笠原一輝のユビキタス情報局
21:9ディスプレイと3眼カメラを搭載して薄型軽量化した「Xperia 1」
2019年3月1日 11:00
ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(以下ソニーモバイル)は、MWC 19 Barcelonaの初日に新スマートフォン「Xperia 1」(発表内容に関しては別記事参照)を発表した。
Xperia 1は世界ではじめて21:9で4Kの6.5型の有機ELディスプレイを採用しているほか、背面カメラも3眼で、新しく瞳AFに対応するなど、多くの部分で手を入れられており、ブランドスキームが従来のXZ*シリーズから変更されるタイミングに相応しいフラッグシップ製品となっている。
本記事ではソニーモバイルで取材した内容などから、Xperia 1の特徴について、筆者の見方なども添えながら紹介していきたい。
縦長ディスプレイ、3眼カメラ、そして薄型・軽量化
今回からソニーモバイルはXperiaのブランドスキームを変更している。従来まではフラッグシップはXperia XZ*というかたちで、XZ2、XZ3のようにXZというアルファベットに数字で世代を示し、4KのモデルにはPremiumをつけるというかたちになっていた。
しかし、今回からはフラッグシップをXperia 1(エクスペリアワン)、ミッドレンジをXperia 10/10 Plus(エクスペリアテン、テンプラス)としており、1桁数字をフラグシップに、2桁数字をミッドレンジにつけるかたちになっている。この後継製品のナンバリングルールは現時点では未公表だ。
Xperia 1のソニーモバイルから公表されたスペックは以下のようになっている。これに昨年(2018年)のMWC 18で発表したXperia XZ2、その後追加発表されたXperia XZ2 Premium、そしてIFAで発表されたXperia XZ3、そして今回のXperia 1を横並びでスペックを比較したものが表1となる。
Xperia 1 | Xperia XZ3 | Xperia XZ2 Premium | Xperia XZ2 | |
---|---|---|---|---|
グローバルな発表タイミング | 19年MWC(2月) | 18年IFA(8月) | 18年第2四半期 | 18年MWC(2月) |
SoC | Snapdragon 855 | Snapdragon 845 | Snapdragon 845 | Snapdragon 845 |
メモリ | 6GB | 4GB | 6GB | 4GB |
内蔵ストレージ | 64/128GB(UFS) | 64GB(UFS) | 64GB(UFS) | 64GB(UFS) |
ストレージ拡張 | microSDXC(最大512GB) | microSDXC(最大512GB) | microSDXC(最大400GB) | microSDXC(最大400GB) |
ディスプレイ | 6.5型4K(3,840×1,644、21:9)/HDR対応 | 6型QHD(2,880×1,440、18:9)/HDR対応 | 5.8型 4K (3,840×2,160、16:9) /HDR対応 | 5.7型 FHD+(18:9比)/HDR対応 |
モデム | Cat.19(4x4、MIMO) | Cat18(5CA、最大下り1.2Gbps、4x4 MIMO) | Cat18(5CA、最大下り1.2Gbps、4x4 MIMO) | Cat18(5CA、最大下り1.2Gbps、4x4 MIMO) |
Wi-Fi | IEEE 802.11ac | IEEE 802.11ac | IEEE 802.11ac | IEEE 802.11ac |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 |
NFC | 搭載 | 搭載 | 搭載 | 搭載 |
I/O | USB Type-C(USB PD対応) | USB Type-C(USB PD対応) | USB Type-C | USB Type-C |
指紋認証 | 右側面中央 | 背面 | 背面 | 背面 |
背面カメラ1/CMOSセンサー | 1,200万画素(26mm/F1.6) 光学手ぶれ補正 | 1,900万画素(25mm/F2.0) | 1,900万画素(25mm/F1.8) | 1,900万画素(25mm/F2.0) |
背面カメラ2/CMOSセンサー | 1,200万画素(52mm/F2.4)光学手ぶれ補正 | - | 1,200万画素(白黒/F1.6) | - |
背面カメラ3/CMOSセンサー | 1,200万画素(16mm/F2.4) | - | - | - |
前面カメラ/CMOSセンサー | 800万画素(23mm/F2.0) | 1,300万画素(23mm) | 1,300万画素(22mm/F2.0) | 500万画素(23mm/F2.2) |
DolbyAtmos | ○ | - | - | - |
