やじうまミニレビュー

静音化は万全、機能も十全。ロジクール製ハイエンドマウス「MX MASTER 3S」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。

 株式会社ロジクールから、無線マウス「MX MASTER 3S」が本日16日に発売された。先に発売中の「MX MASTER 3」とほぼ共通の仕様で、左右のクリックボタンに静音スイッチを採用したモデルとなる。

 「MX MASTER」シリーズは無線マウスとして長らく人気を集める製品で、2つのホイールを搭載するなどめずらしい機能が用意されている。実機を試用して本機の機能を改めて確認しつつ、マウスとしての使い勝手や、注目の静音スイッチについても評価していく。

7ボタン+2ホイールでLogi Bolt採用の高性能マウス

 まずは本機のスペックを確認しよう。今回試用したのは薄灰色のペイルグレーで、ほかに黒色のグラファイトの2色展開となっている。

【表1】MX MASTER 3Sの主な仕様
解像度200~8,000dpi(50dpi刻み)
光学センサーDarkfield
ボタン数7
バッテリ内蔵リチウムポリマー電池(500mAh)
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)84.3×124.9×51mm
インターフェイスLogi Bolt(USBドングル)、Bluetooth、USB Type-C(充電専用)
重量141g
価格1万4,960円

 光学センサーはDarkfield高精度センサー。最低4mm厚のガラス面でトラッキング可能とするなど、接地面を選ばず正確にトラッキングするのが特徴だ。

 ボタンは左右クリック、中央ホイールクリック、左側面の戻る/進む、ホイールモードシフト、アプリケーション切り替えの7つ。いずれのボタンも専用ソフトウェア「Logi Options+」で機能を変更できる。このほかホイールが中央のほか、サムホイールと呼ばれるものが左側面のボタン上部にある。サムホイールにはクリック機能はない。

 無線接続にはロジクール独自のLogi Boltを使用しており、小型のUSBドングルが付属する。このUSBドングル1つで最大6台のデバイスを使用できるので、同社の無線接続デバイスでそろえれば占有するUSBポートは1つで済む。

左がLogi Bolt、右が筆者所有のUnifyingのUSBドングル。見た目はほぼ同じだ

 同社はこれまで、Logi Boltと同様の機能を持つUnifyingという独自の無線規格を展開しており、本機の先代にあたる「MX MASTER 2S」もUnifyingを採用している。Logi BoltとUnifyingには互換性がないため、相互利用ができない。Logi BoltはUnifyingに比べてセキュアで途切れにくく、低遅延だとしており、今後はこちらに置き換わっていくようだ。

 とはいえUnifying対応デバイスを今後も使い続けることに問題はないし、本機にせよ「MX MASTER 2S」にせよ、独自規格のほかにBluetooth接続も可能だ。さらにLogi Bolt対応デバイスにはほぼ必ずUSBドングルが付属するので、移行が問題になることは少ないだろう。

 バッテリは内蔵型の500mAhリチウムポリマー電池を採用。フル充電で最長70日使用でき、1分間の充電で3時間使用可能としている。電池の交換はできないが、処分するさいの分解手順が書かれた紙が入っており、リサイクルへの配慮がなされている。

大型でも持ちやすい形状とコーティング

親指部分に当たる左側がせり出しているのが特徴

 次に実機を見ていく。高さが51mmとかなり高めで、左親指部分がせり出したような独特の形状をしている。マウスを持つ/掴むというより、マウスに手を乗せるという感覚で使う。右側面は薬指に沿って緩やかにへこみがあり、フィット感も高い。

 141gという重さは、昨今のマウスとしてはかなりの重量級。それでもラバー調の表面コーティングのおかげで滑りにくく、無線でケーブルもないため、持ち上げる動作に苦はない。

 筆者は成人男性としてはやや小さめの手で、軽量/小型マウスが好み……という前提で本機の気になる点を言うと、左クリックボタン部分が前にせり出し過ぎだと感じる。普通に持つと指先が2cm以上余り、マウスの先を思わぬところにぶつけてしまうことが多い。そもそも、中指より短いはずの人差し指で扱う左クリックがより奥に伸びているわけで、外国人の大きな手に合わせただけではない意味があるようには思うのだが。

 充電ケーブルとして、USB Type-C to Aケーブルが同梱されており、本機にType-C、PCにType-Aで接続すると充電できる。もしかして充電しながら有線接続マウスとして使えるかと思ったが、残念ながら動作せず、あくまで充電専用のケーブルのようだ。なお充電しながらでも無線接続で使用はできる。

 センサーの位置はスタンダードに本体中央部付近。その上に電源スイッチ、下には接続機器切り替え用のEasy-Switchボタンがある。ソールは上下左右に1つずつ。ソールが小さく見えるものの、元々の底面積が広いだけで、ソールの面積としては適切だ。

左側面に2つ目のホイールが見える
右側面にはボタンはなく、薬指に沿う緩やかなへこみがある
前部にはUSB Type-C端子がある。充電時にはこちらにケーブルを接続する
充電ケーブルはシンプルなUSB Type-C to Aケーブル。長さ約1m
後部は少し浮いたような形状
底面には電源スイッチとEasy-Switchボタンを搭載

左右クリックだけでなく、全てが静かなボタン類

 続いて、各ボタンの感触を見ていく。本機は「MX Master 3」の左右ボタンのクリック感を維持しつつ、クリックノイズを90%低減したという。つまり静音化が最大の売りだ。ホイールも非常に静かだとしており、トータルで静音かどうかに注目したい。

