入価格は送料込で142.99ドル、2022年12月27日時点での国内モデルの価格は1万9,800円
今回はUSB Type-C用のドングル(Mac&PC用)を購入。HDMI用ドングルもラインナップされている
同梱品はこのドングルのみ。アプリ類は別途ダウンロードする
横から見たところ。コネクタ部を除けば全長は約18mm
DP Alt Mode対応のUSB Type-Cポートに接続して使用する
動作にはこのドングルが必須。利用中に取り外すとこのように再度差し込むよう指示される

 利用にあたっては、まず本製品をWindows PCのUSB Type-Cポートに装着したのち、Windows側に専用アプリをインストール。さらに並行してiPad側にアプリをインストールして、それぞれを起動する。順序的には、どちら側のアプリを先に起動しても問題ないようだ。

 両方のアプリが起動すると双方で通信を行ない、iPadが見つかるとWindows側のリストに表示される。ここでタップすればiPadがWindowsから見てサブディスプレイという扱いになり、WindowsのデスクトップがiPadの画面に表示される(2回目以降は自動接続される)。

USB Type-Cポートに本製品を接続。これがないと起動できない
Windows PC(プライマリ)側と、iPad(セカンダリ)側、それぞれにアプリをインストールする。なお今回は第5世代の12.9インチiPad Proで試用している
iPad側にインストールして起動するとプライマリ側の検索が実行される
こちらはWindows側。まずはダウンロードしセットアップを実行。終わったら起動する
ペンタブレット用のドライバもインストールされる
ドングルを認識し、セットアップが行なわれる
完了して起動。iPadが見つかると接続の可否を問うダイアログが表示される
起動完了。2回目以降は自動接続される
【動画】左にWindows PC(プライマリ)、右にiPad(セカンダリ)を置き、アプリを起動してからiPadがサブディスプレイとして認識され、表示が完了するまでの様子。従来のMac版を前提とした文言や、本製品のベースになったアプリ「Astropad」の名前が残っているのはご愛嬌

サブディスプレイアプリ「Duet Air」とはどこが違う?

 さて、本製品と同じく、iPadをワイヤレスディスプレイとして使えるアプリとしては、Duet Displayの無線版「Duet Air」がある。こちらと比べながら、特徴や使い勝手について見ていこう。

 まずサブディスプレイとしての機能は、どちらもほぼ違いはない。画面の複製と拡張、どちらにも対応しているし、左右またはそれ以外への配置も自由に行なえる。解像度およびリフレッシュレートの設定ももちろん可能だ。

 またこれらの設定項目が、Windows側のディスプレイ設定の画面だけでなく、Windowsアプリ側にもあるのもよく似ている。Windows側にはない設定の変更はアプリ側で行なう仕組みで、行ったり来たりしながら設定することになる。

Windowsからは一般的な外部ディスプレイとして認識されている
今回の12.9インチiPad Proは最大2,732×2,048ドットまで対応していた
Windows標準のディスプレイ設定にない項目は専用アプリ上で設定を行なう。一部共通の項目もある
Wi-Fi接続は自動的に行なわれるが手動接続にも対応。またUSBやThunderboltなど有線での接続も可能だ
解像度は最大5Kまで、リフレッシュレートは60/45/30Hzで切り替えられる
GPUアクセラレーションの可否をここで設定できる
iPadを画面左から右にスワイプすることで表示されるサイドバーでも設定が行なえる

 またタッチ操作にも対応している。一般的なスクロールやウインドウの移動はもちろん、4本指を使ってアプリのウインドウそのものを縮小するなど、Windowsのサブディスプレイとしての機能と、iPadとしての機能を切り替えながら操作が行なえる。

 これについても、操作方法こそ一部異なるものの、Duet Airもほぼ同じ操作が行なえる。このほかApple Pencilの利用にも対応している。

タッチ操作にも対応。ドラッグしてウィンドウを動かすなどの操作が可能だ
Apple Pencilも利用可能。iPadの画面上でWindowsの「ペイント」にApple Pencilで手書きするという芸当も可能だ

 両者が異なるのはその挙動だ。Duet Airの挙動は一般的なディスプレイとほぼ差がなく、動きが激しくなるなど追いつかなくなるとコマ落ちのような症状が出るのに対して、本製品はウィンドウの移動やスクロール時にいったん画質が粗くなり、静止すると元のクオリティに戻るという特殊な挙動が見られる。画面の中で描き替わる部分だけを圧縮して転送することで、スムーズな再生を実現しているようだ。

 ただし本製品でも、アプリによっては動きが追いつかない場合にコマ落ちのような症状が発生することもある。つまり転送量が一時的に増えた場合の対策として「画質低下」と「コマ落ち」の2種類があり、優先的に使われるのは前者、それでも追いつかない場合は後者というアルゴリズムのようだ。「コマ落ち」しか発生しないDuet Airとは明らかに挙動が異なっていて興味深い。

 もっとも同じ動画再生でも、YouTubeは「画質低下」、VLCは「コマ落ち」が多く見られたりと、アプリによっても挙動が異なっているので一筋縄ではいかない。もしかすると何らかの設定、例えばGPUアクセラレーションなどが関係しているのではと考えていろいろと実験してみたが、どちらを優先するかを明示的に切り替えるのは難しいようだ。