バッテリー容量 | 3,330mAh | 3,330mAh | 3,540mAh | 3,180mAh |
QI対応 | - | ○ | ○ | ○ |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 72×167×8.2mm | 173×58×9.9mm | 80×158×11.9 mm | 72×153×11.1mm |
重量 | 180g | 193g | 236g | 198g |
OS | Andorid 9.0 | Andorid 9.0 | Andorid 8.0 | Andorid 8.0 |
これを見てわかるように、Xperia 1の特徴は3つある。1つはディスプレイが6.5型で21:9という縦長のディスプレイを採用していること、2つめは3眼のカメラを採用していること、そして最後に昨年発売されたどのXperiaと比べても薄く、軽くなっていることだ。
21:9の6.5型4Kディスプレイは縦長だがその表示品質が魅力
すでに述べたとおり、ディスプレイは6.5型4K(3,840×1,644ドット)のOLED(有機EL)ディスプレイになっている。アスペクト比21:9の縦長ディスプレイになっており、それにより本体の縦方向の長さは167mmとスマートフォンとしてはかなり縦長の部類になっている。
これが使い勝手にどんな影響を与えるかだが、正直さほど大きな問題でないと筆者は思う。スマートフォンを使う上で、使い勝手に最も影響を及ぼすのは縦よりも横の幅だからだ。この横幅が大きいと、片手で握るのが難しかったり、片手でIMEを操作するのが難しくなり、いきなり使いにくいと感じるからだ。その横幅は72mmとなっており、Xperia XZ2と同じ、Xperia XZ3よりは1mm小さく、かつXperia XZ2 Premiumの80mmよりは8mmも小さくなっている。
今回は残念ながらXperia 1はソフトウェアのバージョンが報道関係者や来場者が操作して良いほど煮詰まってはいないようで、実機を持つことはできたが、操作はできない状態で固定されていたため、実際のIMEを利用して操作はできなかったが、心の目でIMEがあると思って片手で操作してみたがこれならまったく問題ないと感じた。いずれにせよ、Xperia XZ2やXperia XZ3の幅で問題ないと感じているユーザーであれば、問題なく操作できるだろう。
縦長になっているため、通知バーなどがやや手が遠くなるという課題はあるが、その弱点を強みに変えるべく、上限にウインドウを分割して利用できるようにしている。たとえば、上側でYouTubeでストリーミングビデオを再生しながら、下側でWebブラウザで検索したり、そうした使い方が考えられるだろう。
近年では他社のスマートフォンでも当たり前に利用されている機能だが、Xperia 1では上下をうまく使えるようにしていることが特徴で、UXにオーバーレイして表示される設定ツールによって、アプリの上下位置の指定が簡単に行なえるようになっている。
動画再生時のクオリティは非常に高い。21:9対応ゲームも3つ公開される
そうした縦長のディスプレイだが、もちろんアスペクト比が21:9の映画などのコンテンツを再生する時には上下の余白なく表示できる。
ソニーがコンテンツ作成事業者などに提供している基準器として利用されているマスターモニターの部隊が協力した画像処理モードが用意されており、D65の色温度、ITU-R BT.2020の色域、10bitの色表現に設定できる。ただし、発色自体は8bitまでとなっている。データが10bitのカラー表現である場合には、2bit分をソフトウェアで補正してスケーリング表示を行ない、10bit相当の色表現を行なう。
これにより、スマートフォンの基本的な画像表現となっているややビビッドな画像ではなく、コンテンツ作成者の意図した色に近い表現でコンテンツ再生が可能になる(ソニーモバイルではクリエイターモードと呼んでいる)。
実際、今回グランツーリスモSPORTのプロモーションビデオをこのXperia 1で再生する様子を見てもらったが、OLEDの特徴である黒が引き締まった映像は迫力あるものだった。
なお、アプリケーションの表示に関しては、GoogleがAndroidアプリの開発者に対して最大で21:9まで対応するように推奨しているため、ほとんどのアプリでは問題がないとソニーモバイルでは説明している。ただ、3Dゲームなどでは16:9になっているアプリが多いため、現在ゲームパブリッシャーに21:9への対応を働きかけているということで、今回のMWCではFortnite、Aspahlt 9、Arena of Valorが対応ゲームとして紹介された。
標準、2倍ズーム、ワイドの3つのレンズを搭載し、瞳AFを搭載
背面カメラに関しては3眼になっている。Xperia XZ2/XZ3では1眼、Xperia XZ2 Premiumでは2眼となっていため、一見すると1眼増えているだけと感じるかもしれないが、Xperia XZ2 Premiumの2眼のうち1つのカメラは白黒レンズとなっており、2つのカメラで撮影した映像をリアルタイムに融合させて、暗所でも明るくノイズが少ない映像を撮影できる。
