やじうまミニレビュー

Samsungの新SSD「990 PRO」自腹購入。Ryzenだとさらに速い!涼しい!

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PCIe 4.0最強の呼び声高いNVMe M.2 SSD「990 PRO」をAMD CPU環境でテストしてみた

 2022年末に登場した日本サムスンのNVMe M.2 SSD「990 PRO」は、シーケンシャルリードで最大7,450MB/sを叩き出す、PCIe 4.0x4接続の理論値8,000MB/sに迫る高性能モデルだ。しかし本誌で一度レビューされた時は、Intel CPU環境だったためか、残念ながら本領を発揮できなかったよう。

 メーカー公称スペックは、どうやらAMD Ryzen 7 5800X環境下におけるもの。たまたま筆者がそれとほぼ同等のPC環境だったことと、自腹で2TB版を購入したので、試してみることにした。990 PROの細かな仕様などについては過去の記事をご覧いただきたい。

 また、PCIe 4.0のNVMe SSDは、かつて発熱の問題が指摘されていたが、最近のモデルでは設計やコーティングの工夫により改善されているとも聞く。最新の990 PROでそのあたりがどう進化しているのか見つつ、筆者は以前からPCIe 3.0接続の970 EVO Plusや、SATA接続の870 EVOも使っているので、これらの性能とも比較してみようと思う。

AMD CPU環境で、CrystalDiskMarkの結果はいかに!?

テスト環境

  • マザーボード:MSI MEG X570 UNIFY
  • CPU:AMD Ryzen 7 5800X
  • メモリ:DDR4-2666 32GB
  • OS:Windows 11 Pro 64ビット
AMD CPU環境に990 PROをインストール
990 PROの「CrystalDiskInfo」での表示
970 EVO Plusの「CrystalDiskInfo」での表示
870 EVOの「CrystalDiskInfo」での表示

 メーカーのテスト環境と比較すると、マザーボード、メモリクロック、OSが異なるものの、今回のPC環境とはほぼ同一と言っていいだろう。さっそく「CrystalDiskMark」のテスト結果から見てみたい。

AMD CPU環境の990 PROにおけるCrystalDiskMark実行結果
990 PROのCrystalDiskMark結果グラフ(Intel CPU環境の結果は過去記事より)

 ご覧の通り、シーケンシャルは見事に公称のリード7,450MB/s、ライト6,900MB/sを超える値を達成した。ただ、代わりにランダムリード/ライトはIntel CPU環境に比べ振るわない。1ファイルが巨大になる動画編集では最高のパフォーマンスを発揮してくれそうだが、たとえば小さなファイルの読み書きが発生しがちなシステムドライブとして使うのは、AMD CPU環境下だとちょっともったいないかも、という感じ。

990 PRO/970 EVO Plus/870 EVOのCrystalDiskMark結果グラフ

 970 EVO Plus(PCIe 3.0x4)や870 EVO(SATA 6Gbps)と比較したときのグラフは上記の通り。こうして見ると、さすがに990 PROの実力の高さが際立ってくる。前モデルの980 PROだとシーケンシャルリードで最大7,000MB/sに達するので、プラス500MB/sのためにわざわざ990 PROに移行するほどのモチベーションは湧きにくいが、筆者のように970 EVO Plusクラス前後のSSDから移行するのは十分にアリではないだろうか。

PCIe 3.0接続のSSDよりも低温で動作する990 PRO

「Blackmagic RAW Speed Test」を実行して温度推移を計測してみる

 次に、動作中の990 PROの熱がどれくらいになるのかチェックしてみた。「Blackmagic RAW Speed Test」を実行し、約5分間にわたって連続的にリード・ライトアクセスさせたときの温度変化を「HWMonitor Pro」で計測している。

 それと、過去に購入したM.2 SSD用の大型ヒートシンクの効果を個人的に試してみたかったこともあり、990 PROと970 EVO Plusについては「裸状態」、「マザーボードのヒートシンクを装着した状態」、「大型ヒートシンクを装着した状態(990 PROのみ)」といったパターンで温度推移を確認してみることにした。

マザーボード付属のヒートシンクを使用したパターンでも確認
さらに大型のヒートシンク「ineo M12」を装着してどれくらい効果があるのかも調べた
870 EVOの温度推移
970 EVO Plusの温度推移(裸状態)
970 EVO Plusの温度推移(マザーボード付属のヒートシンク装着)
990 PROの温度推移(裸状態)
990 PROの温度推移(マザーボード付属のヒートシンク装着)
990 PRO(大型ヒートシンク装着)の温度推移

