やじうまミニレビュー
高コスパな赤軸メカニカル+ワイヤレス+テンキーレスキーボード「K855」の実力は?
2022年8月17日 06:26
株式会社ロジクールから、無線キーボード「SIGNATURE K855ワイヤレス メカニカルTKL キーボード(K855)」が発売された。本機はメカニカルキーボードとしての性能を維持し、ワイヤレス化を図りながらも、価格を抑える狙いで開発されたという。
同社は有線型のキーボードとして「K835」を展開しており、「K855」はそのワイヤレス版という位置付け。「K835」ではTTC製の赤軸と青軸という2種類のキースイッチがあったが、「K855」はリニアタッチの赤軸のみで展開される。
コストパフォーマンスに優れた製品とされ、直販価格は1万1,550円。メカニカルキーボードでワイヤレスで、素性が確かなロジクール製としては十分安い……と思うのは筆者が高級キーボードを見慣れているからで、一般的な感覚ではキーボードに1万円は高い。本機の評価は、実際に製品を試してみて、この価格に納得できる品質かどうかに尽きる。
メカニカルスイッチを採用したテンキーレスのワイヤレスキーボードとしては、同社は最近「MX MECHANICAL MINI」を発売している。ワイヤレスの規格に同社独自の新型インターフェイス「Logi Bolt」を採用しているのも同じだ。こちらとも比較しながら見ていきたい。
オーソドックスに仕上げたワイヤレスキーボード
まずは主なスペックを確認しておく。「MX MECHANICAL MINI」のスペックも併記する。
K855 | MX MECHANICAL MINI | |
---|---|---|
押下圧 | 45±15g | 55g |
押下耐久性 | 5,000万回 | 5,000万回 |
キーストローク | 4±0.4mm | 3.2mm |
バックライト | なし | 白色(近接センサー搭載) |
バッテリ | 単4形乾電池×2 | 内蔵リチウムポリマー電池(1,500mAh) |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 355.2×138.8×38.8mm | 313×132×26mm |
インターフェイス | Logi Bolt、Bluetooth | Logi Bolt、Bluetooth、USB Type-C(充電専用) |
重量 | 692.4g(電池含む) | 612g |
価格 | 1万1,550円 | 1万8,700円 |
キーストロークは4mmと標準的。押下耐久性は5,000万回と頑丈だ。押下圧は45gで、引っかかりのないリニアタッチであることも考慮すると軽めの部類に入る。
バッテリは単4形乾電池2本を使用し、最長36カ月使用できるとする。使用環境にもよるが、バックライトがないので相当長く使えるのは確か。電池残量は専用ソフト「Logi Options+」で確認できるので、たまに確認しておけば安心だ。
インターフェイスはLogi BoltとBluetoothで、Logi BoltのUSBレシーバが付属する。有線接続には非対応。本体サイズはテンキーレスキーボードとしては標準的ながら、重量はワイヤレスという点も考慮してか比較的軽い。
なお、同社はこれまでUnifyingというUSBレシーバでワイヤレス製品を提供してきたが、最近はより高性能とされるLogi Boltに置き換わりが進んでいる。双方に互換性はないので注意したい。
MX MECHANICAL MINIと比較すると、リニアタッチの赤軸である点は共通ながら、押下圧は本機の方が軽い。またストロークはロープロファイルの「MX MECHANICAL MINI」より深い。バッテリやバックライトの有無も違うし、本体サイズも本機の方が一回り大きい。より正確に言えば、本機はテンキーレスキーボードとしては標準的な仕様で、「MX MECHANICAL MINI」の方が特別にコンパクトで特徴も盛りだくさんある。
軽めのキータッチで清掃も簡単
次に実機を見ていこう。キー配列はテンキーレスとしては標準的ながら、PrintScreenキーなど右上段にある3つのキーは省かれている。また右下段にはFnキーが設けられ、F1~F12キーにそれぞれ特殊機能が割り当てられている。
