やじうまミニレビュー

テレワークやビデオ会議にも使える2,500円のネットワークカメラ「ATOM Cam」

~Webカメラ化ファームウェアを試してみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
ATOM Cam」。直販サイトでの価格は2,500円(送料別)

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言および外出自粛が一息ついた昨今だが、これを機にテレワークの本格導入に踏み切る企業も多く、また一方でビデオ会議などのニーズは依然として高い状態が続いている。そうした事情もあってか、これらの実施に欠かせないWebカメラは、今なお店頭では欠品が続いている。

 Webカメラの代用になりうるデバイスとしては、以前紹介した、スマートフォンをWebカメラの代替として使用する方法(Webカメラが品切れでもOK? スマホをWebカメラとして使える「iVCam」を試してみた)のほかに、一眼レフカメラを転用する方法はちょっとしたブームにもなっているが、今回紹介するアトムテックのWi-Fiネットワークカメラ「ATOM Cam」を用いる方法も、有力な候補の1つだ。

 この製品は、専用ファームウェアを適用することで、Webカメラとして利用できる機能を備えている。これならば、直近のテレワークやビデオ会議ではWebカメラとして活用しつつ、将来的にPCの買い替えやテレワークの縮小などでWebカメラが不要になっても、Wi-Fiネットワークカメラとして継続利用できるというわけだ。

 今回、実機を購入したので、どの程度のポテンシャルがあるのか、具体的な使い勝手を検証してみた。

クラウド録画対応ながら2千円台で買えるWi-Fiネットワークカメラ

 本製品は、2千円台で入手できるリーズナブルなWi-Fiネットワークカメラとして、発売前から話題になっていた製品だ。直販サイトではなくAmazonで購入すると実売3,350円と若干割高になるが、激安であることに変わりはない。

 筐体は、折りたたみ式の台座の上に、5cm四方の立方体のカメラ部が載った構造になっている。角度は上下方向に自由に変えられるほか、左右へのスイングも行なえる。底面にはマグネットがあり、スチール面に吸着させられるなど、一般的なWi-Fiネットワークカメラと比較しても、設置の自由度は極めて高い。

製品本体。キューブ形状でいい意味でシンプルなデザイン
背面。ケーブルは直結式ではなく抜き差しが行なえるタイプ。ちなみにこのケーブルは給電用でデータ転送には使用しない
台座を伸ばして高さを変えられる。底面のマグネットでスチール面への固定も可能だ
下方向に向けることもできる。ネットワークカメラでは意外とこれができない機種も多く、隠れた利点の1つだ
もちろん上方向にも向けられる。自由度はかなり高い
左右方向へのスイングも可能だ

 背面にはMicro USBポートとType-Aポートがあり、通常時、つまりWi-Fiネットワークカメラとしての利用時はMicro USBポート経由で給電を行なう。Type-Aポートは、取扱説明書では具体的な用途が示されていないが、本稿で紹介するWebカメラとしての利用においては、こちらのポートを用いてPCに接続する。

 本体底面のカードスロットに挿入したmicroSDへの録画のほか、動体検知でとらえた映像をクラウドにアップロードする機能も備えている。多くのクラウド対応ネットワークカメラのように24時間365日録画を行なうわけではなく、動体検知に反応があったときだけアップロードする仕組みだが、エンドツーエンド暗号化、128ビットAESとポイントをおさえつつ、この価格を実現しているのはやはり驚異的だ。

底面。左上にmicroSDスロット、右上にSETUPボタンがある
microSDは録画のほか、今回のWebカメラ化ファームウェアの書き換えにも使用する

 Wi-Fiネットワークカメラとしてのセットアップは、専用のスマートフォンアプリを用いて行なう。日本語音声でセットアップの進捗を知らせてくれるので(音声が多少騒々しくはあるものの)わかりやすさはピカイチだ。アプリの画面構成もわかりやすく、操作もしばらく触ればマニュアルなしで理解できるので、入門機としても適している。

セットアップはスマホアプリで行なう。ユーザー登録を行なってログインしたのち「デバイスの追加」で「ATOM Cam」を選択
底面のSETUPボタンを押すと「接続中です」という日本語メッセージが流れるので、Wi-Fiへの接続設定を実行。アプリにQRコードが表示されるのでカメラで読み取ってセットアップを完了させる
利用中の画面。ホーム画面でカメラを選択するとライブ映像が観られる。クラウド経由で外出先からの参照も可能。解像度は手動でも選択できる
モーション検知などによる録画機能が充実している。録画先はmicroSDのほか、クラウドに保存して外出先から参照することも可能。またナイトビジョンにも対応する

Webカメラ専用ファームへの書き換えはmicroSDを利用

 さて本題、Webカメラとしての利用だが、スイッチ1つで機能を切り替えられるわけではなく、専用ファームウェアを適用する必要がある。つまりWebカメラとして使っている間はWi-Fiネットワークカメラとしては利用できず、二者択一という格好になる。

 なお同社によると「ATOM CamはWebカメラとして使用するために設計されていません。Webカメラを購入したいが現在品薄で購入できない人向けの、応急的な方法としてお使いください」とある。また改善およびバグ修正の予定はなく、サポート・保証も対象外とのことなので、その点は予め了承しておく必要がある。