Xperia 1では、3眼のすべてのカメラが通常のレンズになっており、通常使うレンズが焦点距離が35mm換算(以下同)で26mm相当、ズームレンズに相当するレンズが焦点距離が53mm相当(つまり2倍ズーム相当)、そしてワイドレンズが焦点距離が16mm相当となっている。さらに、標準レンズはF1.6と明るいレンズが採用されており、Xperia XZ2 PremiumのF1.8、Xperia XZ2/XZ3のF2.0に比べて明るくなり、より明るい画像が撮影できる。
標準レンズとズームレンズには光学式手ぶれ補正機能が入っていることも見逃せない。一眼レフカメラなどではおなじみの機能だが、スマートフォンの場合にはコストやスペースの関係から光学式ではなく、ソフトウェアによる手ぶれ補正が採用されていることが多い。ソフトウェアによる手ぶれ補正でもそれなりに手ぶれ補正できるのだが、やはり光学式に敵わないのは明らかだ。
また、従来モデルではISPを利用したノイズリダクションは、JPEGに圧縮した後行なっていたのだが、Xperia 1ではISPの処理能力が向上したこともあり、RAWデータの段階でノイズリダクションを行なえるようになったという。これにより、Xperia XZ3比で約4倍の高感度を実現できるということだ(標準レンズを利用した場合)。
ソニーのコンパクトカメラやミラーレス一眼レフカメラなどでおなじみの瞳AF機能も追加されている。展示会場では実際に瞳AFが動く様子が公開されていたが、筆者が普段使っているα7 IIIと同じように、瞳AFがモデルさんの瞳を緑のフレームで追随していく様子が確認できた。人間を撮影するときにこの瞳AFはピントをキッチリと人に合わせてくれるので、ピンボケの写真を避けることができるという意味で、非常に強力な機能だ。
また、動画を撮影時のリアルタイムエフェクト機能「CinemaPro」も今回拡張されている。この機能では、映画を撮影しているという雰囲気で撮影することができる。実際に同じシーンを撮影した映像を見せてもらったが、標準のモードで撮影した映像が高品質なTV番組というイメージで撮影できていたのに対して、Cinema ProのVENICE CSというモードで撮影した映像はまるで映画ワンシーンのように見えた。
従来のフラッグシップXperiaよりも軽量薄型を実現、その秘密はQiを諦めたことか
最後の薄型化、軽量化に関してだが、Xperia 1は薄さ8.2mm、重量182gと昨年発売されたXperiaのフラッグシップ向け製品のどの製品よりも薄く、軽くできている。冷静に考えてみればわかるが、アスペクト比が違うとは、ディスプレイは大きくなっているのだ。当然その分(ディスプレイのサイズが大きくなり、その分筐体も大きくなる)重くなってしかるべきだろう。しかし、軽くなっているのはなぜだろうか。
その理由の1つは、おそらく今回のモデルでは非接触充電のQiへの対応を諦めたことだ。これにより、Qiに必要なコイルを搭載する必要がなくなり、Qi向けの電源回路も必要なくなった。その分、薄く、軽くすることができる。
たしかにQiは使っている人にとっては便利な機能で手放せないのだろうが、残念ながら使っている人はさほど多くない。そう考えれば、マーケティング的に考えて、それを落としても薄く軽くした方がいいと判断したのではないだろうか(ここは推測に過ぎないが……)。
搭載されているSoCはSnapdragon 855へと進化している。メインメモリは6GBとXperia XZ2 Premiumと同じだが、ストレージは最大で128GBのモデルも用意される。microSDXCで拡張できるとは言え、やはりメインストレージが多きい方が使い勝手がいいので、これは嬉しい強化と言っていいだろう。
魅力的なディスプレイを持ち、お値段据え置きのXperia 1
以上のように、Xperia 1の3つの強化点(6.5型4K/HDR/OLEDのディスプレイ、3眼のカメラ、薄型・軽量化)に関して見てきた。いずれも時代のニーズに即したものであり、率直に言って昨年のモデルと比較して圧倒的に魅力的な製品に進化したと言っていいだろう。
とくに6.5型で21:9の4Kディスプレイは今のところは競合メーカーには選択肢がない長所と言ってよく、この点は他社製品との競争で大きな意味を持つと考えることができる。
なお、気になるのは価格だと思うが、ソニーモバイルによれば、Xperia 1の米国での市場想定価格は950ドル(税別、1ドル=110円換算で104,500円)とのことで、最近のスマートフォンの高価格化ということには乗らずに、従来のソニーモバイルのフラグシップと同じ価格レンジに抑えている。これは素直に歓迎していいのではないだろうか。
ソニーモバイルはXperia 1の出荷を今夏としており、その販売する国には日本も含まれている。日本の通信キャリアなどからも目玉商品として夏のボーナス商戦あたりに販売されることになる可能性が高いだろう。