笠原一輝のユビキタス情報局

究極のVAIO Sシリーズが登場、14型4Kに進化しながら13.3型とほぼ同等の底面積

VAIO SX14 ALL BLACK EDITION、4K/UHDを搭載し、無刻印キーボードのモデル

 VAIO株式会社(以下VAIO)は、1月17日に報道発表を行ない、最新製品となる「VAIO SX14」(法人向けモデルはVAIO Pro PK)を発表した。

 VAIO SX14は、ソニー時代に発表した「VAIO Pro」シリーズの流れをくむ製品で、ソニーからVAIOが分離された後も「VAIO Pro 13」、「VAIO Pro 13 | mk2」、「VAIO S13」として連綿と販売されてきた、13.3型パネル搭載製品の後継となる。

 ついに14型へとディスプレイサイズが大きくなったのが最大の特徴だが、2辺狭額縁のデザインを採用することで、フットプリントは13.3型とほぼ変わらないサイズとなっており、人気の13.3型サイズで14型を持ち歩けるというのが最大の特徴となる。

 また、VAIO Pro 13/S13シリーズとしては、はじめてUSB Type-C(USB 3.1 Gen2、DP AltMode、USB PD)に対応しており、USB Type-Cポートを搭載しているディスプレイに接続するだけで、充電も映像出力が可能になっているほか、付属している従来型のACアダプタもそのまま利用可能。

 CTO(Customize To Order、注文時に仕様を決定できる注文方式)向けに用意されるALL BLACK EDITIONでは、無刻印のキーボードを選ぶことができるなど、すべて黒にこだわったデザインとなっている。

13.3型とほぼ同じ底面積ながら2辺狭額縁で14型ディスプレイを搭載、4Kの選択肢も

 今回発表されたVAIO SX14(法人モデルはVAIO Pro PK)は14型のディスプレイを採用していながら、13.3型の製品とほぼ同じ底面積となっていることが最大の特徴となる。

上がフルHDモデル、下が4K/UHDのALL BLACK EDITION、2辺が狭額縁になっている

 DellのXPS 13からはじまった狭額縁のトレンドは、今やPC市場だけでなく、スマートフォンにも波及して、今や画面占有率の数字を各社が競うような段階になっている。

 狭額縁を採用することで結果的にノートPCの底面積を小さくすることには大きな意味がある。従来は13.3型しか入らなかった筐体に14型のディスプレイを入れることができるのは、明確なユーザーメリットだからだ。

ディスプレイの左右が2辺狭額縁

 正直に言えば、今回VAIOが新しいVAIO SX14で狭額縁を導入したというのは目新しいことではない。すでに多くのメーカーが狭額縁に取り組んでおり、13.3型の底面積で14型のディスプレイを搭載したノートPCとしては、LenovoのThinkPad X1 Carbonなど多数の例があり、その意味では決して早いほうではないと言える。

 筆者もVAIOから説明を受けている段階では「ふーん」というやや斜めの見方をしていたが、それは実機を見て吹っ飛んだ。意外と言っては怒られるかもしれないが、これが良いのだ。

 1つには、見た目が13.3型と大きく変わっていないのに、2辺狭額縁になっているだけでほぼ同じ底面積(320.4×222.7mm、従来モデルは320.4×216.6mmなので、奥行きが約6mm大きくなっているだけ)に入っている。そして重量はわずかに従来モデルの約1.06kgから軽量化され、約999g~(SKUにより重量は異なっている)となっている。

VAIO SX14 ALL BLACK EDITION、4K/UHD搭載モデルは実測で1.032kgとなっていた

 VAIOによればそれが実現できたのは、UDカーボンという素材を利用しており、縁の構造を見直すことで、従来モデルでは難しかった2辺狭額縁を実現したのだという。かつ強度は従来モデルと同じだ。

 そして新しい選択肢として、4Kのパネルが選択できるようになったことも特筆すべきだ。これまでVAIO S13ではディスプレイの解像度がフルHDしか選べず、先進的なユーザーにとっては「解像度低くね?」という意見もあったと思うので、そこがクリアされたことは歓迎していい。