 利用にあたっては、同社のホームページから専用ファームウェアをダウンロードし、microSDにコピーした上で、本体のカードスロットに挿入。SETUPボタンを押しながら電源を入れ、しばらく待つとLEDが青色に点灯するので、そこで指を離して3~4分待つことでファームウェアが書き替わり、Webカメラとして利用可能になる。

専用ファームウェアは同社サイトからダウンロードする。なお対応機種については「Windows 10及びMac OS 10.14にてテストを行ない動作することを確認しています」とある
ダウンロードしたファイルを解凍し、ファームウェア「demo.bin」をmicroSDにコピーする。なお前述のスマホアプリは、これらのプロセスでは一切利用しない
本体カードスロットにmicroSDを挿入したのち、SETUPボタンを押しながらケーブルを挿入して起動する
どちらのモードで動作しているかは、LEDの色で判別できる。Webカメラだと青色、Wi-Fiネットワークカメラだと黄色になる。
あとはUSB Type-AケーブルでPCと接続すればWebカメラとして使用できる。Windowsでは「HD USB Camera」という名称で認識される

 またWi-Fiネットワークカメラに戻す時も手順は同じで、専用ファームウェアをmicroSDに書き込んで、SETUPボタンを押しながら電源を入れることでファームウェアが書き換わる。要するに起動時にSETUPボタンが押されていれば、microSDのルートディレクトリにプログラムファイルがないか見に行き、あればそれを適用するという仕組みだ。

 ちなみに今回試したところ、最初に用いたmicroSDではなぜかうまくいかず、別のmicroSDで試したところ成功した。たまたまという可能性はあるが、同様のケースが発生した場合は、LEDの色や本体のメッセージ音声なども手がかりに、今回の筆者のように別のmicroSDでも試してみるなど、ケースバイケースで対応するとよい。

解像度や画質は文句なし。レンズが広角寄りなのは要注意

 Webカメラとしての使い勝手だが、至って良好だ。もともとがネットワークカメラということで画質も高く、またセンサーの感度が高いせいか、低照度下でも(必要以上に感じるほど)よく映る。最初からWebカメラだったと言われても疑わないレベルで、ノンサポートで提供されているプログラムとはとても思えない。

 ただし元がネットワークカメラであるが故に、レンズが広角に寄っており(画角130°)、広い範囲が映ることには、注意したほうがよいだろう。人物が小さく、背景が広く映りがちなので、設置はなるべく手前、具体的にはキーボードのすぐ奥あたりに設置してやったほうがよいだろう。

USB接続のWebカメラとして利用できる。ドライバ不要で一般的なカメラとして認識される
これはノートPC内蔵のWebカメラで撮影したところ。人物と背景のバランスは標準的だ
ノートPCの画面上に設置した本製品で撮影したところ。かなり広角寄りの画角であることがわかる
Webカメラとしての利用時は両端USB Type-Aという特殊なケーブルを使用する
今回はサンワサプライの「KU-RAA1」を使用した
両端ともにUSB Type-A。USBとしては規格外の品だ

 ちなみに同社サイトでは、マイクについては別途用意することをすすめている。本製品はマイク内蔵とは言え、それはあくまでネットワークカメラとして監視対象の物音を拾うためのもので、ビデオチャットのマイクとしては力不足ということだろう。通常のWebカメラを購入した時と同様、マイクは別途調達したほうがよいだろう。

 なおWebカメラとしての利用時は、本体背面のもう1つのポートである、USB Type-Aポートを使ってPCと接続する。つまり両端ともにUSB Type-Aという特殊なケーブルが必要になるわけだが、製品には付属していないので、自前で用意する必要がある。

 今回はサンワサプライの「KU-RAA1」を購入したが、Webカメラとして使うことが最初からわかっているのであれば、早めに手配をしておくとよいだろう。なおType-Aケーブルでの接続時はPCからバスパワーで電源が供給されるので、もう一方のMicro USBポートにはケーブルを接続しなくてよい。見過ごしがちだが、こうした細かい部分も配慮が行き届いている印象だ。

不要になってもWi-Fiネットワークカメラとして活用できる

 以上のように、使い勝手は極めて良好だ。Webカメラが用意できないユーザーはもちろんのこと、ノートPCの内蔵カメラの画素数が低く困っている人や、角度調整の自由度が低く外付けのカメラが欲しい人など、さまざまな用途に対応できる。広角寄りの画角を許容できるかどうかだけがポイントだろう。

パッケージ。製品デザインと同じくシンプルな意匠だ
付属品一式。アダプタ、Micro USBケーブルのほか、壁掛け用の部品も付属する

 個人的にはやはり、Webカメラとして不要になっても、Wi-Fiネットワークカメラとして使える汎用性(本来は順序が逆だが)を評価したい。WebカメラはPC 1台につき1製品しかいらないが、Wi-Fiネットワークカメラであれば自宅内に何台あっても、監視対象さえあれば使い道はあるわけで、そうした用途に転用できるのは大きい。

 ましてや本製品は、2千円台で購入できるリーズナブルさで、コスト面もネックにならない。Webカメラ専用ファームウェアの提供がいずれ終了する可能性があることは割り引いて考える必要はあるが、そこはユーザーの要望1つだろう。

 その点さえクリアできれば、今後Webカメラ製品の在庫が店頭で復活しても、あえて本製品を選ぶという選択肢もありそうだ。