やじうまミニレビュー

Ankerマルチポート充電器最高峰の「GaNPrime」を試す

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
735 Charger(GaNPrime 65W)

 Ankerのマルチポート充電器のフラグシップモデル「GaNPrime」シリーズが、8月29日よりいよいよ発売開始となる。製品発売に先立って、出力65Wの「735 Charger」と出力120Wの「737 Charger」を入手したので、簡単にレビューしたいと思う。

 GaNPrimeは、最新のGaNトランジスタ技術を使用しつつ、これまで1チップだったICをあえて複数のICに分散させ、内部基板のレイアウトを工夫する「PCBA 3Dスタッキング技術」の採用することで、マルチポート化しつつ本体の小型化も両立させたシリーズとなる。

 ちなみに同社は、複数のICに分散させてPCBA 3Dスタッキング技術を採用したとしても、マルチポートではない製品に関してはGaNPrimeを名乗らないそうで、今後シングルポートで小型化、もしくは大容量化する製品が出てきても、それらはGaNPrimeではないという。つまり、複数のデバイスを同時充電できるプレミアムな製品にのみ冠されるブランドなのだ。

 GaNPrimeではこのほか、「ActiveShield 2.0」と呼ばれる、常時温度を監視して出力を管理するシステムを搭載。従来から監視のサンプリング数を増やすことで、充電先のバッテリ寿命を延ばすほか、負荷時の表面温度を77℃以下に抑える国際安全基準規格IEC 62368-1への準拠も果たしている。

 さらに、「ダイナミックパワーディストリビューション」機能を備えることで、各デバイスの必要な電力に応じて供給量を動的に変化させられるとしている。

735 Chargerと737 Chargerのパッケージ

735 Charger

 735 Chargerはもっともベーシックなモデルで、USB Type-Cを2基、USB Type-Aを1基備えている。最大出力はUSB Type-Cが65W、USB Type-Aが22.5W。本体サイズは約66×38×29mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約132g。

 実際に手元のテスターで計測してみたが、公称値通りUSB Type-CはUSB PD 3.0準拠で20V/3.3A≒65Wの出力が可能であった。このほかAppleの5V/2.4AやVIVO Dual Flash、Quick Charge 2.0および3.0、Samsung AFC、FCP、SCP、MTK PE1.1/PE 2.0など、OPPOおよびOnePlus系の「VOOC DASH」を除く、多数の規格をサポートしている。USB Type-Aポートは当然のことながらUSB PDはサポートできないが、そのほかの規格は対応している。

735 Charger
プラグは折りたたみ式
対応電圧や電流、各種認証マークは底面に表記されている
一般的な65W USB PD充電器(上)と比較
USB Type-Cは65W出力に対応する
USB Type-Aの対応プロトコル。最大22.5W出力に対応

 試しに、100W充電に対応した「GPD WIN Max 2」をUSB Type-Cに接続したところ(当然だが)約65Wの出力が確認できた。もう1基のUSB Type-CにASUSの「ROG Phone 5」を接続したところ、GPD WIN Max 2への出力が32Wに減った。ちなみに電圧は常に19V以上となっており、途中で途切れるといったこともなかった。これがAnkerの言う「ダイナミックパワーディストリビューション」技術だろうか。

USB Type-C出力1つ目にWIN Max 2を接続し、2ポート目にROG Phone 5を接続したところ、WIN Max 2への出力は32Wに減った

 GPD WIN Max 2へ65W供給している状態で、Cinebench R23を10分間かけ続けて(かけなくても常に65W消費されていたのだが)表面温度を確認したところ、最高部は48℃程度だった。このモデルの発熱はそれなりに抑えられていると言っていいだろう。

10分間負荷時の最大温度は48℃程度だった(室温26℃)

737 Charger

737 Charger

 737 Chargerは上位モデルにあたり、USB Type-Cを2ポート、USB Type-Aを1ポートを備える。USB Type-C出力は最大100W、USB Type-A出力は最大22.5W、合計最大出力は120Wだ。本体サイズは約80×43×32mm(同)、重量は約187g。

 735 Chargerと比較すると幅があるため、床に垂直に設置された壁のコンセントに設置する際はバランスが悪くなる。このため本製品では吸盤でコンセント周辺に吸い付き、装着時の安定感を高めるためのアタッチメントが付属している。

735 Chargerと比較して一回り大きい
大きいとは言え、一般的な65W対応USB充電器よりはコンパクトな印象
壁のコンセントに挿す際に安定感を高める吸盤のアタッチメント

【8月31日訂正】記事初出時、吸盤のアタッチメントが付属するとしておりましたが、これはプレス向けに配布された米国版のみの仕様で、日本国内版は付属しません。お詫びして訂正します。

ポート数は共通

 まずはテスターで計測したが、公称値通りUSB Type-Cは100Wの給電が可能であった。USB PD以外にも多数のプロトコルをサポートしており、これはUSB Type-Aも同様である。

USB Type-Cは最大100W出力に対応する
USB Type-Aの対応プロトコル。こちらも最大22.5W出力に対応するとされている

 GPD WIN Max 2を接続したところ、こちらは100Wに近い95W超の給電が確認できた。こちらももう1基のUSB Type-CにASUSのROG Phone 5を接続したところ、GPD WIN Max 2への出力は58W程度となった。

 今回ROG Phone 5の電池残量が50%超えの状態だったので、もう少しギリギリになればROG Phone 5への配分が増えるのかもしれない。とは言え、ROG Phone 5を抜くとまたGPD WIN Max 2へ95W近い給電が行なわれるため、ダイナミックパワーディストリビューション機能は正しく動いていると見ていいだろう。

GPD WIN Max 2のみへ給電を行なっているところ。95Wで給電できている
ROG Phone 5を接続したところ、GPD WIN Max 2への給電は58W程度にまで低下した

 100W給電が行なわれている状態でサーモグラフィーで温度を確認してみたが、最高部で58℃程度だった。65Wモデルの容積は72,732立方mm、120Wモデルの容積は11万80立方mm。容積あたりの電力で見れば120Wモデルのほうがやや高いため、温度も高い傾向のようだ。とは言え、十分に容認可能なレベルである。

10分間負荷時の最大温度は58℃程度と、735 Chargerと比較してやや高い(室温26℃)

充電器としてみれば間違いなく最高峰だが、価格がネック

 これまで数々のUSB充電器のヒット商品を飛ばしているAnker。最新のGaNPrimeは、同社がフラグシップと謳うだけあって、これまで同社が培ってきたさまざまな充電技術が結集されており、期待を裏切らない完成度だと感じた。

 唯一弱点と言えるのが価格。735 ChargerのAmazon価格は現在7,191円、737 Chargerは同1万1,691円(現在なぜか売り切れ)である。Ankerが売れ始めた頃の製品と言えば「安くてマルチポート」がウリだったように思うのだが、GaNPrimeシリーズは高級路線だ。

 Amazonを見渡してみると、GaN採用で同じマルチポート65Wタイプが安いモデルで4,000円台前半から、120Wモデルは6,000円台後半からある。単純に出力で見るならGaNPrimeシリーズはそれらの約2倍の価格ということになる。ユーザーが本製品の独自機能や本体の小ささに価値が見いだせるかどうかが勝負となりそうだ。

【17時35分訂正】記事初出時、735 Chargerの同時利用ポートは2基までとしておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正します。