狭額縁化されなかった上辺には従来と同じようにカメラとアンテナが入っている

 筆者がもう1つ、VAIO SX14の狭額縁のデザインに感心したのは、デザインを優先して無理に3辺狭額縁にしなかったこと。

 VAIO SX14のディスプレイには従来と同じように上部にカメラとアンテナを搭載している。このアンテナは、Wi-FiやBluetoothだけでなく、モデルによっては標準、CTOモデルではオプションになっているLTEモデムのアンテナも含まれている。

ディスプレイの上部はフロントカメラと左右にWi-Fi/LTEのアンテナが入っている

 狭額縁にしている製品では、そうしたアンテナが本体側に、カメラはディスプレイ下部に来ている製品が少なくない。カメラは映像が見上げた映像になるぐらいだから、さほど前面カメラをほとんど使わない日本ではあまり影響がないが、アンテナは感度の低下というわかりやすいデメリットがある。

 もちろん、本体側にアンテナが来ても工夫して感度が下がらないようにしている製品もあるのだが、ディスプレイの上部にあるに比べて不利なことは否めない。だが、VAIO SX14の場合は、上辺を無理に狭額縁にしなかったため、それがない。これは重要なポイントだと思う。

 LTEのモデムモジュールはTelit製の「LN940」だ。このLN940は従来のVAIO S13にも採用されていた通信モジュールで、最大でCat.9の下り最大450Mbpsのキャリアアグリゲーション(CA、複数の帯域を束ねて通信すること)に対応している。LN940のスペック上はCat.11の下り最大600Mbpsにまで対応しているのだが、VAIOではCat.9までの対応だとアナウンスしている。

 実際に実機でも利用してみたが、スリープから復帰してから数十秒~1分程度経たないとモデムの再認識が行なわれない製品とは異なり、スリープから復帰してから数秒で回線の接続が行なわれるので、指紋認証でWindowsにログインしている間には通信が接続され使える状態になっている。

 モダンスタンバイに対応している製品のようにずっと接続しっぱなしに比べると再接続までは時間がかかるのは事実だが、それでも指紋認証の間には終わっているので、あまり気にならないだろう。

 このLN940の特徴は、サポートするLTEバンドが多いことだ。日本で使える1、3、21、26などのLTEバンドだけでなく、バンド4のような米国だけで必要になるようなバンドにも対応している。表1に対応バンドを示したが、これだけ対応していれば不便を感じることはほぼないだろう。

 なお、今回はバンド41の感度を上げる改良も加えられているとVAIOは説明している。もちろんSIMロックフリーなので、日本のSIMカードだけでなく、海外のプリペイドSIMなどを現地で購入して使うという使い方が可能だ。

【表1】VAIO SX14の対応LTEバンド
新VAIO S11NTTドコモauソフトバンク
バンド1
バンド2---
バンド3-
バンド4---
バンド5---
バンド7---
バンド8--
バンド11--
バンド12---
バンド13---
バンド17---
バンド20---
バンド21--
バンド25---
バンド26(バンド18/19を含む)-
バンド28
バンド29---
バンド30---
バンド38---
バンド39---
バンド40---
バンド41-
バンド66---
SIMカードスロットはMicro SIMサイズ。写真はアダプターをかましてNano SIMカードを入れているところ

 ただ、1つだけ惜しいなと感じたのは、SIMカードスロットがMicro SIMサイズであることだ。というのも、すでにハイエンドのスマートフォンはみなNano SIMに移行しているので、スマートフォンとSIMを共用したい場合には、Nano SIMからMicro SIMへと変換するようなアダプタを利用する必要がある。

 その場合、ちょっと間違えると、SIMカードスロットを破損する可能性が高まるだけに、SIMカードスロットはスマートフォンと同じNano SIMにして欲しいというのが正直なところだ。我慢できないことはない(慎重にSIMを入れればいいだけ)が、ぜひとも次機種ではNano SIMにして欲しい。

USB Type-Cが追加され、USBアダプタによる充電に対応、PDだけでなく5V充電にも対応

 もう1つの大きな変化は、今回のVAIO SX14はUSB Type-Cポートを右側に搭載しているということだ。VAIOにとってのVAIO Sシリーズは、メインストリームのビジネス市場向け製品となる。このため、モダンじゃないと言われながらもミニD-Sub15ピンを残しているのは、ビジネス市場のニーズをくみ取っているためだ。

本体の左側面、USB 3.0ポート×2
本体の右側面、USB 3.1(Gen2)×1、USB Type-C(Gen2、PD対応、DP AltMode対応)×1、HDMI(1.4)×1、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン

 最近のハイエンドノートPCはUSB Type-Cだけを搭載するPCが増えている。筆者のようなハイエンドユーザーは大歓迎だが、その一方で実際の現場ではまだまだミニD-Sub15ピンしかないプロジェクタも少なくない。

 本誌の読者のようなITリテラシーが高いユーザーであれば、鞄の中に1つぐらいはUSB Type-CからVGAに変換するアダプタぐらいは入れているだろう。だが、会社からPCを支給される普通のユーザーはそうではない。そう考えればビジネス向けのPCにはまだまだミニD-Sub15ピンが必須というのは当然の考え方だ。

 このため、VAIO SシリーズはそうしたミニD-Sub15ピンやGigabit Ethernet、フルサイズのSDカードスロットといった、ビジネスの現場で必要になるポートが依然として残されており、それは今回のVAIO SX14でも同様だ。

 だが、その一方で、USB Type-Cに対応した周辺機器は増えつつある。スマートフォンの充電端子もハイエンドな製品はすでにUSB Type-Cに移行しており、PCの充電もできるようなUSB Type-C/PD対応のACアダプタも市場に続々と出回っている。

 そうしたなかで、VAIOは一度VAIO S11(VJS111、2015年12月販売開始)で、Thunderbolt 3に対応したUSB Type-Cを装着したが、その後継モデルではUSB Type-Cを取り払っている。つまり、VAIO Sシリーズがターゲットにしていたビジネスユーザー向けには早すぎたということだ。

 今回それを再度導入する(ただし、Thunderbolt 3には対応していない)ということは、VAIO側でもUSB Type-Cのニーズが高まっていると理解したということだろう。

 これにより、本体への電源供給は付属のVAIOのACアダプタだけでなく、市販のUSB ACアダプタでも行なえる。

 なお、このUSB Type-Cポート、USBでの充電マニアにとってはちょっとユニークな仕様になっている。というのも、5V/1.5Aなどの一般的なスマートフォン向けのACアダプタでも充電することができるのだ(もちろん供給できる電力量が少なければ、充電時間は長くなる)。

 自宅にあったUSBのアダプタを本体に接続し、間に電圧と電流を表示するチェッカーをかまして試してみたところ、以下のような結果になった。

計測しているところ
【表2】USB充電器による充電状況
製品端子スペック電圧電流電力
Samsung EP-TA10JWJUSB-A5.2V/2A5.54V0.25A1.39W
cheero CHE-315USB-A5V/3A、6-9V/2A、9-12V/1A5.12V0.33A1.69W
ノーブランド(QC4+対応)USB Type-C5V/3A、9V/3A、11V/2.4A、12/2.25A8.93V3.05A27.23W
cheero CHE-324USB Type-C5V/3A、9V/2A、12V/1.5A(PD)12.3V1.5A18.45W
ゴッパ ATRODM46USB Type-C(PD/45W)最大20V/2.3A20.1V2.17A43.62W
Apple MRW22LL/AUSB Type-C(PD/61W)最大20.3V/3A20.3V2.15A43.65W
Lenovo ADLX65YLC2AUSB Type-C(PD/65W)最大20V/3.25A20.6V2.12A43.67W

 試したかぎりでは、USB Standard-A(いわゆるUSB-A端子)では1W程度しか給電できず、充電することはできなかった。ケーブルなどを変えれば対応可能なのかもしれないが、筆者の手元にあったUSB-AからUSB Type-Cへと変換するUSBケーブルでは試した限り同じ結果だった。また、VAIO設定で電流が1A以下と、1.5A以上という設定が可能なのだが、どちらで試してみても状況は変わらなかった。

VAIO設定に用意されている充電設定

 これに対してUSB Type-Cのアダプタはみな充電できた。18W(12V/1.5A)までしか対応していない「cheero CHE-324」でも充電できたのは嬉しい誤算で、18Wあればあまり早くないかもしれないが、とりあえず夜充電しておくという使い方なら十分使えそうだ。

 たとええば、ACアダプタを忘れてしまっても、近くのコンビニでUSB Type-Cの充電器を買い、緊急的にACアダプタの代わりに使うという程度であれば十分使えるだろう。

 なお、PC用のUSB Type-C/PDではもちろんすべて20Vでの充電が可能だったが、いずれも2A強の電流しか流れず、43W強での給電となっていた。このため、おそらく本体側は45Wまでの対応となっている可能性が高い。

