Ubuntu日和

【第6回】Ubuntuでさまざまなビジネスソフトを使用する 全般編

 Ubuntuはデスクトップ向けのOSである。ということはビジネスでも使用できるのかは気になるところである。

 15年以上UbuntuをメインOSとして仕事にも遊びにも使用している筆者自身は全く参考にならないとして、広く世間を見渡してみると意外とイケるのである。

 世間の事情は本誌をよくお読みの聡明な読者には自明であろう。仕事に使用するOSは今やWindowsばかりでなく、macOSやAndroidやiOS、Chrome OSまで幅広く存在する。ソフトウェア提供者から見た場合、広く使われて欲しい場合はマルチプラットフォーム対応が必須となる。その一環としてLinuxディストリビューションにも対応するのだ。

 そして究極のマルチプラットフォーム対応はWebアプリケーションだ。さまざまなことがWebアプリケーションで行なえるようになり、WebブラウザしかないChrome OSまでもが仕事で使えるようになったのが現状だ。IE 11のサポートが終了し、IE限定のWebアプリケーション/Webサイトがなくなるのであれば、ますますマルチプラットフォーム化が進むだろう。理想的には。

 Ubuntuをビジネスで使用する大きなメリットはいろいろあるが、EmotetだのランサムウェアだのウィルスやマルウェアにWindowsほど悩まされなくなるのはその筆頭だろう。そもそもOSが違うので動作しない。もちろんデメリットもいろいろある。Microsoft Officeが存在しないのは致し方ない。集中管理の仕組みが弱いのもネックだ。しかしこのあたりはActive Directory対応が進んでおり、いずれは解決する問題なのかもしれない。

 とはいえ一般論を並べたところでどうしようもないので、ビジネスでよく使用されるソフトを個別に紹介していくことにする。

 なお本稿ではパッケージの違いに関しては触れない。第4回の内容は理解済みと想定して進めていく。

パッケージが用意されているビジネスアプリ

 ではUbuntu向けパッケージが用意されている著名なビジネスアプリをいくつか紹介していく。

Zoom

 Zoomが何かなどいまさら述べるまでもないだろう。これを避けて仕事をするのは極めて困難な、今や広く使われているWeb会議サービスである。

 会議に参加するだけであればWebブラウザからも行なえるが、意図したように動作しない場合、あるいは会議をホストする場合はZoomアプリが必要となる。

 ZoomではUbuntu用クライアントを用意しているので、ダウンロードセンターから「Ubuntu」を選択してダウンロードする。

Zoomパッケージのダウンロード

 ダウンロードが完了したらダウンロードしたパッケージをダブルクリックし、「インストール」をクリックする。

「Ubuntuソフトウェア」が起動するので「インストール」をクリックする

 もしこのようにならない場合はパッケージを右クリックして「開き方」の「既定のアプリケーション」が「ソフトウェアのインストール」になっているかを確認しよう。

「Ubuntuソフトウェア」が起動しない場合は「既定のアプリケーション」を確認する

 インストールが完了し、起動してログインするとあとは見慣れたウィンドウが起動する。メニューを日本語にしたい場合は起動後右上に表示されるZoomアイコンをクリックし、「Switch Languages」から「日本語」を選択するといい。

メニューを日本語にもできる

 なおパッケージにアップデート機能はなく、ガイドに従っての手動アップデートとなる。

Slack

 Slackも著名なコラボレーションツールだ。チャットとして広く使われている。余談だが本連載の連絡にも使われている。

 Slackも特にアプリのインストールは必要ない(少なくとも筆者はインストールの必要を認めたことはない)が、Ubuntuのリポジトリから簡単にインストールできるのでその方法を紹介しよう。

 「Ubuntuソフトウェア」を起動し、「slack」で検索すると見慣れたアイコンの「Slack」が表示されるので、ここをクリックしてさらに「インストール」をクリックする。

UbuntuのリポジトリからSlackクライアントがインストールできる

 あとは起動してログインするだけだ。

Dropbox

 著名なクラウドストレージサービスということでDropboxを取り上げる。無償版が渋すぎて新規に使用するメリットはまったくないものの、息の長いサービスなので継続して利用しているケースもままあるだろう。

 インストール方法は簡単だがやや特殊で、「Ubuntuソフトウェア」で「dropbox」を検索し、「Dropbox」を表示して「インストール」をクリックするところまでは同じだ。

 しばらく待っていると「情報があります」というウィンドウが表示される。Dropboxが正しく動作するためにはファイルマネージャー(Nautilus)を再起動する必要があるという情報で、「Restart Nautilus」をクリックするとファイルマネージャーが再起動する。もちろんそれまで表示していたウィンドウは閉じることになるので要注意だ。