このうちFn+F4~F12キーはLogi Options+を使って機能を変更できる。たとえば筆者はPrintScreenキーを多用するので、Fn+F7の「画面を切り取り」を「画面のキャプチャ」に変更した。ほかにもCtrlキーやAltキーなどと組み合わせたショートカットキーの割り当ても可能だ。
またLogi Options+には、特定のアプリケーション使用時のみ、キーの機能を変更できる設定も用意される。使用するアプリケーションを選び、同じようにキーの機能を変更するだけでいい。通常の設定はグローバル設定として保存されている。
接続先デバイスは3つ保存でき、Fn+F1~F3キーで切り替えられる。Logi BoltとBluetoothが混在していても構わない。
キーボード本体の話に戻ろう。筐体はフレームレスで、ベースプレートの上にキーが載ったような形状。キーのストロークやサイズは標準的なので、キーボードがかなり出っ張って見える。持ち運ぶ際には横からの衝撃でキーを破損しないよう注意したい。
押下圧45gとされるキータッチはかなり軽い。筆者は東プレ製「REALFORCE」の押下圧30gタイプを使用しているが、それよりは若干重いかなという程度で、さほど違和感はない。ただ、キーの底打ちや戻る時の音が大きめ。リニアタイプのキーなので、メカニカルキー特有のカチカチというスイッチ音はないが、静音性は期待しない方がいい。
キートップは上に引き上げると簡単に抜ける。フレームレスなのでより抜きやすく、ベースプレートの清掃も楽にできる。長寿命の製品は、長く使う分だけ汚れも溜まるので、清掃のしやすさは重要だ。
バッテリは単4形乾電池が2本。リチウムイオン充電池の方が何となく上等そうだな……と思ってしまうが、通常使用で3年持つというなら、充電ケーブルがないメリットの方が勝る。単3形乾電池なら5年以上持つのではと思ったが、電池の劣化で液漏れする心配も出てくるだろう。
電池ボックスを開けると、電池の横にLogi BoltのUSBレシーバを収納するスペースが設けられている。USBレシーバはとても小さく紛失しやすいので、持ち運びや収納の際に重宝する(長期収納すると、ここにUSBレシーバーを入れたことを忘れそうだが)。
重量は軽めながら、裏面のゴム足がしっかりグリップしていて、使用中に意図せず動くようなことはない。脚部を出した場合にも同じようなゴム足がついているので、安定感は変わらない。
また本機のユニークな点として、背面が広い平面になっており垂直に置けるようになっている。固定するわけではないので強く押すと倒れてしまうが、書類の記入などでテーブルを空けたい時に立てておく程度なら問題ない。
高耐久キーボードがワイヤレスで1万円強なら確かにお買い得
コストパフォーマンスを求めたメカニカルキーボードという本機のコンセプトは、使ってみて確かに感じられた。オーソドックスなキー配列に堅実なキースイッチ、それにLogi Boltによる安定した無線通信。耐久性の高い高級キーボードとして、押さえるべきところをしっかり押さえている。
本稿はまさに本機を使用して執筆しており、長めのスペースキーの端を押してもブレることなくストレートにストロークするなど、キータッチも良好。特に筆者のように軽めのキータッチを好む人には好まれるはずだ。実売価格は1万円強となっていて、このタッチでワイヤレスであれば非常に満足度は高い。
ただ、より高価な最高級のキーボードと比べると、本機は騒音面への配慮がなく、見た目にも筐体の触り心地にもあまり高級感はない。メカニカルキーの耐久性とベーシックな使い勝手に特化して、ほかはそこそこで妥協したことによるコストパフォーマンスの高さという印象だ。
妥協したといっても、安価なキーボードに劣る部分があるわけでもない。飾りっ気のない質実剛健なワイヤレスキーボードが欲しいなら、価格以上の価値は十分すぎるほどにある。実績のあるロジクール製品である点も含め、高級キーボードを使ったことがない人でも手を伸ばしやすい製品と言える。
同社のMX MECHANICAL MINIと改めて比較すると、価格は本機の方が約7,000円安く、安価なワイヤレスメカニカルキーボードが欲しいというニーズだけなら本機の方が入手しやすい。MX MECHANICAL MINIの方がよりコンパクトで、騒音は小さく、3種のキースイッチを選べる。この辺りが差別化のポイントとなるだろう。