 注目すべきは、970 EVO Plusでヒートシンクを装着した時よりも、裸状態の990 PROの方が10℃も低いことだろう。これであれば、SSDをマザーボード背面に装着し、ヒートシンクなしで運用するしかないMini-ITXなどのPC環境や、ヒートシンクとの相性も考慮しなければならないPlayStation 5なんかでも、ポン付けでそのまま問題なく使えそうだ。

 とはいえ、リード/ライト速度を合わせて見る限り、裸状態の990 PROでは負荷をかけ続けて温度が上がった時に、パフォーマンスにばらつきが出る雰囲気もある。ヒートシンクを装着した方が安定してアクセスできるようなので、巨大ヒートシンクにする必要性はないにしろ、何かしら冷却を補助する方法を用意しておくのが理想的ではあるだろう。

今後のゲーム性能を占う「DirectStorage」でのパフォーマンスは?

 最後におまけでもう1つ、Windows 11の最近のアップデートで使用可能になった、DirectX 12の新機能「DirectStorage」において、SSDのパフォーマンスがどれだけ影響するのかも簡単にチェックしてみた。

 DirectStorageは、ストレージに保管されたテクスチャなどのリソースの読み込み・展開を、GPUで処理することによって高速化する仕組み。それによってゲームのローディング時間が短縮されるとしている。ここでは、Microsoftが公開しているDirectStorage関連のデモツール(要コンパイル)を利用して確認してみることにした。なお、GPUにはNVIDIA GeForce RTX 2070(メモリ4GB)を使用している。

870 EVOにおける「BulkLoadDemo」の結果
970 EVO Plusにおける「BulkLoadDemo」の結果
990 PROにおける「BulkLoadDemo」の結果

 1つ目は「BulkLoadDemo」で、ストレージに保管された3Dグラフィックス用のテクスチャデータを読み込み、GPUで展開するのにかかった時間とCPU負荷を表示するものだ。これによると870 EVOでは2秒超の時間がかかっているが、990 PROではわずか0.53秒と4分の1の時間で処理できていることが分かる。ただ、970 EVO Plusも0.58秒となっており、今回の条件下ではNVMe SSDの世代の違いによる差はほとんどなかったように思われる。

 しかしながら、次の「GpuDecompressionBenchmark」ではSSDの性能が顕著に表れた。このベンチマークは、読み込んだ画像について「非圧縮時」と「ZLib(標準的な圧縮・展開ライブラリ)使用時」「CPUによるGDeflate(GPU処理に最適化されたデータ圧縮アルゴリズム)使用時」「GPUによるGDeflate使用時」の4パターンで、チャンク(データ転送単位)を変えていったときの帯域幅、および処理負荷を計測するもの。

870 EVOにおける「GpuDecompressionBenchmark」の結果
970 EVO Plusにおける「GpuDecompressionBenchmark」の結果
990 PROにおける「GpuDecompressionBenchmark」の結果

 データ転送の帯域幅は、GPU使用時で970 EVO Plusの最大約4GB/sに対し、990 PROは同約6GB/sと50%もの大幅な向上を見せている。負荷については、GPU処理はストレージの種類にかかわらず文字通り桁違いに低い。一方、SATAの870 EVOは、GPUを使用してもほかの方法とデータ転送速度は大きくは変わらなかった。今後DirectStorage採用のアプリケーション(ゲーム)が増えてくれば、990 PROのようにリード/ライト性能が高いSSDほどより優位になっていくと言える。

CPUによる性能差より、幅広い環境で使える低温動作に注目したい

 990 PROは、Intel CPU環境だとシーケンシャルアクセス性能でやや劣っていたが、AMD CPU環境にすることで本来の力が発揮できることが分かった。ただ、Intel CPUであってもランダムアクセス性能は高いため、一概にどちらの環境が優れているとも言いにくい。

 それでも、ハイエンドのパフォーマンスをもつSSDであることは間違いないので、980 PROからの移行はメリットが少ないにしても、それより以前の世代のSSDからの乗り換えはおすすめできる。負荷をかけた時の温度も十分に低いままで、使用環境を選ばないのもうれしいところだ。省スペースPCやゲーム機のストレージをアップグレードしたいと思っている人にとってもベストチョイスになるのは間違いないだろう。