やじうまミニレビュー

Ryzen 3000+X570環境に最適化したDDR4メモリ「Trident Z Neo」

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Trident Z Neo

 AMDが投入した「Ryzen 3000」シリーズプロセッサは、前世代のRyzen 2000シリーズから、Zen 2アーキテクチャの採用によって大きな性能向上を果たした。

 最上位モデル(Ryzen 7 2700X/9 3950X)の比較でコア/スレッド数が倍に増えているだけでなく、IPC(クロックあたりの性能)向上でゲームなどシングルスレッド性能が要求されるワークロードにも適した設計となり、AVX命令処理も大幅に高速化されている。

 そんなRyzen 3000シリーズだが、競合するIntelプラットフォームと比較したときに頭を悩ませるのが、DDR4メモリモジュールに何を選ぶかだ。

 Ryzenでも、Coreプロセッサと同様に高速なメモリと組み合わせるとシステム性能の向上が見込める。しかし、これまで発売されてきたハイエンドなオーバークロックメモリはIntel向けの製品が多く、「Ryzen向けのメモリ」としてどれを買えば良いのかが難しい。

 そんななか、オーバークロックメモリモジュールで定評のある台湾G.SKILL Internationalから、“Ryzen向けの高クロックメモリ”として登場したのが「Trident Z Neo」シリーズだ。すでに国内での販売も開始されている。

 今回は、G.SKILLより8GBモジュール2枚組のメモリキット「F4-3600C16D-16GTZN」をお借りして、Ryzen環境での動作を確認していきたい。

七色に輝くDDR4メモリ

 Trident Z Neoシリーズは2~4枚組のDDR4メモリモジュールキットで、2,666~3,800MHzまでのOC製品が用意されている。

パッケージ。光源の関係で白と銀色に見えるが、実際のヒートシンクは両面とも銀と黒の組み合わせ
モジュール本体

 銀と黒の2トーンカラーのヒートシンクと、8ゾーンに分割されたRGB LEDを備えるのが特徴で、半透明のガイドバーと組み合わせることで、滑らかかつ直視しても眩しすぎないライティングを実現している。

 LEDはASUS「Aura Sync」、ASRock「Polychrome Sync」、GIGABYTE「RGB Fusion」、MSI「Mystic Light」といったマザーボードメーカー各社のRGB LED制御機能にも対応しており、PC全体で統一したライティングを行なうこともできる。

 ヒートシンクなどの仕様としては、基本的にIntel向けに販売されている「Trident Z」(こちらは片面ごとに黒と銀のヒートシンク)の“色違い”と言って良いだろう。

アドレッサブルRGB LEDバーを搭載
鮮やかに輝く
マザーボードと合わせたイルミネーションが楽しめる

Ryzen環境におけるDRAM

 Ryzenシリーズのプロセッサでは、「Infinity Fabric」と呼ばれるインターコネクトの動作クロック(FCLK)がメモリコントローラの動作周波数(UCLK)と同期している。そのため、メモリクロックの設定が純粋にメモリコントローラの速度だけに影響するIntel系CPUに比べて影響する範囲が大きい。

 このFCLKは2,000MHz前後が動作の限界とみられ、前述の仕様からメモリクロックもDDR4-4000未満がプラットフォーム上の動作限界となっていた。

 Zen 2アーキテクチャではメモリコントローラ周りが改善され、高クロック動作の安定性が向上している。さらに、Zen/Zen+同様にInfinity Fabricの動作周波数(FCLK)がメモリ周波数に影響しているのだが、AMDはより高いクロックが設定できるよう、一定の周波数以上でUCLK:FCLKの比率が1:1ではなく2:1となる(FCLKがメモリクロックの半分の周波数で動作する)仕組みを用意した。これによって、Ryzen 3000シリーズではメモリオーバークロック耐性の上限が大きく引き上げられている。

 基本的にUCLK:FCLKが1:1モードで動作しているほうが性能的に優位なため、AMDではオーバークロックのスィートスポットとして「3733C17(Rawメモリレイテンシ67ns)」設定を推奨している。

DDR4-3733 CL17がスイートスポット
ゲームではDDR4-2667よりもDDR4-3600環境のほうが3~20%ほど高速になるとしている

 AMDとIntelは、両社ともにOCメモリの動作について動作を保証していない。そのため、マザーボードおよびメモリモジュールメーカー各社では、QVL(Qualified Vendors List)として各社が動作を確認したメモリモジュール/マザーボードのリストを公開している。