 こうしたアルゴリズムの違いは、アプリによって向き不向きがあることを意味する。例えばブラウザのウィンドウをWindows(プライマリ)側からiPad(セカンダリ)側へと移動させるだけならば、移動中に内容を読む必要はないので画質が低下していても気にならない。

 一方で、ブラウザをスクロールしながらページの内容を目で追おうとすると、レスポンスは問題なくとも、画質の低下はストレスになる。例えばニュースサイトの見出しをスクロールさせながら読む用途にはあまり向かない。以下の動画で実例を紹介しているのでチェックしてほしい。

【動画】Luna Displayでサブディスプレイ化した12.9インチiPad Proでスクロールを行っている様子。多少のひっかかりはあるがなめらかだ
【動画】スクロール中の様子をアップにしたところ。画質がいったん粗くなり、スクロールが終了すると元に戻っていることが分かる
【動画】こちらは「Duet Air」で同じ操作を行なっている様子。こちらはスクロール中も画質低下は見られない

 このほか、テキスト入力の場合、今回使用したThinkPad X1 Carbon Gen9と第5世代12.9インチiPad Proの組み合わせではレスポンス自体に問題はないのだが、入力中の文字列や漢字の変換候補の画質が低下するのが地味にストレスになる。

 一方で、画質を落とすことでコマ落ちを極力回避しようとする傾向があるので、たとえ低画質になっても動きを把握したい用途、例えばWebカメラで対象の動きを監視する用途には向く。またYouTubeにアップされているスポーツの動画を観ても、コマ落ちしないぶん本製品のほうがストレスがない。

 このあたりは解像度やリフレッシュレートによっても変わってくる……と言いたいのだが、試した限りではDuet Airほど、これらの値は挙動に影響しないようだ。なお動画再生中のリソース消費をタスクマネージャーで見てみると、Duet Airに比べるとCPUのリソースをかなり消費していることから、CPU性能の高いマシンを使えば、これらの挙動が緩和される可能性はある。

フルHD動画を再生中のパフォーマンス。CPUが36%、メモリが46%、GPUが78%とかなりのリソースを消費している
こちらはDuet Air。傾向はよく似ているが、CPUの負荷は3分の1以下となっている

 以上のように、なかなか癖がある製品なのだが、1つだけ言えるのは、色数や解像度を犠牲にしても表示さえできれば万々歳だったかつてのリモートデスクトップアプリなどと比べると、かなり高いレベルの表示性能を備えているということだ。

 どちらのアプリも多少カクつくのを許容すればフルHDクラスの動画も再生できるし、静止画でのクオリティは、専用のモバイルディスプレイと比べても何ら遜色がない。高いレベルを求め始めるとキリがないだけの話だ。

実用性は及第点。価格はややネックか

 以上のように、有線でモバイルディスプレイに接続するのと比べると、ワイヤレスならではの癖は少なからずあるので、決して100点満点ではないが、実用性はじゅうぶんに及第点だ。最近はMiracastを用いてWindowsから出力するモバイルディスプレイもあるが、実用性はそれらと同等。また本製品は有線接続(Thunderbolt)にも対応しており、パフォーマンスに不満があればそちらを利用する手もある。

 本製品とDuet Air、どちらがオススメかと言われると、なかなか一概には言えないところがある。すべての面でどちらか一方が上、あるいは下というわけではなく、一長一短あることに加えて、用途によっても評価は変わってくるからだ。

 そんな中でポイントとなるのは価格だろう。本製品の価格体系は買い切りで、今回販売が開始された国内向けモデルは1万9,800円。これに対してDuet Airはサブスクリプションモデルを採用しており、月3.99ドル(年間契約で月2.09ドル)という料金体系だ。年間で約25ドル、130円レートとして3,250円だ。これをどう見るかだろう。

 またソフトウェアで完結しているDuet Airと比べて、本製品はUSB Type-Cポートを1つ消費してドングルを取り付けなければならない。またドングルのサイズは極小とは言え、Windows PCに常時取り付けたままだと持ち歩く場合に破損の心配があり、抜いて保管するとなると紛失のリスクもある。Duet Airと比較するとなると、これらも考慮しなくてはいけないだろう。

ドングルは小型とはいえ約18mmは突出するので、挿したままバッグの中に入れるのは少々ためらわれる

 一方で安定性に関しては本製品に分がある。Duet Airはごく稀に、あれこれ手を尽くしてもなかなか認識してくれない場合がある。これは有線版の「Duet Display」の頃からある症状で、かなり改善されたとはいえ、まだ全面的に信頼するにはちょっと怖い。

 本製品はそのようなトラブルとはほぼ無縁で、Windows側とiPad側、両方できちんとアプリが起動していれば問題なく接続できるし、表示がトラブっても両者を再起動すれば確実に元通りになる。こうした信頼性の高さは、プラスと言っていいだろう。

 ともあれ、これまでは海外から直接買うしかなかった本製品が国内で扱われるようになったことで、使い比べが手軽にできるようになったのは朗報だ。イラスト作成をはじめ、特定の用途に限定すればまた評価も変わってくるはずで、さまざまな用途からのレビューが今後増えてくることを個人的には期待したい。

USB Type-Cポートが本製品に占有されてしまうと困るのであれば、HDMI版をチョイスするという選択肢もありそうだ