ファイルマネージャー(Nautilus)の再起動を促される。実はこの操作で拡張機能をインストールしており、反映するために再起動が必要になっている

 続けて「次」をクリックすると、今度は「Start Dropbox」というボタンが表示されるのでこれをクリックしてインストーラーを起動する。

Dropboxインストーラーの起動を促される

 「Dropbox Installation」というダイアログが表示されるので、「OK」をクリックしてしばらく待つ。あとはユーザー名とパスワードしてログインし、同期するまで待てば完了だ。

Dropbox本体のインストーラーを起動する

 ファイルマネージャーに拡張機能がインストールされたことにより同期の状態を示すアイコンも表示され、とてもわかりやすい。

ホームフォルダー直下に「Dropbox」フォルダーが作成され、そこに同期される。

Google Chrome

 Google Chromeはビジネスソフトではないが、かといってビジネスには必須なので取り上げる。

 とはいえ『人気Linuxディストリビューション、Ubuntuを触ってみよう!』で紹介したので参照して欲しい。

 ほかのPCやAndroidでGoogle Chromeを使用している場合はプロファイルの同期機能を使用すると便利だろう。また特に仕事ではChromeリモートデスクトップも便利であろう。

LibreOffice

 LibreOfficeはオープンソースでマルチプラットフォームなオフィススイートである。Ubuntuにもあらかじめインストールされている。

 というわけでビジネスソフトであり、Microsoft Officeと「相互運用性(interoperability)」(公式には互換性(compatibility)という言い方はしない)を確保している。しかしそもそもWindowsとUbuntuでは使用できるフォントが異なり、仮に同じバージョンのLibreOfficeを使用していたとしてもかなり厳しいことになる。

 そういう場合は、WindowsにNoto Sans JP/Noto Serif JPフォントをインストールすると、游ゴシック/明朝よりも優先して使用するというTipsがあるので活用して欲しい。

Windows版LibreOfficeにNotoフォント(Noto Serif CJK JP)をインストールするとデフォルトで使用する

 起動直後のLibreOfficeはいかにも野暮ったいユーザーインターフェイスで、お気に召さないかもしれない。そういう場合は、慌てず騒がず「表示」-「ユーザーインタフェース」を起動して欲しい。「タブ」はMicrosoftのリボンUIに似せた作りになっている。

LibreOfficeのUIは、実は複数の選択肢がある

Ubuntuの機能から使用するサービス

 例外的に個別のパッケージを必要としないサービスもあるので、2つほど紹介する。

Googleのいくつかのサービス

 別途アプリケーションをインストールしなくても、Ubuntuビルトインの機能でビジネスに使える状態にできる。「設定」の「オンラインアカウント」を見てみると「Google」というのがある。

「アカウントを追加」の2番目にある「Google」をクリックする

 ここをクリックしてGoogleアカウントでログインすると「用途」というウィンドウが表示される。これは連携できる機能(アプリケーション)を表しているが、「写真」と「プリンター」は使用できないので有効にしても意味はない。

用途はおおむねアプリケーションに紐づく

 「ファイル」はファイルマネージャーのことであり、追加するとブックマークが追加されてワンクリックでGoogleドライブに接続できるようになる。これはとてつもなく便利だ。

ファイルマネージャーでGoogleドライブを開いているところ。筆者が実際に使用しているアカウントなのでモザイクはご容赦願いたい

 「カレンダー」はやはりインストールされている「カレンダー」である。「メール」は残念ながらインストールされているThunderbirdのことではなく、インストールされていないメーラーを指している。ここでは「Geary」をお勧めしておく。Ubuntuソフトウェアセンターからインストールして起動すると、Gmailのアカウントが追加されているはずだ。

 このように、Google(と今回は取り上げないNextcloud)は「オンラインアカウント」を有効にするとさまざまな機能(アプリケーション)と連携できるようになる。

Box

 こちらもまたユーザーが多いと思われるBoxは頑なにUbuntu用クライアントをリリースしないが、サポート対象外ながらWebDAVでアクセスする方法があるので、これを利用しない手はない。

 「ファイル」を起動し、サイドバー最下部の「他の場所」をクリックする。「サーバーに接続」に「davs://dav.box.com/dav」と入力して「接続」をくりっくするとユーザー名とパスワードを質問されるので、それぞれ入力するとBoxのアカウントに接続できる。

「他の接続」の「サーバーへ接続」を使用する

 頻繁にアクセスするのであればサイドバーの「dav.box.com」を右クリックし、「ブックマークを追加」をクリックすればブックマークとして登録できる。

Boxのアカウントに接続できた

次回予告

 さて次回は、ビジネス用途には避けて通れないMicrosoftの各種サービスを紹介していく予定となっている。