やじうまミニレビュー

Discordのノイズ抑制機能を使ったら、ファンノイズも打鍵音も消え去った

~ついでにXSplitの機能でDiscordの画質を映画っぽくする方法も紹介

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。

 コミュニケーションツール「Discord」に、AIを使ったノイズ抑制機能が搭載された(Discordに打鍵音や生活ノイズをAIで除去する機能参照)。Discordは、ゲーマー向けではあるが、ゲーマー同士のコミュニケーションだけでなく、仕事の電話/ビデオ会議にも使えるボイス/ビデオチャット機能を搭載している。

 新型コロナウイルスの影響で、自宅滞在やリモートワークを余儀なくされている人が増えていることを受け、早期ベータ版としてこの機能が実装されたかたちだ。じっさいにその効果のほどを試してみた。

【4月14日11時付記】Discordの利用規約には「運営会社はお客様に対して、お客様による商用利用について書面による合意を交わしていない限り、お客様の個人的な非商用利用のみを目的とした本サービスの利用およびアクセスについての限定的、取消可能、非独占的、譲渡不能、サブライセンス不可なライセンスを供与します」と記載されており、仕事でのビデオ会議が商用利用と判断され得ることを付記いたします。

見事に消え去るノイズ

 前述のとおり、外出自粛要請などにより、外出が困難となっている現在、仕事の打ち合わせなどで電話/ビデオ会議に対する需要がひじょうに高まっている。仕事だけではなく、仕事が終わった後に、プライベートで友人とビデオ飲み会をする人も増えている。そこで問題になるのが音質だ。

 多くの人はノートPCに内蔵されたカメラ/マイクでビデオ会議を行なっていると思うが、これらは品質があまり高くない。それに輪をかけて、自宅の周囲を走行する車の音、空調の音、キーボードの打鍵音、自宅で家族が出すさまざまな騒音などが乗っかってくるため、音の環境は悪いと言わざるを得ない。

 コミュニケーションの内容にもよるが、映像は多少画質が悪くても伝わるが、音声にずっとノイズが乗っていると聞いていて疲れるし、場合によっては声が騒音にかき消されて意思を伝えられないこともある。そのため、音質だけでも改善させたい。

 音質を上げるためにまず導入したいのが、ヘッドセットだ。ノートPCのマイクが貧弱なのに加え、そのキーボードを打鍵すると、何を言っているのかがわからなくなる。声が聞き取りにくいからと、ノートPCのボリュームを上げると、今度は、その音声をマイクが拾ってハウリングが起きたりもする。ヘッドセットにすれば、マイクが口元に来るので、ノイズを拾いにくくなるし、ハウリングも起きなくなる。しかし、高まるビデオ会議需要から、現在ヘッドセットやWebカメラの売り切れが多発しており、入手が困難となっている。

電話/ビデオ会議をやるなら、できればヘッドセットは用意したい

 やや前置きが長くなったが、今回Discordに実装されたノイズ抑制機能は、こういった問題をさくっと解決してくれるものだ。

 利用は簡単。Discord(現在はデスクトップ版のみ)のユーザー設定の「音声・ビデオ」を開き、「ノイズ抑制」をオンにするだけだ。この機能は、Krispが独自開発したディープニューラルネットワーク「krispNet DNN」を通じてノイズ抑制を行なうもので、掃除機やドアの開閉、キーボード入力などといった環境音を除去できるという。

「ノイズ抑制」をオンにするだけで使える

 手元の環境で試してみたところ、オフの状態だと、ノートPCのファンノイズやキーボードの打鍵音が混ざっていたものが、オンにするだけできれいさっぱり消え去った。声の音質はじゃっかん変化するものの、違和感はほとんどない。今回はファンノイズと打鍵音でしか試していないが、効果はてきめん。広くお勧めできる機能と言える。

ノートPCのカメラとマイクを使い、ノイズ抑制をオン/オフ

動画配信ソフトのXSplitは仮想カメラとしても利用可能。LUTも適用可

 先に、どちらかと言うと画質より音質の方が大事と書いたが、画質も高いに越したことはない。筆者は、インプレスeスポーツ部を運営している関係で、自宅にもゲーム配信環境を構築した(照明だけでここまで変わる。"映える"配信に向け、低コストで自宅をスタジオっぽくしてみた参照)。そこで、かなり余談となるが、ビデオ会議の画質を上げるだけでなく、雰囲気まで変えてしまう方法を簡単に紹介する。

 動画配信ソフトの「XSplit Broadcaster」は、動画の配信以外に、取り込んだ映像を仮想カメラとして出力する機能も備える。たとえば、筆者の環境だと、ミラーレスカメラをUSBのビデオキャプチャユニットにつないでいる。通常は、Discordのカメラしてそのキャプチャユニットを選択するが、その代わりに、XSplitを起動しカメラ映像をキャプチャした状態にしておいて、Discordのカメラを「XSplitBroadcaster」にすると、XSplitでキャプチャした映像がDiscordに映し出される。これは、Skypeなどほかのチャットアプリでも使える。

カメラとして「XSplitBroadcaster」を選ぶと、XSplitでキャプチャしている映像をDiscordに流せる

 XSplitを敢えてかます理由は、LUTを使えるからだ。LUTというのは、スマートフォンのカメラアプリでよくあるフィルターのようなもので、色合いをガラッと変えることができる。映画のワンシーンを見て、「映画っぽい!」と感じるのは、印象的なLUTを適用しているからだ(じっさいにはワンタッチではなくさまざまな色調整を行なっているが)。

 LUTの解説は本稿の趣旨ではないので、ここでは手軽にビデオ会議の映像を映画タッチにする方法を紹介する。こちらのサイトに行き、VideoMark_OBS_LUTs_v2.zipというファイルをダウンロードしよう(ダウンロードにあたり、作者のSNSのフォローなどが必要)。

 ダウンロードしたファイルを展開し、適当なフォルダに保存する。続いて、XSplitのカメラ映像のソースを右クリックしてプロパティを開き、「Filters」のタブの一番下にある「Custom LUT」を選択。ファイルを開くダイアログが出るので、先ほど展開したフォルダーから「VideoMark_Teal_n_Orange.png」を選ぶ。これで色合いが映画っぽくなる。

 カメラ側はできるだけニュートラルな色合いに設定しておくといい。また、60fpsではなくあえて24fpsにし、シャッター速度を1/50秒にすると、より映画的な映像になる。このLUTの色合いが少しきついなと思ったら、「Effect intensity」で適用率を少し下げたり、「色」のタブで、じゃっかんコントラストや、彩度を下げるといい。

カメラの素の映像
LUTを適用したところ

 Discordのノイズ抑制のオンオフの効果とあわせて、動画にしたので、どのように変わるか見ていただきたい。この動画は、Discordで相手側のPCに映った映像をそのまま録画したものだ。ちなみに、聞いてもらうとわかるとおり、こちらの動画ではボーカルマイクを使ったのだが、元の音質がある程度いいので、ノイズ抑制により音質がじゃっかん下がっているのがわかる。それに加えて、なぜかノイズ抑制オンのときの方が、うっすらとだが「サーッ」というホワイトノイズが目立つようになった。それでも、打鍵音などは消えているので、トータルではノイズ抑制オンの方が良さそうだと感じた。

DiscrodでXSplitの仮想カメラを利用し、LUTを適用

 なお、今回はXSplitを紹介したが、もう1つの定番であるOBSでも「OBS-VirtualCam」というプラグインを入れることで、OBSの映像を仮想カメラとして利用できる。OBSでも映像ソースのフィルターにLUTがあるので、これを使うことで同様のことができる。