VAIO TruePerformanceも進化し、特にCore i7搭載モデルで性能向上

 今回の製品では第8世代Coreプロセッサを搭載しているのだが、CPUのラインナップは従来モデルのVAIO S13がKaby Lake Refresh(KBL-R)ベースだったのに対して、Whiskey Lake-U(WHL-U)ベースに切り替わっている。WHL-UはIntelによればKBL-Rに比べて10%の性能向上とされている製品になる。

本体を開けたところ。バッテリは35Wh
CPUのファン

 そして、VAIO SX14でも、従来のVAIO S13で導入されたVAIO独自の性能向上機能VAIO TruePerformanceがサポートされている。VAIO TruePerformanceは、ものすごく乱暴にまとめるならば、CPUのTurbo Boost機能が有効になっているときに、できるだけ高いクロックで動き続けるようにしている性能向上機能となる(詳しい理屈を知りたい方はぜひ以前の記事をお読みいただきたい)。

上がVAIO SX14のCore i7モデルの放熱機構、下は従来モデルの放熱機構

 今回のVAIO SX14で導入されているVAIO TurePerformanceも基本的な理屈は同じだが、今回モデルでは従来のモデルに比べてハードウェアの改良が行なわれている。具体的には、Core i7を搭載したモデルだけ、放熱フィンとヒートシンクの素材が銅に変更されており、これにより熱設計の余裕が増え、より高いクロックで動き続けたりすることが可能になる。

 VAIOによれば、従来の素材のままのCore i5搭載モデルでは、CineBenchでVAIO TruePerformanceをオフ/オンしたときの性能差は15%とのことだが、Core i7では25%アップとなっているので、効果は小さくない。

 なお、CPUはCore i7-8565U、Core i5-8265U、Core i3-8145Uの3つのSKUから選択できる(CTOモデルの場合)。予算に余裕があり、性能を重視するユーザーであればCore i7-8565Uを選択するのがもっともおすすめだ。

ALL BLACK EDITIONではキーボード無刻印も選択可能

 今回のVAIO SX14でも「ALL BLACK EDITION」と呼ばれる、筐体全体がブラックになっている特別モデルが用意される。ALL BLACK EDITIONはCPUもCore i7-8565U一択で、メモリも8GBか16GBしか選べないなど、基本的にはハイエンドユーザー向けとなる。

 かつ、キーボードが最も特徴的で、無刻印を選択することができる(ALL BLACK EDITIONのみ、通常モデルは刻印ありのみ)。カナ文字がないキーボードを用意しているメーカーも最近は増えつつあるが、アルファベットまでなくしてしまうのは大胆な選択だと言える。もちろん刻印ありも用意されており、どちらも日本語配列、英語配列を選ぶことができる。

 つまり、刻印あり-日本語配列、刻印あり-英語配列、刻印なし-日本語配列、刻印なし-英語配列という4種類から選択することができる。

左が通常モデル、中央がALL BLACK EDITION、右が今回から追加される新色のニューブラウン
今回から追加される新色のニューブラウン

 今回筆者は英語版の無刻印モデルの試作機をしばらく使ってみた。最初は結構戸惑ったが、慣れてきたら問題なくなった。もちろん慣れるまでにはそれなりに時間もかかるので、すべての人にお勧めしたいというものでもないが、キーボードの刻印もないブラックの統一感はデザイン的に秀逸だ。デザインのためには体の方が慣れるのをいとわないという人であれば、これを選択するのはありだろう。

ALL BLACK EDITIONの無刻印モデルキーボード
タッチパネル
スイッチ
指紋認証センサー

 以上のように、VAIO SX14は、狭額縁の採用で4K/UHDも選べる14型ディスプレイを採用していながら13.3型とほぼ同じ底面積を実現し、CPUの性能も向上し、USB Type-Cの採用で利便性が向上するなどの特徴を備えている。さらに、ALL BLACK EDITIONでは黒一色に加えて、キーボード無刻印の選択肢も用意されており、デザイン重視のユーザーも満足できる出来映えと言っていいのではないだろうか。従来モデルと比較して完成度が高まった、そういう印象を持つ製品と言える。

 まさにVAIO Pro/VAIO Sシリーズの究極の形、それがVAIO SX14だと言っても過言ではないだろう。