左右クリック

 静音化されたスイッチは、かすかなクリック音がするだけで、極めて静か。わざと強めに叩いてもなお圧倒的に静かだ。それでいてクリック感はしっかりとあり、入力の違和感はまったくない。使用感はまったく文句なしだ。

中央ホイール

 MagSpeed電磁気スクロールホイールと名付けられており、ホイール手前のホイールモードシフトボタンで、フリースピンのオン/オフ(引っかかりの有無)を選べる。ホイールの回転はフリースピンのオンオフ関係なくほとんど無音。金属製で手触りもいい。

 クリックの音はするが、低めで耳触りな感じはない。左右クリックに比べると音はするが、ホイールとしては静音の部類に入れていいと思う。なおチルト機能は非搭載。

戻る/進むボタン

 音量/音質ともに左右クリックと同等。つまり極めて静音だ。クリック感もしっかりあり、やはり使用感も良質だ。位置も手前過ぎず奥過ぎず、親指で自然に押せる頃合いの場所にある。

ホイールモードシフトボタン

 ホイールの手前にある設定変更用ボタンだが、「Logi Options+」で機能変更が可能。押した感触は固めのボタンで、特別静かではないが、音質はやはり低め。

アプリケーション切り替えボタン

 親指を置く左にせり出したスペースをよく見ると、小さい縦長のボタンがある。親指の側面で押すような感じで、アプリケーション切り替えの画面に遷移する。これもボタンの機能は変更可能だ。クリック音はほぼなく、本機のボタン類の中で最も静か。

左端にある僅かな出っ張りがアプリケーション切り替えボタン

サムホイール

 左右ボタンの上部にある2つ目のホイール。これも設定は自由に変更可能。回転時は引っかかりのない手ごたえだが、抵抗感はありフリースピンはしない。

 以上、全てのボタンをトータルで評価して、静音性は極めて高いと言える。特に多用するであろう左右クリックと戻る/進むボタンが徹底して静音化されている。入力の感触も違和感がなく、静音マウスを求める人の満足度は非常に高いはずだ。

「Logi Options+」の高いカスタマイズ性

設定ツール「Logi Options+」

 設定ツール「Logi Options+」についても紹介しておこう。同社は「Logicool Options」というツールも提供しているが、こちらではデバイスの検出すらさせてもらえないので、間違えないようにしたい(筆者は設定のさいにこちらへ誘導され、誤ってインストールしてしまった)。

 ポインタ速度は、標準では「50%」となっている。dpiではない単位に面食らってしまうが、設定項目にある「センサー範囲を8K DPIに拡大」をオンにすると、200~8,000dpiで50dpi刻みに設定できるようになる。

 さらに設定を確認していくと、「50%」は1,000dpi、「75%」は2,000dpi、「100%」は4,000dpiに相当するようだ。つまり4,000dpi以上に設定する場合は「センサー範囲を8K DPIに拡大」をオンにする必要がある。

ポインタ速度は初期値で50%。1,000dpi相当のようだ
「センサー範囲を8K DPIに拡大」をオンにするとdpi値で設定できるようになる

 2つのホイールはそれぞれスクロール方向の反転が可能。サムホイールについてはホイール速度(回転量に対する動作量)も変更できる。

 サムホイールの使い方だが、標準では水平スクロールに設定されている。ほかに拡大/縮小やデスクトップ間の切り替えなど11種類から選択が可能だ。

メインのホイールの設定。スクロール方向の反転のほか、フリースピンモードへの切り替えもソフトウェアで設定できる
サムホイールは方向反転に加え、ホイール速度も調整可能

 さらに「Logi Options+」がアクティブウィンドウを自動認識し、それぞれに合った機能を付与してくれる。たとえばGoogle Chromeだとタブの切り替え、Microsoft Wordなら拡大/縮小、Zoomだと音量アップ/ダウンといった具合だ。各アプリでの動作は個別に設定変更できる。

 ホイールモードシフトボタンやアプリケーション切り替えボタンも、先述の通り機能を自由に入れ替えられる。これもアクティブウィンドウのアプリごとに動作を設定できる。

アプリケーションごとにマウスの挙動を変更できる。Google Chromeではサムホイールがタブ間の移動にプリセットされている
Zoomだとサムホイールの機能が音量アップ/ダウンにプリセットされている
ホイールモードシフトボタンも機能を変更できる

静音で高性能なマウスとして死角なし

 本機にはこれ以外にも、3つの接続機器とペアリング設定し、背面のEasy-Switchボタンで順次切り替える機能も持っている。さらにLogi Flowと呼ばれる機能を使うと、マウスカーソルが複数のPCの画面をマルチスクリーンのように行ったり来たりできる。今回は時間の都合で試せなかったが、機能としては「MX MASTER 2S」のレビューで紹介しているので、そちらをご覧いただきたい。

複数の接続機器を切り替えられるEasy-Switch機能
複数のPCでマルチスクリーン的にマウスを動かせるLogi Flow

 バッテリはフル充電後に本機の試用や執筆等に3日間使用し、その間は本機の電源を入れたままにしておいたところ、バッテリ残量は95%だった。使用ごとにいちいち電源を入り切りするのが面倒というズボラな筆者でも、この程度の減りで済むなら気兼ねなく使用できる。

バッテリの持続時間も良好

 静音マウスというと、左右クリックだけが静かで、ほかは普通に音が出てがっかりするという製品もある。本機はそういったこともなく、ホイールに至るまで極力静音化されているのが分かる。

 大型で値の張る製品なので、誰にでもおすすめできるわけではないが、高機能な静音マウスを求める人には最適な製品の1つであることは間違いない。特に静音性を求めて本機を選ぶなら、性能や使用感、ソフトウェア面を含めて後悔することはないだろう。