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100億年で誤差1秒の光格子時計、価格は5億円。島津製作所が開発

Aether clock OC 020

 島津製作所は5日、誤差が100億年に1秒と非常に高精度なストロンチウム光格子時計「Aether clock OC 020」を受注開始した。光格子時計としては世界初の商用機となり、価格は5億円(システム構成による)。

 Aether clock OC 020は、100億年に1秒の誤差に相当する18桁精度を実現した原子時計。卵のパックのような微少空間(光格子)の中に捕獲した原子を利用する光格子時計と呼ばれる種類のものとなる。光格子時計は、現在「秒」の定義の基準として使われているセシウム原子時計の100倍以上の精度を達成できることから、次世代の「秒」の定義の有力な候補とされる。

 今回製品化されたAether clock OC 020は、小型化により装置の体積を250Lに抑えて移設がしやすい設計とし、さまざまな場所での利用を可能とした。また、従来の光格子時計では煩雑な調整業務を頻繁に行なう必要があったが、レーザーの堅牢性向上や周波数の自動調整/制御技術を開発したことで、そういった作業者の負担を大幅に低減したとする。

 そのコンパクトさと高い精度を生かし、数cm精度のプレート活動や火山活動による地殻変動、標高変化など数時間から数年かけて起こる地殻変動の精密な観測のほか、超高精度な標高差計測/測位システムなどにも活用できるとしている。

19インチラックに組み込んだ250L光格子時計
光格子時計の模式図
光格子時計の物理パッケージ
光格子時計のレーザー/制御システム

 島津製作所では2017年、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 香取秀俊教授らのグループと共同研究を開始。2018年には、光格子時計の制御システムを開発し、東京スカイツリーを使った一般相対性理論の検証実験にも成功していた。

世界初、小型化に成功した光格子時計を発売開始 次世代の時間計測技術の実用化へ