 メモリとマザーボード/CPUの相性が問題になることは減ってきたが、OCメモリの購入にさいしては、それぞれのQVLを参照してマザーボードとの動作が検証されているか確認した上で購入することを推奨したい。本モジュールのQVLでは、マザーボード各社のおもだったX570マザーボードのほか、IntelのZ390/Z370マザーボードもリストアップされている。

 Web上では、SamsungのBダイやSK HynixのCJR、Micron Eダイあたりのチップを搭載したシングルランクモジュールが、Ryzenで高クロック動作で動作したという報告が多いようだ(メモリランクについては別記事を参照されたい)。

XMP読み込みで3,600MHz動作を確認

 ここからは実際にF4-3600C16D-16GTZNを使って3,600MHzで動作させてみたい。F4-3600C16D-16GTZNは、JEDEC準拠の標準SPDプロファイルの動作周波数は2,133MHzだが、3,600MHz設定のXMPプロファイルが動作確認済みのものとして記録されている。

 XMPの設定電圧は1.35Vで、オーバークロックのDDR4メモリとして一般的な値だ(JEDEC標準は1.2V)。タイミング設定はCL16-16-16-36で、FCLKにも無理のない設定となっている。

 搭載されているメモリダイについては公表されていないが、SPDからSamsung製ダイであることが読み取れた。おそらくSamsung Bダイを採用しているとみられる。

 CPU-ZのSPD欄からも、バスクロック1,801MHz、CL16-tRCD16-tRP16-tRAS36-tRC52、電圧1.35VのXMPプロファイルが確認できた。

 なおXMPはIntelの策定した規格であり、AMDプラットフォームで公式に対応が表明されているものではないが、ASUS「D.O.C.P」やMSI「A-XMP」など、マザーボードメーカー各社がモジュールのXMPを読み込んで設定する機能を用意しているため、おおよそIntel環境と同様に利用できる。

CPU-Zで読み取ったXMPプロファイル

 Ryzen 9 3900XとAMD X570マザーボード(ASUS ROG STRIX X570-F)環境で動作を確認したところ、UEFIでXMPを読み込ませるだけで動作電圧とタイミングが自動で設定された。ただしBank Cyde Time(tRC)のみAuto設定のままであったため、手動で指定している。そのほかの値についてはAuto設定に任せている。

 結果、CPU-Zからバスクロック1,794MHzでCL16-tRCD16-tRP16-tRAS36-tRC52、コマンドレート1Tでの動作が確認できた。FCLKも1,800MHzでUCLKと1:1で動作している。

3,600MHzで動作

 3,800MHzへのオーバークロックにも挑んでみたところ、電圧1.4Vでバスクロック1,896.2MHz、CL16-tRCD17-tRP16-tRAS32、コマンドレート1Tで動作した。FCLKも1,900MHzに指定し、UCLKと1:1で動作させている。

 本モジュールには温度センサーが搭載されており、ベンチマーク実行後でHWiNFO読み45℃前後(室温28℃)と1.35V/3,600MHz時と+1~2℃差のため、定格から2V高い1.4Vの電圧設定だが温度/動作ともに支障はなかった。

3,800MHzでも動作

 JEDEC標準の2,133MHzプロファイルとXMPの3,600MHz、手動設定の3,800MHzで、それぞれSiSoftware Sandra 2020の「メモリ帯域」と「メモリレイテンシ」の両テストを実行した結果は以下のとおりだ。

SiSoftware Sandra 2020ベンチマーク結果

 結果を見ると、DDR-3600/3800は、DDR4-2133から大きく帯域/レイテンシーともに高速化されていることがわかる。WebブラウズやOfficeアプリなどで差を実感できることは少ないが、キャッシュを活用するアプリケーションなどで差が出てくるだろう。


 Trident Z Neoシリーズは、Ryzen向けのメモリとして用意されているだけあり、Ryzen環境でもOCメモリとしてXMPのロードだけで使える手軽さが魅力だが、手動でクロックやタイミング設定を詰めていきたいパワーユーザーにも適した製品と言える。

 既存の同ランクのOCメモリとの価格差も大きくないため、これからRyzen環境を構築するという自作PCユーザーにオススメしたい。